大西洋に面した人口18万人の大都市サンタンデールを見下ろす標高565mの急峻な岩山に向かって、最大勾配20%の登りが続く。ブエルタの名物となりつつあるこの登りで、クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)がニーバリを引き離すことに成功した。



ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第18ステージ高低図ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第18ステージ高低図 image:Unipublicカテゴリー1級に指定されたペーニャ・カバルガは登坂距離5.9km・平均勾配9.2%というパンチの効いた登り。特にラスト3kmは勾配が10%台後半まで跳ね上がる。ゴール1km手前で最大勾配が20%に達する激坂だ。

レース前半、逃げを捕まえるためにメイン集団を牽引するコフィディスレース前半、逃げを捕まえるためにメイン集団を牽引するコフィディス photo:Vuelta a Espana/Graham Watsonサンタンデールの街と大西洋を見下ろすこの激坂は、これまで3回ブエルタに登場している。初登場の1979年にはアンヘル・ロペス(スペイン)がステージ優勝してヨープ・ズートメルク(オランダ)が総合首位に立っている。2010年はホアキン・ロドリゲス(スペイン)がステージ優勝し、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)がマイヨオロを獲得。2011年にはクリス・フルーム(イギリス)がステージ優勝し、ファンホセ・コーボ(スペイン)がマイヨロホを守った。

1級山岳ペーニャ・カバルガの急勾配区間に挑むアダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル)1級山岳ペーニャ・カバルガの急勾配区間に挑むアダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル) photo:Kei Tsuji「ペーニャ・カバルガ頂上でリーダージャージを受け取った者が総合優勝に輝く」という伝統は果たして引き継がれるのか。最終日前日の超級山岳アングリルに至る最終山岳3連戦が、カスティーリャ・イ・レオン州のブルゴスで幕を明けた。

大歓声を受けてフィニッシュラインを目指すヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、スカイプロサイクリング)大歓声を受けてフィニッシュラインを目指すヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、スカイプロサイクリング) photo:Kei Tsuji4つのカテゴリー山岳をこなしながら大西洋を目指す186.5kmのコースで、マルティネス(エウスカルテル)、クラーク(グリーンエッジ)、フェアリー(ガーミン)、ビシオソ(カチューシャ)、ハンセン(ロット)、チュルカ(カハルーラル)、ガスタウアー&シュレル(アージェードゥーゼル)、ヤンセファンレンズバーグ(アルゴス)、キリエンカ(スカイ)、ダラントニア(キャノンデール)、コーラー(BMC)、Cセレンセン(サクソ)、ボーレ(ヴァカンソレイユ)、ボノ(ランプレ)がアタックに成功する。

逃げに選手を送り損ねたコフィディスとモビスターがしばらく追撃姿勢を見せたが、先頭15名のリードは徐々に拡大。2チームが逃げ吸収を諦めると、タイム差は一気に10分まで広がった。

逃げに乗った総合20位・22分22秒遅れのセレンセンはニーバリにとって脅威とは言えず、アスタナはメイン集団をコントロールしながらも逃げ吸収に興味を示さない。やがてモビスターやカチューシャが集団牽引を開始したが、逃げグループとのタイム差は最後まで縮まらなかった。

逃げ切りが決定的になった逃げグループから、ゴールまで40kmを残した2級山岳アルト・デ・カラコルでキリエンカがアタック。この動きには誰も反応出来ず、ここからキリエンカの一人旅が始まる。

キリエンカは追走グループから1分、メイン集団から4分のリードを得たまま1級山岳ペーニャ・カバルガに突入。苦しい表情を見せながらも急勾配区間を這い上がり、後方のセレンセンを28秒引き離してフィニッシュした。



1級山岳ペーニャ・カバルガを登るヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、スカイプロサイクリング)1級山岳ペーニャ・カバルガを登るヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、スカイプロサイクリング) photo:Kei Tsuji
1級山岳ペーニャ・カバルガでニーバリを引き離したクリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)1級山岳ペーニャ・カバルガでニーバリを引き離したクリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード) photo:Kei Tsujiホーナーから遅れをとるヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)ホーナーから遅れをとるヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Kei Tsuji



