フランスからイタリアに戻る234kmで行なわれたジロ・デ・イタリア第16ステージ。レース終盤の3級山岳でマリアローザを懸けた闘いが加熱し、ゴール前で抜け出した3人でのスプリントでベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)が勝利した。

ヴァロワールをスタートし、フランス国内を走るプロトンヴァロワールをスタートし、フランス国内を走るプロトン photo:Riccardo Scanferlaガリビエ峠の麓の街ヴァロワールでの休息日を終え、選手たちはイタリアへの帰路に着く。来た道を戻り、1級山岳モンセニスを登り返してイタリアへ。3級山岳アンドラーテを含む36kmの周回コースをぐるっと1周してゴールを迎える。

マリアアッズーラのステファノ・ピラッツィ(イタリア、バルディアーニヴァルヴォーレ・CSFイノックス)らが逃げるマリアアッズーラのステファノ・ピラッツィ(イタリア、バルディアーニヴァルヴォーレ・CSFイノックス)らが逃げる photo:Riccardo Scanferlaスプリンターには厳し過ぎるコースレイアウト故、逃げ切りが決まる可能性大。レース序盤に形成された逃げグループの人数はなんと22名。ピラッツィ、ペイト、カペッキ、エラーダ、ボーレ、ルドヴィグソン、メイヤー、ラボッティーニ、ディルーカ、ケルデルマン、ロドリゲス、セッラ、セルパ、スザーランド、ベルドゥーゴ、ウェーニング、ナヴァルダスカス、ザルディーニ、デグレーフ、アタプマ、カルーゾ、シャラプゴメスが逃げに乗った。

ゴール地点イヴレアの街を駆け抜けるゴール地点イヴレアの街を駆け抜ける photo:Kei Tsuji逃げグループの中で最も総合成績が良いのはダミアーノ・カルーゾ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)で、マリアローザから9分57秒遅れ。アスタナが徹底的にコントロールするメイン集団は、逃げグループに5分以上のリードを与えなかった。

マリアビアンカを着るカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、アージェードゥーゼル)マリアビアンカを着るカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、アージェードゥーゼル) photo:Riccardo Scanferla1級山岳モンセニスを越えてイタリアに入り、通り雨に降られながら逃げる22名。レディオシャック・レオパードとカチューシャの集団牽引によってタイム差が3分を切り、ゴールまで50kmを残したところで逃げグループの協調体制が崩れる。

ゴールまで3kmを切って飛び出したプリジミスラウ・ニエミエツ(ポーランド、ランプレ・メリダ)らゴールまで3kmを切って飛び出したプリジミスラウ・ニエミエツ(ポーランド、ランプレ・メリダ)ら photo:Riccardo Scanferlaアタックに次ぐアタックによって先頭グループは縮小。メイン集団から1分半のリードで登坂距離6.3km・平均勾配8%の3級山岳アンドラーテに差し掛かると、マリアアッズーラを着るステファノ・ピラッツィ(イタリア、バルディアーニヴァルヴォーレ・CSFイノックス)らが積極的にアタックを仕掛けた。

逃げグループ内でアタックが繰り返される中、メイン集団でも総合上位陣が動きを見せる。ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・メリダ)がアタックを仕掛け、マリアローザのヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)が反応。スプリンターに入り込む余地を与えないハイペースで登りを進んだメイン集団からは、総合4位のマウロ・サンタンブロジオ(イタリア、ヴィーニファンティーニ)が脱落してしまう。

頂上手前でメイン集団はついに逃げグループをキャッチ。続いてマリアビアンカを着るカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、アージェードゥーゼル)が飛び出し、先頭で3級山岳アンドラーテをクリアする。ゴールに向かう下りで、ダウンヒルスペシャリストのサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)がベタンクールに合流。

ハイスピードダウンヒルでサンチェスらが先行したが、マリアローザのニーバリは落ち着いてこれを封じ込める。下り区間を終え、サンタンブロジオを欠く20名の精鋭グループが先行。続く平坦区間で再びアタックに火がついた。

総合上位陣が断続的にアタックを仕掛けたが、ニーバリが落ち着いて全てのアタックを封じる。するとラスト3kmを切ったところでプリジミスラウ・ニエミエツ(ポーランド、ランプレ・メリダ)、ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)、タネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ)が飛び出す。この3人の逃げ切りが決まった。

牽制の隙を突いてリードを広げたニエミエツ、インチャウスティ、カンゲルトが14秒リードで
ゴールスプリント態勢へ。タイミング良くスプリントを開始したインチャウスティが先着。2年前に不慮の事故で亡くなった友人のシャビエル・トンドに捧げるXサインで、インチャウスティがフィニッシュラインを駆け抜けた。

3人でのゴールスプリントを制したベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)3人でのゴールスプリントを制したベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター) photo:Kei Tsuji

第7ステージで総合首位に立ち、マリアローザを1日間だけ着たインチャウスティ。「マリアローザはチームにとってとても重要だった。でもこのジロの最大の目標はステージ優勝だったんだ。ようやくその目標を達成することが出来たよ」。インチャウスティはボーナスタイムによって総合9位に浮上。モビスターは2ステージ連続、3度目のステージ優勝を達成した。

総合のライバルたちのアタックを完全に抑え込んだニーバリはマリアローザをキープ。3週目に入ってなお、登り&下りともに安定感ある走りを見せている。

ステージ優勝を飾ったベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)ステージ優勝を飾ったベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター) photo:Kei Tsujiマリアローザはヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)がキープマリアローザはヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)がキープ photo:Kei Tsuji


ジロ・デ・イタリア2013第16ステージ結果
1位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)            5h52'48"
2位 タネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ)
3位 プリジミスラウ・ニエミエツ(ポーランド、ランプレ・メリダ)
4位 ラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・シャープ)         +14"
5位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)
6位 フランコ・ペッリツォッティ(イタリア、アンドローニジョカトリ)
7位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・メリダ)
8位 ラファル・マイカ(ポーランド、サクソ・ティンコフ)
9位 ホセ・エラーダ(スペイン、モビスター)
10位 カルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、アージェードゥーゼル)

個人総合成績
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)            67h55'36"
2位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)         +1'26"
3位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、スカイプロサイクリング)          +2'46"
4位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・メリダ)            +3'53"
5位 プリジミスラウ・ニエミエツ(ポーランド、ランプレ・メリダ)         +4'13"
6位 マウロ・サンタンブロジオ(イタリア、ヴィーニファンティーニ)        +4'57"
7位 カルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、アージェードゥーゼル)    +5'15"
8位 ラファル・マイカ(ポーランド、サクソ・ティンコフ)             +5'20"
9位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)              +5'20"
10位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼル)      +5'47"

ポイント賞
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)

山岳賞
ステファノ・ピラッツィ(イタリア、バルディアーニヴァルヴォーレ・CSFイノックス)

新人賞
カルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、アージェードゥーゼル)

チーム総合成績
スカイプロサイクリング

text&photo:Kei Tsuji in Ivrea, Italy