UCIジュニアネイションズカップのトロフェオ・カールスバーグが5月30日から6月2日までの4日間、TTを含む4つのステージで開催され、今年は世界のトップナショナルチーム19ヶ国114名が参加した。レースに帯同した柿木孝之さん(JCFジュニア強化育成部会)のレポートを紹介する。

スタート前にチーム紹介を受ける日本チーム 左から横山、岡、山本、黒枝、橋詰、松本スタート前にチーム紹介を受ける日本チーム 左から横山、岡、山本、黒枝、橋詰、松本 photo:柿木孝之今回の日本ナショナルチームのメンバーは4月のTour of Istriaに参加した岡篤志(キャノンデール・チャンピオンシステム)、横山航太(篠ノ井高校)、橋詰丈(昭和第一学園高校)、山本大喜(榛生昇陽高校)、黒枝咲哉(日出暘谷高校)の5名に新たに松本祐典(北桑田高校)が加わった。

岡、横山は昨年に続き2度目の参加となる。昨年のこの大会でジュニア1年目ながら良い走りをみせたこの2名を中心に、スプリントの際には4月のクロアチアでは落車もあり脚をみせられなかった黒枝が、登りでは5月の選考合宿で圧倒的な登坂力をみせた橋詰が世界のトップジュニアを相手にどこまで走れるか期待された。

チームとしてはステージ6位以内、個人総合成績20位以内の選手が獲得できるネイションズポイントを1ポイントでも多く獲ることを目標とした。個人総合成績で20位までに入るためにはTTで上位に入らなければ厳しいが、現実的には今回のメンバーでは難しく、個人総合20位以内を考えた場合はTTの前のステージまでに20名以内の先頭集団に入ってタイムを稼ぐ必要がある。第1、第2ステージともにそのチャンスのあるコースであり、TT前にこの2つのステージでアドバンテージを稼ぐチャンスがあれば積極的に攻撃していくことを確認した。


第1ステージ
第1ステージ 集団内で登りを走る黒枝第1ステージ 集団内で登りを走る黒枝 photo:柿木孝之第1ステージは1周約28kmの周回コースを10kmのニュートラル区間を含めて4周する100kmのコース。1周回に2kmの登りと最大勾配12%ほどの勾配のある1.5kmの登りがあり、ゴール前は4%から6%ほどの登りが600m続くコース設定。最後の厳しい登りからゴールまでは10kmあり、登りで遅れた選手も直線の長く見通しの良い平坦区間で追いつく可能性が高く、大集団ではなくとも先頭グループは40名から50名での集団スプリントとなることが想定された。ただ最終周の登りで麓から強力なメンバーが動いた場合はそのまま小集団が逃げ切る可能性もある。

ニュートラルが終わった後すぐに始まる1回目の山岳ポイント手前で橋詰が数名で抜け出し、山岳ポイントを2位通過する。しかしその後の下り、平坦では集団は速く逃げは続かない。1周目の平坦で山本が落車に巻きこまれ集団から遅れてしまう。2周目に入ってすぐの登りでは再び橋詰が動きをみせるが、その直後に集団前方で起こった落車に巻き込まれガードレールに突っ込み大幅に遅れてしまう。

2周目の厳しい登りの後の平坦区間で9名の強力な逃げグループに岡が入る。10km以上逃げは続くが、この日は集団ゴールにしたいチームが多くラスト1周を前に吸収される。3周目のゴール地点通過をゴールと勘違いした黒枝、松本が同じく他の国の間違えた選手らと一緒にスプリントをして脚を使ってしまう。4周目の登りで出国直前に体調不良に陥った横山が遅れてしまい、最後は90名近い集団でのゴール勝負になる。ラストの登りスプリントで進路をふさがれた岡はブレーキをかけざるを得ず31位でゴール。1周前に脚を使ってしまった黒枝、松本は集団後方でゴールする。4月のIstoriaの最終ステージのゴールスプリントで圧勝したHalvorsen Kristofferがこの日も集団から頭一つ抜け出す形で優勝を決めた。

岡が中盤に強豪国との逃げに入り総合上位に入るチャンスは作ったが、うまく回らなかった。この日は小さな落車が頻発して日本選手も2名巻き込まれて遅れ、体調不良の選手もおり、さらに大周回コースにも関わらず周回数を間違える選手がでるなど、チームとしては良い形でステージを終えることが出来なかった。


