ベテランさながらの落ち着きで、タイミングよくスプリントに持ち込んだマッテーオ・トレンティン(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)が先着。普段カヴェンディッシュの陰に隠れた23歳のアシストが、ツール・ド・フランス第14ステージで逃げ切りスプリントでプロ初勝利を飾った。

ツール・ド・フランス2013第14ステージ・高低図ツール・ド・フランス2013第14ステージ・高低図 image:A.S.O.サンプルセン・シュル・シウールからリヨンまで、実に7つのカテゴリー山岳が詰め込まれた191kmを走る第14ステージ。登場する山岳はいずれもカテゴリー3級か4級で、登坂距離2km前後・平均勾配4〜5%ほど。アルデンヌクラシックのようなアップダウンコースが特徴だ。

レース序盤、アタックが繰り返され、メイン集団が伸びるレース序盤、アタックが繰り返され、メイン集団が伸びる photo:A.S.O.終盤に畳み掛けるように登場する4級山岳デュシェール(登坂距離1.6km・平均勾配4.1%)と4級山岳クロワ・ルッス(登坂距離1.8km・平均勾配4.5%)を越えると、ゴールまで残り10km。本格的な山岳突入を前に、アタッカーもしくは軽量スプリンター向きのステージが用意された。

逃げグループを形成するアンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)ら逃げグループを形成するアンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)ら photo:A.S.O.レースは1時間目の平均スピードが48.1km/hをマークするというハイスピードな幕開け。逃げ切りにチャンスがあるステージだけに、アタックの応戦が1時間近くにわたって繰り広げられた。

追走するダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・メリダ)とジョニー・フーガーランド(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)追走するダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・メリダ)とジョニー・フーガーランド(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM) photo:A.S.O.42km地点でようやくティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)やアンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)、イェンス・フォイクト(ドイツ、レディオシャック・レオパード)ら18名の先行が決まる。

逃げに選手を送り込み損ねたエウスカルテルとランプレ・メリダ、ヴァカンソレイユ・DCMが追撃を試みたが、逃げグループとのタイム差は縮まらない。94km地点の補給ポイントに差し掛かる頃、追撃3チームは白旗を揚げた。

スカイプロサイクリングのコントロール下に置かれたメイン集団はペースダウン。総合17位・13分11秒差のタランスキーを含む逃げグループとのタイム差をチェックしながら、リーダーチームは落ち着いて集団を前に進める。

タイム差が3分30秒まで広がった頃、残り78km地点の3級山岳でジョニー・フーガーランド(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)とダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・メリダ)がアタック。2人は懸命に追撃したが、先頭グループに追いつけず、長時間の追走の末にメイン集団に引き戻された。

スカイプロサイクリングに逃げグループを捕まえる意志はなく、協力するチームも出て来ない。逃げ切りの可能性を高めながら、先頭グループは5分50秒のリードをもって残り30kmから始まる3連続4級山岳に差し掛かった。

メイン集団をコントロールするスカイプロサイクリングメイン集団をコントロールするスカイプロサイクリング photo:A.S.O.

4級山岳クロワ・ルッス(登坂距離1.8km・平均勾配4.5%)で飛び出したジュリアン・シモン(フランス、ソジャサン)4級山岳クロワ・ルッス(登坂距離1.8km・平均勾配4.5%)で飛び出したジュリアン・シモン(フランス、ソジャサン) photo:A.S.O.レースが動いたのは、ゴールまで15kmを残した4級山岳デュシェール。ヤン・バケランツ(ベルギー、レディオシャック・レオパード)のアタックによってセレクションがかかり、カウンターでヴァンガーデレンがペースを上げる。UCIプロチームの選手たちが牽制する隙を突いて、頂上でジュリアン・シモン(フランス、ソジャサン)が飛び出した。

4級山岳クロワ・ルッス(登坂距離1.8km・平均勾配4.5%)でシモンを追うティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)4級山岳クロワ・ルッス(登坂距離1.8km・平均勾配4.5%)でシモンを追うティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム) photo:A.S.O.大歓声を受けながら、続く4級山岳クロワ・ルッスを駆け上がったシモン。後続を24秒引き離したまま、ゴールまで10kmを残した頂上を通過する。リードを失わずに短い下りをこなしたシモンは、独走のまま大都市リヨンにやってきた。

