いよいよ佳境を迎えるツール・ド・フランス。本章では第2週のハイライトとなったアルプス3連戦を振り返りつつ、シマノグローバルサポートチームと共に戦うDURA-ACEホイールに着目する。フルモデルチェンジで得た製品のテクノロジーや、プロレースでどのような選ばれ方がなされているかを紹介したい。

エアロダイナミクスを強化したDURA-ACEホイール

C36、C50、C60という3種類が揃うDURA-ACEホイールは状況や好みによって選びやすいラインアップが揃うC36、C50、C60という3種類が揃うDURA-ACEホイールは状況や好みによって選びやすいラインアップが揃う
今年のツール・ド・フランスは例年よりも僅差で決することが多い印象を受ける。時に200km以上にもわたる過酷なコースを走り、最終的に0.1秒差の勝敗を決するのは、研ぎ澄まされた選手たちの能力はもちろん、特に僅差であればあるほど機材性能だといえるだろう。

デンマーク、コペンハーゲンでの開幕から数えて15日間のうち、勝利を量産している機材がシマノのDURA-ACEだ。シマノグローバルサポートチームの勝利数は7、グローバルサポートではないDURA-ACE使用チームも含めればその勝利数は11と、3分の2以上でシマノが誇る最先端コンポーネンツが栄光を手にしてきた。

最新型R9200シリーズのホイールをセットし、スタートを待つティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)最新型R9200シリーズのホイールをセットし、スタートを待つティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)
本ツール・ド・フランス特集の、前章ドライブトレイン編に続く本章で取り上げるのはDURA-ACEのホイール群。"Science of Speed"のコンセプトのもと開発され、デビューするや否やパフォーマンスはもちろんのこと、買い求めやすい価格設定からも爆発的な人気を得ている各種ホイールラインナップを紹介していく。

プロチームの要望に応える豊富なラインアップ

シマノは従来のR9100シリーズでC24、C40、そしてC60(いずれも数字はリムハイトを示す/C24はアルミ/カーボンラミネートリムのクリンチャー仕様のみ)という3種類のリムハイトを用意していたが、R9200シリーズではC36、C50、そしてC60という3種類に大きく変化した。

ペア重量1,461g(チューブレス仕様)を誇るC50は平坦から山岳までオールラウンドに使える万能ホイールで、わずか1,350gという軽さを誇るC36はヒルクライム決戦用。2モデルよりもスポーキングを強化したC60は超エアロであることはもちろん、トップ選手の圧倒的なパワーにも負けないスプリント用という位置付けだ。

最もオールラウンドに使えるホイールとして選ばれる場面が多いC50最もオールラウンドに使えるホイールとして選ばれる場面が多いC50
山岳ステージなどで軽量性が活きる場面で活躍するC36ホイール山岳ステージなどで軽量性が活きる場面で活躍するC36ホイール マチュー・ファンデルプール(アルペシン・ドゥクーニンク)のバイクに装着されたC60マチュー・ファンデルプール(アルペシン・ドゥクーニンク)のバイクに装着されたC60


ツールの昨年大会ではチューブラータイヤ率が大多数だったものの、今年はチューブレスタイヤの使用率が上昇。新型DURA-ACEホイールはその流れを推し進める大要素となっている。

シマノはチューブレスリムの内幅を21mmに拡幅し、トレンドのワイドタイヤに対応しつつリム素材のアップデートによって軽量化を実現。高速化が進むトップレースのスピードに対応しつつ、年々難易度が高まるツールの山岳ステージにも対応するよう進化を果たした。

トム・ピドコック(イネオス・グレナディアーズ)はC36、奥のナイロ・キンタナ(アルケア・サムシック)はC50をラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユで使用したトム・ピドコック(イネオス・グレナディアーズ)はC36、奥のナイロ・キンタナ(アルケア・サムシック)はC50をラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユで使用した
今年のツールではついに、イネオス・グレナディアーズなど、昨年までリムブレーキを残していたチームも全てディスクブレーキ統一を果たした。「マージナルゲイン」を標榜するイネオス・グレナディアーズがR9200シリーズのディスクブレーキホイールを選び、さらにチューブレス化を果たしたことは時代変化の表れだ。