第1ステージ
1位 Halvorsen Kristoffer(ノルウェー)3時間16分41秒
2位 Lawless Christopher (イギリス) 
3位 Burton Gemain(イギリス)
31位 岡篤志(キャノンデール・チャンピオンシステム)
59位 松本祐典(北桑田高校)
74位 黒枝咲哉(日出暘谷高校)
101位 横山航太(篠ノ井高校)8分17秒差
103位 橋詰丈(昭和第一学園高校)14分1秒差
105位 山本大喜(榛生昇陽高校)14分6秒差



第2ステージ
第2ステージ山岳ポイント200m手前で争う橋詰 2位通過する第2ステージ山岳ポイント200m手前で争う橋詰 2位通過する photo:柿木孝之第2ステージは1周30kmのコースをおよそ3周半する100kmのレースで、最大勾配15%以上の登りを含む1kmの登りと1.5kmほどの緩い登りでの動きがレースを左右する。最終周の勾配のある登りからゴールまでは8km弱しかなく、力がある選手がここで動くと集団は大きく分断されることが予想された。

第2ステージ 集団内で激坂を登る松本第2ステージ 集団内で激坂を登る松本 photo:柿木孝之第1ステージで落車により大幅に遅れた橋詰には第1ステージ後に話をして、山岳賞争いに参加することで得意な登りで海外勢に比べてどれだけ走れるか試してみることにした。スプリント力に欠ける橋詰にとっては、彼の脚を登りで試すと同時に、山岳ポイントを狙った逃げに乗ることで、そのまま勝ち逃げに乗れる可能性もある。区間6位以内のネイションズポイント獲得のチャンスにもなると判断した。

第2ステージレース後の日本チーム第2ステージレース後の日本チーム photo:柿木孝之この日は冷たい雨の中のスタートのため選手は冬用のクリームを脚に塗っていく。岡が1周目の下りでの落車に巻き込まれジャージを真っ黒にしながらも1周近くかけて何とか集団に追いつくことが出来た。岡が落車したこの区間では毎周落車が発生しており、この日の危険ポイントになった。

第2ステージ終了後 雨で汚れた自転車を洗車する山脇メカニック(チクロイプシロン)。今回はレース中のホイール破損が続き、予備機材を多くは持ち込めないチームにとって厳しい状況であったが、限られた道具の中で深夜まで完璧に対応してくれた第2ステージ終了後 雨で汚れた自転車を洗車する山脇メカニック(チクロイプシロン)。今回はレース中のホイール破損が続き、予備機材を多くは持ち込めないチームにとって厳しい状況であったが、限られた道具の中で深夜まで完璧に対応してくれた photo:柿木孝之レースでは最初の山岳ポイントを橋詰が5名で抜け出し2位通過し、得意の登りで前に前に動いていく。山本も何度も平坦区間で逃げに入る動きを見せる。昨日のステージ後に体調を崩していた黒枝は脚の状態を確かめるために2度のスプリントポイントでスプリントを試して3位、1位通過する。松本、横山も集団内の良い位置をキープして周回を重ねている。ラスト周回の登りで橋詰がデンマークの選手に路肩にはじかれ、ぬかるみにはまりリカバリーできず遅れてしまうが、他の日本選手はメイン集団に残る。

例年は平坦区間で逃げ集団が出来たあとに、勾配のある登りで強豪選手の追撃グループが前に合流して出来上がった先頭グループがゴールまでいくことが多くみられたが、今年はイギリス、ノルウェーなどスプリント勝負したい国が多かった。また雨で路面が滑りやすいこともありどの国の選手も落車を避けたい共通認識の下、コーナーでは大きく減速して安全走行だったこともあり、集団は大きく分かれることなく進む。最後は80名での集団スプリントになり黒枝が12位でゴール。ラスト1.5kmは道幅の広い平坦の直線であったが、どのチームも列車を作れずに大混戦でのスプリントとなった。