独走のまま1級山岳ペーニャ・カバルガにゴールするヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、スカイプロサイクリング)独走のまま1級山岳ペーニャ・カバルガにゴールするヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、スカイプロサイクリング) photo:Vuelta a Espana/Graham Watsonポイントレースの元世界チャンピオンで、ベラルーシ生まれの32歳が、ジロ・デ・イタリアのステージ2勝に続くブエルタでの逃げ切り勝利。レース後のインタビューでは「これが僕の勝ちパターン。長距離の逃げ切りだ。何としても勝ちたかった。そしてそれを達成した」と淡々と語る。3年契約でモビスターからスカイプロサイクリングに移籍した仕事人が今シーズン初勝利を手にした。

1級山岳ペーニャ・カバルガで攻撃に出るクリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)1級山岳ペーニャ・カバルガで攻撃に出るクリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード) photo:Vuelta a Espana/Graham Watson寡黙なキリエンカが爽やかな笑顔でフィニッシュラインを切ったちょうどその頃、マイヨロホのヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)が危機に陥っていた。

標高565mまで一気に登る1級山岳ペーニャ・カバルガ標高565mまで一気に登る1級山岳ペーニャ・カバルガ photo:Kei Tsujiカチューシャのダニエル・モレーノ(スペイン)とホアキン・ロドリゲス(スペイン)のアタックに、ニーバリはホーナーやアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)とともに反応。しかしホーナーの更なるペースアップに対応出来る選手は誰もいなかった。

軽快なダンシングで急勾配区間をクリアしたホーナーに対し、マイヨロホのニーバリは重いシッティングでハンドルに覆い被さる。ホーナーは勢いを絶やさぬままキリエンカから1分53秒遅れでゴール。ゴール前でバルベルデとロドリゲスに追い抜かれたニーバリは2分18秒遅れでフィニッシュラインを切った。

ニーバリから25秒を奪うことに成功したホーナー。第18ステージを終えて両者の総合タイム差は28秒から3秒まで縮まった。翌日の2級山岳アルト・デル・ナランコと翌々日の超級山岳アルト・デ・アングリルの山頂フィニッシュを前に、ニーバリのリードは無いに等しい。ホーナーも「3秒は有って無いようなもの」と断言する。「第4ステージでの集団分裂で失った6秒が惜しい!」とも。

「悲観的になっているわけではない。楽観的でもないけど」と話すニーバリは「今日はライバルからリードを奪う予定だったのに、ホーナーが強すぎた。ロドリゲスの力をもってしても、彼を引き離すことが出来なかった。よほど彼が不調に陥らない限り、彼を打ち破るのは難しいだろう。でもまだチャンスを信じている」とコメント。ニーバリとホーナーの歴史的な接戦の行方は、残る3ステージに委ねられる。



1級山岳ペーニャ・カバルガを登るサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)1級山岳ペーニャ・カバルガを登るサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル) photo:Kei Tsujiカンタブリア州の州都サンタンデールを見下ろす1級山岳ペーニャ・カバルガカンタブリア州の州都サンタンデールを見下ろす1級山岳ペーニャ・カバルガ photo:Kei Tsuji


ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第18ステージ結果
1位 ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、スカイプロサイクリング)        4h46'48"
2位 クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、サクソ・ティンコフ)        +28"
3位 アダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル)            +1'18"
4位 マルティン・コーラー(スイス、BMCレーシングチーム)            +1'34"
5位 エゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)              +1'42"
6位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)     +1'53"
7位 アメツ・チュルカ(スペイン、カハルーラル)                 +2'02"
8位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)               +2'13"
9位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
10位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)             +2'18"

11位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)
12位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)                    +2'24"
13位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・メリダ)
14位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)               +2'31"
15位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)             +2'36"
16位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、ネットアップ・エンドゥーラ)
17位 タネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ)
21位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼル)      +2'53"

敢闘賞
エゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)

マイヨロホ(個人総合成績)
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)            73h39'35"
2位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)      +03"
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)              +1'09"
4位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)               +2'24"
5位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)           +3'43"
6位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼル)       +5'44"
7位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)                     +6'14"
8位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、ネットアップ・エンドゥーラ)        +6'35"
9位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)              +7'51"
10位 タネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ)                 +11'10"

マイヨプントス(ポイント賞)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)              126pts
2位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)           116pts
3位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)                100pts

マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 ニコラ・エデ(フランス、コフィディス)                   37pts
2位 ダニエーレ・ラット(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)       30pts
3位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)     22pts

マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)     9pts
2位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)           13pts
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)              14pts

チーム総合成績
1位 エウスカルテル・エウスカディ                     220h27'11"
2位 モビスター                                +4'35"
3位 アスタナ                                 +6'17"

text&photo:Kei Tsuji in Santander, Spain
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