ふたたびUCIレースなどビッグレースが続く9月はツール・ド・北海道でスタート。東京国体、ジャパンカップ、そして「ツールが日本にやってきた」さいたまクリテリウムで最高潮に。一年の締めはシクロクロス全日本選手権だ。

9月

ツール・ド・北海道第1ステージ終盤で攻撃するブリヂストンアンカーツール・ド・北海道第1ステージ終盤で攻撃するブリヂストンアンカー photo:Hideaki TAKAGI

北の大地のロードレース、今年のツール・ド・北海道はニセコ滞在型で行われた。第1ステージ終盤の横風区間でチームTTの如く抜け出したのはブリヂストンアンカー。ステージ優勝こそNIPPOだったが、続く第2ステージで決着がついた。NIPPOのリーダージャージが落車に巻き込まれ逃げと7分差に。NIPPOとマトリックスが牽引したあと、終盤に仕掛けたのはアンカーの2人。トマ・ルバがリーダージャージに袖を通した。

山本元喜と黒枝士揮(鹿屋体育大)の2人で今までに北海道3勝を挙げた山本元喜と黒枝士揮(鹿屋体育大)の2人で今までに北海道3勝を挙げた photo:Hideaki TAKAGI高い結束力を見せたブリヂストンアンカー高い結束力を見せたブリヂストンアンカー photo:Hideaki TAKAGI

最終第3ステージも雨。総合上位のジョシュア・プリート(チームバジェット・フォークリフト)が逃げに入り、アンカー勢は吸収できないままゴールへ。内間康平(チームNIPPO・デローザ)が逃げるがゴール100m前で後輩の山本元喜が捕らえ、山本は北海道通算2勝目を挙げた。アンカーも追い上げてルバの総合優勝が決定。
輪翔旗杯ロードを制したビセンテ・ガルシア(マトリックスパワータグ)。チームも3連覇輪翔旗杯ロードを制したビセンテ・ガルシア(マトリックスパワータグ)。チームも3連覇 photo:Hideaki TAKAGI
実業団Jプロツアーの頂点に位置するレースが経済産業大臣旗ロード。ここで9月からマトリックスに加入したスペイン人のビセンテ・ガルシアが驚異の走りを見せる。29周のレースで2周目から逃げを開始、そのまま逃げ続けゴールでは完璧なチームプレーで残った畑中勇介(シマノレーシング)との一騎打ちを制し優勝。チームも3年連続で輪翔旗を手に。女子は西加南子(LUMINARIA)が連覇、ユースは石上優大(横浜高)が制した。

10月

東京都で行われた国民体育大会は、地元東京都が総合優勝を飾った。八王子から奥多摩で行われたロード、成年は窪木一茂(和歌山・マトリックス)が、少年は山本大喜(奈良・榛生昇陽高)がそれぞれ独走で優勝。トラックでは団抜き予選で4分23秒504の大会記録を出した岐阜県が優勝。ポイントレースは成年が入部正太朗(シマノレーシング)、少年は山本大喜と奈良県勢が優勝。ケイリンはインカレで落車していた池野健太(兵庫・中央大)が優勝。チームスプリントは東京都が優勝し開催地の総合優勝に貢献した。

国体ロード成年 窪木一茂(和歌山・和歌山県教育庁、マトリックスパワータグ)がラスト20kmを独走して優勝国体ロード成年 窪木一茂(和歌山・和歌山県教育庁、マトリックスパワータグ)がラスト20kmを独走して優勝 photo:Hideaki TAKAGI国体少年ロード 山本大喜(奈良・榛生昇陽)と仲村顕登(奈良・奈良北)が風張峠を越える国体少年ロード 山本大喜(奈良・榛生昇陽)と仲村顕登(奈良・奈良北)が風張峠を越える photo:Hideaki TAKAGI

最終周回へ向かう先頭のマイケル・ロジャース(オーストラリア、サクソ・ティンコフ)とジョシュア・エドモンソン(イギリス、スカイプロサイクリング)。最終周回へ向かう先頭のマイケル・ロジャース(オーストラリア、サクソ・ティンコフ)とジョシュア・エドモンソン(イギリス、スカイプロサイクリング)。 photo:Hideaki TAKAGI

ジャパンカップは今年も大盛況。初日のクリテリウムは宇都宮市のメインストリートが観客で埋め尽くされた。優勝はスティール・ヴォンホフ(ガーミン・シャープ)で2勝目。オープンレース男子は高校生の黒枝咲哉(日出暘谷高)が爆発的なスプリントで優勝。前年の勝者は兄の士揮で兄弟で優勝の記録を作った。女子は金子広美(イナーメ信濃山形)が初優勝。

クリテリウムを制したスティール・ヴォンホフ(オーストラリア、ガーミン・シャープ)クリテリウムを制したスティール・ヴォンホフ(オーストラリア、ガーミン・シャープ) photo:Kei TSUJIオープン男子 黒枝咲哉(大分県立日出暘谷高校)が優勝オープン男子 黒枝咲哉(大分県立日出暘谷高校)が優勝 photo:Hideaki TAKAGI

ジャパンカップ本戦当日は氷雨と強風で最悪のコンディションに。11人が序盤から逃げるがラスト3周ですべて吸収、そしてラスト2周で抜け出したマイケル・ロジャース(サクソ・ティンコフ)がその後に独走を開始。世界選手権個人TTを3度制したロジャースは逃げ切って優勝。しかし同レース後のドーピング検査でロジャースはクレンブテロール陽性となり、現在は暫定的な出場停止状態に置かれている。成績の剥奪等の変更は現在のところまだない。

