大波乱となった第13ステージを制したのは、ツール通算25勝目となるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)。バルベルデ(スペイン、モビスター)が総合で大きく順位を落とし、コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)、モレマ(オランダ、ベルキンプロサイクリング)が1分以上のタイム差を詰めた。

ステージ優勝のマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)

逃げ集団のゴールスプリントでサガンを下したカヴェンディッシュ(オメガファーマ・クイックステップ)逃げ集団のゴールスプリントでサガンを下したカヴェンディッシュ(オメガファーマ・クイックステップ) (c)Makoto.AYANOエシェロンの隊列ができたときは、まるで氷のなかを落ちていく感覚だった。ほんの5秒のあいだに最適な位置取りをして自分を守らなければ、そこで終わっていた——そこでおしまいだった。形成された集団が先に進んで、ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド)がちょうど乗り遅れてしまった。

ステージ優勝、敢闘賞を獲得したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)ステージ優勝、敢闘賞を獲得したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ) photo:A.S.O.彼との差はほんのわずかだった。いつものゴールスプリント以上のワット数でスプリントして、ようやく前の集団に追いつけたくらいだった。ギリギリで間に合ってよかった。ゴールではペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)との勝負に備える必要があった。

ぼくたちのチームは全員で3人[訳注:ニキ・テルプストラ(オランダ)とシルヴァン・シャヴァネル(フランス)]で、彼のチームは全員で2人[訳注:マチェイ・ボドナール(ポーランド)]だった。だから、ぼくたちが終盤にアタックすると、彼のリードアウト役の選手がぼくたちを追わざるを得なくなる。

サインに応じるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)サインに応じるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ) photo:A.S.O.ニキが最後の1kmでアタックすると、ボドナールとサガンは対応して追走しなくてはならない。ぼくは単にサガンの後ろについただけだった。サガンは集団前方から飛び出したのが少し早かったので、ゴール前で向かい風のなかを進まなければならなかった。サガンは、ぼくが近くにいることがわかっていた。サガンは次のステージのために脚を温存できたので、彼にとっても良かったと思う。

表彰台に立ったのは、ぼくだが、今日はオメガファーマ・クイックステップのチーム全員が立つべきだ。彼らは全員が信じられない働きをした。60km地点から心臓が破けるほどに、死力を尽くして走ってくれた。

とても難しいステージだった。ナーバスなステージだったけど、最終的には……勝つことができて興奮している。勝てて満足している。この数日は厄介な問題が続いていたので、また表彰台に立ててうれしい。今日の勝ち方は最初から計画したものではなかった。ぼくたちは単純に風に対して最適な位置取りをしようとして、少し強めに走っただけだった。そうしたことで、プロトンを疲弊させてしまい、最終的に分断させることになった。そういうレースになってしまった。

今日のゴールは、集団スプリントになっていたら、ぼく向けだった。でも、実際には小集団で、最終的にはぼくとサガンの1対1のスプリントになった。彼に勝てて満足している。チームメイトたちは全員がすべてを与えてくれる。昨日もあらゆる手段を尽くしてくれたが、ゴールで彼らをがっかりさせてしまった。今日、彼らは序盤からさらに尽くしてくれた。だから、勝つことができてうれしい。本当に良かった。


総合1位のクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)

マイヨジョーヌを守ったクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)マイヨジョーヌを守ったクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) photo:A.S.O.コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)の動きに確実について行くつもりだったけど、位置取りが少し後ろ過ぎた。ちょうどカヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)の後ろについたのだけど、すぐに彼はスプリントを始めてしまった。彼が追いつける最後の選手だったのだと思う。

コンタドール集団にタイム差を付けられてゴールするクリス・フルーム(スカイプロサイクリング)がゴールコンタドール集団にタイム差を付けられてゴールするクリス・フルーム(スカイプロサイクリング)がゴール (c)Makoto.AYANOこのツール・ド・フランスには100%の可能性が残されており、まだまだレースを行う余地があることを改めて思い知った。ぼくにはまだ充分な余裕があることがわかっていた——コンタドールと4分差はあった。それで充分だった。ぼくがしっかりとタイム差を稼げば、彼らはそれを大きく詰めることはできないからだ。

今日は本当にタフな1日だった。どの選手もここまでハードになるとは思っていなかっただろう。コースプロファイルでは、平坦コースで集団スプリントになると予想されていた。でも、あの横風のおかげで、今日のレースは大きな波乱に満ちたものになった。

昨日の落車で肩を骨折して、エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、スカイプロサイクリング)がツールを去ったことが、今日は本当に痛かった。彼が今日いてくれたら、ぼくたちをしっかりアシストして、ぼくがレースの前方に位置取りできるようにしてくれたはずだ。

