第100回ツール・ド・フランスの合い言葉は「ル・ツール100:100%フレンチ」。史上初めて地中海に浮かぶコルシカ島をスタートし、フランスから一歩も外に出ることなく3週間にわたって走り続ける。6月29日(土)の開幕を前に、世界最高峰のステージレースの基礎をチェックしておこう。

開催100回目を記念する2013年大会

ツール・ド・フランス2013コース全体図ツール・ド・フランス2013コース全体図 image:A.S.O.ツール・ド・フランスが産声をあげたのは今から110年前の1903年。スポーツ新聞ロト紙の発行部数アップを狙い、アンリ・デグランジュの発案で創設されたのが始まりだ。以降、大戦による中断期間を経ながら成長を続け、今では夏季五輪とサッカーワールドカップと並ぶ世界三大スポーツイベントに数えられるまでになった。

開催100回目(※100年目ではない)を祝う記念すべき2013年大会はコルシカ島をスタート。記念大会だけに、レース主催者A.S.O.は気合いを込めてコースをデザインした。フランスから一歩も出ないツールは珍しく、モンサンミッシェルやヴェルサイユ宮殿など、フランスが誇る合計9つのユネスコ世界遺産がコースに登場する。

初日はプロローグではなく平坦ステージ。コルシカ島で3ステージをこなした後すぐフランス本土に渡り、4日目にチームタイムトライアルを実施。そこからピレネー山脈と個人タイムトライアルを経てアルプス山脈に向かう。2週目の最後にある「魔の山」モンヴァントゥーの頂上ゴールと、3週目の3連続アルプス山岳ステージでマイヨジョーヌ争いは決着。史上初めて2度登る名物ラルプ・デュエズのステージと、ツール初登場となるアヌシー・セムノス峠(平均勾配8.5%・登坂距離10.7km)の頂上で、第100代チャンピオンが決まる。

最終日の終着地はお決まりのパリ・シャンゼリゼ周回コースだが、2013年はシャンゼリゼ大通りでUターンするのではなく、その先にある凱旋門の環状道路をグルリと回る。レース時間は例年よりもかなり遅めの進行でゴール時間は夜遅く。ライトアップされたナイトレースになる。

総走行距離は3403kmで、内訳は平坦ステージが7、丘陵ステージが5、山岳ステージが6(そのうち頂上ゴールは4)、個人タイムトライアルが2、チームタイムトライアルが1。タイムトライアルよりも山岳に比重が置かれている印象だ。

第11ステージ・個人タイムトライアルが行なわれるモンサンミッシェル第11ステージ・個人タイムトライアルが行なわれるモンサンミッシェル photo:Makoto Ayano第18ステージ・2度登場するラルプ・デュエズ第18ステージ・2度登場するラルプ・デュエズ photo:Makoto Ayano

ツール・ド・フランス2013ステージリスト
6月29日(土) 第1ステージ ポルトヴェッキオ~バスティア 213km
6月30日(日) 第2ステージ バスティア~アジャクシオ 156km
7月1日(月) 第3ステージ アジャクシオ~カルヴィ 145km
7月2日(火) 第4ステージ ニース〜ニース 25km(チームTT)
7月3日(水) 第5ステージ カニュ・シュル・メール~マルセイユ 228km
7月4日(木) 第6ステージ エクサン・プロバンス~モンペリエ 176km
7月5日(金) 第7ステージ モンペリエ~アルビ 205km
7月6日(土) 第8ステージ カストル~アクス・トロワ・ドメーヌ 195km
7月7日(日) 第9ステージ サン・ジロン~バニェール・ド・ビゴール 168km
7月8日(月) 休息日
7月9日(火) 第10ステージ サン・ジルダ・デボワ~サン・マロ 197km
7月10日(水) 第11ステージ アブランシュ~モンサン・ミシェル(個人TT) 33km
7月11日(木) 第12ステージ フォルジェール~トゥール 218km
7月12日(金) 第13ステージ トゥール~サンタマン・モンロン 173km
7月13日(土) 第14ステージ サンプルセン・シュル・シウール~リヨン 191km
7月14日(日) 第15ステージ ジボール~モンヴァントゥー 242km
7月15日(月) 休息日
7月16日(火) 第16ステージ ベゾン・ラ・ロメーヌ~ギャップ 168km
7月17日(水) 第17ステージ アンブリュン~ショルジュ(個人TT) 32km
7月18日(木) 第18ステージ ギャップ~ラルプ・デュエズ 172km
7月19日(金) 第19ステージ ブール・ドワザン~ルグラン・ボルナン 204km
7月20日(土) 第20ステージ アヌシー~アヌシー・セムノス 125km
7月21日(日) 第21ステージ ヴェルサイユ~パリ・シャンゼリゼ 133km

