横風による集団分断の末に繰り広げられたスプリンターチームの激しいバトル。大集団によるゴールスプリント勝負に持ち込まれると思いきや、残り1500mで4名の先行が決まり、ゼネク・スティバル(チェコ、オメガファーマ・クイックステップ)が久々の勝利を掴んだ。



スタートを待つ宮澤崇史(サクソ・ティンコフ)スタートを待つ宮澤崇史(サクソ・ティンコフ) photo:Cor Vosエネコ・ツアー(UCIワールドツアー)第3ステージの舞台はオランダ。内陸のオーステルハウトから海に向かって平野を西進し、北海に面したブラウエルスダムにゴールする。コースの大部分は向かい風で、終盤にはブラウエルスダムを中心にした周回コースが登場する。

石畳が敷かれたコースを走るリーダージャージのアルノー・デマール(フランス、FDJ.fr)石畳が敷かれたコースを走るリーダージャージのアルノー・デマール(フランス、FDJ.fr) photo:Cor Vosこの日のキーワードは、北海から吹き付ける海風。宮澤崇史(サクソ・ティンコフ)はチームの戦略について「最後に海沿いの周回コースが80km。ここが勝負所と見て、チームとしては逃げには乗らずに周回コースで勝負することがミーティングで決まった」と説明する。

海よりも低い広大な干拓地を走る海よりも低い広大な干拓地を走る photo:Cor Vosこの風に立ち向かう真っ平らなコースで逃げたのはアレックス・ラスムッセン(デンマーク、ガーミン・シャープ)ら4名。逃げグループ逃げの常連トップスポートフラーンデレンはイェーレ・ワレース(ベルギー)を送り込んだ。

海沿いの平坦コースを走るプロトン海沿いの平坦コースを走るプロトン photo:Cor Vos逃げグループとメイン集団のタイム差は最大6分まで広がったが、ブラウエルスダムの周回コースが近づくとにわかに集団が活性化。ゴールまで70kmを残して、オメガファーマ・クイックステップが集団ペースアップを開始した。

向かい風と横風区間でペースが上がり、逃げグループを飲み込んだメイン集団は大きく2つに分裂する。しかし決定的なタイム差が開かないまま2つの集団は進行。結局ゴールまで50kmを残してメイン集団は一つの大きな塊に戻った。

集団が緩んだところで再びワレースがアタックを仕掛け、これにチームメイトのローレンス・デフリース(ベルギー、トップスポートフラーンデレン)が合流する。トップスポートフラーンデレンの2人による逃げが始まったが、スプリンターチームを相手に回すと分が悪い。デフリースが白旗を揚げ、最後まで粘ったワレースも吸収。ここからロット・ベリソルやFDJ、アルゴス・シマノ、ベルキンプロサイクリング、ガーミン・シャープによる闘いが始まった。

最も強力なトレインを組んだのはロット・ベリソル。しかしアンドレ・グライペル(ドイツ)のリードアウトを務めるユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ベリソル)が、ゴールまで2kmを残して早くも先頭に出てしまう。

すると、およそゴール1500m手前にある連続コーナーで、先頭ルーランズとメイン集団の距離が開く。ルーランズに食らいついたのはマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ランプレ・メリダ)とゼネク・スティバル(チェコ、オメガファーマ・クイックステップ)の2人。ディフェンディングチャンピオンのラース・ボーム(オランダ、ベルキンプロサイクリング)が強力な独走力を発揮し、単独で先頭3人に追いついた。

ルーランズ、リケーゼ、スティバル、ボームの4人が先行して残り1km。メイン集団は牽制も手伝ってスピードが上がりきらず、そのまま4人の逃げ切りが決まった。

先頭を引き続けたルーランズが失速すると、ボームが真っ先にスプリントを開始。これをリケーゼが追い、スティバルが続く。ボームの失速とリケーゼのスプリントに合わせ、踏み始めたスティバルが先頭へ。「風が強かったので、タイミングを待って待って、他の選手が飛び出したのを見てスリップストリームに入った。リケーゼのホイールに飛びついて、本当に最後の瞬間まで待ってからスプリントに力を込めた」と振り返るスティバルが勝利した。

