2024/12/05(木) - 18:30
レースとともに歩み続ける老舗イタリアンロード、コルナゴ。その魂とも言えるフラッグシップが「Cシリーズ」である。最新作となる7代目の「C68」は、多様化するロードライディングに合わせて、「ロード」「オールロード」「グラベル」という3つモデルをそろえるに至った。詳細解説と、各モデルのインプレッションを含めてその魅力を紐解こうと思う。
1954年の創業以来、〝輪聖〟エディ・メルクスからタデイ・ポガチャルに至るまで、偉大なチャンピオンの走りを支えてきたコルナゴ。世界にあまたあるロードバイクブランドにおいて、このイタリアンロードの老舗ほどレースへの情熱を強く持ち続ける存在は他にないだろう。
勝利への飽くなき探求心は、必然的に常識にとらわれない独創的なバイク作りへと結びつく。カーボンフレームの可能性にいち早く注目した存在でもあり、1989年にはフェラーリとの協業により創立35周年モデルのC35を投入する。これが現在へと続くコルナゴ至高のモデル、Cシリーズの幕開けである。
その価値を絶対的なものにしたのが、創業40周年モデルとして1994年に登場したC40だ。当時カーボンフレームはまだ少数派であり、あるとしてもモノコック構造、もしくはラグド式でもアルミ製ラグが大半だった。そんな中にあってC40は、チューブからラグに至るまでカーボン製。さらに驚くべきは、選手の能力を最大限に引き出すために128種類のラグを用意し、ミリ単位のカスタムジオメトリーを可能にした。手を尽くして作られた1台は、当時世界最強軍団と言われたプロチーム、マペイの黄金期を支え、J・ムセウを筆頭にしたトップ選手によって世界選、グランツール、クラシックなど数々の勝利を収めた。
以降Cシリーズはレースシーンの変化に応じて進化を遂げ活躍を続ける。オスカル・フレイレが世界選手権を制したC50。トマ・ヴォクレールの活躍を支えたC59。そして2014年にはC60が発表される。コルナゴ創立60周年を記念するこの1台は、ラグ工法を堅持しつつチューブを大径化し、インテグラルヘッドを搭載して剛性アップを図り、新世代の〝C〟としてロードサイクリストにその存在を強く印象づけた。2018年にはC60からフレームセットで200gの軽量化を果たしたC64が登場し、C60に引き続きUAEエミレーツへ投入される。
誕生から30年あまりにわたりCシリーズは、レースの第一線で1000にも上る勝利を獲得し、選手に栄光をもたらした。過去にプロレースに投入されたバイクは数あれ、ここまで長く活躍したものはないに等しい。まさにコルナゴの象徴であり、ロードレース史に燦然と輝く存在がCシリーズなのである。
コルナゴにはCシリーズと並ぶもう一つのフラッグシップがある。レースでの勝利を命題とするVシリーズだ。2015年のV1rを処女作とし、4代目となるV4Rsまで、ポガチャルによる3度のツール・ド・フランス制覇に貢献するなど大活躍をしている。その陰でCシリーズは、次第にレースシーンから距離を置くようになった。長らくレースで主役を務めてきただけに、その行く末を心配するコルナゴのファンは決して少なくなかった。
それこそCシリーズがレースを謳歌した時代は、その勝利こそが高級ロードバイクの代名詞だった。しかし、時は流れ、現代のロードサイクリストでレースに興じる者は少数派で、ロングライドやグランフォンド、グラベルなど多様なライドを楽しむ。これにより、ロードバイクの価値は、かつてのようにプロ機材=最高級という図式では語れなくなった。そんな時代にC68は、コルナゴが培ってきた伝統的な価値や美学を重んじながら、豊かさや味わいあるロードライディング楽しむエンスージアステックなサイクリストに向けたトラディショナルな存在として、レースの価値に依存しない最高級を提示することになる。
さらに多様化するライドスタイルに合わせて、C68は3つのモデルをラインアップする取り組みに打って出た。初のお披露目となったC68ロードは、もちろんロードバイクの王道であるコンペティティブロード。その翌年の2023年に投入されたC68オールロードは、舗装路とグラベルを行き交うことのできるバーサタイルな1台。そして、2024年の最新作となるのがグラベルライドを満喫できるC68グラベルだ。こうしてC68は、現代のロードサイクリストが欲するスピード、ロングライディング、アドベンチャーという要素を提供する、幅広いロードバイクへと変貌を遂げたのだ。
