2024/12/22(日) - 17:47
ロードサイクリストのライドスタイルの変化に合わせて、ロード、オールロード、グラベルの3モデルを展開し、新たな世界観を提示したC68。今回はコルナゴを愛用するショップスタッフがこれらに試乗し、それぞれのライディングフィール、そして〝C〟の魅力を総括する。聞き手は、これまでコルナゴの主要モデルを試乗してきた自転車ジャーナリストの吉本司である。
長野雄大さん
ライドフィールドへのアクセスも容易な多摩地区に拠点を構え、ハードの提供だけでなく豊かなバイクライフをサポートする「THE BASE南大沢店」のストアマネージャー。20年におよぶ豊富なスポーツバイクの経験を持つ。以前はホビーでヒルクライムやクリテリウムなどのレースにも参加していたが、最近はカフェライドなどマイペースのライドを中心に楽しむことが多い。過去ビアンキやデローザなどのイタ車を主に乗り継いできたが、今年C68ロードを手に入れた。
中島佑樹さん
神奈川県を中心に展開するスポーツバイクストアSBC湘南藤沢店にて店長を務める。高校時代からロードレースを走りJBCFにも参戦した経験を持つ。29歳でありながら10年以上におよぶショップスタッフとレーサーの経験から、機材へのマニアックな視点を持つ。初めてのコルナゴはM10。以降歴代のVシリーズを乗り続け、現在はV4Rsを愛車とする。自身のコルナゴに対する深い愛情と知識もあって、コルナゴの販売台数は日本屈指のレベルだという。
今回C68シリーズを試乗いただいたコルナゴユーザーのお二人。長野雄大さんはC68ロード、中島佑樹さんはV4Rsを所有する。長野さんはもちろんのこと、中島さんもC68ロードの乗車経験はあるが、オールロードとグラベルは初体験である。ちなみに聞き手の吉本司は、ロード、オールロードともに試乗経験がある。
吉本:まずはC68ロードの印象から伺いましょう。現オーナーの長野さん、改めての印象はいかがでしたか?
長野:自分のバイクとは違うホイールでしたが、やはり印象はほとんど変わりません。がっちり、どっしりという重厚感が強いです。初速がものすごく軽いわけではありませんが、ある程度のスピード域に達するとすごくスムーズに進んでくれます。スピードが上がっても安心感は高く、速度域が上がるほどに走りが楽しくなりますね。
中島:本当に長野さんのおっしゃる通りです。ペダリングフィールに関してはスパルタンですね。車体の強度・剛性が高く重厚感があって、直進安定性、そして路面追従性がとても高いですね。普段乗っているV4Rsとキャラクターは違うんですけど、過去に自分が乗ってきたラインアップの中では、コルナゴらしさが最も感じられて、これぞコルナゴって感じですね。
吉本:ホイールベースが実際の寸法より長いものに乗っている安心感があって、いい意味で重厚感にあふれるものが、力強く進む印象を受けますね。
中島:その強さをすごく感じますね。C68は。
吉本:だから乗ると「これはコルナゴだ!」「Cだ!」って分かりますね。
中島:コルナゴって進化をしながらも、この安定感という基本は変わらない。素晴らしいことだと思うんです。
吉本:それが最も濃厚なのがC68じゃないかと。先ほども長野さんが「がっつり、どっしり」と語られていましたが、そうした表現ゆえに「硬いのかな?」というイメージを持つ方もいそうですが、そのあたりはいかがですか?
