ホビーレーサーの頂点を決めるツール・ド・おきなわ市民210kmで、今年は残り70kmからの独走が決まった。ゴール後に病院に運ばれた清宮洋幸(竹芝サイクルレーシング)は今回が初優勝。25回目のおきなわにその名を刻んだ。

スタート前のなるしまフレンド勢スタート前のなるしまフレンド勢 photo:So.Isobe愛娘を抱える白石真悟(シマノドリンキング)愛娘を抱える白石真悟(シマノドリンキング) photo:So.Isobe


スタートしていく市民210kmの選手達スタートしていく市民210kmの選手達 photo:So.Isobe「市民レースの最高峰」、あるいは「ホビーレースの甲子園」とも呼ばれるツール・ド・おきなわ市民210km。2010年に行われたコース変更から4年、それまでより距離を増し、そして戦略の難易度を高めたコースは既にレーサー達の間でも定着したと言えるだろう。

本部半島を行く集団。細かいアタックが掛かるが集団は一つのまま本部半島を行く集団。細かいアタックが掛かるが集団は一つのまま photo:Hideaki.Takagi名護市21世紀の森体育館前を発着するコースは、UCI認定のチャンピオンレースと全く同じルートをなぞる。本部半島をほぼ一周してから北上し、厳しい普久川ダムの登りを計2回こなし、アップダウンが連続する東海岸を南下。最終版には追い討ちを掛けるように羽地ダムの登りが待ち構える、ホビーレースとしては国内最長かつ最難関のコースだ。

2回目の普久川ダムの登りで独走を開始した清宮洋幸(竹芝サイクルレーシング)2回目の普久川ダムの登りで独走を開始した清宮洋幸(竹芝サイクルレーシング) photo:Hideaki.Takagi過去2回の優勝を誇る高岡亮寛(イナーメ・信濃山形)はチャンピオンレースに出場するため不在だが、昨年覇者の白石真悟(シマノドリンキング)、3位の風間博之(サイクルフリーダム)らを筆頭に、岩島啓太、小畑郁らなるしまフレンド勢、西谷雅史(オーベスト)など、優勝候補は複数存在する。

コース変更を経てからの過去3回の決着を見ると、逃げ切りが2回、集団スプリントが1回。展開次第で決着方法は変わるため、様々な脚質の選手にチャンスがある。今年の出場者は454名。例年通り、ホビーレースの頂点を決めるにふさわしい面々がスタートラインに並んだ。

先頭を追う白石真悟(シマノドリンキング)と中鶴友樹(TEAM KIDS ☆RAKURI)先頭を追う白石真悟(シマノドリンキング)と中鶴友樹(TEAM KIDS ☆RAKURI) photo:Hideaki.Takagi7時36分、号砲と共にスタート。約3kmのニュートラルゾーンを通過し、リアルスタートが切られると同時にアタックを仕掛けたのは昨年覇者の白石真悟。しかしこの動きは決まらず、以降入れ替わり立ち替わり抜け出す動きが発生するものの、幾つもの落車を経ながら集団一つのまま北部の山岳地帯に入っていった。

ペースの上がらないメイン集団から飛び出した原純一(KMCycle Ibex)は2位にペースの上がらないメイン集団から飛び出した原純一(KMCycle Ibex)は2位に photo:Hideaki.Takagi1回目普久川ダムの登りでペースメイクをしたのは、白石真悟や西谷雅史、そして高橋義博(チームCB)ら。淡々と、しかし速めの速度を維持して頂上まで到達すると、集団の人数は30名強までに絞り込まれた。

島北部を走る精鋭集団では後方からの追いつきを嫌い、白石真悟らが積極的にローテーションしていく事を提案。しかし思うように意思統一が図れず上手く回らなかったものの、その時既に後続集団は1分半以上後ろ。再び集団の人数が増えることは無かった。

そして2回目の普久川ダムの登りでも、比較的ペースが速いまま隊列は進行していく。しかしこの中で、一人余裕を持っていたのが清宮洋幸(竹芝サイクルレーシング)だった。自分のペースで登りをこなす清宮は補給所手前で一人抜け出すかたちとなり、「行くのはまだ早い」と捉えた集団はこれを追わず見逃すことに。