スプリントでリケーゼとボームを下したゼネク・スティバル(チェコ、オメガファーマ・クイックステップ)スプリントでリケーゼとボームを下したゼネク・スティバル(チェコ、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Cor Vos

2010年と2011年にシクロクロスの世界チャンピオンに輝き、現在はロードに専念するゼネク・スティバル、27歳。ここ数年クラシックレースのスペシャリストとして頭角を現し、今年のパリ〜ルーベではファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)らと先頭争いを繰り広げた(観客との接触により6位に終わる)。

1年ぶりの勝利を飾ったゼネク・スティバル(チェコ、オメガファーマ・クイックステップ)1年ぶりの勝利を飾ったゼネク・スティバル(チェコ、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Cor Vosスティバルは5月2日に行なった右膝の手術の影響で3週間戦線を離脱。7月のツール・ド・ポローニュでレースに復帰していた。「昨年のツール・ド・ポローニュ以来の勝利なので本当に嬉しい。膝の手術後、思うようにトレーニング出来ていなかった。スケジュール通りに進まない術後の経過に嫌気が差したけど、数週間前から地元チェコで実りあるトレーニングを積んで、その後に高地トレーニングを行なったんだ。短い期間で何とかコンディションを上げることが出来た」。

リーダージャージを守ったアルノー・デマール(フランス、FDJ.fr)リーダージャージを守ったアルノー・デマール(フランス、FDJ.fr) photo:Cor Vosシクロクロスでは数多の勝利を収めているスティバルだが、ロードレースでのスプリント勝利はこれが初めて。「今までのキャリアの中でスプリント勝負をしたことがない。トレーニングでもスプリントの練習はしたことがないんだ。スプリントは僕の得意分野ではなかったけど、実際に勝利したのだから、その考えを改めるときが来たのかも知れない。ペタッキと同じ部屋で寝ているから強くなったのかもね。彼のスプリント力が僕に乗り移ったのかも(笑)」とスティバルは驚く。

リーダージャージはアルノー・デマール(フランス、FDJ.fr)が守り、ボームとスティバルがそれぞれ総合2位と総合3位に浮上。依然として総合10秒以内に15名がひしめく混戦状態が続いている。

宮澤崇史は44秒遅れの集団でフィニッシュ。「途中集団が分裂したが、1つにまとまりゴールへ。序盤から中盤、終盤へと位置取りで足を使っていたので、自分の仕事はここまで。最後はベンナーティと一緒にゴールした。結果を残せなかったのは残念だが、チームのまとまりは良いので残りのレースを良い形にして行きたい」と語っている。

選手コメントはオメガファーマ・クイックステップ公式サイトより。




エネコ・ツアー2013第3ステージ結果
1位 ゼネク・スティバル(チェコ、オメガファーマ・クイックステップ)       4h14'00"
2位 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ランプレ・メリダ)
3位 ラース・ボーム(オランダ、ベルキンプロサイクリング)
4位 ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、レディオシャック・レオパード)         +02"
5位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)
6位 マヌエル・ベレッティ(イタリア、アージェードゥーゼル)
7位 ダニーロ・ナポリターノ(イタリア、アクセントジョブス)
8位 アレクサンドル・ポルセフ(ロシア、カチューシャ)
9位 ダヴィデ・アッポローニオ(イタリア、アージェードゥーゼル)
10位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
137位 宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ)                     +44"

個人総合成績
1位 アルノー・デマール(フランス、FDJ.fr)                   12h18'42"
2位 ラース・ボーム(オランダ、ベルキンプロサイクリング)              +01"
3位 ゼネク・スティバル(チェコ、オメガファーマ・クイックステップ)         +03"
4位 マーク・レンショー(オーストラリア、ベルキンプロサイクリング)
5位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)            +04"
6位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ)               +06"
7位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)                +08"
8位 テイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシングチーム)
9位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)     +10"
10位 ジャンピエール・ドラッカー(ルクセンブルク、アクセントジョブス)
119位 宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ)                    +1'55"

ポイント賞
アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)

コンバティビティ賞
ローレンス・デフリース(ベルギー、トップスポートフラーンデレン)

チーム総合成績
FDJ.fr

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
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