長野:実際に長距離をこなすと、走りの場面によっては脚にきているような感覚を得ることもあるので剛性は高いと思います。でも、それが嫌なレベルではありません。路面をしっかりと捉えているような乗り味は、どちらかといえば絨毯の上を走っているようなラグジュアリーな感覚で、気持ちよく走れるイメージが強いんです。
吉本:軽量・肉薄チューブのフレームにある「硬さ」とは質が違いますよね。C68は踏みしろがあって、脚が跳ね返されるような嫌な硬さだと感じにくい。それが絶妙で、だから表現される言葉として「硬い」というよりも「かっちり」というポジティブなイメージを含むものになるのかもしれませんね。
中島:むやみやたらと硬いフレームってわけではないですよ。
吉本:快適性は単純に乗り心地がいいというより、振動の減衰が早くてバイクが暴れにくく、制御しやすい印象ですが、そのあたりはいかがですか。
長野:ギャップなどはフレームがいなして衝撃を抑えてくれる感じがすごくあります。だから、下りがすごく走りやすいんです。とくに路面が多少荒れたような下りはすごく楽です。
中島:そうそう。トントンって振動をうまく抑えてくれるから安心感が高いですよね。下りは本当にいいですよ。
長野:感覚的にも、実際にも速く走れていると思います。コーナリングでも癖はなく、狙ったラインを無理なくトレースできます。路面に引っ付いているような感覚が強くて、下りは本当に気持ちいいですね。
吉本:曲がりたい方向に体を倒すと、スッと自然に自転車が倒れて曲がってくれるという感じでしょうか?
中島:まさにオンザレール感、ですね。下りをこれほど気を遣わずに走れるバイクってほかに無いんじゃないでしょうか?自分が走らせたいシチュエーションにしっかり対応してくれますし。攻めればアグレッシブに走れるし、ゆっくり乗ろうと思えばゆったり。素直なハンドリングはコルナゴの一貫して変わらないところですよね。
吉本:こういうストレスのない自転車は、長距離を乗っても疲れないんですよね。
中島:V4Rsの方が踏み出しが軽く、やはり最近のレースバイク的な気持ち良さを感じやすいのですが、でも良くも悪くも速く「走らされて」しまう。それはレースのような速さを求める場面では味方になってくれますが、それを毎日必要な人がどれだけいるかと言われると、プロ選手以外はいないですからね……。
吉本:そうですね。僕のようなホビーライダーからすると、体力に余裕があるときは楽しく走れるけど、疲れてくると運動性能の高さがオーバースペックになり、辛くなってしまうところがありますからね。
中島:今日改めて1日C68に乗ってみると、やっぱり長い時間ストレスなく乗れる良い自転車だと思い知らされましたね。
吉本:では、そろそろC68オールロードの話に移りましょう。これは良い意味でびっくりな1台ですよね。
中島:こんなことを言うと怒られちゃうかもしれないんですが...乗る前までは、ぶっちゃけ開発する意味があったのかな?って感じていました。ここまで細かく分けなくても、グラベルがあればいいのかなと。
長野:そうですよね。フレームに入るタイヤの幅とジオメトリーが少し違うというのは分かっていたのですが、数字を見ただけでは、どれだけ走りの差があるか想像しにくい。乗って違いがあまり分からなかったらどうしようって…。
吉本:でも、実際に乗るとお二人とも絶賛でしたね。
長野:今回の試乗で最初に乗ったのがオールロードで、峠を走るとC68(ロード)で上る感覚とまったく違うんです。驚いたことにオールロードの方が上りやすいんです。ロードよりも少し重心バランスは高いけれど、前後バランスが良くてシッティングでもダンシングでも挙動が安定したまま、すごく軽く上れるんです。あれ、俺今日は調子がいいかな?ってほどに。
吉本:中島さんはどうですか。
中島:最初はC68ロードで上りましたが、剛性感も重厚感もあるので一定ペースで走らせやすい。でも自分は、上りはそんなに得意じゃないので、やっぱりきついんですよ。でも2回目にオールロードで同じ峠を上ったら呼吸が楽で、上半身をうまく使ってペダリングができたりして、ダンシングもシッティングもいろいろ自分の引き出しを使って走れる。走りの幅が広い印象を持ちました。
吉本:僕も以前にオールロードは試乗して、その走りの良さに感動したんです。端的にロードより踏み出しが軽いですね。だから勾配がきつくなった時などのちょい踏みも楽だし、ダンシングも軽くてリズムも取りやすいですね。
