逃げ続けたトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)を、後続がゴール直前で捉える。悪天候に見舞われた第68回ドワーズ・ドア・フラーンデレン(UCI1.HC)。過酷の闘いの末に、オスカル・ガット(イタリア、ヴィーニファンティーニ)のスプリント勝利が決まった。

先頭グループを形成するヘルト・ステーグマン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)ら先頭グループを形成するヘルト・ステーグマン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)ら photo:Cor Vos3月20日、今年で68回目を迎えるドワーズ・ドア・フラーンデレンがベルギーで開催された。「フランドル横断レース」とも呼ばれるこの大会を皮切りに、フランドル地方はクラシックウィークに突入。3月31日のロンド・ファン・フラーンデレンで絶頂を迎える。

石畳の急坂をクリアするイアン・スタナード(イギリス、スカイプロサイクリング)ら石畳の急坂をクリアするイアン・スタナード(イギリス、スカイプロサイクリング)ら photo:Cor Vos全長200kmのコースには「オウデ・クワレモント」や「パテルベルグ」「ノケレベルグ」などの急坂が13カ所、そして数キロに渡るパヴェ区間が3カ所設定されている。レース後半に詰め込まれた急坂の多くは石畳に覆われた悪路で、勾配が20%を超える激坂も登場する。

「フランドル横断レース」と呼ぶにふさわしいレイアウト。なお、毎年ワレヘムの街にゴールすることから、一般的に「ワレヘム」と呼ばれることも多い。

レース前半からアタックが繰り返され、この日最初の急坂「ニーウェ・クワレモント」を前にヘルト・ステーグマン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)やアッサン・バザイエフ(カザフスタン、アスタナ)ら13名が先行する。

やがて急坂が連続するゾーンに差し掛かると、先頭でも集団でも常に動きが見られるベルジャンクラシックらしい展開に。先頭ではステーグマンとマシュー・ヘイマン(オーストラリア、スカイプロサイクリング)、アレクセイ・サラモティンス(ラトビア、IAMサイクリング)の力が際立ち、3名の先行が始まった。

141km地点の「エイケンベルグ」でパンクし、後退を余儀なくされた別府は「エイケンベルグを10番手くらいで登りはじめていたらまさかのパンク!そのまま走りながらサポートカーを待って車輪交換したけど時すでに遅し。この坂でパンクしたのは人生で4度目…」とコメント。この日はDNFに終わったが「今日は悪天候だったけど、調子も位置どりも良くて終盤のセクションまでパーフェクトなカタチでレースは進んだ」と語るあたり、次なるクラシックレースに期待が持てる。

勝負どころでしっかりと重要な動きに乗ったオスカル・ガット(イタリア、ヴィーニファンティーニ)勝負どころでしっかりと重要な動きに乗ったオスカル・ガット(イタリア、ヴィーニファンティーニ) photo:Riccardo Scanferla

石畳の急坂をクリアするトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)ら石畳の急坂をクリアするトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)ら photo:Cor Vosやがて159km地点の「クノクテベルグ」で先頭はヘイマンの独走となり、後方ではマキシム・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)のアタックによって集団は粉砕。イアン・スタナード(イギリス、スカイプロサイクリング)やトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)、ガットら8名が先頭ヘイマンに追いつく。ディフェンディングチャンピオンのニキ・テルプストラ(オランダ、オメガファーマ・クイックステップ)はこの動きに乗れなかった。

ゴールに向かって単独で逃げるトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)ゴールに向かって単独で逃げるトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー) photo:Cor Vos後続と30秒引き離し、ワレヘムに向かって突き進む9名。ゴール9km手前の「ノケレベルグ」でケウケレールがアタックしたが、先頭9名は一つのまま。平地でのスタナードのアタックも決まらない。するとゴールまで7kmを残し、カウンターアタックでヴォクレールが飛び出した。

後続のわずかな牽制によってヴォクレールのリードは17秒まで拡大。ハンドルにしがみつき、時折ダンシングでスピードを維持したヴォクレールは、9秒のリードでラスト1kmアーチをくぐる。後続は、ヘイマンのためにスタナードが捨て身のリードアウトを見せた。

最終ストレートに先頭でやってきたヴォクレールと、勢い良く迫る8名の追撃。ヴォクレールを視界に捉えながら、ラスト200mでスタナードの後ろからガットが発進する。後ろを振り返りながら最後の力を振り絞るヴォクレールの後ろに、蛍光イエローのジャージが迫る。ゴールの数メートル手前でガットがヴォクレールを抜きさる。ヴィーニファンティーニのガットが劇的な勝利を飾った。

9名によるゴールスプリントを制したオスカル・ガット(イタリア、ヴィーニファンティーニ)9名によるゴールスプリントを制したオスカル・ガット(イタリア、ヴィーニファンティーニ) photo:Riccardo Scanferla

優勝を果たしたオスカル・ガット(イタリア、ヴィーニファンティーニ)が表彰台の頂点に優勝を果たしたオスカル・ガット(イタリア、ヴィーニファンティーニ)が表彰台の頂点に photo:Riccardo Scanferla「最高に幸せだ。(招待してくれた)オーガナイザーとチームに勝利で報いることが出来た。本当にタフなレースだったけど、調子は良かったし、挑戦する以外に選択肢は無かった」と、セミクラシック初制覇を果たしたガット。

「北のクラシックが大好き。フランドルでの優勝を夢見ている」と話すヴェネト出身の28歳は、ランプレ・メリダに移籍したフィリッポ・ポッツァート(イタリア)に代わってイタリアチームのエースを務める。この勝利で一躍注目を集める存在となった。

この日の完走者はわずか64名。宮澤はレース中盤にリタイアしている。体調が優れないため、宮澤はヘント〜ウェベルヘムは欠場する見通し。イタリアの自宅に戻って次戦に備える。

選手コメントはチームリリースより。

ドワーズ・ドア・フラーンデレン2013結果
1位 オスカル・ガット(イタリア、ヴィーニファンティーニ)           4h43'40"
2位 ボルト・ボジッチ(スロベニア、アスタナ)
3位 マシュー・ヘイマン(オーストラリア、スカイプロサイクリング)
4位 ミルコ・セルヴァッジ(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM)
5位 トマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)
6位 ニコラス・マース(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)
7位 イェンス・ケウケレール(ベルギー、オリカ・グリーンエッジ)
8位 マキシム・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)
9位 イアン・スタナード(イギリス、スカイプロサイクリング)            +04"
10位 ステイン・ファンデンベルフ(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)   +24"
DNF 別府史之(日本、オリカ・グリーンエッジ)
DNF 宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ)

text:Kei Tsuji
photo:Riccardo Scanferla, Cor Vos