日本人の骨格を元に設計されたヘルメットやアイウェアをリリースする日本のブランド・カブトが新たに設立したブランド「KOOFU(コーフー)」。そのデビューモデルとなったのが、今回インプレッションを行う“WG-1”だ。

エッジを利かせたデザインが特徴エッジを利かせたデザインが特徴

整流効果を意識したデザイン整流効果を意識したデザイン カブトはオートバイ用のヘルメットと同時に、1980年ごろより自転車用ヘルメットの製造を開始した。「人のいのちを守ること」をテーマに、衝撃吸収試験や貫通試験、アゴヒモ強度試験などの実験を繰り返すことによって日本のみならず、世界中の規格をパスする安全性能を実現している。

また、同社は安全性に加えて自転車用ヘルメットに求められる様々な性能の強化にも力を入れている。例えば2007年に発売された“モストロ”はその軽さで世界中のメーカーに衝撃を与え、現在へと続く軽量化ブームの火付け役となった。そして、今回インプレッションを行うWG-1では「風を楽しむ」をコンセプトに空力的な性能にフォーカスしている。

デザインはモーターサイクルで長年培ったノウハウと、CFD(3次元数値流体解析)を用いた解析から算出されたデータを元に行われた。優れた整流効果と最適なエアルートを確保すると共に、各通気孔の前側シェル表面に、航空機の翼面などに見られる“ボルテックスジェネレーター”という突起を採用。意図的に乱流を発生させることで、ヘルメット内部の熱気を効率よく引き出すというシステムだ。

加えて、同社が誇る風洞施設において実験を行い、抵抗や揚力、ヘルメット内側の温度の変化を測定し完成度を高めたと云う。もちろん過酷な使用環境を再現しての衝撃吸収試験などの実験も繰り返し行われ、国内外の製品規格をパスする安全性能も確保されている。

インナーパッドは写真のセパレートタイプを含む3種類が付属インナーパッドは写真のセパレートタイプを含む3種類が付属 新型のクロージャー新型のクロージャー


デザインと実験の結果、シェルはエッジを立たせたシャープなパーツと、大きな面を持つパーツで覆う“ダブルレイヤードシェル構造”を採用。円形に近いアジア人の頭の形に適した設計により、大型のサポートパーツを採用する新開発のアジャスターシステムと共に、頭を包み込むようにホールドするコンフォート設計が特徴だ。

インナーパッドは3種類が付属し、フィッティング重視のA.I.ネット、通気性重視のノーマルパッド、風の侵入を抑える冬用パッドと、好みと季節に応じたセッティングができる。ストラップは従来モデルで好評のMOFF(瞬間消臭繊維)を使用した、中空タイプのチンストラップ。チンストラップの調整が簡単で、部品単体交換可能なKOOFU軽量アジャストロックを採用している。

ストラップはレジモスに使用されるものと同等の軽量タイプストラップはレジモスに使用されるものと同等の軽量タイプ サイズはXS、S/M、L、XL/XXLの4種類。カラーはGRホワイト、GRブラック、レッドホワイト、マットブラックレッド、ブルーガンメタ、イエローブラックの6種類が用意され、自転車やウェアと合わせてコーディネートできる。もちろん、JCF(財)日本自転車競技連盟の公認を受けているため、登録系レースでの使用が可能だ。

今シーズンはイタリアのプロチーム“ランプレ・メリダ”に供給が行われ、多くの国内プロチームが使用する“KOOFU WG-1”。注目の新作ヘルメットのインプレッションをお届けしよう。



ーインプレッション

「カブトのイメージを一新しながらも、良い部分は受け継いでいる」江下健太郎(じてんしゃPit)


「カブトのイメージを一新しながらも、良い部分は受け継いでいる」江下健太郎(じてんしゃPit)「カブトのイメージを一新しながらも、良い部分は受け継いでいる」江下健太郎(じてんしゃPit) カブトのヘルメットは以前から使用しており、WG-1を使用する前はMS-2とレジモスをシチュエーションに合わせて使い分けていました。以前使用していたモデルと比較すると外観の変化が最も気になったところで、エッジの効いたデザインを採用したことによって、イメージがガラッと変わった印象があります。

“カブト”ではなく“KOOFU”という別ブランドを立ち上げたあたりと合わせて、今までのイメージを一新したいと言うような意図を感じます。空力的なアプローチからデザインされただけあって、風の抜けがかなり良く非常に涼しいと感じました。これは個々の穴が大きくなり、ロードバイクの乗車姿勢に合わせて冷却効果が高くなる様にデザインされた結果でしょう。

かぶり心地やフィッティングについてですが、まず帽体の形が変わったように思います。大きな変更点としては、レジモスと比べるとトップが少しフラットになったので、頭頂部が平べったい方に向くでしょう。また、少し細長くなったようにも感じました。今年からランプレ・メリダに供給するために、ヨーロッパの人に多く見られる細長いタイプの頭の形にも対応したのではないでしょうか。

かぶり心地は割と深い目のレジモスと、浅い目のMS-2の中間ぐらいで頭が適度に覆われていることによる安心感を覚えました。カブトならではのストラップ(顎ひも)は汗をかいてもべとつかず、不快な臭いもしないので非常にいいですね。重量もとても軽くて、ロングライドなど長い時間乗った際に疲れにくいですし、レースであれば大きなアドバンテージになるでしょう。

クロージャーもモデルチェンジが行われましたが、構造が基本的に同じなので大幅な印象の変化ありませんが、少しホールド感が増した様な印象がありました。また、スチロールとアウターシェルの接合部など、これまでのモデルと比較し、かなりしっかりと成形・圧着されていますね。とても製品としての質が上がったように思います。

付属のパッドはメッシュタイプと防風タイプ、従来からあるセパレートタイプの3種類で、ヘルメット内部で強く当たる部分があればパッドで調整してあげると、かぶり心地がさらに良くなるでしょう。

 KOOFU WG-1(GRホワイト) KOOFU WG-1(GRホワイト) (c)カブト最後に、前頭部の厚みが個人的少し気になりました。ドロップハンドルの下を持った時のような深い前傾の時に視界が遮られる事がありますが、ひさしや雨よけとしての効果が僅かながらに高くなるので、好みの問題だと思います。


KOOFU WG-1
サイズ:XS、S/M、L、XL/XXL
カラー:GRホワイト、GRブラック、レッドホワイト、マットブラックレッド、ブルーガンメタ、イエローブラック
付属品:インナーパッド3種類、ノーマルインナーパッドには5mmと10mm2種類同梱
価 格:24,150円(税込)

ヘルメットの詳細やカラーバリエーション等についてはこちらの製品紹介記事を参照して下さい。




インプレライダーのプロフィール

江下健太郎(じてんしゃPit)江下健太郎(じてんしゃPit) 江下健太郎(じてんしゃPit)

ロード、MTB、シクロクロスとジャンルを問わず活躍する現役ライダー。かつては愛三工業レーシングに所属し、2005年の実業団チームランキング1位に貢献。1999年MTB&シクロクロスU23世界選手権日本代表。ロードでは2002年ツール・ド・台湾日本代表を経験し、また、ツール・ド・ブルギナファソで敢闘賞を獲得。埼玉県日高市の「じてんしゃPit」店主としてレースの現場から得たノウハウを提供している。愛称は「えしけん」。

じてんしゃPit



text:Yuya.Yamamoto
photo:Makoto.AYANO
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