中島:それは感じますね。もう体力が続く限りダンシングで走り続けたいみたいな。それこそダンシングが苦手な方でも走らせやすいですよね。
長野:あまり考えなくても、自分のイメージ通りにダンシングができちゃいますね。
吉本:うりふたつの形なのにこうも乗り味が違う。長野さんもおっしゃっていましたけど、何が起こっているのか説明が付かないほどですよね。
中島:走り自体は(完全に)違うモデル名にしても良いほどに違いますよね。
長野:ロードとオールロードの走りを比べた時、オールロードの方がビギナーに近い方からベテランまで幅広い方が楽しめる懐の深さがあると感じます。それくらい乗りやすいバイクで、ロードモデルのどっしり感を良い意味で感じにくい。
吉本:確かに。オールロードは乗りやすいですよね。ロードはある速度域から走りの力強さがグッと強くなって、いかにもCシリーズという走りかなと。だからパワーをかけられるライダーの方が楽しさを得やすいのかもしれません。オールロードはそれよりも加速の軽さに振った感じなので、それが長野さんがおっしゃった通り、幅広いユーザーにもマッチするのでしょうね。
中島:オールロードは上りだけじゃなくて平地でもよく走りますよ。ペダリングに対して綺麗にバイクが流れていきます。30Cのタイヤが付いているとは思えない走りの軽さでした。味付け的には最近のモデルに近い走りで、レースを経験していない方が選ぶには良い選択肢ですね。迷ったらコレを買っておけば絶対間違いない。
長野:ロードとオールロードで走りは違うところもあるんですが、それでも、振動減衰の早さなど共通する部分もいろいろあって、やっぱり近い感覚のバイクという印象もあります。
吉本:同じC68を名乗る2台ですからね。でも、走行感を見事に差別化しているのは、やはりコルナゴはすごいなと。
長野:試乗中に中島さんとも話題になったんですけど、オールロードはビジュアル的にもフレームに「C68」としか記されないので、ロードと区別が付きにくい。他社のエンデュランス系だとヘッドチューブが長すぎて野暮ったい印象もありますから。だからレースシーンに近い乗り方をしてきた人、ハイエンドのレースモデルの雰囲気やビジュアルが好きな方でもオールロードを受け入れやすい。コルナゴもそういう意図があって、あえて「C68」としか記さないんでしょうね。
吉本:それはレーシングブランドのコルナゴらしい仕様ですよね。昔はレーサーだったけど、今はノンレースだけど、自分のペースでしっかり走りたいというベテランが乗るには最高の1台でしょうね。しかも太めのタイヤを履けばグラベルも少し走れちゃいますし。
中島:今回はオールロードでグラベルを走ってみたのですが、やっぱりタイヤが太いので、これで走っても(路面がフラットダートということもあって)結構走れちゃいました。それこそグラベルタイヤを入れればもっと楽しめるでしょうし、レースイベントに参戦することだって当然可能なほど走るバイクです。幅広い楽しみができるので、いろいろな人にお薦めできます。今回乗ってみて、C68オールロードが用意されている理由が分かりましたよ。
吉本:さて、グラベルの話が少しでたところで、最後にこのグラベルモデルの印象をうかがいましょう。
中島:単純に乗って楽しかったです(笑) もともとコルナゴはハンドリングもしっかりしていて安定感も高いので、このグラベルはそれに輪をかけて安定感が高いので、今日みたいなちょっと荒れた路面くらいなら、結構なスピードで突っ込んでいっても破綻しないですよね。G4-Xと乗り比べてみたい部分もありますけど……。
長野:やっぱり安定感は強いですね。だから長い距離のグラベルとか走るのはストレスが少なくていいでしょうね。
吉本:僕も少し乗らせてもらいましたが、他のC68と同じく振動減衰性が速いためかギャップで跳ねにくいので、高速域も良いかなと想像します。
中島:グラベル区間に入る前の舗装路を高速で走っていたときに、マンホールの段差にはまったんですけど全然挙動が乱れないんです。やっぱりハンドリングの安定感はコルナゴならではですよね。
吉本:グラベルって基本不安定な走りになるので、一番求められるのは高い安定性ですよね。そういえばGシリーズとの差ってどうなんでしょう?
