終始強風が吹きつけた第5ステージ。残り56kmからレディオシャック・レオパードが行ったペースアップにより、集団が分裂。後半に仕掛けたイェンス・フォイクト(ドイツ、レディオシャック・レオパード)が独走勝利を上げ、ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)が総合首位に立った。

カリフォルニア州南部のサンタバーバラをスタートしていくカリフォルニア州南部のサンタバーバラをスタートしていく photo:Tour of California連日ツアー・オブ・カリフォルニア(UCI2.HC)を走る選手たちを苦しめていた灼熱の太陽も、第5ステージが開催された5月16日では薄い雲の向こう。カリフォルニア州南西部のサンタバーバラからアヴィラビーチへと北上する185.7kmの道程では、太陽に替わって砂埃を巻き上げる強風が選手たちを苦しめた。

荒涼とした放牧地帯を走るメイン集団荒涼とした放牧地帯を走るメイン集団 photo:Tour of California序盤25.2km地点に2級山岳ポイントが用意されるものの、その後は難易度の低い平坦基調のコースが続く。後半の113.8km、132.1km、152.8km地点にはスプリントポイントが用意される。最後は大集団スプリントに持ち込まれるものと予想されていたが、コースに終始吹き付ける強風がレースの展開に大きく影響した。

メイン集団はスプリントを狙うガーミン・シャープやオメガファーマ・クイックステップがコントロールしたメイン集団はスプリントを狙うガーミン・シャープやオメガファーマ・クイックステップがコントロールした photo:Tour of Californiaこの日もこれまでと同様に、スタート地点から地元アメリカンコンチネンタルチームを中心にアタック合戦が勃発。その中でフェン・チュンカイ(台湾、チャンピオンシステム・プロサイクリング)とトーマス・デヘント(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)が数秒のリードを奪って先行すると、ここには山岳賞ジャージを守りたいカーター・ジョーンズ(アメリカ、ビッセルプロサイクリング)が合流を果たす。

集団はこの動きを容認したため、2級山岳サンマルコ・パスを前にこの日のエスケープが決まった。ペースダウンする集団を背後に、3人はジョーンズを先頭にこの日最初で最後の山岳ポイントを通過する。ペースを落とさずに走る先頭グループは、30km地点でこの日の最大タイム差8分50秒を稼ぎだした。

しかし典型的なスプリント向きステージのため、スプリンターチームが牽引を開始すると、先行する3名の持つリードも徐々に縮小の一途を辿る。オメガファーマ・クイックステップやキャノンデール・プロサイクリングがペースコントロールを担っている中、残り56km地点から、突如レディオシャック・レオパードが集団分裂を狙ったペースアップを敢行した。

砂煙で視界が霞むほどの強風の中、エシュロンを作り全開で牽いたことで目論見通り集団は分裂。15名の先頭グループにはフォイクト、ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)、ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール・プロサイクリング)、タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ)ら強豪選手が入った一方、リーダージャージのアレクシス・アセヴェド(コロンビア、ジェーミス・ハーゲン)は後方に置き去りにされる結果に。

レディオシャック・レオパードのペースアップにより、メイン集団は分裂したレディオシャック・レオパードのペースアップにより、メイン集団は分裂した photo:Tour of California

独走でゴールに飛び込むイェンス・フォイクト(ドイツ、レディオシャック・レオパード)独走でゴールに飛び込むイェンス・フォイクト(ドイツ、レディオシャック・レオパード) photo:Tour of Californiaステージ優勝を狙うサガンやファラーらと、ライバルを尻目に総合ジャンプアップを狙いたいヴァンガーデレン。そしてそのアシストら。利害関係の一致した先頭グループは協力してローテーションを回し、タイム差を少しづつ広げていく。先頭グループの中では41歳のフォイクトが最も積極的だ。同一グループに入ったマシュー・ブッシュ(アメリカ、レディオシャック・レオパード)の総合順位を引き上げるため、力強い走りで先行グループの機関車役を務めた。

2位争いのスプリント。好調タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ)が先着する2位争いのスプリント。好調タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ)が先着する photo:Tour of California後方グループからはシルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)が抜け出しを試みたものの、強風の中では十分なリードを奪えない。この力と力がぶつかり合う展開の中、序盤からエスケープした3名はこの日の逃げを終了させる。

先頭に立った17名と、それを追う追走集団のタイム差は残り20kmで1分。残り10kmでも差は55秒と思うように縮まらない。組織だって追走するチームが現れなかったため、ステージ優勝の権利は徐々に先行グループの元へと移っていく。

ステージ上位3選手表彰ステージ上位3選手表彰 photo:Tour of Californiaそして逃げ切りがほぼ確定しつつあった先行グループからは、サガンとのスプリントを嫌って残り5.2km地点の小さな上りでフォイクトが単独アタック。追走グループや第2集団はいずれも統率を欠いたため、フォイクトはすぐさま十数秒を稼ぎ出す。

リーダージャージを獲得したティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)リーダージャージを獲得したティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム) photo:Tour of California残り2.4kmからはフォイクトを追ってバーデン・クック(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)らが単独で追走を仕掛けたものの、フォイクトの勢いは他の誰をも寄せ付けなかった。結局フォイクトはゴールラインまで独走で走り抜き、渾身のガッツポーズを決めた。

「今日マルケル(イリサール)とコントロールをしている中で、彼が"今日はとても調子が良さそうに見えるから、力をセーブして何か仕掛けてみたらどうか"と聞いてきた。考えて、同意した。先頭グループには強い選手が何人かいたから、勝つにはアタックするしか無いと思ったんだ。アタックして単独先頭に立った後、後続は一人ずつアタックしていたように見えた。それが20秒ほどのタイム差を稼ぐことのできた理由だと思う。そうなったら僕のもの。姿勢を低く保ってハードに攻め続けた。本当にハッピーな気分だ」と語った。






ツアー・オブ・カリフォルニア2013第5ステージ結果
1位 イェンス・フォイクト(ドイツ、レディオシャック・レオパード)  4h41′16″
2位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ)          +06″
3位 トル・フースホフト(ノルウェー、BMCレーシングチーム)
4位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール・プロサイクリング)
5位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
6位 ジェイ・マッカートニー(オーストラリア、サクソ・ティンコフ)
7位 アレックス・キャンデラリオ(アメリカ、オプタムp/b)
8位 マイケル・ロジャーズ(オーストラリア、サクソ・ティンコフ)
9位 マルケル・イリサール(スペイン、レディオシャック・レオパード)
10位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)

個人総合成績
1位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)21h55′32″
2位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、サクソ・ティンコフ)   +42″
3位 アレクシス・アセヴェド(コロンビア、ジェーミス・ハーゲン)   +50″
4位 マシュー・ブッシュ(アメリカ、レディオシャック・レオパード)   +1′04″
5位 フィリップ・ダイグナン(アイルランド、ユナイテッドヘルスケア) +1′17″
6位 キャメロン・メイヤー(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) +1′29″
7位 マティアス・フランク(スイス、BMCレーシングチーム)    +1′35″
8位 フランシスコ・マンセボ(スペイン、5アワーエナジー)    +1′53″
9位 チャド・ハーガ(アメリカ、オプタムp/b)            +2′03″
10位 ローソン・クラドック(アメリカ、ボントレガー)         +2′22″

ポイント賞
ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール・プロサイクリング)

山岳賞
カーター・ジョーンズ(アメリカ、ビッセルプロサイクリング)

新人賞
ローソン・クラドック(アメリカ、ボントレガー)

チーム総合成績
ユナイテッドヘルスケア


text:So.Isobe
photo:Tour Of California