Cシリーズの哲学は、ラグ構造によるス・ミズーラ(オーダーメイド)と、ミラノ郊外のカンビアーゴにおけるアルティジャーノ(職人)によるハンドメイドにある。C68シリーズはそれらを継承しながら、新たにモジュラーストラクチャーというざん新な手法を用いて最新の性能を追求している。
詳細は過去のC68の紹介記事を参考にしていただきたいが、モジュラーストラクチャーとは、チューブとラグを一体化させたモジュラーを主な構成部品とし、フレームを作り上げる手法である。ラグ構造のコンセプトは継承するものの、外観上C64のような実際にトラディショナルなラグに相当するものはシート部しかない。
モジュラーストラクチャーの利点は、モノコック構造と違って、フレームの構成部品はいくつかのピースに分かれているので、フレームが求める特性や部位に合わせて形状を変えたり、カーボンの積層を最適化するなどのチューニングがしやすいことが挙げられる。また、コルナゴ独自の製法で内部に最適な圧力をかけた成型も可能に。こうした形状の最適化と高精度なカーボン成型の結果、C68ロードは前作C64に対して軽量化(51サイズで930g)を達成しながら、フレーム剛性もより高められている。とくにヘッドまわりの剛性は一体感が増したことで、より正確性に富んだハンドリングを手にしているという。
C68シリーズの3モデルは必要な剛性・強度レベルも異なるのは言うまでもない。チューブ形状やカーボン積層を細部にわたりコントロールしやすいモジュラーストラクチャーという手法は、それぞれのモデルで高性能を突き詰めるという点において効果的なのだろう。この構造は実に合理的であり、それぞれのモデルにおいても緻密な設計を可能にする。こうしてみると改めてコルナゴの技術力の高さを感じさせる構造である。
モジュラーストラクチャーは、3つのモデルで基本となるシルエットの同一性という点にも大きな貢献を果たす。C68の外観上の特徴はラグ構造のヘッド部とシート部だ。グラベルモデルはロードモデルと比べるとダウンチューブやトップチューブの形状の違いは比較的分かりやすいとはいえ、C68で特徴となるラグまわりの構造に変わりはない。実に考え抜かれた機能美である。
もちろん他社のようにモデルごとに異なるデザインもまた魅力の一つだ。しかし、コルナゴのCシリーズに惹かれるロードサイクリストは、性能や機能だけでなく、伝統的なラグ構造を筆頭にしたCシリーズが持つ独特な世界観も重視する。そうした観点から、3モデルにひと目で〝C〟と分かる共通のデザインが施されることは、実に巧みな演出と言えよう。コルナゴが世界中のロードサイクリストから称賛され続けるのは、性能はもちろんのことだが、独自の世界観を有しているからだ。そして、その究極がCシリーズという存在なのだ。
伝統的なレースバイクという世界観のもとに構築されるロードモデルは、C68シリーズの王道であり普遍的なロードバイクの魅力を満喫できる存在である。モジュラーストラクチャー構造を駆使してC64から軽量化と剛性アップを果たし、さらに新たに発表されたステム一体型ハンドル「CC.01インテグレーテッドバー」をセットアップすることでエアロ性能の向上と、今まで以上にスタイリッシュなフォルムを手にしている。
このC68ロードをベースに、舗装路からグラベルまで境目のない幅広いライドエクスペリエンスを提供するモデルがC68オールロードだ。
フィジカルに自信のないサイクリストでも長距離を快適に走れるアップライトなポジションを提供すべく、スタックが19㎜高く、リーチが3.5㎜近く(全6サイズの平均値)なっているとはいえ、その外観はロードモデルとうりふたつ。そして、実はそこが魅力の一つでもある。
オールロードの類いはコンペティティブロードと違い、快適志向のフォルムも少なくない。しかし、それはロードバイクのスピード感あるフォルムを鈍らせ、乗り手にコンペティティブロードに対する後ろめたさのような感情も抱かせる。しかしロードモデルとうりふたつのC68オールロードは、コンペティティブロードの気分で乗れるだろう。また、そのルックスは、あくまで舗装路を主とするレースバイクの流れを汲む存在であるというコルナゴのメッセージでもあろう。
その証拠に装備できる最大タイヤ幅もロードモデルよりも3㎜広い35㎜だ。昨今のこのカテゴリーは、38〜40㎜の最大幅を飲み込むモデルもある。これは想像の範疇だが、コルナゴが考える舗装路でロードバイクらしい軽快性を得られるのは35㎜が限界値という判断なのかもしれない。