長野:GシリーズとC68グラベルのジオメトリーを見比べると、Gシリーズの方がBBドロップが小さいんですね。
吉本:フロントセンターはC68の方が長いですね。キャスターアングルもC68の方が小さい(寝ている)ので、つまりC68はGシリーズと比べて低重心の設計ってことですね。
中島:だから路面にへばりつくような感覚が強いんでしょうね。
吉本:GシリーズはもともとCXバイクのプレステージの流れを汲むレース系なので、加速の良さでストップ&ゴー的走りでも対応できるような味付けで、C68グラベルはある程度グラベルを、いい速度の等速で走り続けるような走り方に重きを置くのかもしれませんね。
長野:確かにそういう走りは気持ちいいでしょうね。そう考えるとC68で発売するコンセプトは分かりますよね。他のモデルとつながっているものはありますよね。
吉本:トレンドとはいえ、それにしてもコルナゴもグラベルロードを出す時代なんですね。でも、長野さんがおっしゃる通り、ちゃんとCシリーズの雰囲気を備えていますし、それが今回のロードからグラベルの3モデルに貫かれていることがすごいことだと感じます。
吉本:最後は3モデルを少し総括しようと思います。Cシリーズというとラグ構造が象徴的ですが、C68になってその発展型と言えるような構造になりました。それによる乗り味の変化はありますか。
中島:C64と比べるとモノコックフレームの感覚に近づいたとは思います。でも、フレームに芯があってチューブに高い密度があるような感覚は、やはりラグフレームのイメージです。だから両者のいいところをちょうど良くバランスしているのかなと。このフィーリングは良いですね。
長野:昔のままじゃないのがコルナゴらしいです。でも、乗るとCシリーズらしさはちゃんと残っているのも、またコルナゴらしい。過去、振り返るとCシリーズって進化の過程でEPSとか派生モデルも出てきたじゃないですか、それをふと思い出すとC68が3モデルあるのも納得できるんです。
吉本:なるほど。経営面で考えれば3種類あるのは効率が悪いですよ。それこそ今はVシリーズがあって、Cシリーズ自体がメインではないと思うので、だからそもそもCシリーズを作っていること自体がすごいなと。
中島:自分たちのアイデンティティだからですよね。しかもこれだけ手間をかけて作っていますからね。コルナゴのファンを大切にしてくれていますね。たぶんCシリーズがなくなったら離れる人も結構いると思いますよ。
吉本:そうかもしれないですね。
中島:C68が発売されてから、うちの店舗でも購入される方が増えているんです。ちゃんとV4Rsと乗り比べていただいた上でC68を選ばれている。うちにはコルナゴのコミュニティがあるんですけど、半分以上がC68なんです。購入された方に話を伺うと、やっぱり安定感があって気を遣わなくて乗れるとか、塗装がすごいきれいでかっこいいとかなんです。
吉本:Cシリーズはもちろん加速側の性能も楽しいけれど、路面が悪かったり疲れていたり、ライダーに不利な状況でとても味方になってくれるバイクだと感じます。こういうバイクこそ一般のライダーが選ぶべきなのかなと。
長野:今は空力とか軽量が重視されていて、あまり安定性みたいなものって重視されないじゃないですか。でも、それってすごく大切で、意のままにコントロールできるとか、ペダリングのフィーリングが合うとか、そういう自分と自転車という対話が乗る楽しみじゃないですか。空力とかってそれとは違う要素なので。
吉本:本当にそう思いますね。
長野:C68ロードだと、どの位置に乗るとバランス良く、気持ち良く走れるんだろうとか、自転車と会話をしながら走っている感じがありますね。時速30㎞後半の手前くらいだと、C68に「まだまだだ」と言われているような気がして、そこから上の速度域になると「いいところまで来たな」という感じになって気持ちよく走らせてもらえるみたいな。うまく言えないんですけど、そういうバイクなんですよね。C68って。
吉本:自転車ってやっぱり馬みたいなもので、自転車の声を聞いて手なづけるみたいな作業が必要なのかなと。コルナゴというかC68は、自転車のキャラクターが明確なので、対話を楽しめるバイクなんでしょうね。
中島:それってレーサーにとっては無駄で、何も考えずに直感的に速いバイクがいいんです。でも、今やクルマのマニュアル車って、無駄を楽しむことじゃないですか。それを僕たちは自転車でも感じたいですよね。しかもコルナゴのバイクって新しいモデルでも対話ができるんですよ。それが僕たちがコルナゴを好きな理由だし、こうして語っていけるんだと思います。
吉本:本当にそうですね。コルナゴ、そしてC68というバイクは、自転車遊びを豊かにしてくれる1台なんでしょうね。
C68シリーズインプレッション 3モデルに宿るコルナゴのDNAとは?
