10月14日に行なわれたツアー・オブ・北京(UCIワールドツアー)第4ステージで、ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)が勝利。ライバルを振り切ったスペインバスク出身の27歳が、最終日を前にリーダージャージに袖を通した。



ツアー・オブ・北京2013第4ステージツアー・オブ・北京2013第4ステージ image:Tour of Beijing大会史上初めて1級山岳の山頂フィニッシュが設定された第4ステージ。北京西部の山岳地帯、門頭溝(モントウコウ)の妙峰山(ミョウファンマウンテン)で総合争いは決する。妙峰山は標高1003m、登坂距離12.6km・平均勾配5.7%という本格的な登りだ。

体調を崩しながらもスタートにやってきた西薗良太(チャンピオンシステム)体調を崩しながらもスタートにやってきた西薗良太(チャンピオンシステム) photo:Sonoko Tanaka3つのカテゴリー山岳を含む150kmコースで序盤から逃げたのはインチャウスティやゼネク・スティバル(チェコ、オメガファーマ・クイックステップ)ら4名。31km地点のスプリントポイントでボーナスタイムを稼いだインチャウスティがメイン集団に戻ると、代わってダミアーノ・カルーゾ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)ら3名がメイン集団から飛び出し、先頭3名にジョインした。山岳賞ジャージを着るカルーゾは順調に山岳ポイントを積み重ね、山岳賞を確定させている。

アシストとして働く宮澤崇史(サクソ・ティンコフ)アシストとして働く宮澤崇史(サクソ・ティンコフ) photo:Sonoko Tanaka「最後の峠へ向けてメンバー4人をローテーションに入れてコントロールし、ロジャースに託す。チームとして良く機能していた」と語るのは宮澤崇史(サクソ・ティンコフ)。総合狙いのチームが率いるメイン集団は、最後の1級山岳妙峰山で逃げグループを飲み込んだ。

5〜6%の斜面を速いテンポで登るメイン集団。12.6kmの登りを進むうちにメイン集団は人数を減らし、リーダージャージのナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)は翌日の平坦ステージを見据えて早々に千切れて行く。

残り7kmを切ると、ベルキンプロサイクリングが積極的にリードするメイン集団からアダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル)やマルコ・ピノッティ(イタリア、BMCレーシングチーム)、ジョシュア・エドモンソン(イギリス、スカイプロサイクリング)らがアタックを仕掛けたものの、ハイテンポを刻むメイン集団を引き離せない。

残り5kmの時点でメイン集団は40名ほど。続いてダビ・ロペスガルシア(スペイン、スカイプロサイクリング)とヤン・バケランツ(ベルギー、レディオシャック・レオパード)が飛び出したが決まらない。世界選手権でアルカンシェルを手にした2人、ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター)とトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)のアタックも封じ込められた。



北京西部の山岳地帯を進むプロトン北京西部の山岳地帯を進むプロトン photo:Graham Watson/Tour of Beijing1級山岳妙峰山でアタックするマルコ・ピノッティ(イタリア、BMCレーシングチーム)やジョシュア・エドモンソン(イギリス、スカイプロサイクリング)1級山岳妙峰山でアタックするマルコ・ピノッティ(イタリア、BMCレーシングチーム)やジョシュア・エドモンソン(イギリス、スカイプロサイクリング) photo:Graham Watson/Tour of Beijing山岳賞ジャージのダミアーノ・カルーゾ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)がエスケープ山岳賞ジャージのダミアーノ・カルーゾ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)がエスケープ photo:Graham Watson/Tour of Beijing



1級山岳妙峰山で動くダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)1級山岳妙峰山で動くダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ) photo:Graham Watson/Tour of Beijingすると残り2kmでベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)が強力なアタックを仕掛ける。ビッグネームが互いの様子を確認する間にリードを広げたインチャウスティが、10秒ほどのリードでそのまま残り1kmアーチを通過。先行するインチャウスティを、ダビ・ロペスガルシア(スペイン、スカイプロサイクリング)やダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)が追撃した。

マーティンを振り切ってゴールするベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)マーティンを振り切ってゴールするベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター) photo:Graham Watson/Tour of Beijingしかし最後までインチャウスティのペースは落ちなかった。残り500mから猛烈なペースで追い上げたマーティンを振り切り、インチャウスティが両手を広げてフィニッシュ。レース序盤に稼いだボーナスタイムと山頂フィニッシュで広げたタイム差、さらにステージ優勝に付随するボーナスタイムにより、インチャウスティが総合首位に立った。

リーダージャージを獲得したベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)リーダージャージを獲得したベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター) photo:Graham Watson/Tour of Beijing「最後はマーティンが迫ってきているのが見えたので全力で踏み直したよ」と語るインチャウスティ。今年のジロ・デ・イタリアでマリアローザを1日だけ着用し、第16ステージで逃げ切り勝利を飾ったバスク生まれのオールラウンダーが、シーズン最後のUCIワールドツアーステージレース総合優勝に王手をかけた。インチャウスティは昨年ブエルタ総合10位、今年ジロ総合8位という成績を残している。

「ジロ以来の勝利。ブエルタでは振るわなかったので、良いカタチでシーズンを締めくくることが出来て本当に嬉しい。自分にとって特別な存在であるシャビエル・トンド(2年前にインチャウスティの前で事故死)にこの勝利を捧げたい」と勝者はコメントしている。

前日の第3ステージを終えた時点で総合9位につけていた西薗良太(チャンピオンシステム)は体調不調を押してスタートしたものの、途中リタイアに終わった。「朝から38度の熱がありましたが、こんなチャンスはないと思い、スタートはしました。でも、やはり調子が悪く、中盤の1級山岳で自転車を降りました。レース後の今は熱と吐き気があります。ドクターはウイルスの可能性もあると言いますが、自分としてはトレーニングをしていた鹿児島と、急に冷え込んだ北京との気温差にやられたような感じです。まだ今日は月曜日で、週末のジャパンカップまで時間があるので、食べられるものを食べて、ゆっくりと休んで回復に努めたいと思います」。

翌日の第5ステージは北京市内の鳥の巣スタジアムにゴールする117kmの平坦ステージ。大集団ゴールスプリントで5日間の闘いは締めくくられる。



ツアー・オブ・北京2013第4ステージ結果
1位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)              3h43'25"
2位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)           +03"
3位 ダビ・ロペスガルシア(スペイン、スカイプロサイクリング)           +04"
4位 ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター)                    +06"
5位 ロメン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼル)               +11"
6位 トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)
7位 ヤン・バケランツ(ベルギー、レディオシャック・レオパード)          +13"
8位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ベルキンプロサイクリング)
9位 イヴァン・バッソ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)
10位 マティアス・フランク(スイス、BMCレーシングチーム)            +18"
112位 宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ)                   +16'41"
DNF 西薗良太(日本、チャンピオンシステム)

個人総合成績
1位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)             17h11'50"
2位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)           +10"
3位 ダビ・ロペスガルシア(スペイン、スカイプロサイクリング)           +13"
4位 ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター)                    +18"
5位 ロメン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼル)               +24"
6位 トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)
7位 ヤン・バケランツ(ベルギー、レディオシャック・レオパード)          +26"
8位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ベルキンプロサイクリング)
9位 イヴァン・バッソ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)
10位 ガリコイツ・ブラーボ(スペイン、エウスカルテル)              +31"

ポイント賞
ナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)

山岳賞
ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)

新人賞
ロメン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼル)

チーム総合成績
モビスター

text:Kei Tsuji
photo:Graham Watson/Tour of Beijing, Sonoko Tanaka