トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)の約170kmの逃げは惜しくも決まらず、第6ステージを制したのはミカエル・モルコフ(デンマーク、サクソ・ティンコフ)。ポイント賞のみマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)に移行し、その他総合、山岳賞、複合賞は変わらず。

ステージ優勝のミカエル・モルコフ(デンマーク、サクソ・ティンコフ)

集団スプリントを制したミカエル・モルコフ(デンマーク、サクソ・ティンコフ)集団スプリントを制したミカエル・モルコフ(デンマーク、サクソ・ティンコフ) photo:Cor Vos(トラック競技の選手経験が今日の勝利に活かされたか?)ぼくはトラック競技で世界チャンプになったり、オリンピックでメダルを獲得した経験はある。これまで集団スプリントに参加した経験はなかったけど、今日のようなゴールの状況はまさに自分に最適だった。

トラック競技のトレーニングやレースでの経験があったから、さらにスピードを乗せることができた。それに、少しツキもあった。ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)の追走がなければ、ぼくたちはマルティンに追いつけなかったと思う。

ステージ優勝のミカエル・モルコフ(デンマーク、サクソ・ティンコフ)ステージ優勝のミカエル・モルコフ(デンマーク、サクソ・ティンコフ) photo:Cor Vos(ゴール勝負について)最後の10kmでは、調子は良かった。しっかり踏めると感じていた。問題となるのは、集団内での位置取りだった。カンチェラーラの後ろが最適な場所だとわかった。カンチェラーラが長いスプリントをした後に、残り200mの地点で踏み込んだ。こういう形で勝利できたことに、本当に驚いている。本当にスゴイことを達成できたと思う。

(トラックやロードで結果を出しているので、やり残した自転車競技はないのでは?)まだまだある! たぶんマウンテンバイクにも移行できると思う……ぼくはいわゆるオールラウンダーの選手だ。でも、オール・ラウンダーであることはいつも幸せというわけではない。

オールラウンダーというのは優勝しないかわりに、そこそこの成績を得るということだからだ。ただ、ぼくはまったく異なる競技をやり遂げることには満足している。それに、自分の仕事はまだエースの補佐役であることも理解している。(今年のツール・ド・フランスの選考に漏れたことについて)レースに向けて準備していただけに、とても残念だった。調子もベストな状態にしていた。

でも、ぼくたちは競技というものを理解している。今回は役割として必要にされなかったということだ。そこで自分の目標をブエルタに変更したが、いまはそれが正しかったと認識している。今シーズンの序盤は、サクソ・ティンコフというチームは普段の年に比べて、あまり勝利に恵まれていなかった。しかし、今回はすでに2勝している(第2ステージでニコラス・ロッシュ(アイルランド)も優勝している)。おかげで、チームの士気はかなり高まっている。

この勝利は本当にうれしく、限りなく誇らしい。デンマークのナショナルチャンピオンジャージを着て優勝できたことに格別の思いがある。ブエルタでのステージ優勝は、おそらく自分のキャリアのなかでも大きなウェイトを占めるだろう。こういうチャンスが巡ってくることをずっと待っていた。チームメイトたちやスタッフたちは、これまでずっと手厚くサポートしてくれた。最後の200〜300mでは、単純にカンチェラーラの後ろに付いていただけだった。スプリントを開始したのは少し速すぎたかもしれないと心配したが、完璧なタイミングだった。


敢闘賞・ステージ7位のトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)

単独で逃げるトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)単独で逃げるトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Cor Vos約4時間に及ぶ異常な個人タイムトライアルだった。自分としては逃げに入って、チームを守る動きだった。仮に自分が吸収されたとしても、最終的にジャンニ・メールスマン(ベルギー)やアンドリュー・フェン(イギリス)がスプリントで良い結果を出してくれると思ったからだ。

それで先行することにしたのだけど、不意に単独になってしまって、すぐに数分の差がついてしまった。そのときは「何故だ?」と思った。いま思うと、あれは効果的なアタックだったと思う。

単独で逃げ続けるトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)単独で逃げ続けるトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Vuelta a Espana(その後は)ずっと快適に走れた。追い風のアシストもあったことを付け加えておきたい。あの風がなければ、ゴールまで逃げることはできなかった。ゴールでの差は、本当に僅かだった。残り10kmで集団が寸前まで迫ってきて、ギブアップすることも考えた。だけど、その考えは捨てて、再びアタックした。

彼らが差を詰めることができなければ、最終的には勝てるのではないかと思い始めた。しかし、残り5kmでは、すでに疲労もあり、終盤のコースもハードになっていた。ちょっとした上り勾配が自分には不利だったし、集団もまた全力で追走してきた。フィニッシュラインの白線が見えたのと同時に、背後で集団が迫ってくる音が聞こえた。

