大会最終日となる第4ステージはイジェン火山、超級山岳での頂上決戦。大会名物の激坂を前に、中根英登(日本ナショナルチーム)が残り15kmからアタックをかけて力走。残り1kmでイラン人選手に先行されたが、8秒差のステージ2位でゴールした。

のどかな田園風景のなかを進むのどかな田園風景のなかを進む Photo : Sonoko TANAKA
マレーシアナショナルチームはMTB用のギアを用意マレーシアナショナルチームはMTB用のギアを用意 Photo : Sonoko TANAKAイジェン火山にゴールする最終山頂決戦

最終日にクイーンステージを迎えたツール・ド・イジェン。166kmの第4ステージは、ラスト30kmから上りが始まり、壁のような激坂を次々と越えて、標高1876m、超級カテゴリーのイジェン火山山頂にゴールするという厳しい山岳コースだった。

山岳で逆転総合優勝を狙うイランのタブリーズ・ペトロケミカルが、レースを序盤からコントロール。厳しい山岳を控えてか、これといったアタックは決まらず、集団は1つのままで、インドネシアの田園地帯や小さな街を駆け梅丹本舗の2RUNを飲んで、準備はバッチリ!梅丹本舗の2RUNを飲んで、準備はバッチリ! Photo : Sonoko TANAKA抜けていった。

バニュワンギの街中を抜け、最後の長い登坂が始まると次々とアタックがかかり、池部壮太(マトリックスパワータグ)がワン・インチー(台湾、CCNサイクリング)とともに集団から飛び出して先行。そして彼らを追う形で中根英登(日本ナショナル)がアタックをしかけ、勾配が厳しくなると同時に集団は崩壊。上りに強いクライマーたちがそれぞれのペースで頂上を目指した。

中根英登はラスト15kmで先行する選手を抜き去り、単独で先行する。後続とのタイム差は1分程度で保たれ、ステージ優勝への期待が高まったが、残り2kmで後方から追い上げてきたラヒム・エマミ(イラン、RTSレーシング)に追いつかれ、残り1kmでエマミが先行し、中根は最後まで諦めずに踏み続けたものの、あと一歩及ばず、8秒差のステージ2位。悔しさがこみ上げるゴールとなったが、超級山岳の山頂ゴール、イラン勢や登坂のスペシャリストが上位を独占するなかで、日本人選手がこの位置でゴールしたことは素晴らしい結果と言えるだろう。

超級山岳コースで単独で先行する中根英登(日本ナショナル)超級山岳コースで単独で先行する中根英登(日本ナショナル) Photo : Sonoko TANAKA
ゴールまで残り5km、思わず蛇行するような急勾配を行く綾部勇成(愛三工業レーシング)ゴールまで残り5km、思わず蛇行するような急勾配を行く綾部勇成(愛三工業レーシング) Photo : Sonoko TANAKA
車両の迂回路に入ってしまいクラッシュしたミルサマド・ポウルセイエディ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)が運ばれながらゴールをめざす車両の迂回路に入ってしまいクラッシュしたミルサマド・ポウルセイエディ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)が運ばれながらゴールをめざす Photo : Sonoko TANAKAまた総合順位はコースを間違え、クラッシュしながらも、4位でゴールしたミルサマド・ポウルセイエディ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)が逆転した。日本人選手の総合最高位は平塚吉光(愛三工業レーシング)の11位。

途中、果敢なアタックを仕掛けた池部壮太は21位でフィニッシュ。慣れないインドネシアの環境で、体調不良を抱えながら走る選手が多かったが、そのなかで日本人選手やチームの活躍が目立った大会だった。


中根英登のコメント
「優勝を狙っていたので、ラスト1kmで行かれてしまステージ上位3選手の表彰台。中根英登(日本ナショナル)が2位ステージ上位3選手の表彰台。中根英登(日本ナショナル)が2位 Photo : Sonoko TANAKAって悔しいです。ただ今回コンディションがすごく悪かったなかで、表彰台という結果を残せたことには少し安心しています。鍛造や都貴さんとか、チーム全体で協力しあってここまで来れていたので、どうにかして結果を残したいという気持ちでいっぱいでした。チームメイトに感謝しています。

