2013/03/06(水) - 14:37
「昨日のステージに引き続き、今日のステージにフォーカスしていた。だって今日のステージがスプリンターにとっての最後のチャンスかも知れなかったから」。パリ〜ニース第2ステージで勝利したマルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ)はレース後のインタビューでそう話した。
パリ〜ニース第2ステージはロワール地方からオーヴェルニュ地方まで直線的に南下する。ヴィモリからセリリーまでの200.5kmはほぼ平坦。スプリンター向きだが、最終ストレートが4%ほどの登りになっているのが肝だ。
レースが落ち着きを見せたのは64km地点。トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)とロメン・フェイユ(フランス、ヴァカンソレイユ・DCM)の2人が飛び出し、これにミケル・アスタルロサ(スペイン、エウスカルテル)とマキシム・ブエ(フランス、アージェードゥーゼル)が加わる。脚の揃った4人は最大4分のリードを稼ぎ出した。
向かい風と雨、ときに雹の影響でペースは上がらず、スケジュールよりも大きく遅れてレースは進行。悪天候によって落車が多発し、プロローグ覇者のダミアン・ゴダン(フランス、ユーロップカー)やカンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、スカイプロサイクリング)ら、多くの選手が濡れた路面の餌食になった。
先頭グループとのタイム差が1分まで縮まったラスト56km地点で、今後はリーダージャージのナセル・ブアニ(フランス、FDJ)がコーナーを曲がりきれずに落車。総合首位のフランスチャンピオンがこの落車によってリタイアするという波乱が発生する。チームの発表によると、ブアニは骨折を免れたが、歯を二本折り、上唇を八針縫った。
総合リーダー不在のプロトン。総合上位の選手にリーダージャージ獲得の門戸が開かれたため、逃げはゴールまで44kmを残して吸収される。
するとゴール18km手前のスプリントポイントで、総合3位・1秒差のシルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)がスプリント。しかし、同じく1秒差の総合5位エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)がここを先頭で通過し、暫定的にヴィヴィアーニが総合首位に。
クラシックシーズンに向けて乗り込んでいるトム・ボーネン(ベルギー)を中心に、オメガファーマ・クイックステップ勢が集団ペースアップを図るも、集団はばらけず。大集団のままゴールへと向かった。
単発的なアタックを全て飲み込んだ集団は、アルゴス・シマノやFDJ、ランプレ・メリダ、キャノンデールプロサイクリングに率いられる形でラスト1kmを切る。統率の崩れた集団先頭では、アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・メリダ)が先頭でロングスプリント体勢に入った。
しかし登り勾配によってペタッキのスピードは伸びない。後方から追い上げたキッテルがラスト100mでペタッキに並び、そのまま先頭へ。ヴィヴィアーニを振り切ったキッテルが勝利した。
大柄なキッテルにとって苦手と思われた登りスプリント。しかし持ち前のパワーでライバルたちを一蹴してみせた。
「スプリントでは自分の眼で状況を判断して、出来るだけタイミングを待ってから先頭に上がる必要がある。今日はチームメイトたちが前に出るのが早すぎたので、一旦彼らと離れて、違うチームの隊列に合流したんだ。そしてラスト200mでスプリントを開始した。正しいタイミングで、正しいラインでスプリント。パーフェクトだった」。
アルゴス・シマノにとって2013年のUCIワールドツアーレース初勝利。キッテルは今シーズンまだまだ勝ち続けそうだ。「パリ〜ニースはただ単にワールドツアーというだけでなく、歴史と伝統のあるレース。チームにワールドツアー初勝利をもたらせて本当に嬉しいよ。もうプレッシャーは無いよ」。
そしてリーダージャージはステージ2位のヴィヴィアーニの手に。新人賞でもトップのヴィヴィアーニは「今日は逃げを捕まえるタイミングが早かったので、ボーナスタイム獲得のチャンスが2回あった。最終周回に入る際のスプリントポイントと、最後のゴールスプリント。今日勝てれば良かったけど、キッテルは強い。スプリントポイントでシャヴァネルがスプリントを始めた時に『よし、2回スプリントしてやろう』と判断して、一番の目標をリーダージャージを手にすることに切り替えた」と語る。
昨年ロンドン五輪のトラックレースに集中した24歳のスプリンターがパリ〜ニースを率いる。ゴールの15km手前に2級山岳が設定された翌日の第3ステージで、総合2位のシャヴァネルらが攻撃を仕掛けてくるだろう。
リー・ハワード(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)のために何度も集団前方に姿を見せた別府史之は、仕事を終えて48位でゴール。トップと同タイムで第2ステージを終えている。
選手コメントはレース公式サイトより。
パリ〜ニース2013第2ステージ結果
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ) 5h42'18!