優勝のマイケル・ロジャース(オーストラリア、サクソ・ティンコフ)優勝のマイケル・ロジャース(オーストラリア、サクソ・ティンコフ) photo:Kei TSUJI2位ジャック・バウアー(ニュージーランド、ガーミン・シャープ)、1位マイケル・ロジャース(オーストラリア、サクソ・ティンコフ)、3位ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・メリダ)2位ジャック・バウアー(ニュージーランド、ガーミン・シャープ)、1位マイケル・ロジャース(オーストラリア、サクソ・ティンコフ)、3位ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・メリダ) photo:Kei TSUJI

”ツール・ド・フランスが日本にやってきた”その表現がぴったりの、さいたまクリテリウムbyツール・ド・フランス。ASOは人だけでなく施設やサインなどすべて本物のツールと同じものを持ち込んで行われた、さいたま市の会場はまさにツールの雰囲気そのもの。開催前には選手たちの各地での交流も。レース終盤にツールの覇者クリス・フルーム(スカイプロサイクリング)、グリーンジャージのペーター・サガン(キャノンデール・プロサイクリング)、アルカンシェルのルイ・コスタ(モビスターチーム)3人が抜け出すと会場の興奮は最高潮に。居合わせたすべての観客がその雰囲気に浸った。

ツールの覇者クリス・フルーム(スカイプロサイクリング)、グリーンジャージのペーター・サガン(キャノンデール・プロサイクリング)、アルカンシェルのルイ・コスタ(モビスターチーム)3人が抜け出すツールの覇者クリス・フルーム(スカイプロサイクリング)、グリーンジャージのペーター・サガン(キャノンデール・プロサイクリング)、アルカンシェルのルイ・コスタ(モビスターチーム)3人が抜け出す photo:Kei TSUJIさいたまクリテリウム表彰台さいたまクリテリウム表彰台 photo:Kei TSUJI

本戦前にクリテリウムが2組行われ、畑中勇介(シマノレーシング)と中島康晴(愛三工業レーシングチーム)が優勝し日本人選手が活躍した。
いっぽうで開催後に大会の収支が赤字であることが明らかに。さいたま市への1億5200万円の補正予算案は12月に廃案となった。その処理については現状で未定。だがファンにとってはこの上ないイベントであり、自転車レースの普及のためにも続けての開催を期待したいところだ。

11月

国内最長のロードレースであるツール・ド・おきなわ。210kmチャンピオンレースのアタック合戦を制したのは初山翔(ブリヂストンアンカー)。中盤から抜け出した初山らに後続から合流する形で進んだ今年の展開。羽地ダムの上りでも10人の集団は崩れずゴール勝負へ。ビセンテ・ガルシア(マトリックス)が先着したが、斜行と判断され降格。2着の初山が優勝という結果に。最後まで先頭集団に残り積極的に走った高岡亮寛(イナーメ信濃山形)の走りは、印象に残る強さだった。

ラスト10km、先頭で攻防を繰り広げる初山翔(ブリヂストンアンカー)らラスト10km、先頭で攻防を繰り広げる初山翔(ブリヂストンアンカー)ら photo:Hideaki TAKAGI市民210km、終盤70kmに渡る独走勝利を決めた清宮洋幸(竹芝サイクルレーシング)市民210km、終盤70kmに渡る独走勝利を決めた清宮洋幸(竹芝サイクルレーシング) photo:Hideaki TAKAGI

国際女子は金子広美が2位に、国際ジュニアは樋口峻明(横浜高)が2位に入った。市民レースの最高峰、市民210kmは清宮洋幸(竹芝サイクルレーシング)が終盤70km以上を逃げ続けて優勝。ゴール後に熱中症で救急車で運ばれるほどに追い込んだ末の勝利だった。

12月

年々人気が高まるシクロクロス。今年は野辺山シクロクロスのUCIレースが2日間の連戦となり、多くの選手と観客を集めた。
今年の全日本シクロクロス選手権は滋賀県マキノ高原スキー場で行われた。男子エリートは竹之内悠(コルバ・スペラーノハム)と小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス)の競り合いになるが、中盤で小坂がパンクし後退。竹之内が3連覇を達成した。3位の沢田時(ブリヂストンアンカー)がU23で優勝。U23勢の台頭が新しい時代を予感させた。

エリート男子 先頭を走る竹之内悠(コルバ・スペラーノハム)と小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス)エリート男子 先頭を走る竹之内悠(コルバ・スペラーノハム)と小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス) photo:Kei TSUJIエリート女子表彰台エリート女子表彰台 photo:Kei TSUJI

女子は接戦となると思われたがそれは序盤のみで、宮内佐季子(CLUB viento)が他を引き離して連覇を達成。注目の與那嶺恵理(チーム・フォルツァ!)は2位に。3位には坂口聖香(パナソニックレディース)が入った。第1人者の豊岡英子(同)は4位に終わった。男子ジュニアは中井唯晶(瀬田工業高)と竹内遼(Team Pro Ride)の一騎打ちをゴールスプリントでライン寸前に制した中井が優勝した。

text:高木秀彰

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