テストライダープロフィール
長野雄大さん
ライドフィールドへのアクセスも容易な多摩地区に拠点を構え、ハードの提供だけでなく豊かなバイクライフをサポートする「THE BASE南大沢店」のストアマネージャー。20年におよぶ豊富なスポーツバイクの経験を持つ。以前はホビーでヒルクライムやクリテリウムなどのレースにも参加していたが、最近はカフェライドなどマイペースのライドを中心に楽しむことが多い。過去ビアンキやデローザなどのイタ車を主に乗り継いできたが、今年C68ロードを手に入れた。
中島佑樹さん
神奈川県を中心に展開するスポーツバイクストアSBC湘南藤沢店にて店長を務める。高校時代からロードレースを走りJBCFにも参戦した経験を持つ。29歳でありながら10年以上におよぶショップスタッフとレーサーの経験から、機材へのマニアックな視点を持つ。初めてのコルナゴはM10。以降歴代のVシリーズを乗り続け、現在はV4Rsを愛車とする。自身のコルナゴに対する深い愛情と知識もあって、コルナゴの販売台数は日本屈指のレベルだという。
今回C68シリーズを試乗いただいたコルナゴユーザーのお二人。長野雄大さんはC68ロード、中島佑樹さんはV4Rsを所有する。長野さんはもちろんのこと、中島さんもC68ロードの乗車経験はあるが、オールロードとグラベルは初体験である。ちなみに聞き手の吉本司は、ロード、オールロードともに試乗経験がある。
C68ロード:抜群の安定感で唯一無二のダウンヒル性能
吉本:まずはC68ロードの印象から伺いましょう。現オーナーの長野さん、改めての印象はいかがでしたか?
長野:自分のバイクとは違うホイールでしたが、やはり印象はほとんど変わりません。がっちり、どっしりという重厚感が強いです。初速がものすごく軽いわけではありませんが、ある程度のスピード域に達するとすごくスムーズに進んでくれます。スピードが上がっても安心感は高く、速度域が上がるほどに走りが楽しくなりますね。
中島:本当に長野さんのおっしゃる通りです。ペダリングフィールに関してはスパルタンですね。車体の強度・剛性が高く重厚感があって、直進安定性、そして路面追従性がとても高いですね。普段乗っているV4Rsとキャラクターは違うんですけど、過去に自分が乗ってきたラインアップの中では、コルナゴらしさが最も感じられて、これぞコルナゴって感じですね。
吉本:ホイールベースが実際の寸法より長いものに乗っている安心感があって、いい意味で重厚感にあふれるものが、力強く進む印象を受けますね。
中島:その強さをすごく感じますね。C68は。
吉本:だから乗ると「これはコルナゴだ!」「Cだ!」って分かりますね。
中島:コルナゴって進化をしながらも、この安定感という基本は変わらない。素晴らしいことだと思うんです。
吉本:それが最も濃厚なのがC68じゃないかと。先ほども長野さんが「がっつり、どっしり」と語られていましたが、そうした表現ゆえに「硬いのかな?」というイメージを持つ方もいそうですが、そのあたりはいかがですか?
長野:実際に長距離をこなすと、走りの場面によっては脚にきているような感覚を得ることもあるので剛性は高いと思います。でも、それが嫌なレベルではありません。路面をしっかりと捉えているような乗り味は、どちらかといえば絨毯の上を走っているようなラグジュアリーな感覚で、気持ちよく走れるイメージが強いんです。
吉本:軽量・肉薄チューブのフレームにある「硬さ」とは質が違いますよね。C68は踏みしろがあって、脚が跳ね返されるような嫌な硬さだと感じにくい。それが絶妙で、だから表現される言葉として「硬い」というよりも「かっちり」というポジティブなイメージを含むものになるのかもしれませんね。
中島:むやみやたらと硬いフレームってわけではないですよ。
吉本:快適性は単純に乗り心地がいいというより、振動の減衰が早くてバイクが暴れにくく、制御しやすい印象ですが、そのあたりはいかがですか。
長野:ギャップなどはフレームがいなして衝撃を抑えてくれる感じがすごくあります。だから、下りがすごく走りやすいんです。とくに路面が多少荒れたような下りはすごく楽です。
中島:そうそう。トントンって振動をうまく抑えてくれるから安心感が高いですよね。下りは本当にいいですよ。
長野:感覚的にも、実際にも速く走れていると思います。コーナリングでも癖はなく、狙ったラインを無理なくトレースできます。路面に引っ付いているような感覚が強くて、下りは本当に気持ちいいですね。
吉本:曲がりたい方向に体を倒すと、スッと自然に自転車が倒れて曲がってくれるという感じでしょうか?
