新たなツール・ド・フランスのチャンピオンや世界チャンピオンが生まれ、若手の台頭が目立った2013年が暮れていく。海外ロードレースに照準を絞って今シーズンを振り返る恒例のシリーズ第1弾は、1月から3月まで、UCIワールドツアーレースを中心にプレイバック!



1月

真夏のオーストラリアを舞台にしたツアー・ダウンアンダー真夏のオーストラリアを舞台にしたツアー・ダウンアンダー photo:Kei Tsuji

若いトムイェルテ・スラグテル(オランダ、ブランコプロサイクリング)が総合優勝を果たす若いトムイェルテ・スラグテル(オランダ、ブランコプロサイクリング)が総合優勝を果たす photo:Kei Tsuji2013年のシーズン幕開けは、真夏のオーストラリアを舞台にしたUCIワールドツアー初戦のツアー・ダウンアンダー。スタートラインに、UCIプロチーム入りを逃したカチューシャ(※2月にCASはカチューシャのUCIプロチーム入りを支持)の姿は無かった。

2年連続ツアー・ダウンアンダーを走る宮澤崇史(サクソ・ティンコフ)2年連続ツアー・ダウンアンダーを走る宮澤崇史(サクソ・ティンコフ) photo:Kei Tsujiステージ3勝を飾ったのは「ミスターダウンアンダー」ことアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)で、サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)がクイーンステージを制し、23歳のトムイェルテ・スラグテル(オランダ、ブランコプロサイクリング)が総合優勝。2年連続出場の宮澤崇史(サクソ・ティンコフ)は連日スプリントに向けたポジション争いに加わった。

同時期にアルゼンチンで開催されたツール・ド・サンルイスでは、アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)らを打ち破ったダニエル・ディアズ(アルゼンチン、サンルイス・ソモストドス)が総合優勝に輝いている。

また、2012年のツール・ド・フランス期間中に行なわれたドーピング検査で利尿促進剤キシパミドが検出されたフランク・シュレク(ルクセンブルク)には1年間の出場停止処分が下され、ツールの元山岳王ミカエル・ラスムッセン(デンマーク)が12年間に及ぶドーピング使用を告白。さらに、ツール・ド・フランス7連覇のランス・アームストロング(アメリカ)がオプラ・ウィンフリー氏のインタビュー番組内で過去のドーピング使用を認め、各界に衝撃を走らせた。



2月

ツール・ド・ランカウイ 豪華な宮殿の前を通過するプロトンツール・ド・ランカウイ 豪華な宮殿の前を通過するプロトン photo:Sonoko Tanaka

ツアー・オブ・カタールでステージ4勝&総合優勝を飾ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)ツアー・オブ・カタールでステージ4勝&総合優勝を飾ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ) photo:A.S.O.別府史之(オリカ・グリーンエッジ)や日本ナショナルチームが参戦したツアー・オブ・カタールが中東のカタールで行なわれ、チームを移籍したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)がステージ4勝をマークするとともに総合優勝。

ツール・ド・ランカウイを制したジュリアン・アレドンド(コロンビア)と、チームNIPPO・デローザのメンバーらツール・ド・ランカウイを制したジュリアン・アレドンド(コロンビア)と、チームNIPPO・デローザのメンバーら photo:Sonoko Tanaka直後のツアー・オブ・オマーンには、別府や日本ナショナルチームの他、西薗良太(チャンピオンシステム)が出場。コンタドールらを封じ込めたクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)が総合優勝に輝いている。

ヨーロッパでは、増田成幸(キャノンデールプロサイクリング)らが出場したトロフェオ・ライグエリアを皮切りにシーズンイン。「太陽のレース」と呼ばれるスペインのブエルタ・ア・アンダルシアでアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が大会連覇を果たしている。

2月21日から3月2日までの10日間、マレーシアで開催されたツール・ド・ランカウイには愛三工業レーシングやチームNIPPO、新城幸也(ユーロップカー)、佐野淳哉(ヴィーニファンティーニ)らが出場。福島晋一(チームNIPPO)ら日本勢が連日果敢に逃げたがステージ優勝には届かず。ゲンティンハイランドにゴールするクイーンステージを制したジュリアン・アレドンド(コロンビア、チームNIPPO・デローザ)が、UCIプロチームライダーを退けて総合優勝の快挙を果たした。アレドンドは来季トレックファクトリーレーシングに移籍する。



3月

ミラノ〜サンレモ ニュートラル区間に差し掛かり、チームバスに向かう選手たちミラノ〜サンレモ ニュートラル区間に差し掛かり、チームバスに向かう選手たち photo:Kei Tsuji

ティレーノ~アドリアティコ2013総合表彰台ティレーノ~アドリアティコ2013総合表彰台 photo:RCSsport3月に入るとヨーロッパのロードレースシーズンが本格的に始動。イタリアではモレーノ・モゼール(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)がストラーデ・ビアンケでペーター・サガン(スロバキア)とワンツー勝利を飾り、装い新たに復活したローマ・マキシマでビエル・カドリ(フランス、アージェードゥーゼル)が優勝。

パリ〜ニース総合優勝を果たしたリッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング)パリ〜ニース総合優勝を果たしたリッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング) photo:Kei Tsuji「二つの海のレース」と呼ばれるティレーノ〜アドリアティコで、ステージ優勝を飾ったフルームやコンタドール、"プリート"ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)を抑え込んだヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)が総合優勝を飾っている。

ミラノ〜サンレモ制したゲラルド・チオレック(ドイツ、MTNキュベカ)ミラノ〜サンレモ制したゲラルド・チオレック(ドイツ、MTNキュベカ) photo:Kei Tsuji一方、フランスでは別府史之(オリカ・グリーンエッジ)出場のパリ〜ニースが開催。クイーンステージを制したリッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング)が、最終山岳TTまで制して総合優勝。3月下旬にコルシカ島で行なわれたクリテリウム・アンテルナシオナルではポルトがアシストに回り、フルームを総合優勝に導いている。

パテルベルグでバトルを繰り広げるファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)とペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)パテルベルグでバトルを繰り広げるファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)とペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング) photo:Cor Vosスペインのボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャではダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)が総合優勝。ツール・ド・台湾では吉田隼人(シマノレーシング)がステージ優勝の活躍を見せている。

2013年の「春」を象徴したのが、季節外れの降雪によってコース短縮という事態に見舞われたミラノ〜サンレモだ。最高気温5度&真っ白なコースを走り、ライバルのアタックに食らいついてスプリントに持ち込んだゲラルド・チオレック(ドイツ、MTNキュベカ)が勝利した。

そのミラノ〜サンレモで2位となったペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)は、氷点下近い気象コンディションの中で行なわれたヘント〜ウェベルヘムで独走勝利。ミラノ〜サンレモ3位のファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)はE3ハレルベークで独走勝利。サガンとカンチェラーラの二強は、「クラシックの王様」ロンド・ファン・フラーンデレンで相まみえることとなる。

3度の優勝経験者トム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)が早々に落車でリタイアする中、カンチェラーラがゴール13km手前の「パテルベルグ」でアタックするとサガンが失速。カンチェラーラが3年ぶり2度目のロンド制覇を果たした。

4月のクラシックシーズン以降の模様はvol.2で!


text:Kei Tsuji