冷たい雨の中のレースであったが、昨日のレース後に脱水症状で晩御飯をまともに食べられなかった黒枝、松本もこの日は体調も戻り、第1ステージで苦しんだ横山も集団前で動けるようになりレース後に選手らに笑顔が戻った。タイムトライアルを前にタイムを稼ぐことが出来ず、またチーム最大の目標であるネイションズポイント獲得はならなかったが、どの選手もレースで動ける感触を掴めたようで、レース後のチームの雰囲気はよく、次のステージに繋がるレースとなった。


第2ステージ
1位 Lawless Christopher(イギリス)2時間23分01秒
2位 Looij Andre (オランダ) 
3位 Touze Damien(フランス)
12位 黒枝咲哉(日出暘谷高校)
22位 横山航太(篠ノ井高校)
35位 岡篤志(キャノンデール・チャンピオンシステム)
50位 松本祐典(北桑田高校)
63位 山本大喜(榛生昇陽高校)
89位 橋詰丈(昭和第一学園高校)7分26秒差



第3-1ステージ
TTスタート台に立つ山本大喜TTスタート台に立つ山本大喜 photo:柿木孝之3-1 ステージの個人タイムトライアルはスタートからすぐに5%ほどの3km超の登りと後半に700mほどの勾配のある登りの2箇所が大きなポイントとなる11.5kmのコースであり、力差の出るコース設定である。昨年の総合優勝者、デンマークのMads Pedersenが今年も力をみせて優勝し、総合でもリーダーになった。日本選手の中では59位の岡が最上位であった。

第3-1 TTを走る岡第3-1 TTを走る岡 photo:柿木孝之Trofeo Karlsbergは今年で5度目の参加になるが、タイムトライアルのリザルトの1ページ目に日本の選手が載ったことはなかったことを考えると岡59位、山本61位という結果も日本チームとしてはまずは一つの進歩をみせた。しかしこの結果個人総合20位以内でのネイションズポイント獲得は現実的には非常に厳しくなり、残された2ステージでの区間6位以内でのポイント獲得のみを狙うことになった。


第3-1ステージ 個人タイムトライアル 11.5km
1位 Mads Pedersen(デンマーク)16分30秒
2位 Curran Geoffrey(アメリカ) 2秒差
3位 Rask Mathias(デンマーク) 6秒差
59位 岡篤志(キャノンデール・チャンピオンシステム)1分32秒差
61位 山本大喜(榛生昇陽高校)1分34秒差
81位 松本祐典(北桑田高校)1分53秒差
85位 橋詰丈(昭和第一学園高校)1分58秒差
86位 横山航太(篠ノ井高校)2分7秒差
87位 黒枝咲哉(日出暘谷高校)2分7秒差



第3-2ステージ
第3-2ステージ パレード走行中の選手第3-2ステージ パレード走行中の選手 photo:柿木孝之午後からのロードレースはHomburgの中心街をスタートして約20kmの周回を4周する79kmのコースで行なわれた。スタートしてすぐに橋詰が穴に落ち後輪交換する。3周目第3-2ステージ 集団スプリント。狭い最終コーナーに良い位置で入れなかった黒枝が12位、横山が15位第3-2ステージ 集団スプリント。狭い最終コーナーに良い位置で入れなかった黒枝が12位、横山が15位 photo:柿木孝之には横山が集団内で逃げ場がなくなり中央分離帯に突っ込み前後輪大破し、その直後に松本も前輪破損。3名とも車輪交換して集団復帰する。山岳ポイントでは橋詰がこの日も2位通過して、ポイント差では大きく離されているが山岳賞争いで暫定2位となる。3周目終了前にスウェーデンの選手と山本が2人で逃げ、山本がポイント賞を2位通過する。

集団はスプリントに持ち込みたい総合リーダーを擁するデンマークとスプリンターを擁するイギリスが中心となり集団をまとめたため、大きな逃げは許さない展開となりこの日も80名以上での集団スプリントとなる。ゴール前1kmは非常に狭くなるコーナーや中央分離帯があり毎年危険なスプリントになるが、今朝のタイムトライアルで優勝し総合リーダーとなっているMads Pedersenがゴール前に何度も抜け出す動きをみせながらも最後の集団スプリントでも圧勝。