一方、ユンボ・ヴィスマやグルパマFDJ、アルケア・サムシックは同じR9200シリーズでもチューブラーとチューブレスが混在しているほか、チームDSMはチューブラーで統一している模様。R9200シリーズではチューブラーとチューブレス仕様、そしてリムブレーキとディスクブレーキ仕様と幅広いホイールラインナップを誇る。世界のトレンドがチューブレスやディスクブレーキに移り変わる中、トラディショナルな規格を残しているのは至極ユーザーフレンドリーといえるだろう。

開発で着目したのは駆動剛性とエアロダイナミクス

Science of Speedのコンセプトのもと駆動剛性とエアロが強化された新型DURA-ACEホイールScience of Speedのコンセプトのもと駆動剛性とエアロが強化された新型DURA-ACEホイール
スピードを生み出す要素としてシマノが着目したのはホイール剛性だ。R9200系の開発においては、横剛性と縦剛性、駆動剛性と推進力への関係性を研究し、駆動剛性が最も重要な要素ということを突き詰めたという。そこでシマノは面ラチェットのフリーハブボディを採用することで、R9100のC40に対して、C36で63%、C50は69%、C60は89%もの駆動剛性向上を実現した。

優れた駆動剛性を実現したことで、C36とC50は細身のスポークを採用し軽量化を達成しているという。さらにラチェットやフリーボディのアルミ化を実現させており、ホイール全体での軽量化も実現させている。

ダイレクトエンゲージメント構造と新形状のスプラインが採用されたフリーハブダイレクトエンゲージメント構造と新形状のスプラインが採用されたフリーハブ photo:Makoto AYANO
近年のハイスピードレースでアドバンテージを得るためには、エアロダイナミクスが欠かせない。R9200の開発ではCFD解析に加えAIを用いたリムシェイプの検討を行ったという。新型ホイールは風洞実験において旧モデルに対して大幅な空気抵抗削減を実現したのだ。



アルプスでパフォーマンスを発揮したDURA-ACEとシマノグローバルサポートチーム

逃げに乗ったディラン・ファンバーレはC36をチョイスした逃げに乗ったディラン・ファンバーレはC36をチョイスした photo:Makoto AYANO
デンマーク連戦、石畳、定番山岳ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユを終えたツール・ド・フランスのプロトンは、休息日を経てアルプス3連戦へと突入した。初戦となる第10ステージはアルプスでのレースながら4級と3級が多く、2級は一つだけ。フィニッシュは登りスプリントが予想されたコースだけに、DURA-ACEホイールのチョイスは選手やチームの意図によって様々なものとなった。

区間優勝がかかったエスケープグループにジョインしたディラン・ファンバーレはC36、同じく逃げに乗ったチームメイトのフィリッポ・ガンナはC50をチョイス。メイン集団で状況を静観したユンボ・ヴィスマのチーム内でも機材チョイスはそれぞれ。平坦でのアシストを期待されたワウト・ファンアールトはエアロロードにC36をチョイスし、プリモシュ・ログリッチはクライミングバイクにC50をアセンブルした。総合系の選手で言えば、ロメン・バルデ(チームDSM)はエアロロードにC36を組み合わせた。

1級山岳テレグラフで早々にユンボ・ヴィスマがペースアップを図る1級山岳テレグラフで早々にユンボ・ヴィスマがペースアップを図る photo:CorVos
超級グラノン峠で独走するヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)超級グラノン峠で独走するヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos
翌11ステージのテレグラフ峠、ガリビエ峠といったツールで何度も登場する山岳を通過し、36年ぶりの登場となる超級山岳グラノン峠にフィニッシュするコースでは総合争いは必至。総合2位につけるヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)は40秒差をひっくり返すべく、チームメイトと共に変わるがわるアタックを繰り返し、ついにライバルをふるい落としてステージ優勝をマイヨジョーヌを獲得してみせた。