2位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)
3位 リー・ハワード(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
4位 ボルト・ボジッチ(スロベニア、アスタナ)
5位 サミュエル・ドゥムラン(フランス、コフィディス)
6位 ジャンニ・メールスマン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)
7位 ロメン・フェイユ(フランス、ヴァカンソレイユ・DCM)
8位 イェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・ベリソル)
9位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
10位 トニー・ギャロパン(フランス、レディオシャック・レオパード)
48位 別府史之(日本、オリカ・グリーンエッジ)
個人総合成績
1位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング) 10h33'11"
2位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ) +07"
3位 ダミアン・ゴダン(フランス、ユーロップカー) +08"
4位 リエーヴェ・ヴェストラ(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM) +09"
5位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・メリダ) +10"
6位 ウィルコ・ケルデマン(オランダ、ブランコプロサイクリング)
7位 ジョフロワ・スープ(フランス、FDJ)
8位 ペーター・ベリトス(スロバキア、オメガファーマ・クイックステップ) +11"
9位 トニー・ギャロパン(フランス、レディオシャック・レオパード)
10位 ボルト・ボジッチ(スロベニア、アスタナ)
ポイント賞
エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)
山岳賞
ベルトイヤン・リンデマン(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)
新人賞
エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)
チーム総合成績
オメガファーマ・クイックステップ
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
パリ〜ニース第2ステージはロワール地方からオーヴェルニュ地方まで直線的に南下する。ヴィモリからセリリーまでの200.5kmはほぼ平坦。スプリンター向きだが、最終ストレートが4%ほどの登りになっているのが肝だ。
レースが落ち着きを見せたのは64km地点。トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)とロメン・フェイユ(フランス、ヴァカンソレイユ・DCM)の2人が飛び出し、これにミケル・アスタルロサ(スペイン、エウスカルテル)とマキシム・ブエ(フランス、アージェードゥーゼル)が加わる。脚の揃った4人は最大4分のリードを稼ぎ出した。
向かい風と雨、ときに雹の影響でペースは上がらず、スケジュールよりも大きく遅れてレースは進行。悪天候によって落車が多発し、プロローグ覇者のダミアン・ゴダン(フランス、ユーロップカー)やカンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、スカイプロサイクリング)ら、多くの選手が濡れた路面の餌食になった。
先頭グループとのタイム差が1分まで縮まったラスト56km地点で、今後はリーダージャージのナセル・ブアニ(フランス、FDJ)がコーナーを曲がりきれずに落車。総合首位のフランスチャンピオンがこの落車によってリタイアするという波乱が発生する。チームの発表によると、ブアニは骨折を免れたが、歯を二本折り、上唇を八針縫った。
総合リーダー不在のプロトン。総合上位の選手にリーダージャージ獲得の門戸が開かれたため、逃げはゴールまで44kmを残して吸収される。
するとゴール18km手前のスプリントポイントで、総合3位・1秒差のシルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)がスプリント。しかし、同じく1秒差の総合5位エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)がここを先頭で通過し、暫定的にヴィヴィアーニが総合首位に。
クラシックシーズンに向けて乗り込んでいるトム・ボーネン(ベルギー)を中心に、オメガファーマ・クイックステップ勢が集団ペースアップを図るも、集団はばらけず。大集団のままゴールへと向かった。
単発的なアタックを全て飲み込んだ集団は、アルゴス・シマノやFDJ、ランプレ・メリダ、キャノンデールプロサイクリングに率いられる形でラスト1kmを切る。統率の崩れた集団先頭では、アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・メリダ)が先頭でロングスプリント体勢に入った。