日本チームは最後の狭くなるコーナーでの位置取り争いに失敗して集団中ほどからスプリントする形になってしまった黒枝が12位、横山が16位とこの日もネイションズポイント獲得はならなかった。この日の日本チームはホイール破損のトラブルが多かったものの、日増しに選手の動きが良くなり、積極的に前方で展開している様子がラジオツールからも頻繁に流れてくる。翌第4ステージはこの大会では何度も使われている登りでふるい落としのかかる厳しいコースであるが、今の選手の状態ならチャンスは必ずあると感じた。


第3-2ステージ 79km
1位 Mads Pedersen(デンマーク)1時間56分28秒
2位 Lawless Christopher (イギリス) 
3位 Burton Germain(イギリス)
12位 黒枝咲哉(日出暘谷高校)
16位 横山航太(篠ノ井高校)
27位 岡篤志(キャノンデール・チャンピオンシステム)
83位 山本大喜
91位 橋詰丈(昭和第一学園高校) 3分47秒差
92位 松本祐典(北桑田高校)3分47秒差



第4ステージ
第4ステージ 30km以上逃げた山本第4ステージ 30km以上逃げた山本 photo:柿木孝之最終ステージのこの日は約20kmの周回を5周する99kmのコース。緩い登りが2km超と石畳を含む横風にさらされる1km超の登りがあり、レース後半のペースアップの際にはこれらの登りで脚を削られた選手は残ることが出来ず集団は小さくなっていくことが予想された。今大会初めての晴天の中で1周目は穏やかに進むが、2周目の登りでは有力選手が動いたためペースが上がり集団が長く伸びる。

第4ステージの登りスプリント フランス人の横にヘルメットがみえるのが7位の横山 第4ステージの登りスプリント フランス人の横にヘルメットがみえるのが7位の横山  photo:柿木孝之この周回で他の選手と接触して黒枝が集団から離れてしまい、松本は脚に痙攣を起こして遅れてしまう。登りでのペースアップ後平坦で落ち着いたタイミングで山本が単独で抜け出し、集団に30秒ほどの差をつける。6名の追撃グループもできるが、山本の1人逃げが続き、その後フランス、ドイツの選手が山本に追いつき3名のグループでそのまま逃げ続ける。30秒差あたりからタイム差は広がらず、集団は落ち着いて対応する。

第4ステージ7位の横山。周りの選手はジュニアの世界大会で成績を出している選手しかいない第4ステージ7位の横山。周りの選手はジュニアの世界大会で成績を出している選手しかいない photo:柿木孝之4周目の登りで大きくペースが上がり山本の逃げは吸収されるが、今度は橋詰が最後の山岳ポイントを4名で抜け出し2位通過して山岳賞総合2位が確定する。5周目の登りでさらにペースが上がり10名ほどの選手が先行する。集団は登りで一列に伸びて40名ほどと小さくなり、ここで山本が遅れるが横山、岡、橋詰の3名はメイン集団に残る。

一度集団は追いついたが2つ目の登りでも攻撃がかかり続け、総合リーダーを含む強力な11名が先行する。日本チームはこの登りで集団前方にいたがあとわずかのところで1人も送り込めなかった。運よくイギリスチームもここで乗り遅れ、スプリント勝負に持ち込むために集団を牽引してラスト5kmあたりで集団は一つになる。そこからはゴールに向けて激しい位置取り争いになるが、橋詰がラスト3kmで岡と横山を前方に押し上げる動きをして、そのあとの横風の平坦区間を横山、岡は良い位置でこなす。

最後はラスト200mからの登りスプリントとなり、横山は健闘したが残念ながら7位とネイションズポイント獲得に必要な6位以内には入れなかった。岡はラスト1kmでは10番手以内にいたが、イタリア列車が目の前で絡まり足止めされてしまい上位には絡めなかった。この日のスプリントでも総合リーダーのMads Pedersenが3ステージ連続で圧倒的な力で優勝し、個人総合でもリーダーを守り、2年連続総合優勝を飾った。


第4ステージ  99km
1位 Mads Pedersen(デンマーク)
2位 Harvorsen Kristoffer(ノルウェー)
3位 Tao Geoghegan Hart (イギリス)
7位 横山航太(篠ノ井高校)同タイム
24位 岡篤志(キャノンデール・チャンピオンシステム)同タイム
52位 橋詰丈(昭和第一学園高校)同タイム
77位 山本大喜(榛生昇陽高校)6分11秒差
松本祐典(北桑田高校)リタイア
黒枝咲哉(日出暘谷高校)リタイア

