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RMZの登場により準フラッグシップとなった「RHM9 RS」だが、そのパフォーマンスはトップレベルにある。チームブリヂストン・アンカーでもこのモデルを好んで使っている選手も多いことからも、その性能の高さを察することができる。ハイモジュラスカーボンを用いた3ピースモノコック構造で製作されているが、現行モデルはRS(レーシングスペック)となり、年を追うごとにスペックはアップデートされて性能は進化している。

アンカー RHM9 RSアンカー RHM9 RS
RHM9 RSの最も特徴的な部分は「ドラゴンクローヘッド」と名付けられたヘッドチューブの造形だ。これは菱形の断面形状を持つトップチューブとダウンチューブの形状をヘッドチューブが自然な形で受け止め、これら3つのチューブで総合的にヘッド周りの剛性を高めている。加えて外側にリブ補強をされたブレードを持つフロントフォークによってフロントセクションの剛性は最適にマネージメントされ、ハイスピードのダウンヒルにおける安定感、ゴールスプリントにおける俊敏性が追求される。また最新コンポーネントのブレーキングパワーにも負けることはない。

そしてパワーラインは、ドラゴンクローヘッドヘッドチューブにはじまり、菱形に成型された大径のダウンチューブ、さらに角型断面のチェーンステーとのコンビネーションによって駆動効率を最大限にするよう設計されている。もちろん剛性の追求ばかりではなく、シートチューブは27.2㎜のシートポストを装備するオーソドックスな外径を用いて、モノタイプのシートステーはリブ入りの扁平形状とスポーク側に絞り込んだ形状を組み合わせて快適性がバランスされている。

トップチューブとダウンチューブがヘッドチューブをつかむようにデザインされた「ドラゴンクローデザイン」。ヘッド周りの一体感ある剛性を生み出しつつ、応力も分散させるトップチューブとダウンチューブがヘッドチューブをつかむようにデザインされた「ドラゴンクローデザイン」。ヘッド周りの一体感ある剛性を生み出しつつ、応力も分散させる ヘッドチューブは520㎜(ホリゾンタル換算トップチューブ長550㎜)で140㎜。レーシングバイクらしい短めの設計により、上級者が前傾ポジションをしっかり確保できるヘッドチューブは520㎜(ホリゾンタル換算トップチューブ長550㎜)で140㎜。レーシングバイクらしい短めの設計により、上級者が前傾ポジションをしっかり確保できる シートステーはオーソドックスなモノタイプを採用し、メインフレームに差し込み接着される。精度と生産性、乗り心地と剛性などあらゆる面でのバランスに優れる方式だシートステーはオーソドックスなモノタイプを採用し、メインフレームに差し込み接着される。精度と生産性、乗り心地と剛性などあらゆる面でのバランスに優れる方式だ

菱形断面に成型されたトップチューブ。ねじれ剛性を確保しながらも、路面からの突き上げを緩和して快適性が追求される。ヘッドからシートチューブに向かって徐々に細くなる菱形断面に成型されたトップチューブ。ねじれ剛性を確保しながらも、路面からの突き上げを緩和して快適性が追求される。ヘッドからシートチューブに向かって徐々に細くなる
また見逃せないのはフロントフォークだ。アンカーの多くの車種に共通しているが、サイズごとに専用のオフセットを用意して、同社が理想とするトレール値に設計されている。これにより、サイズが異なっても一貫したハンドリング特性が実現されている。近年ではサイズに応じて異なるオフセットを用意するメーカーも増えつつあるが、アンカーではかなり昔からこうした取り組みを行っている。特にフレームサイズが小さなモデルでは標準的なモデルのようなハンドリング特性を実現するには、専用のオフセット量を持つフォークの装備が不可欠となる。これはコストがかさむため避けているメーカーも少ない。アンカーの「クセがなくて乗りやすい」という評判は、こうした真摯な取り組みによって実現されている。

1-1/8インチのコラム径を採用したオーソドックスなシェイプのフロントフォークを組みわせる。フォークブレードはわずかなアールを描いた形状で振動吸収性にも配慮する1-1/8インチのコラム径を採用したオーソドックスなシェイプのフロントフォークを組みわせる。フォークブレードはわずかなアールを描いた形状で振動吸収性にも配慮する フォークブレードにピンポイントでデザインされたリブは、ねじれ剛性を高めるための加工。ハンドリングやブレーキングによるバイクの挙動を安定させる狙いだフォークブレードにピンポイントでデザインされたリブは、ねじれ剛性を高めるための加工。ハンドリングやブレーキングによるバイクの挙動を安定させる狙いだ シートステーのブレーキブリッジ以下の部分は、中間部分に縦方向の扁平形状を採用する。さらに内側に絞り込むデザインとすることでねじれ剛性と乗り心地がバランスされているシートステーのブレーキブリッジ以下の部分は、中間部分に縦方向の扁平形状を採用する。さらに内側に絞り込むデザインとすることでねじれ剛性と乗り心地がバランスされている