現在、ぼくたちに課せられた試練は、このマイヨ・ジョーヌをぼくと6人の選手でパリまで守っていくことだ。だから、これからのレースはかなり刺激的なものになるだろうし、ぼくたちはその準備はできている。しっかりと守りぬくつもりだ。終盤にタイム差を1分ほど失ったのは、かなり受け入れがたいことだ。これまでずっとがんばってアドバンテージを獲得してきた。それをいくらかでも失ってしまったのだから。


新人賞・総合7位のミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)

新人賞ジャージをキープしたミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)新人賞ジャージをキープしたミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ) photo:A.S.O.たしかに退屈なステージではなかった。横風のおかげで、55km地点を過ぎたあたりからプロトンは少しナーバスになっていた。それで、チームとしてスピードをアップして、ゴールを目指そうとした。小集団でのスプリントやあまりナーバスじゃない集団での勝負に持ち込めれば、ステージ優勝はより確実になるからだ。

集団が3つに分断されてからは、誰も前方に出ようとしなかった——もうメイン集団もナーバスではなくなっていた。マルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ)が脱落し、それからアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が脱落した。そして総合成績に向けてタイム差を縮めたいチームがいて、彼らがしっかり働いた。そのおかげでカヴのスプリントが楽になった。

新人賞ジャージに関してのプレッシャーはない。新人賞をパリまでずっと着ていけたら素晴らしいとは思う。でも、モンヴァントゥーはかなり険しい登りだから、このジャージをクインターナ(コロンビア、モビスター)から守るのは難しいと思う。ともかく、チームとしては他のステージでの勝利を目指して期待している。カヴが数センチ差で負けた日の翌日に、また勝つ場面を見ることができてうれしい。彼は本当にモチベーションが高く、チームにもたくさんの影響を及ぼしてくれる。本当に良い気分にさせてくれるから、今はチームの誰もが笑顔になっている。


ポイント賞・ステージ2位のペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)

ポイントを重ねることに成功したペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)ポイントを重ねることに成功したペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング) photo:A.S.O.先頭集団に残ることができて良かった。でも、今日のステージのことはもう思い出したくもない。今日はずっとストレスを受け続けた。なんとか前のほうを走れたのは幸運だった。不運なのは2位になったことだ。このミスは、ぼくの責任だ。

マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)の後ろにつくかどうかは、ぼくに任されていた。そして、彼を利用できなかった! 今日のスプリントのビデオは絶対に見たくない。ぼくはまだ経験が浅い。このようなレースで勝つには、経験を積むのが得策だと思う。


山岳賞のピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)

山岳賞のピエール・ローラン(フランス、ユーロップカー)山岳賞のピエール・ローラン(フランス、ユーロップカー) photo:A.S.O.すごいステージだった。まさにレースをしていた! 山岳ポイントを取りに行った後でも、まだチームメイトたちはトップ集団に残っていた。だけど、パンクで順位を失うことになった。ジェローム・キュザン(フランス)のおかげで、ぼくたちは良い位置取りができていただけに悔しい。

このようなステージでは集団の前のほうにいることが重要だ。ぼくは総合成績を守ることに興味はないから、今日の影響は少ない。でも、後ろの集団に吸収されるのは、あまり気分の良いものじゃない。


総合3位に浮上したアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)

マイヨジョーヌを引き離すことに成功したサクソ・ティンコフマイヨジョーヌを引き離すことに成功したサクソ・ティンコフ photo:A.S.O.今日のステージには満足している。今日のレース前に総合1位との差を1分10秒詰めることになると聞いても、たぶん信じないと思う。今日はチームがひたすらがんばってくれた。最初は現状維持で動かなかった。アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)は不幸な事故だったから、リードを広げないことにした。

コンタドールのもとには大勢の報道陣が詰めかけて黒山の人だかりコンタドールのもとには大勢の報道陣が詰めかけて黒山の人だかり (c)Makoto.AYANOでも、チームとしての力もあったし、チームメイトの何人かが不利な状況に追い込まれていたので、最終的に前に進むことに決めた。最初にアタックしたダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、サクソ・ティンコフ)はまるでオートバイのようなスピードで数kmを牽いてくれたので、追走集団を千切ることができた。

最初はわずか10秒程度の差しかなかったが、サクソ・ティンコフのチーム・スピリッツを見せてくれたチームメイト全員に感謝したい。しかし、3分57秒差も2分45秒差でも、総合成績では大きく変動しない。まだアルプスの山岳ステージでアタックせざるを得ない状況だ。ツールでの勝利は依然として困難な状況だけど、まだ終わってはいない。そして、あらゆることが起きる可能性がある。

