ゴール6km手前の3級山岳でピュアスプリンターが脱落し、ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)有利な展開に持ち込まれていく。ツール・ド・スイス(UCIワールドツアー)第8ステージは、「ツールに向けて調子は上向き」と自信を見せるサガンの独壇場だった。

1級山岳ジュリエル峠を上るプロトン1級山岳ジュリエル峠を上るプロトン photo:Riccardo Scanferlaツール・ド・スイスも残すところ2ステージ。総合争いが決する最終日の山岳個人タイムトライアルを前に、第8ステージがスプリンター向きの平坦コースで行なわれた。

リーダージャージを着て走るマティアス・フランク(スイス、BMCレーシングチーム)リーダージャージを着て走るマティアス・フランク(スイス、BMCレーシングチーム) photo:Riccardo Scanferla44km地点で標高2284mの1級山岳ジュリエル峠を越えると、あとはゴール地点バートラガツに向けて下り&平坦路。ゴールの6km手前に登場する3級山岳(登坂距離2.8km・平均勾配7.3%)がレースにスパイスを与える。

前日の第7ステージでティボー・ピノ(フランス、FDJ)に山岳賞トップの座を奪われたロベルト・ヴレセル(スロベニア、エウスカルテル)がこの日の逃げに乗る。今年エウスカルテルに加入したスロベニア人のヴレセルは、狙い通り1級山岳ジュリエル峠を先頭通過して12ポイントを獲得。山岳賞トップに返り咲いた。

ヴレセルと共に逃げたのは、マヌエーレ・モーリ(イタリア、ランプレ・メリダ)、マキシム・ブエ(フランス、アージェードゥーゼル)、レト・ホルシュタイン(スイス、IAMサイクリング)。しかし4名は決定的なリードを築けず、オリカ・グリーンエッジを中心に組織された追撃によって、終盤の3級山岳を前に吸収された。

3級山岳でデーヴィッド・ミラー(イギリス、ガーミン・シャープ)らが積極的にペースを作ると、メイン集団は30名強に縮小。多くのスプリンターがここで脱落してしまう。テクニカルな下りと短い平坦区間を経て、ゴールスプリントに持ち込まれた。

スイス東部の美しい風景の中を走るスイス東部の美しい風景の中を走る photo:Riccardo Scanferla
逃げグループの中で最後まで抵抗したレト・ホルシュタイン(スイス、IAMサイクリング)逃げグループの中で最後まで抵抗したレト・ホルシュタイン(スイス、IAMサイクリング) photo:Riccardo Scanferlaメイン集団を牽引するオリカ・グリーンエッジメイン集団を牽引するオリカ・グリーンエッジ photo:Riccardo Scanferla

3級山岳でメイン集団のペースを上げるデーヴィッド・ミラー(イギリス、ガーミン・シャープ)3級山岳でメイン集団のペースを上げるデーヴィッド・ミラー(イギリス、ガーミン・シャープ) photo:Riccardo Scanferlaモレーノ・モゼール(イタリア)にアシストされたサガンと、リーダージャージのマティアス・フランク(スイス)にアシストされたフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)らが好ポジションをキープしてラスト200m。

サガンのために走るモレーノ・モゼール(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)サガンのために走るモレーノ・モゼール(イタリア、キャノンデールプロサイクリング) photo:Riccardo Scanferlaダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、サクソ・ティンコフ)のスプリントを合図に、全員腰を上げてペダルを踏み始める。先行するベンナーティを追い抜くことが出来たのはサガンのみ。ジルベールらは届かず、サガンが今大会2勝目をマークした。サガンはポイント賞のリードを広げることにも成功している。

「まず最初にチームメイトたちに感謝しないといけない。素晴らしい走りでこの勝利をお膳立てしてくれた。今日は絶好のチャンスだったんだ。ゴール手前の3級山岳で集団を小さくして、ピュアスプリンターを排除出来ると考えていた」。サガンは作戦通りの勝利を喜ぶ。

サガンにとって、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)と並ぶ世界最多のシーズン12勝目(サガン&カヴェンディッシュ:12勝、キッテル:11勝、フルーム&グライペル:9勝)。

「ツール・ド・フランスに向けて、このツール・ド・スイスで着々と準備をこなせている。ツールの前に、国内選手権でも良い走りをしたい。調子は上向きだ」。ツールでは2年連続マイヨヴェール獲得に期待がかかる。

ステージ2勝目を飾ったペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)ステージ2勝目を飾ったペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング) photo:Riccardo Scanferla

終盤のパンクで27秒失い、総合8位から10位にダウンしたキャメロン・マイヤー(オーストラリア、ガーミン・シャープ)を除き、総合成績に変動は無し。フランクがルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター)に対して13秒、ロマン・クロイツィゲル(チェコ、サクソ・ティンコフ)に対して23秒のリードで山岳個人タイムトライアルに挑む。

選手コメントはチームプレスリリースより。

ツール・ド・スイス2013第8ステージ結果
1位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)      4h33'26"
2位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、サクソ・ティンコフ)
3位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)
4位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)
5位 クリストフ・リブロン(フランス、アージェードゥーゼル)
6位 マルティン・エルミガー(スイス、IAMサイクリング)
7位 ペーター・ベリトス(スロバキア、オメガファーマ・クイックステップ)
8位 ジュリアン・シモン(フランス、ソジャサン)
9位 マキシム・モンフォール(ベルギー、レディオシャック・レオパード)
10位 サイモン・ゲスク(ドイツ、スキル・シマノ)

個人総合成績
1位 マティアス・フランク(スイス、BMCレーシングチーム)          30h16'02"
2位 ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター)                    +13"
3位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、サクソ・ティンコフ)             +23"
4位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ)                       +44"
5位 バウク・モレマ(オランダ、ブランコプロサイクリング)             +46"
6位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)      +1'17"
7位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)          +1'23"
8位 タネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ)                 +1'43"
9位 サイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ)              +1'50"
10位 キャメロン・マイヤー(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)      +2'09"

ポイント賞
ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)

山岳賞
ロベルト・ヴレセル(スロベニア、エウスカルテル)

チーム総合成績
アスタナ

text:Kei Tsuji
photo:Riccardo Scanferla