しかし登り勾配によってペタッキのスピードは伸びない。後方から追い上げたキッテルがラスト100mでペタッキに並び、そのまま先頭へ。ヴィヴィアーニを振り切ったキッテルが勝利した。
大柄なキッテルにとって苦手と思われた登りスプリント。しかし持ち前のパワーでライバルたちを一蹴してみせた。
「スプリントでは自分の眼で状況を判断して、出来るだけタイミングを待ってから先頭に上がる必要がある。今日はチームメイトたちが前に出るのが早すぎたので、一旦彼らと離れて、違うチームの隊列に合流したんだ。そしてラスト200mでスプリントを開始した。正しいタイミングで、正しいラインでスプリント。パーフェクトだった」。
アルゴス・シマノにとって2013年のUCIワールドツアーレース初勝利。キッテルは今シーズンまだまだ勝ち続けそうだ。「パリ〜ニースはただ単にワールドツアーというだけでなく、歴史と伝統のあるレース。チームにワールドツアー初勝利をもたらせて本当に嬉しいよ。もうプレッシャーは無いよ」。
そしてリーダージャージはステージ2位のヴィヴィアーニの手に。新人賞でもトップのヴィヴィアーニは「今日は逃げを捕まえるタイミングが早かったので、ボーナスタイム獲得のチャンスが2回あった。最終周回に入る際のスプリントポイントと、最後のゴールスプリント。今日勝てれば良かったけど、キッテルは強い。スプリントポイントでシャヴァネルがスプリントを始めた時に『よし、2回スプリントしてやろう』と判断して、一番の目標をリーダージャージを手にすることに切り替えた」と語る。
昨年ロンドン五輪のトラックレースに集中した24歳のスプリンターがパリ〜ニースを率いる。ゴールの15km手前に2級山岳が設定された翌日の第3ステージで、総合2位のシャヴァネルらが攻撃を仕掛けてくるだろう。
リー・ハワード(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)のために何度も集団前方に姿を見せた別府史之は、仕事を終えて48位でゴール。トップと同タイムで第2ステージを終えている。
選手コメントはレース公式サイトより。
パリ〜ニース2013第2ステージ結果
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ) 5h42'18!
2位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)
3位 リー・ハワード(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
4位 ボルト・ボジッチ(スロベニア、アスタナ)
5位 サミュエル・ドゥムラン(フランス、コフィディス)
6位 ジャンニ・メールスマン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)
7位 ロメン・フェイユ(フランス、ヴァカンソレイユ・DCM)
8位 イェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・ベリソル)
9位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
10位 トニー・ギャロパン(フランス、レディオシャック・レオパード)
48位 別府史之(日本、オリカ・グリーンエッジ)
個人総合成績
1位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング) 10h33'11"
2位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ) +07"
3位 ダミアン・ゴダン(フランス、ユーロップカー) +08"
4位 リエーヴェ・ヴェストラ(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM) +09"
5位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・メリダ) +10"
6位 ウィルコ・ケルデマン(オランダ、ブランコプロサイクリング)
7位 ジョフロワ・スープ(フランス、FDJ)
8位 ペーター・ベリトス(スロバキア、オメガファーマ・クイックステップ) +11"
9位 トニー・ギャロパン(フランス、レディオシャック・レオパード)
10位 ボルト・ボジッチ(スロベニア、アスタナ)
ポイント賞
エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)
山岳賞
ベルトイヤン・リンデマン(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)
新人賞
エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)
チーム総合成績
オメガファーマ・クイックステップ
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
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