ツアー・オブ・オマーン(UCI2.HC)第4ステージは大会中唯一の本格的山岳ステージ。最後の登坂では総合上位を狙うオールラウンダーのバトルが繰り広げられ、抜けだしたホアキン・ロドリゲスが勝利。クリス・フルームが総合首位に立った。

逃げるグレゴリー・ラスト(スイス、レディオシャック・レオパード)ら5名逃げるグレゴリー・ラスト(スイス、レディオシャック・レオパード)ら5名 photo:A.S.O.2月14日に開催されたツアー・オブ・オマーン第4ステージ。その舞台は首都マスカットの西に位置するサマイルからジャバル・アクダールにかけての143.5kmで、オマーン内陸の急峻な山岳地帯を駆け抜ける。最後のジャバル・アクダールは登坂距離5kmオーバーで、最難関ステージとして相応しいレイアウトとされた。

モスク前を通過するメイン集団モスク前を通過するメイン集団 photo:A.S.O.この日はスタート直後からアタックが連発。ハイスピードで平坦区間を駆け抜ける集団から飛び出したのは、ブレント・ブックウォルター(アメリカ、BMCレーシングチーム)やグレゴリー・ラスト(スイス、レディオシャック・レオパード)ら5名。この日日本ナショナルチームは逃げにメンバーを送りこむことが出来なかった。

クリスティアン・クネース(ドイツ、スカイプロサイクリング)が集団を牽引クリスティアン・クネース(ドイツ、スカイプロサイクリング)が集団を牽引 photo:A.S.O.快調に集団とのタイム差を広げていく先頭5名だったが、やがてスカイプロサイクリングやBMCレーシングチーム、オメガファーマ・クイックステップなどがメイン集団のペースアップを開始するとタイム差は徐々に縮小。この日ブラドレー・ウィギンズはクリス・フルーム(共にイギリス、スカイプロサイクリング)のアシストとしてこの日も集団の先頭に立った。

先頭5名と集団はオマーンの荒涼とした山岳地帯を駆け抜け、やがて最後に控えるジャバル・アクダールの麓に到達。サクソ・ティンコフも牽引に加わったことでペースの上がりきった集団を前に、5名のエスケープは136km地点で終了。ここから各チーム、総合上位を狙うエースのための位置取りが激化した。

リッチー・ポルテ(オーストラリア)やウィギンズらがハイペースを刻んだことで集団の人数は大きく減少し、リーダージャージを着るペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)も脱落。有力勢にはステージ優勝にプラスして、リーダージャージ獲得のチャンスも加わった。

ジャバル・アクダールで山岳バトルを繰り広げるクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)らジャバル・アクダールで山岳バトルを繰り広げるクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)ら photo:A.S.O.すると早いタイミングで集団からチームメイトのアシストを受けたアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)がアタック。この動きにはヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)がチェックに着いたことで決まらなかったものの、この後もコンタドールは積極的に抜け出しを図る。

心理戦を展開するクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)ら心理戦を展開するクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)ら photo:Tour Of Omanこの動きによって集団はコンタドール、フルーム、ニーバリ、カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)ケニー・エリッソンド(フランス、FDJ)ら精鋭メンバーのみに絞られた。

ラスト1kmからアタックを成功させた”プリート”ことホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)がゴールへ急ぐラスト1kmからアタックを成功させた”プリート”ことホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)がゴールへ急ぐ photo:A.S.O.グランツールレベルの心理戦が繰り広げられる中、ゴール後にラスト1kmで動いたのは"プリート"ロドリゲス。後に「どこで勝負を掛ければ良いか分かっていた」急勾配区間で加速すると、互いを見合うライバルを後方に、するするとその差を広げていく。

力強いペダリングで先行するロドリゲスを後方からフルームが1人勢い良く追い上げたものの、結果4秒届かず。その前方で、全力を出し切った”プリート”ことロドリゲスが小さくガッツポーズを繰り出した。

「このレースを楽しんでいるよ。オマーンの人たちは僕らを快く迎え入れてくれているし、居心地も良い。シーズン初めのレースで勝利できたのはいい事だね」と語るプリート。

「今日はバレンタインデーだから、この勝利を家族とチームに送りたい。チームのライセンス問題については、CAS(スポーツ仲裁裁判所)が正当な判断をしてくれることに期待しているよ」と加え、チームにとって難航するワールドツアーライセンス問題の最中に明るい話題を持ち込んだ。

リーダージャージを獲得したクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)リーダージャージを獲得したクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) photo:A.S.O.また、リーダージャージは追い上げ叶わなかったフルームが獲得。「まだシーズン序盤で追い込んだトレーニングはしていなかった。チームはとても良く機能しているし、ハードな翌ステージもチャレンジし続けていく」と言うフルーム。2位のエヴァンスとは総合で24秒のタイム差をつけることに成功している。

アシストを務めたウィギンズについては、「ブラッドが僕を牽いてくれたから本当に助かったし、良い位置に付けることができた。とてもファンタスティックだったよ」と語った。

日本勢では西薗良太(日本、チャンピオンシステム)が3分48秒遅れの34位でトップフィニッシュ。総合順位を36位としている。 





ツアー・オブ・オマーン2013第4ステージ結果
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)      3h34′48″
2位 クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)      +04″
3位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) +22″
4位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)    +27″
5位 ヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)         +35″
6位 ケニー・エリッソンド(フランス、FDJ)              +43″
7位 ヨハン・チョップ(スイス、IAMサイクリング)           +52″
8位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)   +57″
9位 アルノー・ジャネソン(フランス、FDJ)              +1′01″
10位 ヤニック・エイセン(ベルギー、BMCレーシングチーム)    +1′09″

34位 西薗良太(日本、チャンピオンシステム)          +3′48″  
35位 西谷泰治(日本、日本ナショナルチーム)
43位 佐野淳哉(日本、日本ナショナルチーム)         +5′00″ 
48位 鈴木譲(日本、日本ナショナルチーム)           +5′24″    
50位 別府史之(日本、オリカ・グリーンエッジ)           +5′33″
118位 盛一大(日本、日本ナショナルチーム)         +11′12″
119位 内間康平(日本、日本ナショナルチーム) 
139位 木下智裕(日本、日本ナショナルチーム)        +13′33″ 
140位 畑中勇介(日本、日本ナショナルチーム)   

個人総合成績
1位 クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) 16h35′05″
2位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) +24″
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)    +25″
4位 ヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)         +34″
5位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)         +45″
6位 ケニー・エリッソンド(フランス、FDJ)              +49″
7位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)  +58″
8位 ヨハン・チョップ(スイス、IAMサイクリング)
9位 マキシム・ブエ(フランス、アージェードゥーゼル)        +1′15″
10位 アルノー・ジャネソン(フランス、FDJ)            +1′23″

ポイント賞
ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)

新人賞
ケニー・エリッソンド(フランス、FDJ)

総合敢闘賞
ボビー・トラクセル(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)

チーム総合成績
BMCレーシングチーム


text:So.Isobe
photo:A.S.O.,tour of Oman

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