フルームvsコンタドール?新城幸也の走りにも注目

クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) photo:Cor Vos第100回ツール・ド・フランスに出場するのは19のUCIプロチームと、ワイルドカードを獲得したUCIプロコンチネンタルチーム3チーム(ユーロップカー、コフィディス、ソジャサン)。それぞれ9名ずつ、合計198名がコルシカ島のスタートラインに並ぶ。

アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ) photo:Cor Vos今年はディフェンディングチャンピオンのブラドレー・ウィギンズ(イギリス、スカイプロサイクリング)が欠場。代わりにエースを務める昨年総合2位のクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)と、2年ぶりに出場する過去3度の優勝者(そのうち1勝は剥奪)アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)を中心にマイヨジョーヌ争いは繰り広げられるだろう。

直前のイギリス選手権で優勝したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)や、昨年初出場ながらマイヨヴェールを獲得したペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)らが注目のスプリンターとして挙げられる。その他、注目の選手は脚質別に別ページでお伝えします。

そして全日本選手権ロードレースを制したばかりの新城幸也(ユーロップカー)の4度目のツール出場が決定。「日本チャンピオンジャージでのポディウムを狙う」と宣言するユキヤの走りに注目だ。

ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング) photo:Riccardo Scanferla全日本選手権を制した新城幸也(ユーロップカー)全日本選手権を制した新城幸也(ユーロップカー) photo:Hideaki TAKAGI


黄色、緑色、白色赤玉、白色…。栄光の4賞ジャージ

左からマイヨヴェール、マイヨジョーヌ、マイヨアポワ、マイヨブラン左からマイヨヴェール、マイヨジョーヌ、マイヨアポワ、マイヨブラン photo:Cor Vos毎日のステージを先頭でゴールした選手が「ステージ優勝」として表彰される他、ツール・ド・フランスには4つの特別賞ジャージが存在する。

フィニッシュ時間の積算が最も少ない総合リーダーに与えられる「マイヨジョーヌ」だけでなく、緑の「マイヨヴェール(ポイント賞)」、白地に赤玉の「マイヨブラン・アポワルージュ(山岳賞)」、真っ白な「マイヨブラン(ヤングライダー賞)」が登場。

その他にも、勇敢な走りを見せた選手に与えられる「敢闘賞」や、各ステージのチーム上位3名のタイムを合計した「チーム総合成績」など、数多くの賞が存在。それらの戦略が複雑に絡み合うのがステージレースの魅力だ。なお、2013年もボーナスタイムの設定は無い。

マイヨジョーヌ(個人総合時間賞)
大会のイメージカラーであるイエロージャージこそが総合リーダーの証。ロードレース界においてはアルカンシェル(世界チャンピオンジャージ)に勝るとも劣らない格式の高さを誇る。各ステージのフィニッシュ時間を合計し、その累積時間が最も少ない選手が、翌日マイヨジョーヌを着て走る。最終日、パリ・シャンゼリゼの表彰台でマイヨジョーヌを受け取った選手が総合優勝者だ。
マイヨヴェール(ポイント賞)
緑のマイヨヴェールは最強スプリンターの証。中間スプリントポイントとフィニッシュ地点で与えられるポイントの合計で争われる。ツールではステージを「平坦」「中級山岳」「上級山岳」「個人TT」の4種類に分類し、それぞれ異なるポイント配分を設定している。


マイヨブランアポワルージュ(山岳賞)
ツール・ド・フランス山岳最強の証、それがマイヨブラン・ア・ポワ・ルージュ(略してマイヨアポワ)。他の3賞ジャージが単色であるのに対して、このマイヨアポワはホワイトジャージに赤玉を配した奇抜なデザイン。プロトンの中でも判別は容易だ。
マイヨブラン(新人賞)
1975年ツール・ド・フランスで初めて導入されたマイヨブランは、将来のマイヨジョーヌ候補がしのぎを削るもう一つの総合争い。日本では「新人賞」の名前で通っているが、忠実に訳すならば「若手賞」。対象となるのは、誕生日が1988年1月1日以降の選手、つまり25歳未満の選手だ。



text:Kei Tsuji