これまで多くのプロレースでタイトルを獲得し、とくにロードレースを志向するホビーサイクリストから大きな支持を得ているリドレー。そんな同社が初めて手がけるフルカーボンのロードバイクが「リズ」だ。ちなみにリズという車名は、リドレーのヨキム・アールツ社長の長女の名前を冠したもの。

リドレー LIZリドレー LIZ
このモデルは、一般的に小柄とされる女性ライダーに最適なフィッティングを提供し、なおかつリドレーのライディングスタイルを発揮できるよう、ジオメトリー設計を一から行ない、フレームサイズはXXSとXSの2種類が用意される。そして、上半身のフィティングでポイントとなるトップチューブ長は、XXS=500㎜、XS=505㎜に設計され、身長150cm台のライダーにも適したライディングポジションを確保しやすい仕様を実現している。

女性の体力レベルなどを考慮して24トンクラスのハイモジュラスカーボンを用いたリズのフレームは、これまでリリースされてきたリドレーのモデルにおける“いいとこどり”をしたともいえる設計が施された。

エッジシェイプデザインを反映して角型の断面に成型されるダウンチューブエッジシェイプデザインを反映して角型の断面に成型されるダウンチューブ 下側のベアリングにワンポイントファイブ規格を採用したテーパードヘッドチューブ下側のベアリングにワンポイントファイブ規格を採用したテーパードヘッドチューブ クラウン部をわずかに後方へとオフセットさせることで路面からの振動を和らげるクラウン部をわずかに後方へとオフセットさせることで路面からの振動を和らげる

フレームのパワーラインは、同社の名を世界的に広めたヒット作であるダモクレスに搭載された「エッジチュービング」をフィードバックした角型断面のダウンチューブ。そのヘッドチューブ側は縦方向への変形を大きくして断面積を稼ぐことでヘッドまわりの剛性を高め、ダンシングにおける反応性やハンドリングの安定性を追求している。

一方BB側は横方向に扁平させた形状とし、大径化されたプレスフィット30規格のハンガーシェルと相まってこの部分の剛性を高め、効率的なペダリングを目指したことによるもの。

横方向への扁平を強くしたトップチューブデザイン。乗り心地の向上に貢献する横方向への扁平を強くしたトップチューブデザイン。乗り心地の向上に貢献する アールを描くように成型されたトップチューブがフレーム全体の剛性バランスを整えるアールを描くように成型されたトップチューブがフレーム全体の剛性バランスを整える

フレームのアッパー部は、エアロモデルのノアから受け継ぐ横扁平の断面を持ちながらアーチ状に整形されたトップチューブに端を発し、そのラインは途切れることなくシートステーにつなげられる。モノステー形状のシートステーは、1本になった部分からリヤエンド付近まで横扁平の断面形状を採用する。これらトップチューブからシートステーに至る形状によって、リズは優れた乗り心地に加えて、強固に作られたパワーラインとのバランスを整え、効率的な走りを実現するためのフレーム全体の剛性を追求している。

重量はフレーム単体1150g、フロントフォーク400g。超軽量というレベルではないものの、そのグレードと価格を考えれば十分納得できるものであり、また堅牢性なども含め極めて実用的なスペックといえるだろう。

ダウンチューブのハンガー側下には電動変速に対応したバッテリー台座も設けられるダウンチューブのハンガー側下には電動変速に対応したバッテリー台座も設けられる シフトワイヤはヘッドチューブ近くから内蔵される。電動、機械式両方に対応するシフトワイヤはヘッドチューブ近くから内蔵される。電動、機械式両方に対応する

そして、細かい仕様についてもリズは抜かりがない。シフトワイヤはダウンチューブより内蔵される構造によってエアロダイナミクスへの配慮をしつつ、ワイヤ類をほこりや泥などから守り正確な操作性をもたらす。もちろん電動変速システムにも対応しており、電源ユニットを直付けできる台座もダウンチューブ下に設けられる。特に手の小さな女性の場合、変速操作を容易にしてくれる電動変速は大きなメリットとなるため、それに対応しているフレーム仕様は今後の女性用モデル必須条件ともいえる。

また、シートポストには調整幅の広いスタンダードな丸断面のシートポストを装備しているのは、入門者から上級者まで多くのユーザーにベストフィットを届けることが可能であり、リズが単に流行を追うだけでなく女性ライダーの実用面に十分に配慮した堅実な作りだ。