チェーンステーはBB側を角型に整形。リヤエンドに向かって徐々に丸断面に変化する。中間部分を内側に絞り込む形状によって剛性を高め、加速のレスポンスを向上させるチェーンステーはBB側を角型に整形。リヤエンドに向かって徐々に丸断面に変化する。中間部分を内側に絞り込む形状によって剛性を高め、加速のレスポンスを向上させる BBシェルはオーソドックスなスレッドタイプ。ボリューム感のあるダウンチューブと角型のチェーンステーによって、BB部分の必要なねじれ剛性と横剛性が制御されているBBシェルはオーソドックスなスレッドタイプ。ボリューム感のあるダウンチューブと角型のチェーンステーによって、BB部分の必要なねじれ剛性と横剛性が制御されている

重量面ではRMZを上回る軽さを実現している。フレーム単体では1030g(490㎜)に仕上げられており、シマノ・デュラエースとマヴィック・キシリウム SLというオーソドックスなコンポーネントを装備しても6.9㎏(490㎜ ペダルなし)をマークする。軽めのパーツアッセンブルを行なえば6㎏台前半も十分に狙えるスペックを備えるので、ヒルクライムへの挑戦をはじめ軽さにも気を配るライダーは、特にこのバイクに魅力を感じるだろう。

ジオメトリーの微妙な調整、剛性のさらなるマッチングを望むのならRMZという選択肢があるが、その部分に不足を感じなければRHM9 RSは極めてRMZに近いライディングパフォーマンスとスペックを備えており、その価格をみても非常にお買い得なモデルといえるだろう。シリアスにロードレースでのパフォーマンスを追求するライダーにとって人気が高いのはうなずける話だ。

アンカー RHM9 RSアンカー RHM9 RS

スペック

フレーム3ピースHMカーボン RS インテグラルヘッド
フォークHMカーボンモノコック オーバーサイズ
メインコンポシマノ・デュラエース
ホイールマヴィック・キシリウムSL
タイヤブリヂストン・エクステンザRR-1X 700×23C
ハンドルデダ・ゼロ100コルセRS ブラック
ステムデダ・ゼロ100
シートポストデダ・ゼロ100
サドルフィジーク・アリオネキウム
重量6.9㎏(490㎜ ペダル無し)、
1,030g(490㎜フレーム単体)、
1,480g(490㎜フレームセット)
カラーレーシングカラー12色、
シングルカラー36色から選択可
(一部カラーはアップチャージが必要)
価格695,000円(完成車標準価格)
270,000円(フレームセット標準価格)
※セレクトパーツの仕様によって価格は変わります。



インプレッション

「誰が乗っても満足できる抜群のコストパフォーマンス」
(YOU CAN 八王子店 浅野浩一)

CW:フラッグシップにRMZがあるとはいえ、RHM9 RS(以下RHM9)はレーサーの間でも人気が高いモデルですね。チームブリヂストン・アンカーでも、清水都貴選手をはじめ乗っている選手も多いようですが、このモデルの魅力はどんなところでしょう。

浅野:RMZはレースをする人が乗ると性能を体感しやすいバイクです。このRHM9は、選手からホビーでロードバイクに乗ることを楽しむ人まで、誰が乗っても満足できる性能を持っています。最大のメリットは乗りやすさです。いい意味で尖ったところがなくて、すべての性能がある程度高いレベルで上手くバランスされています。

佐野:最新の高級モデルは剛性が高かったり、軽量だったり、どのメーカーもクセがそれなりにあると思います。でも、RHM9はトップレベルのレーシングモデルでありながらとても扱いやすい性能です。これはアンカーのバイク全てに共通するところですが、特にRHM9は際立っているかもしれません。