太くなったタイヤ幅に対し、ジオメトリーを細かく調整しているのも、コルナゴらしい。ワイドタイヤで上がった地上高を是正するために、BBドロップを4㎜増やすことでC68ロードに近い重心位置とライドフィールを実現するという。さらにハンドリングはフォークオフセットを7㎜伸ばし、短くなったトレール値により、ロードバイクの俊敏な操作性を損なわないように調整されている。
ロードモデルと同じくステム一体型ハンドルも装備され、ヘッドベアリングもセラミックスピードのSLTヘッドセットも挿入される。まさにロードモデルの影武者のような存在ではあるが、C68オールロードはホビーサイクリストにとってCシリーズの魅力を無理なく体験できる理想的な1台と言えるだろう。
一方のC68グラベルは、ロードやオールロードまでのルックスの共通性はない。断面形状の異なるダウンチューブ、寝気味のヘッドアングル、長いホイールベースなど、ひと目でグラベルと分かるフォルムである。しかしながら、先述したとおり、ラグ構造がCシリーズであることをしっかりとアピールする。
ヘッドアングルはロードモデルよりもおおよそ2度小さな70.5度。ショートステムの使用を前提としたリーチ&スタックというように、C68グラベルのジオメトリーは、高速のオフロードでも安定した走りを追求したレース系グラベルに採用される最先端のパッケージである。それに合わせて装備可能なタイヤ幅も、グラベルレースで標準値ともされる42㎜となる。
もちろんワイヤ類も全内蔵されており、ハンドルセットはC68ロードに採用されたCC.01の強化版で、グラベルライドに適した幅広なフレア形状を採用したCC.01ワイドがセットアップされる。さらにフロントフォークのブレードにはキャリアダボも装備されず、C68グラベルはグラベルレースやオフロードをより速く、より快適に駆け抜けるためのしつらえとなっている。あくまでも走りを追求したという部分が、Cシリーズ、そしてコルナゴらしい。
そして、そのすべてのモデルは、ミラノ郊外のカンビアーゴにあるコルナゴのファクトリーにおいて、熟練した職人たちによってフレームへ組み上げられる。そこからトスカーナにある〝塗装の魔術師〟と言われるパマペイントの職人の手に渡り、カーボンの黒色から艶やかな色をまとう。カラーリングの美しさもコルナゴの普遍的な魅力の一つである。
ロードサイクリストのライドスタイルの変化に応じて、今やプロダクトの嗜好性も変わりつつある。特にハイエンドモデルは、優れた性能や機能性だけでなく、美しいフォルムやカラーといったビジュアル面、さらにはそのブランドが持つ固有のフィロソフィーや雰囲気にも重きを置くサイクリストも増えている。ジャンルを問わず高級品とは、こうしたエモーショナルな価値を備えている。コルナゴ、そしてC68はそれを見事に備える存在と言えるだろう。ロードレースとイタリアンメイドを哲学とし、こだわりのラグ構造から生まれるオリジナリティに富んだフォルム、美しいペイントワークというように。
Cシリーズは登場以来、世界中のロードサイクリストを魅了し続けているが、時代の変化に的確にアジャストしたC68は、これまで以上に特別な存在に昇華したと言えるだろう。時代を超えて愛される続ける永遠のハイエンドロードバイク、それが〝C〟なのである。
レースと共に歩んできたコルナゴの象徴〝C〟
1954年の創業以来、〝輪聖〟エディ・メルクスからタデイ・ポガチャルに至るまで、偉大なチャンピオンの走りを支えてきたコルナゴ。世界にあまたあるロードバイクブランドにおいて、このイタリアンロードの老舗ほどレースへの情熱を強く持ち続ける存在は他にないだろう。
勝利への飽くなき探求心は、必然的に常識にとらわれない独創的なバイク作りへと結びつく。カーボンフレームの可能性にいち早く注目した存在でもあり、1989年にはフェラーリとの協業により創立35周年モデルのC35を投入する。これが現在へと続くコルナゴ至高のモデル、Cシリーズの幕開けである。
その価値を絶対的なものにしたのが、創業40周年モデルとして1994年に登場したC40だ。当時カーボンフレームはまだ少数派であり、あるとしてもモノコック構造、もしくはラグド式でもアルミ製ラグが大半だった。そんな中にあってC40は、チューブからラグに至るまでカーボン製。さらに驚くべきは、選手の能力を最大限に引き出すために128種類のラグを用意し、ミリ単位のカスタムジオメトリーを可能にした。手を尽くして作られた1台は、当時世界最強軍団と言われたプロチーム、マペイの黄金期を支え、J・ムセウを筆頭にしたトップ選手によって世界選、グランツール、クラシックなど数々の勝利を収めた。