長い最終ストレートを苦しみながら走るシモンの後ろに、アタックと牽制を繰り返す追走グループが迫る。フラムルージュ通過と同時にミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)がついに先頭シモンをキャッチ。続々と後続も追いつき、12名によるゴール勝負に持ち込まれた。

先行するアルバジーニを、トレンティンとホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)が追い上げる。「追い風に乗って、ラスト200mからスプリントした」というトレンティンが先頭でフィニッシュラインを駆け抜けた。

ゴールスプリントを制したマッテーオ・トレンティン(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)ゴールスプリントを制したマッテーオ・トレンティン(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Cor Vos

ブラマーティ監督と喜ぶマッテーオ・トレンティン(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)ブラマーティ監督と喜ぶマッテーオ・トレンティン(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Cor Vos普段カヴェンディッシュのリードアウトトレイン要員として走る23歳のトレンティンが、ツール・ド・フランスで自身も驚くプロ初勝利を飾った。トレンティンは2011年にU23イタリアチャンピオンに輝き、翌年オメガファーマ・クイックステップでプロデビューしている。今シーズンはツアー・オブ・ターキー第5ステージで2位、ジロ・デ・イタリア第5ステージで5位という成績を残している。

今大会イタリア人選手として初勝利を飾ったトレンティンは感無量の表情でインタビューに応える。「昨日はマーク(カヴェンディッシュ)をサポートするために多くのエネルギーを使った。だから極力エネルギーを使わずにゴールまで走るようブラマーティ監督と話し合ったんだ。逃げのメンバーは昨日の働きによる僕の疲労を理解してくれていたので、少しばかりローテーションに加わらずに済んだ。これがプロ初勝利であり、キャリアのスタートとして申し分ない」。オメガファーマ・クイックステップは今大会4勝目をマークした。

総合上位陣を含むメイン集団は7分17秒遅れでゴール。クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)が危なげなくマイヨジョーヌを守っている。

ステージ3位に入ったタランスキーは総合17位から総合12位にジャンプアップ。新人賞は3位のままだが、マイヨブランを着るミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)とのタイム差は8分27秒から1分10秒まで縮まった。新人賞争いは三つ巴の様相を呈している。

選手コメントはレース公式サイトより。

ツール・ド・フランス2013第14ステージ結果
1位 マッテーオ・トレンティン(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ) 4h15'11"
2位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)
3位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)
4位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
5位 エゴイツ・ガルシア(スペイン、コフィディス)
6位 ラルスイティング・バク(デンマーク、ロット・ベリソル)
7位 サイモン・ゲスク(ドイツ、アルゴス・シマノ)
8位 アルテュール・ヴィショ(フランス、FDJ.fr)
9位 パヴェル・ブラット(ロシア、カチューシャ)
10位 シリル・ゴティエ(フランス、ユーロップカー)
122位 新城幸也(日本、ユーロップカー)                    +7'17"

敢闘賞
ジュリアン・シモン(フランス、ソジャサン)

個人総合成績 マイヨジョーヌ
1位 クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)         55h22'58"
2位 バウク・モレマ(オランダ、ベルキンプロサイクリング)           +2'28"
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)         +2'45"
4位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、サクソ・ティンコフ)           +2'48"
5位 ローレンス・テンダム(オランダ、ベルキンプロサイクリング)        +3'01"
6位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)               +4'39"
7位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)+4'44"
8位 ナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター)              +5'18"
9位 ジャンクリストフ・ペロー(フランス、アージェードゥーゼル)        +5'39"
10位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)             +5'48"

ポイント賞 マイヨヴェール
1位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)       357pts
2位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)  273Pts
3位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)              217pts

山岳賞 マイヨブランアポワルージュ
1位 ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)                50pts
2位 クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング             33pts
3位 リッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング)         28pts

新人賞 マイヨブラン
1位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)55h27'42"  
2位 ナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター)                +34"
3位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)         +1'10"

チーム総合成績
1位 サクソ・ティンコフ                          165h29'45"
2位 モビスター                                +2'26"
3位 ベルキンプロサイクリング                         +2'32"

text:Kei Tsuji
photo:A.S.O., Cor Vos, Makoto Ayano

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