「これが最大限のリベンジだ」。前日の第6ステージをメカトラで失ったトムイェルテ・スラグテル(オランダ、ガーミン・シャープ)が、登りスプリントでステージ2勝目をマーク。総合2位ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)が落車で後退するなど、荒れたレースをオランダ生まれのクライマーが制した。



雪の残るプロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏を走る雪の残るプロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏を走る photo:Tim de Waele
パリ〜ニース2014第7ステージパリ〜ニース2014第7ステージ image:A.S.O.残り5kmコースプロフィール残り5kmコースプロフィール image:A.S.O.



5つのカテゴリー山岳が設定された全長195.5kmで行なわれたパリ〜ニース第7ステージ。プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏に広がる山岳地帯を駆け抜ける。中盤にかけて1級山岳や2級山岳が連続するが、むしろレースにスパイスを与えたのは残り40kmから始まるアップダウン周回コースだった。

チームメイトに守られて走るマイヨジョーヌのカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール)チームメイトに守られて走るマイヨジョーヌのカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール) photo:Tim de Waele逃げ切りにも有利なコースだけにスタート直後から激しいアタック合戦に。アタックと吸収を繰り返したのち、9名の先行が決まった。

終盤にアタックを仕掛けるヤン・バケランツ(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)ら終盤にアタックを仕掛けるヤン・バケランツ(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)ら photo:Tim de Waele逃げたのはリエーベ・ヴェストラ(オランダ、アスタナ)、ローラン・ディディエ(ルクセンブルク、トレックファクトリーレーシング)、ピム・リヒハルト(オランダ、ロット・ベリソル)、シルヴェスタ・シュミット(ポーランド、モビスター)、アルバート・ティマー(オランダ、ジャイアント・シマノ)、フロリアン・ギユー(フランス、ブルターニュ・セシェ)、ブリース・フェイユ(フランス、ブルターニュ・セシェ)、シリル・ルモワンヌ(フランス、コフィディス)、マティアス・フランク(スイス、IAMサイクリング)。先頭9名は最大5分半のリードを稼ぎ出すことに成功する。

先頭でフィニッシュラインに向かうトムイェルテ・スラグテル(オランダ、ガーミン・シャープ)先頭でフィニッシュラインに向かうトムイェルテ・スラグテル(オランダ、ガーミン・シャープ) photo:Tim de Waeleチームメイトの山岳賞ジャージを守るべく動いたフランクを振り切り、ロット・ベリソルのリヒハルトが山岳ポイントを量産。1級山岳や2級山岳でポイントを荒稼ぎしたリヒハルトが山岳賞トップに立っている。

コスタやベタンクールを下したトムイェルテ・スラグテル(オランダ、ガーミン・シャープ)コスタやベタンクールを下したトムイェルテ・スラグテル(オランダ、ガーミン・シャープ) photo:Tim de Waeleメイン集団をコントロールしたのはマイヨジョーヌ擁するAG2Rラモンディアールで、すべてのカテゴリー山岳通過後にペースを上げて追撃。残り37kmのスプリントポイント通過後すぐに、先頭で辛うじて逃げ続けていたヴェストラを吸収し、レースをフリダシに戻した。

落車により7分13秒遅れでフィニッシュするゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)落車により7分13秒遅れでフィニッシュするゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waele早いタイミングの逃げ吸収と、断続的なアップダウン&ワインディングコースが更なるアタックを誘発する。集団が一旦緩んだタイミングでダビ・ロペスガルシア(スペイン、チームスカイ)やヤン・バケランツ(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)、シルヴァン・シャヴァネル(フランス、IAMサイクリング)らがアタックを仕掛けて先行したものの、AG2Rラモンディアールがこれらを封じ込める。その後もアタックと吸収が幾度となく繰り返された。

アタックが決まらないまま、ハイペースかつ不安定な状態で進む集団。すると残り5kmで総合2位ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)やフランク・シュレク(ルクセンブルク、トレックファクトリーレーシング)が落車する。トーマスは再スタートを切ったものの、残り3km以内の救済措置は適応されず、7分13秒遅れでフィニッシュ。総合争いから脱落した。

登りと下りを繰り返すコースでは引き続きアタックが連発し、残り3kmからのヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)やドリス・デヴェナインス(ベルギー、ジャイアント・シマノ)のアタックも決まらない。献身的なアレクシ・ヴュイエルモーズとロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)に率いられながら、集団は残り1kmを切る。

登り勾配の残り1kmでヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)が懸命のペースアップを試み、集団はばらけた状態でスプリントへ。世界チャンピオンのルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)とマイヨジョーヌのカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール)、スラグテルが先頭で競り合った。

登りで力強く加速したスラグテルが、アルカンシェルとマイヨジョーヌを引き離す。身長169cm・体重57kgの小柄なクライマーが、先頭でフィニッシュした。

「昨日はずっと調子の良さを感じていたものの、最後に全てを失ってしまった」と言うスラグテル。前日の第6ステージも勝ちパターンに持ち込んだが、残り500mのヘアピンコーナーで前を走るヴュイエルモーズが落車した際にメカトラに見舞われてストップ。1分34秒遅れでフィニッシュし、総合争いから脱落している。

「今日のステージ優勝が何よりものリベンジだ。昨年のツアー・ダウンアンダー総合優勝よりも、このパリ〜ニースでのステージ2勝は未来につながると感じている」と、ステージ2勝目を飾ったスラグテル。前日のトラブルで総合21位に沈んでいるものの、このパリ〜ニースで主役級の活躍を見せる。「クラシックレースとブエルタ・アル・パイスバスコを走り、ジロ・デ・イタリアに備えたい」と語っており、アメリカチームの新エースとしての活躍に注目だ。

敗れたコスタは今シーズン5回目の2位。ベタンクールはあわや3連勝というシチュエーションだったが3位に。ベタンクールはコスタに対して14秒リードで最終ステージを迎えることになった。



パリ〜ニース2014第7ステージ結果
1位 トムイェルテ・スラグテル(オランダ、ガーミン・シャープ)
2位 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)
3位 カルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール)
4位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
5位 アルテュール・ヴィショ(フランス、FDJ.fr)
6位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ベリソル)
7位 ステファン・デニフル(オーストリア、IAMサイクリング)
8位 ゼネク・スティバル(チェコ、オメガファーマ・クイックステップ)
9位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)
10位 ペーター・ベリトス(スロバキア、BMCレーシング)
5h00'05"











個人総合成績
1位 カルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール)
2位 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)
3位 ゼネク・スティバル(チェコ、オメガファーマ・クイックステップ)
4位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
5位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)
6位 アルテュール・ヴィショ(フランス、FDJ.fr)
7位 シリル・ゴティエ(フランス、ユーロップカー)
8位 ステファン・デニフル(オーストリア、IAMサイクリング)
9位 ペーター・ベリトス(スロバキア、BMCレーシング)
10位 サイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ)
32h04'49"
+14"
+26"
+27"
+29"
+31"
+35"

+39"



ポイント賞
ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)

山岳賞
ピム・リヒハルト(オランダ、ロット・ベリソル)

ヤングライダー賞
カルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール)

チーム総合成績
モビスター

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele

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