敢闘賞を獲得したトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)敢闘賞を獲得したトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Cor Vosだけど、もう両脚にはまったく力が残っていなかった。最後の200mでは、あれ以上に速く走れず、残念ながら吸収されてしまった。こういう結果になったときは、いつもならほろ苦い気分になる。あとちょっと運があれば、優勝できたかもしれないという見方もある。一方で、勝者のような気分にもなった。

ゴール後に誰もが自分に話しかけようとしてきた。難易度の高い偉業を達成した気分だった。敢闘賞の受賞で表彰台に立ったが、観客の前にいるのが本当に格別な思いがした。今日のことは、世界選手権に向けての強烈なトレーニングでもあったとポジティブに捉えたい。

偉業を達成するか、敗北するかは紙一重の差でしかない。だけど、それに挑戦するしかない。今日のように、ここまで長い距離を逃げたのは初めての経験だと思う。優勝はできなかったけど、今日のことはずっと長く記憶にとどまるだろう。


ステージ2位のマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ランプレ・メリダ)

2日連続ステージ2位のマキシミリアーノ・リケーゼ(左、アルゼンチン、ランプレ・メリダ)2日連続ステージ2位のマキシミリアーノ・リケーゼ(左、アルゼンチン、ランプレ・メリダ) photo:Cor Vosまた2位だった、ガッカリだ(第5ステージもステージ2位)。今日はかなり調子が良くて、力強く踏めていた…優勝を目指して走っていた。でも、終盤はテクニカルで少し危険だった。(スプリントでは)カンチェラーラの横に位置取りした。

残念なことに、少し上り基調のゴールだったので、ぼくの好みじゃなかった。ただ、大切なのは、まだまだ好調であることだ。この調子を活かしたいと思っている。できれば、それが明日になってほしい……今年のブエルタでのスプリンター向けのステージは本当に数に限りがある。


ステージ3位のファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)

スプリントについて語るファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)スプリントについて語るファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード) photo:http://www.radioshackleopardtrek.comあのスプリント勝負は本当に予想していなかった。本当に奇妙なステージだった。トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)が一日中ずっと逃げていて、スプリントを狙うチームは彼を吸収するのに四苦八苦していた。でも、最終局面で機能していたのは、ほんの2つのチームだけだった。

そのおかげで最後は、まったくコントロールが効かない、大混乱の状態だった。クリス・ホーナー(アメリカ)、アイマル・スベルディア(スペイン)、ロベルト・キセロフスキー(クロアチア)と一緒に前方にいたのだけど、すぐに彼らを牽くのが難しくなりそうなのがわかった。

でも、ぼくたちの位置取りはかなり良かった。それで、調子が良かったこともあり、(スプリントで)勝負できるかもしれないと思った。スプリンターではないながらも、かなり走れたはずだ。それなりにちゃんと反応できていたし、ビッグスプリントもこなせたのではないかと思う。良い成績が取れたおかげで、自分の脚に充分な力があるという自信を深めることができた。

ベストな調子でレースに挑めた。このところ、昨日のようにずっと不調だった。今日のテクニカルなコースは完全に自分向きだった。今日の影響もあるから、明日は序盤から筋肉痛だと思う。でも、それでもかまわない。みんなにどうしてアシストしてもらわなかったのかと質問されたが、あのスプリントは予想外だったからだ。単純に残り2kmで良い位置にいただけで、前に出てからスプリントしてみようと思った。チームには良い刺激になったはずだ。


総合1位のヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)

マイヨロホを着て走る総合1位のヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)マイヨロホを着て走る総合1位のヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Vuelta a Espana終盤はチームとしても本当に苦しかった。チームメイトたちと一緒にできるだけ集団前方を走るようにして、トラブル回避や落車回避に備えていた。


ステージ9位のフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)

トニ・マルティンは本当に強かった。終盤はかなり難易度が高くなっていった。ランドバウト(ロータリー)やカーブもあったので、少しテクニカルで危険性もあった。最後にようやく位置取りできたけど、ちょっと遅すぎた。残り500mの最終コーナーで、自分の位置取りをキープしていたけど、動けなかった。それでステージ9位で終わってしまった。


チームの喜ばしい忙しさを語る宮島正典マッサー(サクソ・ティンコフ)

マイケル・モロコフ選手の勝利! 第一週目で2勝目です。スタッフの雰囲気も良く、チームにとって嬉しい勝利です。ニコラス・ロッシュ選手も毎回ポディウムに上がり普通では味わないアリーボの忙しさです。今日は、レース後の移動もバイクでHOTELに帰れる距離。当然、マッサージに費やせる時間も長くゆっくり出来ました。明日も同じ様な仕事の流れ… 周りのスタッフが経験豊富なので、連携がとれ気持ち良く仕事が出来ています。

[宮島正典マッサーのブログ「Soigneurの独り言…: 第6ステージ」より抜粋]


※ソースはレース公式リリース、チーム公式ウェブサイト、選手個人のウェブサイトおよびTwitter、Facebookなど。

translation & text: Seiya.YAMASAKI

最新ニュース(全ジャンル)