個人総合成績
1位 Mads Pedersen デンマーク 10時間17分35秒
2位 Geoffrey Curran アメリカ 18秒差
3位 Mathias Rask Jeppesen デンマーク 22秒差
42位 岡篤志(キャノンデール・チャンピオンシステム)1分48秒差
70位 横山航太(篠ノ井高校)10分40秒差
79位 山本大喜(榛生昇陽高校)25分10秒差
80位 橋詰丈(昭和第一学園高校)28分14秒差

山岳賞
1 Lucas Eriksson スウェーデン24
2 橋詰丈 (昭和第一学園高校)日本11
3 Alexander Fåglum Karlsson スウェーデン10
4 Julian Schulze ドイツ 8
5 Pavel Camrda チェコ7
6 Stepan Kurianov ロシア 6


最終ステージ後 山岳賞のEliksson Lukasと2位の橋詰最終ステージ後 山岳賞のEliksson Lukasと2位の橋詰 photo:柿木孝之今回総合成績では日本の選手は下位に沈んだ。世界のトップジュニアと比べてまだ力不足を感じる場面は多くある。特に毎年のことであるがタイムトライアルの能力は大きな差である。日本チームが参加できる数少ないネイションズカップのステージレースでポイントを確実に稼ぐためにはタイムトライアル能力の向上が最も重要になる。

総合表彰台総合表彰台 photo:柿木孝之個人総合20位に入るには逃げが決まりにくいジュニアのレースではタイムトライアルで上位に入る必要がある。今回は特に小集団の逃げが決まりにくかったこともあり、個人総合20位以内に入るにはタイムトライアルで24位以内に入らなければならなかった。日本選手でタイムトライアルが一番速かった岡とこの24位の選手のタイムトライアルのタイム差は11.5kmで47秒である。

それでも各ステージではそれぞれの選手がネイションズポイント獲得のために各自ができることをしっかり行ないながらレースを進め、日を追うごとに選手がレースから学び成長していく様子がうかがえた。

最終日の厳しいステージでの登りスプリントでは世界の強豪選手が上位を占める中で横山が7位に入ったが、喜びの表情は全くなく悔しい表情を見せていたところに昨年からの選手としての成長を感じた。岡は今回落車とゴール前の不運に泣かされたが、全ステージで安定した力をみせた。橋詰はジュニア1年目ながら登り坂ではしっかり前で動き、山岳賞争いで総合2位になった。黒枝は今回集団スプリントでは、集団の後ろからスプリントをせざるを得ない状況が多く上位には食い込めなかったが、良い位置からスプリントに入ることが出来れば今の力でも6位以内に入る力がある。

ゴールスプリントとは異なりレース途中のスプリントポイントは狙う選手が限定されるのでスプリントの際の位置取りの難易度は高くないが、そこでのスプリントではポイントリーダーを破り1位通過している。集団密度が高く、さらに速い集団内での位置取り争いは日本では経験できず、スプリントする脚だけではなくヨーロッパでのレース経験がより必要になるであろう。

山本はクロアチアでは密度の高い集団走行に一番苦労していたが、今回は危険な下りやテクニカルな街中のコースも問題なくこなし、さらに逃げを決めようと自分から攻撃を仕掛ける場面も多々見られ、特に第4ステージの逃げの際には沿道から「YAMAMOTO」と応援されることが多かった。

松本は今回初めてのヨーロッパのレース参加で、合宿においても他の5名との力差はまだあるが、第1、第2ステージでは集団前方をキープする力をみせた。

今回の日本チームはずば抜けた力を持った選手はいないが、1人1人が自分の得意分野でしっかり結果につなげる走りをしていこうという意識が強くみられた。それにより世界のジュニアのレベルの高さを肌で感じるとともに、世界のジュニアのトップレースでもコースと戦い方次第では勝負できるという感触を得られたことはこれからの選手としての成長に大きな弾みになるであろう。

ジュニアのうちからこのようなレベルの高いヨーロッパのレースを年間もう少し走ることが出来れば、彼らはネイションズカップでも結果を出すことが出来るようになると感じる。日本のジュニアチームが今度走る国際レースは、9月のイタリアでの世界選手権である。


(JCFジュニア強化育成部会 柿木孝之)