以降Cシリーズはレースシーンの変化に応じて進化を遂げ活躍を続ける。オスカル・フレイレが世界選手権を制したC50。トマ・ヴォクレールの活躍を支えたC59。そして2014年にはC60が発表される。コルナゴ創立60周年を記念するこの1台は、ラグ工法を堅持しつつチューブを大径化し、インテグラルヘッドを搭載して剛性アップを図り、新世代の〝C〟としてロードサイクリストにその存在を強く印象づけた。2018年にはC60からフレームセットで200gの軽量化を果たしたC64が登場し、C60に引き続きUAEエミレーツへ投入される。
誕生から30年あまりにわたりCシリーズは、レースの第一線で1000にも上る勝利を獲得し、選手に栄光をもたらした。過去にプロレースに投入されたバイクは数あれ、ここまで長く活躍したものはないに等しい。まさにコルナゴの象徴であり、ロードレース史に燦然と輝く存在がCシリーズなのである。
多様化するロードバイクシーンへ 再定義された〝C〟の価値
コルナゴにはCシリーズと並ぶもう一つのフラッグシップがある。レースでの勝利を命題とするVシリーズだ。2015年のV1rを処女作とし、4代目となるV4Rsまで、ポガチャルによる3度のツール・ド・フランス制覇に貢献するなど大活躍をしている。その陰でCシリーズは、次第にレースシーンから距離を置くようになった。長らくレースで主役を務めてきただけに、その行く末を心配するコルナゴのファンは決して少なくなかった。
それこそCシリーズがレースを謳歌した時代は、その勝利こそが高級ロードバイクの代名詞だった。しかし、時は流れ、現代のロードサイクリストでレースに興じる者は少数派で、ロングライドやグランフォンド、グラベルなど多様なライドを楽しむ。これにより、ロードバイクの価値は、かつてのようにプロ機材=最高級という図式では語れなくなった。そんな時代にC68は、コルナゴが培ってきた伝統的な価値や美学を重んじながら、豊かさや味わいあるロードライディング楽しむエンスージアステックなサイクリストに向けたトラディショナルな存在として、レースの価値に依存しない最高級を提示することになる。
さらに多様化するライドスタイルに合わせて、C68は3つのモデルをラインアップする取り組みに打って出た。初のお披露目となったC68ロードは、もちろんロードバイクの王道であるコンペティティブロード。その翌年の2023年に投入されたC68オールロードは、舗装路とグラベルを行き交うことのできるバーサタイルな1台。そして、2024年の最新作となるのがグラベルライドを満喫できるC68グラベルだ。こうしてC68は、現代のロードサイクリストが欲するスピード、ロングライディング、アドベンチャーという要素を提供する、幅広いロードバイクへと変貌を遂げたのだ。
伝統と革新が融合する高度な基本設計
Cシリーズの哲学は、ラグ構造によるス・ミズーラ(オーダーメイド)と、ミラノ郊外のカンビアーゴにおけるアルティジャーノ(職人)によるハンドメイドにある。C68シリーズはそれらを継承しながら、新たにモジュラーストラクチャーというざん新な手法を用いて最新の性能を追求している。
詳細は過去のC68の紹介記事を参考にしていただきたいが、モジュラーストラクチャーとは、チューブとラグを一体化させたモジュラーを主な構成部品とし、フレームを作り上げる手法である。ラグ構造のコンセプトは継承するものの、外観上C64のような実際にトラディショナルなラグに相当するものはシート部しかない。
モジュラーストラクチャーの利点は、モノコック構造と違って、フレームの構成部品はいくつかのピースに分かれているので、フレームが求める特性や部位に合わせて形状を変えたり、カーボンの積層を最適化するなどのチューニングがしやすいことが挙げられる。また、コルナゴ独自の製法で内部に最適な圧力をかけた成型も可能に。こうした形状の最適化と高精度なカーボン成型の結果、C68ロードは前作C64に対して軽量化(51サイズで930g)を達成しながら、フレーム剛性もより高められている。とくにヘッドまわりの剛性は一体感が増したことで、より正確性に富んだハンドリングを手にしているという。