CW:具体的にいうとどんな部分がいいのでしょうか。

浅野:乗った感じが軽いですね。踏み出し自体も軽くて、ダンシングも軽いのでスピードに乗せるのにも無駄な力を使わず走れます。

自然なハンドリングで下りでもコーナリングでも自分の思った通りのラインを確保できる(浅野)自然なハンドリングで下りでもコーナリングでも自分の思った通りのラインを確保できる(浅野)
佐野:RMZよりも剛性のレベルは抑えられていますが、必要十分なレベルにあります。自分にとってはRHM9の剛性感の方が乗りやすいと感じました。RMZの反応性はとても優れているのですが、反面ハンドリングなど時に自分の思った以上の反応をするので、そこにちょっと神経を遣うこともあります。試乗時間が限られていた部分もあるので乗り慣れてしまえばそれが利点になるとは思います。しかしRHM9の方が自由に乗れるというか、バイクが自分に合わせてくれる従順さを持っている印象を受けます。特に疲れたり、状況が厳しい場面で自分の走りを補ってくれる性能があります。

CW:ハンドリングなどの操作性はどうでしょう。

浅野:とてもいい感触でした。自然なハンドリングで下りでも、コーナリングでも自分の思った通りのラインを確保できます。疲れたり、路面が悪かったり、あらゆる状況下でストレスなく走れると思います。RMZは反応性が高いので若干切れこむような感覚がありますね。RHM9のほうが誰にでも扱いやすい。

佐野:RMZより剛性が抑えられているだけ、安定性も高い印象です。ヘッド部は一般的な1-1/8インチですが、高速の下りやコーナリングでも剛性感に不足はなく、かえって扱いやすくバイクに安心して身を任せられます。

「クセがなくて、自分の能力にバイクが合わせてくれる」
(YOU CAN 海老名店 佐野友哉)

CW:乗り心地についてはどうでしょうか。

浅野:いいですね。ロングライドにも十分対応できるのではないでしょうか。

佐野:十分な振振動吸収性です。ロングライドに適したと言われるモデルに迫る程の乗り心地の良さを備えているように思えます。

CW:今はレーシングモデルでもロングライドを中心に楽しむユーザーが多いので、一般のユーザーにはうれしいですね。とはいうものの、このバイクの性能が生きてくるのは断然レースです。上りも軽く走ることができるので、アップダウンのあるロードレースは適度な無駄な力を使わずアドバンテージを得られると思います。基本的にレースバイクに必要な基本性能を高いレベルでバランスしているので、ヒルクライムも悪くないと思いますが、それをメインに考えるのなら個人的にはもう少し重量の軽さがほしいですね。

浅野:ヒルクライムだと今は重量が軽いモデルがいっぱいあるので、RHM9はそういう自転車ではないです。あくまでもロードレーサーとしてのバランスに優れたモデルで、コースも平地のスピードレースから上りの多いコースまで、オールラウンドに対応できます。扱いやすい性能がライダーの体力を温存して、能力を引き出してくれると思います。

CW:フレーム価格は20万円後半です。このクラスだとかなり競合する車種もあると思うのですが、それらと比べていかがでしょうか。

この素直さは、誰が乗っても性能の良さを体感できる(佐野)この素直さは、誰が乗っても性能の良さを体感できる(佐野)
浅野:今は高級グレードともなるとフレームセットで40万円以上するモデルが多いのですが、それらと比較してもRHM9が持っている性能は遜色ないと思います。20万円台後半のモデルとしては非常に高いプライスパフォーマンスです。選手の立場でこのモデルを供給されたら何の文句もありません。

佐野:RHM9のように性能のバランスが良くて、しかもクセがないバイクというのは、今は少ないかもしれません。でもこの素直さは、誰が乗っても性能の良さを体感できるはずです。僕はRMZとRHM9だったら、あらゆる状況での対応力の高さ、自分にバイクが合わせてくれる乗りやすさがあるのでRHM9を選びます。個人的にはロードレースがRHM9の性能を最も発揮できると思いますが、エンデューロをはじめいろいろ楽しみたいユーザーにとってもいい選択肢になるでしょう。一般の方ならRHM9で乗り込んで、自分なりの好みの方向性をつかめてきたら、それをベースにしてRMZでオーダーするといいかもしれませんね。

CW:やはりチームブリヂストン・アンカーでも好んで使用する選手がいるのは、おふたりの意見を伺っても納得できますね。RMZは高額なので購入出来る人は限られますが、RHM9の価格は現実的なので、ホビーサイクリストにとって「等身大のレーシングバイク」と言えそうですね。

提供:ブリヂストンサイクル株式会社 企画/制作:シクロワイアード