ツール・ド・北海道最終日、内間康平(チームNIPPO・デローザ)と山本元喜(鹿屋体育大)がデッドヒートを繰り広げる下り区間。上りゴール150m前で先輩を抜き去ったのは山本。3年前に北海道でステージ優勝して以来の2勝目を挙げた。総合はトマ・ルバ(ブリヂストンアンカー)が守りきった。

山本元喜(鹿屋体育大)が北海道2勝目を飾る山本元喜(鹿屋体育大)が北海道2勝目を飾る photo:Hideaki TAKAGI
最終ステージの戦いは

トマ・ルバ(ブリヂストンアンカー)はビブショーツもマラカイトグリーントマ・ルバ(ブリヂストンアンカー)はビブショーツもマラカイトグリーン photo:Hideaki TAKAGI9月16日(月)、ツール・ド・北海道最終日の第3ステージが、倶知安町から小樽市までの116kmで行われた。前日からの雨が降り続き、強くは無いものの終日やむことは無く、気温も15度ほどと低い。最終ステージは116kmと短いものの、だからこそ修正の効かない難しさも。途中に3箇所の上りがあり、最後の上りからテクニカルな下りが11km、そして平坦からゴールまでの緩い上りが4kmある。
39km地点、赤井川村を通る先頭集団39km地点、赤井川村を通る先頭集団 photo:Hideaki TAKAGI
リーダーチームのブリヂストンアンカーは、3位以下に52秒のアドバンテージを持つ。しかし前日のようにひとつのアクシデントで状況が変わることもあり、決して余裕のある数字ではない。最終ステージなのでステージ優勝や総合順位のジャンプアップ、UCIポイント獲得(ステージ3位まで、個人総合8位まで)の動きも出てくる。これらに対処しつつリーダーを守らねばならない。
阿部嵩之(チーム右京)が赤井川村の実家前を通る阿部嵩之(チーム右京)が赤井川村の実家前を通る photo:Hideaki TAKAGI
序盤から11人の逃げ

初日は100人でスタートした大会だが、最終日は72人が9時00分に倶知安町をスタート。倶知安町内でのアタックのすえ、11人の逃げが決まる。チームバジェット・フォークリフトはジョシュア・プリート、カール・エバンス、クリスティアン・ジュエルの3名、チームNIPPO・デローザは福島晋一と内間康平の2名、さらに竹之内悠(コルバ-スペラーノハム)、中島康晴(愛三工業レーシングチーム)、鈴木譲(シマノレーシング)、池部壮太(マトリックスパワータグ)、大場政登志(Cプロジェクト)、山本元喜(鹿屋体育大)だ。
59km地点を通過するメイン集団59km地点を通過するメイン集団 photo:Hideaki TAKAGI
その後に竹之内が下がり、10人の先頭集団はメイン集団に3分から最大3分半の差をつける。メイン集団はリーダーチームのブリヂストンアンカーに加え、チーム右京が牽引に加わる。チーム右京は個人総合5位のホセ・ビセンテを少なくともジャンプアップはさせたい。逃げ10人の中では、プリートが1分25秒遅れのため要注意、しかもチームは3人を送り込んでいるため予断を許さない。
山本元喜(鹿屋体育大)が内間康平(チームNIPPO・デローザ)をかわして前に出る山本元喜(鹿屋体育大)が内間康平(チームNIPPO・デローザ)をかわして前に出る photo:Hideaki TAKAGI
途中の赤井川村は阿部嵩之(チーム右京)の実家のある場所。前日の神恵内村は生まれ故郷だ。この日はほぼ実家の前をコースは通り、沿道には早くから横断幕や応援グッズを持った人たちが待ち構える。ここ赤井川村で阿部はクロスカントリースキーの選手として名を馳せた。そしていま、プロサイクリストとして凱旋。地元の人たちは毎朝、新聞やインターネットで「タカユキ」の情報を確認していると言う。この日、阿部はメイン集団を牽引して故郷を通過した。
メイン集団のトップは中根英登(チームNIPPO・デローザ)メイン集団のトップは中根英登(チームNIPPO・デローザ) photo:Hideaki TAKAGI
最後の峠での攻防、そして下りへ

そしてレースはいよいよ98km地点の毛無峠へ向かう。ここで先頭集団では福島をメインに攻撃がかかり、福島、内間、山本、プリート、池部の5人に。さらに頂上で内間がアタック、それに山本が追いつき2人でテクニカルな峠を下る。メイン集団前方も活性化し、3分の差が1分30秒にまで縮まるが、先頭集団はプリートを牽引するバジェットフォークリフトの力でペースは落ちない。

このままではルバの総合キープは危うい。しかしついに峠でプリートは惜しくも遅れ、個人総合逆転の望みは薄くなる。先頭では下りを得意とする内間は山本を突き放して下り、山本に10秒の差をつける。しかし山本も粘って差をそれ以上に広げない。10秒差のまま下りを終えてラスト4kmの平坦から緩い上りへ。ここでしだいに山本が内間を追い詰める。