まずは、明日を新たな日として迎えるために休みたい。このチームと、そしてぼくたちが実力を示せたことがうれしい。今日はずっと素晴らしかった。ぼくたち全員が心のなかに同じ目的を持っていることを示せたし、勝利のために戦えた。サクソ・ティンコフにとっては確実に素晴らしい日になったはずだ。


総合2位から総合14位へ大きく順位を下げたアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)

アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)の致命的となったパンクアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)の致命的となったパンク photo:A.S.O.単純に不運な日だったといえる。それ以外はない。ぼくたちは集団前方で走っていた。今年のツールでずっとやってきたように注意もしていたし、余裕をもって良い位置取りで走っていた。でも、不運なことに、落車した誰かが後ろから追突してきて、ぼくの自転車の後輪が壊れてしまった。それが決定的な瞬間だった。

アレハンドロ・バルベルデ(モビスター)に今日の失敗を問う報道陣アレハンドロ・バルベルデ(モビスター)に今日の失敗を問う報道陣 (c)Makoto.AYANOあれは避けることはできなかった。全チームが止まって、ぼくが復帰するのを待ってくれていて、ぼくたちもギャップを埋めようとがんばった。でも、ベルキンやユーロップカーといったチームが状況を困難にした。自転車レースだから、勝つこともあれば負けることもある。チームとしては諦めずに戦っていたし、ずっと冷静だった。

今年のツールもまだまだ道のりは長い。今後のレース展開が大きく変わる可能性もある。今後のレースに望みを託すかということについて。今日のステージの前の段階でも総合優勝争いは難しかった。今日で、さらに難しくなった。でも、チームとしてはナイロ・クインターナ(コロンビア)が総合成績の上位に食い込みそうだ。

まだ1週間は残っている。ぼくたちは総合優勝を争うことはできないが、集団に対して大打撃を与えることはできる。この結果として、ぼくたちがどういうプランを展開するかを見ていてほしい。ナイロ・クインターナはチーム内でもっとも総合上位にいる選手だ。チームとして決定すれば、ぼくたちは彼をアシストすることになる。

だけど、ぼくたちは誰かを妨害して、最終日のポディウムに影響を与えるというチーム戦略をとることもありうる。今後は山岳ステージが多く控えていて、さまざまなことが起こりうる。ぼくがギャップを詰められないようにしてくれたチームのうちのいくつかは、レース展開が難しくなるはずだ。今日はチームメイトたちが100%の力を出してくれた——チームメイト全員にとって、今年のツールのなかで最もハードな日だった。


総合2位のバウク・モレマ(オランダ、ベルキンプロサイクリング)

アタックの成功を喜ぶバウク・モレマ(オランダ、ベルキン)アタックの成功を喜ぶバウク・モレマ(オランダ、ベルキン) (c)Makoto.AYANOチームとして素晴らしい成果を残せた。ローレンス・テンダム(オランダ)とぼくは最終的に第1グループに残れた。チームメイトのアシストはなかったけど、無理だったと思う。でも、チームメイトたちは素晴らしい仕事をしてくれた。

彼らのおかげで、ぼくたちはずっと集団の前方にいることができて、それが功を奏した。バルベルデ(スペイン、モビスター)がパンクしたときは、ぼくたちはすでに前のほうにいた。その時点で、エシェロンを組むことにしていた。

しばらくしてから、ぼくたちはバルベルデが不運に悩まされていることを聞いた。ぼくたちや他の総合勢もフルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)とのタイム差を縮めることができた。これは良いボーナスだった。ぼくの調子はずっと良い。これからも上がり調子だと思う。


総合5位のローレンス・テンダム(オランダ、ベルキンプロサイクリング)

総合順位を上げたバウク・モレマとローレンス・テンダム(オランダ、ベルキンプロサイクリング)総合順位を上げたバウク・モレマとローレンス・テンダム(オランダ、ベルキンプロサイクリング) photo:Cor.Vosサクソ・ティンコフが最後になにかやりそうだと感じていた。彼らは最後まで脚を温存していたからだ。彼らがアタックしてすぐにバウク・モレマ(オランダ)に大声で呼びかけて合流した。

初めの1kmは非常にハードだった。でも、メイン集団が後ろに千切れていったので、ぼくたちの位置取りが良かったことがわかった。フルームに対してタイム差を詰めることができたし、総合成績でも上位に入れたことを素晴らしく思う。しっかり準備していたことも功を奏したのだと思う。


※ソースは現地取材、記者会見、チーム公式ウェブサイト、選手個人のウェブサイトおよびTwitter、Facebookなど。

translation & text: Seiya.YAMASAKI

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