後に「逃げるのもプランの一つでした。ペースが上がらなかったから、チームメイトと相談してアタックしようと決めたんです。でもあの瞬間は自分のペースで踏んでいただけ。気づいたら間隔が空いたので、一人で行ってみようと決めたんです。高岡さんも過去に逃げましたし、やってやれない事はないだろうと思いましたね。」と語る清宮。ゴールまではおよそ70km、ここから清宮の長い一人旅が始まった。

ダム頂上で、後続の20名に対して1分半ほどのタイム差を稼いだ清宮。下りを経て吸収されると誰もが思ったものの、逆にローテーションが回らずペースの上がらない集団を徐々に引き離していく。

「"チームメイトが3人残っていたので、(ペースを)抑えてくれるはず。"そう信じて踏み続けました。」という清宮と後続の差は2分を大きく越え、スピードの上がらない集団との差は徐々に決定的なものとなる。

70kmに渡る独走勝利を決めた清宮洋幸(竹芝サイクルレーシング)70kmに渡る独走勝利を決めた清宮洋幸(竹芝サイクルレーシング) photo:Hideaki.Takagi
残り70kmを独走した清宮洋幸(竹芝サイクルレーシング)残り70kmを独走した清宮洋幸(竹芝サイクルレーシング) photo:So.Isobeゴール後に倒れ込む清宮洋幸(竹芝サイクルレーシング)。この後病院に搬送されたゴール後に倒れ込む清宮洋幸(竹芝サイクルレーシング)。この後病院に搬送された photo:So.Isobe


市民210km表彰台 清宮洋幸の代役をチームメイトが務めた市民210km表彰台 清宮洋幸の代役をチームメイトが務めた photo:Hideaki.Takagi後続集団からは清宮のチームメイト(登録はKMCycle Ibex)である原純一が終盤に飛び出し追い上げたが、先頭に追いつくには残り距離が足りなかった。あきらめずに踏み続けた清宮は、結果的に原に対して30秒、そしてそれ以降に対しては2分42秒以上という大きなタイム差を付け、小さなガッツポーズでゴールに飛び込んだ。

表彰式には清宮洋幸のヘルメットが参加表彰式には清宮洋幸のヘルメットが参加 photo:Hideaki.Takagiゴール後に熱中症のため倒れ込み、救急車で運ばれ表彰式を欠席した清宮。これまでも強豪選手の一人として数えられてきたが、優勝はもちろん、おきなわでの表彰台も初めてのこと。25年節目の年に、記憶に残る劇的な逃げ切り勝利を飾ってみせた。清宮は夜に退院し、チームの打ち上げに参加することができた。

2位は29秒差まで詰め寄った原純一、3位は中鶴友樹(TEAM KIDS ☆RAKURI)とのスプリントに競り勝った白石真悟だ。以降は風間博之、高橋義博と続き、完走者は147人だ。


清宮洋幸(竹芝サイクルレーシング)のコメント
「2位になった原さんが調子良いのは事前から知っていましたし、中鶴友樹(TEAM KIDS ☆RAKURI)さんも4位に入る事ができました。チームの勝利ですね。本当に嬉しく思っています。僕はヒルクライムに強いイメージがありますが、実は苦手なんです(笑)ゴール前では脚に全く力が無く、本当に苦しみました。でもそうそうたるメンバーに名を連ねての勝利ですから、本当に幸せな気分ですよ。」


市民レース210km
1位 清宮洋幸(竹芝サイクルレーシング)       5h31'20"
2位 原純一(KMCycle Ibex)               +29"
3位 白石真悟(シマノドリンキング)           +2'42"
4位 中鶴友樹(TEAM KIDS ☆RAKURI)
5位 風間博之(サイクルフリーダム・レーシング)     +3'13"
6位 高橋義博(チームCB)                +3'14"
7位 山本浩史(ペダル)                 +3'16"
8位 小畑郁(なるしまフレンド)             +3'32"
9位 櫻井一輝(なるしまフレンド)
10位 田崎友康(F(t)麒麟山Racing)

text:So.Isobe
photo:Hideaki.Takagi,So.Isobe


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