そしてゴールまでの上り区間、ラスト150mで山本は内間をかわしてゴール。4年生の山本は、1年生のときのステージ優勝に続いて北海道2勝目を挙げた。メイン集団は1分05秒差で中根英登(チームNIPPO・デローザ)を先頭にゴール。中根はチームでアシストの役をこなしつつも日本人総合1位の結果を残した。
山本元喜と黒枝士揮(鹿屋体育大)の2人で北海道3勝を挙げた山本元喜と黒枝士揮(鹿屋体育大)の2人で北海道3勝を挙げた photo:Hideaki TAKAGI
北海道2勝目の山本元喜(鹿屋体育大)

優勝した山本はここ2年弱、個人ロードレースの優勝から遠ざかっていた。個人TTやチームTTではタイトルを取っているが、なかなかチャンスに恵まれていなかった。そして鹿屋体育大としても今年の北海道ではなかなかいい結果を出せずにいた。男女総合優勝を果たしたインカレを終えてから一部メンバーは北海道へ渡り、現地で合宿を続けてきた。最後の最後に劇的勝利を遂げてチームは喜びにあふれた。
第3ステージ表彰第3ステージ表彰 photo:Hideaki TAKAGI
黒川剛鹿屋体育大監督が「元喜と内間のどちらにも勝たせてあげたかった」と言うその内間は同大のOB。内間が4年生で北海道U23賞を獲得したとき、山本はステージ優勝を飾っていた。内間は「悔しい、それだけです」と言葉が続かない。帰国後体調を崩し、1週間前まで1週間自転車に乗れない日々が続いた。そしてチーム内での役割は3ステージとも馬車馬の如く働くアシスト。それでも内間の強さは選手間では誰もが認めるもの。あと必要なものは結果だけだ。
チーム総合表彰。チームNIPPO・デローザが優勝チーム総合表彰。チームNIPPO・デローザが優勝 photo:Hideaki TAKAGI
際立ったブリヂストンアンカーのまとまり

最終的に3位のプリートに52秒差をつけたブリヂストンアンカーだったが、この日は安泰だったわけではない。何よりも逃げとのタイム差がつまらなかったこと。バジェットフォークリフトの引きが強力だったこと、思ったよりもメイン集団が活性化しなかったことが理由だ。

「今日は昨日以上に焦りました。でもみんなよくやってくれた」と笑顔の水谷壮宏監督。追い上げでアシストが脚を使ったためチーム総合は落としたものの、清水都貴を欠きながらも総合をキープしたチームの組織力は参加チームの中で髄一のもの。
個人総合表彰個人総合表彰 photo:Hideaki TAKAGI
ツール・ド・北海道は今年で27回目を迎えた。日本国内で唯一のラインのステージレース。住民、各業界、スポンサー、警察など多大な協力と支援で開催が継続されている。すべての対向車が道の端に停車し、規制で停車中の車からは応援の声が聞かれることも。そしてコース沿いの家や職場からは手が振られる。現地で「ツールド」と呼ばれるこの大会、次年度以降、より発展することを願いたい。
鹿屋体育大と、大会参加のOBたち鹿屋体育大と、大会参加のOBたち photo:Hideaki TAKAGI
結果
第3ステージ 116km
1位 山本元喜(鹿屋体育大)2時間46分36秒
2位 内間康平(チームNIPPO・デローザ)+8秒
3位 福島晋一(チームNIPPO・デローザ)+32秒
4位 池部壮太(マトリックスパワータグ)+35秒
5位 ジョシュア・プリート(チームバジェット・フォークリフト)+40秒
6位 中根英登(チームNIPPO・デローザ)+1分05秒
7位 飯野智行(宇都宮ブリッツェン)
8位 西村大輝(シマノレーシング)
9位 ホセ・ビセンテ(チーム右京)
10位 ビセンテ・ガルシア(マトリックスパワータグ)
高い総合力を見せたブリヂストンアンカー高い総合力を見せたブリヂストンアンカー photo:Hideaki TAKAGI
個人総合成績 最終成績
1位 トマ・ルバ(ブリヂストンアンカー)10時間42分29秒
2位 ダミアン・モニエ(ブリヂストンアンカー)+25秒
3位 ジョシュア・プリート(チームバジェット・フォークリフト)+51秒
4位 ビセンテ・ガルシア(マトリックスパワータグ)+52秒
5位 ホセ・ビセンテ(チーム右京)+58秒
6位 中根英登(チームNIPPO・デローザ)+1分11秒
7位 ジョン・アンダーソン(チームバジェット・フォークリフト)+1分33秒
8位 レオナルド・ピニツォット(チームNIPPO・デローザ)+1分46秒
9位 西村大輝(シマノレーシング)+1分53秒
10位 アルベルト・チェッキン(チームNIPPO・デローザ)+2分08秒

個人総合ポイント賞 最終成績
1位 トマ・ルバ(ブリヂストンアンカー)37点
2位 ジョシュア・プリート(チームバジェット・フォークリフト)36点
3位 レオナルド・ピニツォット(チームNIPPO・デローザ)34点

個人総合山岳賞 最終成績
1位 阿部嵩之(チーム右京)20点
2位 カール・エバンス(チームバジェット・フォークリフト)10点
3位 福島晋一(チームNIPPO・デローザ)6点

チーム総合順位 最終成績
1位 チームNIPPO・デローザ 32時間10分12秒
2位 チームバジェット・フォークリフト +2分05秒
3位 マトリックスパワータグ +3分04秒

photo&text:高木秀彰
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