今年のツール・ド・おきなわ市民100kmは、後半の羽地ダムでアタックした板子佑士(Life Ride)が独走勝利。「前日に試走し、ここでアタックするしかない」と決めていましたと語る、本人直筆の優勝レポート。



5年前、興味本位で中古のロードバイクを購入したのをきっかけに自転車競技を始めた。ヒルクライムを中心にレースに出ており、去年から表彰台にも乗れるようになってきたので、今年ホビーレースの甲子園とも言われるツールドおきなわに参戦することにした。

主な練習は、平日は通勤+αを雨や用事がない限りはその日の退社時間や疲労度合に合わせて、50km〜100kmを毎日走行。土曜日は、所属チームLife Rideの練習会(100km〜200km)に参加し、淡路島一周(アワイチ)や一周7kmの周回コースで練習。日曜日は、西神戸サイクル明石店の朝練(50km〜100km)に参加している。月間走行距離は2,000km前後だ。

「最初こそ不安に思ったものの、登り切る頃に追走は見えなくなった」「最初こそ不安に思ったものの、登り切る頃に追走は見えなくなった」 photo:Hideaki.Takagiレース2日前に沖縄入りし観光を楽しんだ。しかし名物料理をたくさん食べてしまって、十二分にカーボローディング完了…。登りが得意な私は、レース前日に勝負所になると思われる羽地ダムの登りからゴールまでの15km程度を試走した。なかなか破壊力があり、下りもそこまでテクニカルではなく、下りの苦手な自分でも大丈夫だということを確認。やはり、この登りでいくしかないと確信した。

市民100kmで独走する板子佑士(Life Ride)市民100kmで独走する板子佑士(Life Ride) photo:Hideaki.takagi当日朝はホテルで食事を済ませ、バスでスタート地点に到着。スタート予定時刻の10時まで3時間ほどあるので、軽く試走をしたり、パンを食べたりしながら待つが、緊張から落ち着かなく、悶々としながら過ごした。国際ロードレースを見送り、スタート時刻が30分繰り上がり、9時半になるとの連絡があった。いよいよスタートだ!

追走する2位グループ追走する2位グループ photo:Hideaki.Takagiスタート後は、序盤の中切れを嫌い、スタートの登りですぐ集団前方まで上がり、10番手くらいで頂上を迎える。が、その後の下りでどんどん抜かされる事態に。レースでここまでの下りは初めてで、前後左右囲まれながらの70km/h下りは正直面食らった。

集団の中には2名のチームメイト。「心強かった」と言う集団の中には2名のチームメイト。「心強かった」と言う photo:Hideaki.Takagi下り終えた後は海沿いを走るが、まだまだ人数が多く、皆声を掛け合いながら落車が無いよう気を遣って走る。その後このレース最大の登りの普久川ダムの登りを迎えた。

すぐに前方に上がりここでも10番手くらい。普段出ているヒルクライムレースに比べれば、余裕をもって走れている。今回は、羽地ダムで勝負すると決めていたので、特にペースアップを図ることもなく集団内で脚を溜めることに専念する。

それでも徐々に集団が絞られていき、頂上を迎えるころには、40人〜50人くらいになった。しかしまたしても、下りでどんどん後方に。本当に中切れで終わるかと思うほど、下りで番手を下げた。分かってはいたが、下りが今後の課題である。

その後もレースはアップダウンを繰り返し、徐々に人数が絞られていく。補給ポイントでは、まだまるまる一本ボトルが残っていたが、ツール・ド・おきなわのオリジナルボトルが欲しかったので、わざわざ補給をもらってみたり…。スタート後2時間半を過ぎたころ、最後の勝負所に備えて、最後のジェルを補給した。

レース後に仲間と談笑するレース後に仲間と談笑する 海沿いの国道から県道18号に入り、羽地ダムの登りに備えて集団前方へ。集団は30人くらいとなりLife Rideのチームメイト2名も残っている。逃げるには人数が多いが、スプリントで勝てる気はしない。予定通りアタックだ。この最終局面で仲間が残っていることは、本当に心強かった。

傾斜がきつくなったところで、道路右側に進路を変更し、ダンシングで一気に加速。集団から追走の動きは見られない。頂上がゴールのつもりで全開でもがく。最初こそ間隔が広がらずに不安に思ったものの、登り切る頃に追走は見えなくなった。

苦手な下り区間でも追いつかれず、国道58号線に出る。ここからは、ほぼ平地の8km個人TTだ。
途中、「お、先頭だ!」、「頑張れー!」、「あと少しだよー」など声援を受けながら、全開で走る。声援を独り占めできることは最高に気持ち良い。

ラスト5kmくらいで、審判車から追走集団とのタイム差30秒と声がかかる。微妙だ。縮まっての30秒差なのか、開いての30秒差なのか。ここからの5kmが、本当に長かった。

チャンピオンジャージに袖を通す。「来年は210kmにチャレンジしたい」チャンピオンジャージに袖を通す。「来年は210kmにチャレンジしたい」 photo:Hideaki.Takagi
残り1kmの看板、あと少し。残り500mの看板のところで、後ろから追走集団が来ていないことを確認し、勝利を確信。ここからは、ゆっくり走り、独走勝利の瞬間を楽しんだ。

応援に来ているはずの嫁を探す。あ、木陰で休んでる…。

レース前日に、両手を離して走ってみたところ横風に煽られふらついてしまったので、片手で精いっぱいのガッツポーズでゴールに飛び込んだ。

下りとガッツポーズは今後の課題にしておこう。来年は猛者の集まる210kmに挑戦したい。
私が所属するチーム「Life Ride」は、兵庫の明石、加古川、神戸のメンバーを中心としたチームです。老若男女、経験者、未経験者大歓迎です。


text:板子佑士
photo:Hideaki.Takagi


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