中島:まさにオンザレール感、ですね。下りをこれほど気を遣わずに走れるバイクってほかに無いんじゃないでしょうか?自分が走らせたいシチュエーションにしっかり対応してくれますし。攻めればアグレッシブに走れるし、ゆっくり乗ろうと思えばゆったり。素直なハンドリングはコルナゴの一貫して変わらないところですよね。
吉本:こういうストレスのない自転車は、長距離を乗っても疲れないんですよね。
中島:V4Rsの方が踏み出しが軽く、やはり最近のレースバイク的な気持ち良さを感じやすいのですが、でも良くも悪くも速く「走らされて」しまう。それはレースのような速さを求める場面では味方になってくれますが、それを毎日必要な人がどれだけいるかと言われると、プロ選手以外はいないですからね……。
吉本:そうですね。僕のようなホビーライダーからすると、体力に余裕があるときは楽しく走れるけど、疲れてくると運動性能の高さがオーバースペックになり、辛くなってしまうところがありますからね。
中島:今日改めて1日C68に乗ってみると、やっぱり長い時間ストレスなく乗れる良い自転車だと思い知らされましたね。
C68オールロード 軽快な走りで車名にふさわしい万能モデル
吉本:では、そろそろC68オールロードの話に移りましょう。これは良い意味でびっくりな1台ですよね。
中島:こんなことを言うと怒られちゃうかもしれないんですが...乗る前までは、ぶっちゃけ開発する意味があったのかな?って感じていました。ここまで細かく分けなくても、グラベルがあればいいのかなと。
長野:そうですよね。フレームに入るタイヤの幅とジオメトリーが少し違うというのは分かっていたのですが、数字を見ただけでは、どれだけ走りの差があるか想像しにくい。乗って違いがあまり分からなかったらどうしようって…。
吉本:でも、実際に乗るとお二人とも絶賛でしたね。
長野:今回の試乗で最初に乗ったのがオールロードで、峠を走るとC68(ロード)で上る感覚とまったく違うんです。驚いたことにオールロードの方が上りやすいんです。ロードよりも少し重心バランスは高いけれど、前後バランスが良くてシッティングでもダンシングでも挙動が安定したまま、すごく軽く上れるんです。あれ、俺今日は調子がいいかな?ってほどに。
吉本:中島さんはどうですか。
中島:最初はC68ロードで上りましたが、剛性感も重厚感もあるので一定ペースで走らせやすい。でも自分は、上りはそんなに得意じゃないので、やっぱりきついんですよ。でも2回目にオールロードで同じ峠を上ったら呼吸が楽で、上半身をうまく使ってペダリングができたりして、ダンシングもシッティングもいろいろ自分の引き出しを使って走れる。走りの幅が広い印象を持ちました。
吉本:僕も以前にオールロードは試乗して、その走りの良さに感動したんです。端的にロードより踏み出しが軽いですね。だから勾配がきつくなった時などのちょい踏みも楽だし、ダンシングも軽くてリズムも取りやすいですね。
中島:それは感じますね。もう体力が続く限りダンシングで走り続けたいみたいな。それこそダンシングが苦手な方でも走らせやすいですよね。
長野:あまり考えなくても、自分のイメージ通りにダンシングができちゃいますね。
吉本:うりふたつの形なのにこうも乗り味が違う。長野さんもおっしゃっていましたけど、何が起こっているのか説明が付かないほどですよね。
中島:走り自体は(完全に)違うモデル名にしても良いほどに違いますよね。
長野:ロードとオールロードの走りを比べた時、オールロードの方がビギナーに近い方からベテランまで幅広い方が楽しめる懐の深さがあると感じます。それくらい乗りやすいバイクで、ロードモデルのどっしり感を良い意味で感じにくい。