この日はログリッチとヴィンゲゴーが波状攻撃を続け、前待ち作戦のために逃げに乗ったファンアールトとクリストフ・ラポルトが終盤で合流。さらにクライスヴァイクとクスが最終山岳での強力に牽引。ユンボの作戦が全てが噛み合った、後世に語り継がれるような逆転劇に世界中が沸き立った。

山岳ステージではC36を装着したスペアバイクがシマノニュートラルカーのルーフに積まれる(写真は第12ステージ)山岳ステージではC36を装着したスペアバイクがシマノニュートラルカーのルーフに積まれる(写真は第12ステージ) photo:Makoto AYANO
ガリビエ峠で独走するワレン・バルギル(アルケア・サムシック)は超級山岳ステージでもC50を選択したガリビエ峠で独走するワレン・バルギル(アルケア・サムシック)は超級山岳ステージでもC50を選択した
この日勝利したヴィンゲゴーら、ユンボの山岳メンバーはC36で揃えた一方、先述したような役割を持ったファンアールトはC50をチョイス。さらに、ガリビエ峠で後続を待ったファンアールトは頂上目前で軽量バイクからエアロロードに乗り換えてその後の仕事を担った。プロレースでは徹底した機材選択が行なわれており、その積み重ねがこの日のチームワークを支えることとなる。

第11ステージでは複数のシマノグローバルサポートチームが大活躍した。C50を選択し逃げに乗ったワレン・バルギル(アルケア・サムシック)は残り4.2kmまで区間優勝を目指し踏み続け、ナイロ・キンタナ(アルケア・サムシック)とロマン・バルデ(チームDSM)はメイン集団からアタックし、ステージ2位と3位をそれぞれ獲得。

そしてガリビエ、クロワ・ド・フェール、ラルプデュエズという超級山岳が詰め込まれた難関第12ステージでは、シクロクロス王者・東京五輪MTB XCO金メダリストのトーマス・ピドコック(イネオス・グレナディアーズ)が主役となった。

ツール初参戦・初優勝を果たしたトム・ピドコック(イネオス・グレナディアーズ)はC36チューブレスを使用したツール初参戦・初優勝を果たしたトム・ピドコック(イネオス・グレナディアーズ)はC36チューブレスを使用した
史上最年少でラルプデュエズを制したトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)史上最年少でラルプデュエズを制したトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVosDURA-ACEホイールを履くユンボ・ヴィスマがメイン集団をコントロールDURA-ACEホイールを履くユンボ・ヴィスマがメイン集団をコントロール photo:Makoto AYANO

丘陵ステージなどで活躍するオールラウンドホイールのC50丘陵ステージなどで活躍するオールラウンドホイールのC50
超級ガリビエ峠のダウンヒルでメイン集団を抜け出したピドコックは、持ち前のテクニックを発揮して逃げ集団に加わり、最終山岳のラルプデュエズでのアタックを決めツール初参戦にして初ステージ優勝を達成した。

ダウンヒルではコントローラブルなディスクブレーキが、50km/hオーバーの単独追走ではハイスピードに対応するビッグギアとホイールのエアロダイナミクスが、ヒルクライムでのアタックでは変速性能のスピードと信頼性が、最後の登坂ではC36の軽量性がピドコックをサポート。DURA-ACEコンポーネンツとホイールが持つ優位性がいかんなく発揮された一日となった。

アルプスを抜けたプロトンは中央山塊へと足を向けた。第13ステージでは逃げ切りを決めた先行グループに、ラインナップ中最もリムハイトが高いC60ホイールを履いたフィリッポ・ガンナ(イネオス・グレナディアーズ)とシュテファン・キュング(グルパマFDJ)がジョイン。続く14ステージではユンボ・ヴィスマの徹底コントロールによってヴィンゲゴーが首位を守っている。

第15ステージではマイヨヴェールのワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)がエスケープ。途中でメイン集団に戻り、スプリントで2位に入った第15ステージではマイヨヴェールのワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)がエスケープ。途中でメイン集団に戻り、スプリントで2位に入った photo:CorVos
C60ホイールで人生初のツール区間優勝を挙げたヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)C60ホイールで人生初のツール区間優勝を挙げたヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:Makoto AYANO
第15ステージは久々のスプリント勝負が戻ってきた。序盤の逃げにはマイヨヴェールのファンアールト、ミッケルフレーリク・ホノレ(クイックステップ・アルファヴィニル)、そしてニルス・ポリッツ(ボーラ・ハンスグローエ)のシマノグローバルサポーチームから3名が入ったものの、勝負は集団スプリントで決した。

目標を逃げ切りからスプリント切り替え、逃げからメイン集団に戻っていたファンアールトを下したのは、アルペシン・ドゥクーニンクのヤスパー・フィリプセン。何度も2位で涙を飲んできたフィリプセンが待望のツール初勝利を挙げ、喜びの涙で顔を濡らした。

1位フィリプセン、2位ファンアールト共に、この日選んでいたのは高剛性仕様のC60ホイール。ハイパワーのスプリントを受け止める駆動剛性とエアロ性能が二人のパフォーマンスを支え抜いた。

スプリンターの戦略を変えたシフティングスイッチ(SW-RS801-S)。ドロップ部を握った状態でも変速が可能だスプリンターの戦略を変えたシフティングスイッチ(SW-RS801-S)。ドロップ部を握った状態でも変速が可能だ photo:Makoto AYANO
ラインアップ外の56-44Tのチェーンリングを使う選手もラインアップ外の56-44Tのチェーンリングを使う選手も photo:Makoto AYANO
攻撃が繰り返され、例年以上にハードな展開となっている今年のツール・ド・フランス。第3週は丘陵ステージ(1日)、山岳ステージ(2日)、平坦ステージ(1日)、個人タイムトライアル(1日)を経てシャンゼリゼに凱旋する。イージーな日はなく、ピレネーと個人TTで決定する今年のマイヨジョーヌの行方は一時も目が離せない。

DURA-ACE R9200系ディスクブレーキホイール

DURA-ACE C36

シマノ DURA-ACE C36シマノ DURA-ACE C36 photo:Makoto AYANO
リムハイト36mm
リム内幅(TL)21mm
リム外幅28mm
スポーク前後24本、OPTBAL(リアのみ)
ブレーキセンターロックディスクブレーキ
アクスル12 mm E-THRU
O.L.D. 100mm(フロント)、142mm(リア)
チューブレス平均重量620g (フロント)/730g (リア)、合計1,350g
チューブラー平均重量522g (フロント)/632g (リア)、合計1,154g
希望小売価格(税込)フロント:107,690円 / リア:125,840円、合計233,530円

DURA-ACE C50

シマノ DURA-ACE C50シマノ DURA-ACE C50 photo:Makoto AYANO
リムハイト50mm
リム内幅(TL)21mm
リム外幅28mm
スポーク前後24本、OPTBAL(リアのみ)
ブレーキセンターロックディスクブレーキ
アクスル12 mm E-THRU
O.L.D. 100mm(フロント)、142mm(リア)
チューブレス平均重量674g (フロント)/787g (リア)、合計1,461g
チューブラー平均重量610g (フロント)/723g (リア)、合計1,333g
希望小売価格(税込)フロント:107,690円 / リア:125,840円、合計233,530円

DURA-ACE C60

シマノ DURA-ACE C60シマノ DURA-ACE C60 photo:Makoto AYANO
リムハイト60mm
リム内幅(TL)21mm
リム外幅28mm
スポーク前後24本、OPTBAL
ブレーキセンターロックディスクブレーキ
アクスル12 mm E-THRU
O.L.D. 100mm(フロント)、142mm(リア)
チューブレス平均重量751g (フロント)/858g (リア)、合計1,609g
チューブラー平均重量667g (フロント)/770g (リア)、合計1,437g
希望小売価格(税込)フロント:107,690円 / リア:125,840円、合計233,530円
提供:シマノセールス 制作:シクロワイアード編集部