レース中は勝つことしか考えていませんでした。今日も途中でやはり調子が悪いと感じていましたが、これまでの3日間よりは良かったので、ちょっと勝負してみようかなと思い、全身攣りそうになりながらも、気合いで走りました。コースの下見をしていて、ゴールが近づくと勾配がキツくなるとことを知っていたので、誰も行かないようゴール地点に用意された点滴と酸素吸入エリアゴール地点に用意された点滴と酸素吸入エリア Photo : Sonoko TANAKAな早い場所から仕掛けました。

あの勾配で、この距離というのは、これまでに経験したことがなかったですね。でも、ツール・ド・ランカウイで勝ったアレドンドとよく練習をしていて、ときどき調子がいいと彼に勝つこともあり、それが自信になりました。ここにいる選手はみんなアレドンドより弱いんだ、と自分に言い聞かせていました。そのような環境を作ってくれ、今回ナショナルチームに派遣させてもらったチームNIPPOにも感謝をしています」

確かな手応えを掴んだ愛三工業レーシング

急勾配の登坂区間を行く平塚吉光(愛三工業レーシング)急勾配の登坂区間を行く平塚吉光(愛三工業レーシング) Photo : Sonoko TANAKA愛三工業レーシングの最高位は平塚吉光の12位。木守望も総合順位を落としてしまったが、チームにとって若手中心のメンバーで挑み、第3ステージの集団スプリントを制してステージ優勝を挙げた意味は大きい。東南アジアや東アジアなどのアジアツアーレースで走り続けている彼らの努力が実を結んだ瞬間だった。

別府匠監督のコメント
「全体的に、次の世代の選手たちが良く走れて結果に繋がったことは、すごく良かったと思っています。でも、強いチームとはまだ走り方が全然違い、実力の差を見せつけられたところもあるので、まだ課題は多く残っていますが、ようやく1つ上のステップに来れたのかな、という気がしています。

これまでなかなかステージで着に絡めない、というところでしたが、それができたので、次は総合を狙ったり、強いチームが参加するようなレースでも勝てるようになりたいと思います。

思うようにレースに出られないこともあり、ポイント数からのアジア1位というのは難しいところでもあるので、選手個人個人で目標を定めて、それをクリアしていってもらいたいと思っています。選手にとってUCIポイントは次のステップに上がるためのお金のようなものなので、それを稼いで、どんどん上に上がっていってもらいたいですね。世界全体でレースが減り、チームが減っている状況なので、選手たちには与えられた環境を大切にして、それをうまく使ってアピールして、自分のためにこの環境を使ってほしいと思っています」


ツール・ド・イジェン2013 第4ステージ結果
1位 ラヒム・エマミ(イラン、RTSレーシング)           5h08'06"
2位 中根英登(日本ナショナル)                    +08"           
3位 ワン・インチー(台湾、CCNサイクリング)             +1'08"
4位 ミルサマド・ポウルセイエディ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル) +1'32"
5位 ジョン・アブセン(デンマーク、ダニッシュディストリクト)      +1'38"
6位 ラミン・メラバニ(イラン、RTSレーシングチーム)        +4'23"

総合順位
1位 ミルサマド・ポウルセイエディ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル) 16h11'43"
2位 ジョン・アブセン(デンマーク、ダニッシュディストリクト)        +1'20"
3位 ラヒム・エマミ(イラン、RTSレーシング) +1'25"
4位 ワン・インチー(台湾、CCNサイクリング)  +2'30"
5位 ムハマド・タウフィック(インドネシア、BRCC) +4'32"
6位 ラミン・メラバニ(イラン、RTSレーシングチーム) +5'49"

山岳賞
アミール・ザルガリ(イラン、RTSレーシング)

ポイント賞
シャハルール・アミン(マレーシア、トレンガヌ)

チーム総合順位
タブリーズ・ペトロケミカル


Photo & Text : Sonoko TANAKA

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