吉本:確かに。オールロードは乗りやすいですよね。ロードはある速度域から走りの力強さがグッと強くなって、いかにもCシリーズという走りかなと。だからパワーをかけられるライダーの方が楽しさを得やすいのかもしれません。オールロードはそれよりも加速の軽さに振った感じなので、それが長野さんがおっしゃった通り、幅広いユーザーにもマッチするのでしょうね。
中島:オールロードは上りだけじゃなくて平地でもよく走りますよ。ペダリングに対して綺麗にバイクが流れていきます。30Cのタイヤが付いているとは思えない走りの軽さでした。味付け的には最近のモデルに近い走りで、レースを経験していない方が選ぶには良い選択肢ですね。迷ったらコレを買っておけば絶対間違いない。
長野:ロードとオールロードで走りは違うところもあるんですが、それでも、振動減衰の早さなど共通する部分もいろいろあって、やっぱり近い感覚のバイクという印象もあります。
吉本:同じC68を名乗る2台ですからね。でも、走行感を見事に差別化しているのは、やはりコルナゴはすごいなと。
長野:試乗中に中島さんとも話題になったんですけど、オールロードはビジュアル的にもフレームに「C68」としか記されないので、ロードと区別が付きにくい。他社のエンデュランス系だとヘッドチューブが長すぎて野暮ったい印象もありますから。だからレースシーンに近い乗り方をしてきた人、ハイエンドのレースモデルの雰囲気やビジュアルが好きな方でもオールロードを受け入れやすい。コルナゴもそういう意図があって、あえて「C68」としか記さないんでしょうね。
吉本:それはレーシングブランドのコルナゴらしい仕様ですよね。昔はレーサーだったけど、今はノンレースだけど、自分のペースでしっかり走りたいというベテランが乗るには最高の1台でしょうね。しかも太めのタイヤを履けばグラベルも少し走れちゃいますし。
中島:今回はオールロードでグラベルを走ってみたのですが、やっぱりタイヤが太いので、これで走っても(路面がフラットダートということもあって)結構走れちゃいました。それこそグラベルタイヤを入れればもっと楽しめるでしょうし、レースイベントに参戦することだって当然可能なほど走るバイクです。幅広い楽しみができるので、いろいろな人にお薦めできます。今回乗ってみて、C68オールロードが用意されている理由が分かりましたよ。
C68グラベルにもCシリーズの安心感がしっかり宿っている
吉本:さて、グラベルの話が少しでたところで、最後にこのグラベルモデルの印象をうかがいましょう。
中島:単純に乗って楽しかったです(笑) もともとコルナゴはハンドリングもしっかりしていて安定感も高いので、このグラベルはそれに輪をかけて安定感が高いので、今日みたいなちょっと荒れた路面くらいなら、結構なスピードで突っ込んでいっても破綻しないですよね。G4-Xと乗り比べてみたい部分もありますけど……。
長野:やっぱり安定感は強いですね。だから長い距離のグラベルとか走るのはストレスが少なくていいでしょうね。
吉本:僕も少し乗らせてもらいましたが、他のC68と同じく振動減衰性が速いためかギャップで跳ねにくいので、高速域も良いかなと想像します。
中島:グラベル区間に入る前の舗装路を高速で走っていたときに、マンホールの段差にはまったんですけど全然挙動が乱れないんです。やっぱりハンドリングの安定感はコルナゴならではですよね。
吉本:グラベルって基本不安定な走りになるので、一番求められるのは高い安定性ですよね。そういえばGシリーズとの差ってどうなんでしょう?