C68シリーズの3モデルは必要な剛性・強度レベルも異なるのは言うまでもない。チューブ形状やカーボン積層を細部にわたりコントロールしやすいモジュラーストラクチャーという手法は、それぞれのモデルで高性能を突き詰めるという点において効果的なのだろう。この構造は実に合理的であり、それぞれのモデルにおいても緻密な設計を可能にする。こうしてみると改めてコルナゴの技術力の高さを感じさせる構造である。
ひと目でC68と分かる巧みなデザイン
モジュラーストラクチャーは、3つのモデルで基本となるシルエットの同一性という点にも大きな貢献を果たす。C68の外観上の特徴はラグ構造のヘッド部とシート部だ。グラベルモデルはロードモデルと比べるとダウンチューブやトップチューブの形状の違いは比較的分かりやすいとはいえ、C68で特徴となるラグまわりの構造に変わりはない。実に考え抜かれた機能美である。
もちろん他社のようにモデルごとに異なるデザインもまた魅力の一つだ。しかし、コルナゴのCシリーズに惹かれるロードサイクリストは、性能や機能だけでなく、伝統的なラグ構造を筆頭にしたCシリーズが持つ独特な世界観も重視する。そうした観点から、3モデルにひと目で〝C〟と分かる共通のデザインが施されることは、実に巧みな演出と言えよう。コルナゴが世界中のロードサイクリストから称賛され続けるのは、性能はもちろんのことだが、独自の世界観を有しているからだ。そして、その究極がCシリーズという存在なのだ。
ロードとオールロード うりふたつの絶妙な関係
伝統的なレースバイクという世界観のもとに構築されるロードモデルは、C68シリーズの王道であり普遍的なロードバイクの魅力を満喫できる存在である。モジュラーストラクチャー構造を駆使してC64から軽量化と剛性アップを果たし、さらに新たに発表されたステム一体型ハンドル「CC.01インテグレーテッドバー」をセットアップすることでエアロ性能の向上と、今まで以上にスタイリッシュなフォルムを手にしている。
このC68ロードをベースに、舗装路からグラベルまで境目のない幅広いライドエクスペリエンスを提供するモデルがC68オールロードだ。
フィジカルに自信のないサイクリストでも長距離を快適に走れるアップライトなポジションを提供すべく、スタックが19㎜高く、リーチが3.5㎜近く(全6サイズの平均値)なっているとはいえ、その外観はロードモデルとうりふたつ。そして、実はそこが魅力の一つでもある。
オールロードの類いはコンペティティブロードと違い、快適志向のフォルムも少なくない。しかし、それはロードバイクのスピード感あるフォルムを鈍らせ、乗り手にコンペティティブロードに対する後ろめたさのような感情も抱かせる。しかしロードモデルとうりふたつのC68オールロードは、コンペティティブロードの気分で乗れるだろう。また、そのルックスは、あくまで舗装路を主とするレースバイクの流れを汲む存在であるというコルナゴのメッセージでもあろう。
その証拠に装備できる最大タイヤ幅もロードモデルよりも3㎜広い35㎜だ。昨今のこのカテゴリーは、38〜40㎜の最大幅を飲み込むモデルもある。これは想像の範疇だが、コルナゴが考える舗装路でロードバイクらしい軽快性を得られるのは35㎜が限界値という判断なのかもしれない。
太くなったタイヤ幅に対し、ジオメトリーを細かく調整しているのも、コルナゴらしい。ワイドタイヤで上がった地上高を是正するために、BBドロップを4㎜増やすことでC68ロードに近い重心位置とライドフィールを実現するという。さらにハンドリングはフォークオフセットを7㎜伸ばし、短くなったトレール値により、ロードバイクの俊敏な操作性を損なわないように調整されている。
ロードモデルと同じくステム一体型ハンドルも装備され、ヘッドベアリングもセラミックスピードのSLTヘッドセットも挿入される。まさにロードモデルの影武者のような存在ではあるが、C68オールロードはホビーサイクリストにとってCシリーズの魅力を無理なく体験できる理想的な1台と言えるだろう。
速さを求めた最先端のグラベルパッケージ
一方のC68グラベルは、ロードやオールロードまでのルックスの共通性はない。断面形状の異なるダウンチューブ、寝気味のヘッドアングル、長いホイールベースなど、ひと目でグラベルと分かるフォルムである。しかしながら、先述したとおり、ラグ構造がCシリーズであることをしっかりとアピールする。