シートステーは横への扁平を強めつつ内側に絞ることで乗り心地を高め駆動効率を高めるシートステーは横への扁平を強めつつ内側に絞ることで乗り心地を高め駆動効率を高める
プレスフィット30規格に対応したハンガー部。大きなボリュームで十分な剛性を持つプレスフィット30規格に対応したハンガー部。大きなボリュームで十分な剛性を持つ
内側に絞られたチェーンステーによって効率的なペダリングと快適性が両立している内側に絞られたチェーンステーによって効率的なペダリングと快適性が両立している


そして、なにより嬉しいのはフェニックスと同じく、その優れたプライスパフォーマンスだ。最新トレンドを余すことなく盛り込んだパッケージでありながら、15万円を下回るフレームセット価格は、数ある女性専用カーボンフレームの中でもトップクラスの内容だ。

男性用モデルに比べると大幅に選択肢の少ない中にあって、リズは多くの女性サイクリストを魅了する1台といえるだろう。
そんなリズを、BIKE&HIKEのショップスタッフでありながらトップカテゴリーの現役女子レーサーでもある智野真央さんにインプレしてもらった。

リドレー LIZ

サイズXXS、XS
カラー1309A
フレーム素材24Tハイモジュラスカーボン
重量フレーム単体=1150g、フロントフォーク=400g
フレームセット価格14万4900円


インプレッション

「安定感に優れる走りは初心者の女性ライダーにも最適(BIKE&HIKE 智野真央)

性能の基本がしっかりしているので、いろいろな用途で楽しめる (BIKE&HIKE 知野真央)性能の基本がしっかりしているので、いろいろな用途で楽しめる (BIKE&HIKE 知野真央) まず第一印象として、走っていて気持ちのいいバイクだと感じました。1台目のロードバイクとしてアルミフレームを選んだ女性が、カーボンフレームならではの乗り心地の良さ、走りの軽さをしっかりと体感できる性能があります。とくに乗り心地はとても優れている印象で、路面の悪い下りでも安心して走ることができました。

形からも判断できる通り、フロントフォークはとてもしっかりとしていて、それも下りの安定感につながっている要因のひとつだと思います。乗りなれない女性や初心者の方は、ロードバイクを真っ直ぐ走らせることでさえ大変ですので、そんなライダーにもこのリズの安定感の高さは大きなメリットになってきます。

そして、ハンドリングもとても素直なフィーリングなので乗りやすいモデルに仕上げられています。上りが軽いという印象はありませんが、緩やかなアップダウンのあるようなコースでは走りを楽しめると思います。変化のあるサーキットコースなどはとても得意なバイクだと思います。繰り返すアップダウンを走っても楽しいでしょうね。

基本の性能がしっかりしているため、ホイールをコースや走り方によって変えることで色々な走りかたを楽しめそうです。

ショップにおいて女性のお客様の対応をしていて感じるのは、フィッティングにおいて(ヨーロッパブランドのバイクでも)脚の長さについては大丈夫なケースが多いのですが、反対に胴が短いためにトップチューブが長すぎて問題となることが多々あります。リズは最小サイズでトップ長500mmなのでカバーできる範囲も多いでしょう。

リドレー LIZリドレー LIZ 最近はリーチの短いハンドルバーも選べるので、こうした製品と組み合わせれば身長155cmぐらいの女性の方でも、リズは問題なく最適なポジションを実現できると感じます。

個人的にはいかにも女性モデルといった「可愛い系のグラフィック」よりもシンプルなものが好きなので、リズのカラーリングはとても好印象です。女性用モデルでブルーは少ないですよね。

じつはバイクがシンプルな雰囲気だと、アパレルはシンプル系、可愛い系どちらでも合わせ易く、コーディネートの幅も広げやすいと思います。身長の低い男性でも馴染みやすいカラーになっています。

リズを一番お薦めしたいのは、ある程度脚力があって100〜200kmぐらいを乗れる人。ロングライドやレースなどでもいいと思います。また、カーボンフレームとしては比較的手ごろな価格帯に入るので、1台目でもある程度予算を割ける女性の方なら、安心してロードバイクの走りを楽しむことができますね。
編集:シクロワイアード 提供:ジェイピースポーツグループ