長野:GシリーズとC68グラベルのジオメトリーを見比べると、Gシリーズの方がBBドロップが小さいんですね。
吉本:フロントセンターはC68の方が長いですね。キャスターアングルもC68の方が小さい(寝ている)ので、つまりC68はGシリーズと比べて低重心の設計ってことですね。
中島:だから路面にへばりつくような感覚が強いんでしょうね。
吉本:GシリーズはもともとCXバイクのプレステージの流れを汲むレース系なので、加速の良さでストップ&ゴー的走りでも対応できるような味付けで、C68グラベルはある程度グラベルを、いい速度の等速で走り続けるような走り方に重きを置くのかもしれませんね。
長野:確かにそういう走りは気持ちいいでしょうね。そう考えるとC68で発売するコンセプトは分かりますよね。他のモデルとつながっているものはありますよね。
吉本:トレンドとはいえ、それにしてもコルナゴもグラベルロードを出す時代なんですね。でも、長野さんがおっしゃる通り、ちゃんとCシリーズの雰囲気を備えていますし、それが今回のロードからグラベルの3モデルに貫かれていることがすごいことだと感じます。
自転車との対話を楽しみ、自転車遊びを豊かにする存在
吉本:最後は3モデルを少し総括しようと思います。Cシリーズというとラグ構造が象徴的ですが、C68になってその発展型と言えるような構造になりました。それによる乗り味の変化はありますか。
中島:C64と比べるとモノコックフレームの感覚に近づいたとは思います。でも、フレームに芯があってチューブに高い密度があるような感覚は、やはりラグフレームのイメージです。だから両者のいいところをちょうど良くバランスしているのかなと。このフィーリングは良いですね。
長野:昔のままじゃないのがコルナゴらしいです。でも、乗るとCシリーズらしさはちゃんと残っているのも、またコルナゴらしい。過去、振り返るとCシリーズって進化の過程でEPSとか派生モデルも出てきたじゃないですか、それをふと思い出すとC68が3モデルあるのも納得できるんです。
吉本:なるほど。経営面で考えれば3種類あるのは効率が悪いですよ。それこそ今はVシリーズがあって、Cシリーズ自体がメインではないと思うので、だからそもそもCシリーズを作っていること自体がすごいなと。
中島:自分たちのアイデンティティだからですよね。しかもこれだけ手間をかけて作っていますからね。コルナゴのファンを大切にしてくれていますね。たぶんCシリーズがなくなったら離れる人も結構いると思いますよ。
吉本:そうかもしれないですね。
中島:C68が発売されてから、うちの店舗でも購入される方が増えているんです。ちゃんとV4Rsと乗り比べていただいた上でC68を選ばれている。うちにはコルナゴのコミュニティがあるんですけど、半分以上がC68なんです。購入された方に話を伺うと、やっぱり安定感があって気を遣わなくて乗れるとか、塗装がすごいきれいでかっこいいとかなんです。
吉本:Cシリーズはもちろん加速側の性能も楽しいけれど、路面が悪かったり疲れていたり、ライダーに不利な状況でとても味方になってくれるバイクだと感じます。こういうバイクこそ一般のライダーが選ぶべきなのかなと。
長野:今は空力とか軽量が重視されていて、あまり安定性みたいなものって重視されないじゃないですか。でも、それってすごく大切で、意のままにコントロールできるとか、ペダリングのフィーリングが合うとか、そういう自分と自転車という対話が乗る楽しみじゃないですか。空力とかってそれとは違う要素なので。
吉本:本当にそう思いますね。
長野:C68ロードだと、どの位置に乗るとバランス良く、気持ち良く走れるんだろうとか、自転車と会話をしながら走っている感じがありますね。時速30㎞後半の手前くらいだと、C68に「まだまだだ」と言われているような気がして、そこから上の速度域になると「いいところまで来たな」という感じになって気持ちよく走らせてもらえるみたいな。うまく言えないんですけど、そういうバイクなんですよね。C68って。
吉本:自転車ってやっぱり馬みたいなもので、自転車の声を聞いて手なづけるみたいな作業が必要なのかなと。コルナゴというかC68は、自転車のキャラクターが明確なので、対話を楽しめるバイクなんでしょうね。
中島:それってレーサーにとっては無駄で、何も考えずに直感的に速いバイクがいいんです。でも、今やクルマのマニュアル車って、無駄を楽しむことじゃないですか。それを僕たちは自転車でも感じたいですよね。しかもコルナゴのバイクって新しいモデルでも対話ができるんですよ。それが僕たちがコルナゴを好きな理由だし、こうして語っていけるんだと思います。
吉本:本当にそうですね。コルナゴ、そしてC68というバイクは、自転車遊びを豊かにしてくれる1台なんでしょうね。
提供:コルナゴ・ジャパン(アキボウ)、text:Tsukasa Yoshimoto、photo:Naoki Yasuoka