ヘッドアングルはロードモデルよりもおおよそ2度小さな70.5度。ショートステムの使用を前提としたリーチ&スタックというように、C68グラベルのジオメトリーは、高速のオフロードでも安定した走りを追求したレース系グラベルに採用される最先端のパッケージである。それに合わせて装備可能なタイヤ幅も、グラベルレースで標準値ともされる42㎜となる。
もちろんワイヤ類も全内蔵されており、ハンドルセットはC68ロードに採用されたCC.01の強化版で、グラベルライドに適した幅広なフレア形状を採用したCC.01ワイドがセットアップされる。さらにフロントフォークのブレードにはキャリアダボも装備されず、C68グラベルはグラベルレースやオフロードをより速く、より快適に駆け抜けるためのしつらえとなっている。あくまでも走りを追求したという部分が、Cシリーズ、そしてコルナゴらしい。
時代を超えて愛される続ける永遠のハイエンドロード
ロード、オールロード、グラベルという3モデルを展開し、幅広く新たな価値をロードサイクリストに提案するC68シリーズは、コルナゴの伝統と革新性が見事に融合したプロダクトと言えるだろう。そして、そのすべてのモデルは、ミラノ郊外のカンビアーゴにあるコルナゴのファクトリーにおいて、熟練した職人たちによってフレームへ組み上げられる。そこからトスカーナにある〝塗装の魔術師〟と言われるパマペイントの職人の手に渡り、カーボンの黒色から艶やかな色をまとう。カラーリングの美しさもコルナゴの普遍的な魅力の一つである。
ロードサイクリストのライドスタイルの変化に応じて、今やプロダクトの嗜好性も変わりつつある。特にハイエンドモデルは、優れた性能や機能性だけでなく、美しいフォルムやカラーといったビジュアル面、さらにはそのブランドが持つ固有のフィロソフィーや雰囲気にも重きを置くサイクリストも増えている。ジャンルを問わず高級品とは、こうしたエモーショナルな価値を備えている。コルナゴ、そしてC68はそれを見事に備える存在と言えるだろう。ロードレースとイタリアンメイドを哲学とし、こだわりのラグ構造から生まれるオリジナリティに富んだフォルム、美しいペイントワークというように。
Cシリーズは登場以来、世界中のロードサイクリストを魅了し続けているが、時代の変化に的確にアジャストしたC68は、これまで以上に特別な存在に昇華したと言えるだろう。時代を超えて愛される続ける永遠のハイエンドロードバイク、それが〝C〟なのである。
C68シリーズ 国内販売ラインナップ
C68ロード
フレームセット Disc仕様 | 968,000円(税込) |
フレームセット Disc Titanium仕様 | 1,155,000円(税込) |
完成車 Dura Ace DI2+Colnago CC.01 | 1,892,000円(税込) |
完成車 Ultegra DI2+Colnago CC.01 | 1,639,000円(税込) |
完成車 Dura Ace DI2+Colnago CC.01(ホイール無し) | 1,507,000円(税込) |
完成車 Ultegra DI2+Colnago CC.01(ホイール無し) | 1,375,000円(税込) |
C68オールロード
フレームセット | 979,000円(税込) |
完成車 Dura Ace DI2+Colnago CC.01 | 1,837,000円(税込) |
完成車 Ultegra DI2+Colnago CC.01 | 1,606,000円(税込) |
完成車 Dura Ace DI2+Colnago CC.01(ホイール無し) | 1,507,000円(税込) |
完成車 Ultegra DI2+Colnago CC.01(ホイール無し) | 1,375,000円(税込) |
C68 グラベル
フレームセット | 979,000円(税込) |
次章では、コルナゴを知るショップ店長2人を招聘して行った3モデルの乗り比べインプレッションを紹介。Cシリーズ特有の乗り味は、新世代の各モデルにどう受け継がれ、活かされているのか。安定のC68ロード、予想を大きく覆して高評価を集めたC68オールロード、そしてグラベル界にコルナゴらしいラグジュアリー感を届けるC68グラベル。それぞれの評価に注目してほしい。
提供:コルナゴ・ジャパン(アキボウ)、text:Tsukasa Yoshimoto、photo:Naoki Yasuoka