パナレーサーの注目タイヤ、AGILESTを特集する第2弾。開発にも携わった宇都宮ブリッツェンの阿部嵩之と小野寺玲によるインプレッションを行い、改めてその走りと魅力を語ってもらった。RACE EVO4からの進化、そして各モデルごとの走りとは。

宇都宮ブリッリッツェンの阿部、小野寺に聞くAGILEST

ジャパンカップの舞台、古賀志林道の入り口を駆け上がるジャパンカップの舞台、古賀志林道の入り口を駆け上がる photo:Makoto AYANO
「前作のRACE A EVO4と同じく、本当にニュートラルな乗り心地。軽さがあって、しっかりとしたグリップ感と使いやすさが進化しています」。AGILESTのカットサンプルを手に携えてそう話すのは、チームのエーススプリンターを担う小野寺玲だ。

小野寺はAGILESTクリンチャーモデル完成版を手にしてからおよそ1ヶ月の間トレーニングで使い込んできたという。それはずっとラウンド形状のタイヤを求めていたという阿部嵩之も同様で、「僕自身が口出ししたのもありますが、結果的にすごく良いタイヤですね(笑)」と満足げな表情を垣間見せた。

これから紹介するのは、AGILEST開発に携わり、その進化課程を肌で味わってきた2人のインプレッション。もちろん2人はチューブラーモデルを実戦投入済みであり、特に阿部はテクニカルコースで争われた昨年の全日本選手権個人タイムトライアルでは、チームへの供給体制がまだ整わない中でもAGILESTで走ることを強く要望したという。

「性能も、扱いやすさもすごく進化した」

CW:さて、早速お二人のAGILESTインプレをお伺いします。まずスタンダードモデルに関して、RACE A EVO4との違いや、進化した部分とは?

断面形状、コンパウンド、耐パンクベルト...。全てを刷新して生まれたパナレーサーのAGILEST断面形状、コンパウンド、耐パンクベルト...。全てを刷新して生まれたパナレーサーのAGILEST
小野寺:やはり一番の違い断面形状の差ですよね。RACE A EVO4は元々安心感のあるタイヤでしたから、それにプラスして扱いやすさがすごく増した。モデルチェンジしたからとってガラリと雰囲気が変わることもなく、根本の部分は共通していることが多く、正常進化!というイメージですね。

阿部:僕は普段のトレーニングでチューブレスを運用しているのですが、RACE A EVO4と比べると走りの軽さがとても際立ちますよね。トレッドが薄くなっているのを感じますし、それは同じ空気圧で乗った時に手に伝わる感触からも分かります。

CW:阿部選手は断面形状をラウンド型にしてほしいという強い要望を出していたと聞いていますが...?

阿部:ディスクブレーキのロードバイクに乗るようになったことがきっかけですね。チーム内では僕が一番初めにディスクブレーキを使ったのですが、今まで感じなかったブレーキング中の不安定感が気になったんです。激しい減速を繰り返す中でトレッドの摩耗にも気付きましたし。

あとはとにかく軽くしてくれとか、転がりを軽くしろだとか、パンクしないようにしろだとか...。無理難題を言った気がしますが、結果的にすごくいいタイヤに乗れている。サンプルを含めAGILESTが届いてからは、チーメンバーは積極的に試してみるようになりましたね。

「ディスクブレーキ化したことで、従来品の改善点が見えた」「ディスクブレーキ化したことで、従来品の改善点が見えた」 全日本選手権に投入されたプロトタイプ(チューブラー)全日本選手権に投入されたプロトタイプ(チューブラー)

全日本選手権個人タイムトライアルで5位に入った阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)全日本選手権個人タイムトライアルで5位に入った阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン) photo:Satoru Kato
CW:去年の全日本選手権はほとんど全員AGILEST(チューブラー)でしたね。チームピットを見て見慣れないロゴのタイヤがたくさん並んでいるのが印象的でした。

阿部:本数が足りなくて曽我部メカが苦労していたけれど、僕はなんとかTTバイクにも装着してもらったんです。広島(中央森林公園)ってハイスピードかつリスクを冒さないといけないコーナーが多いんですが、僕はその場面でAGILESTを使いたかった。結構攻めましたが、安心感が崩れることはありませんでしたよ。

小野寺:前作も下りのグリップ力は強かったのですが、AGILESTはその上で安定感が際立ってますよね。RACE A EVO4は倒し込んだ先でさらに切り込んでコントロールするのが楽しかった。AGILESTはバンク中の全域に渡ってニュートラルにバイクコントロールできますから、たくさんの人によりおすすめしやすいかな、と。

「グリップ力はそのままに、倒し込みの扱いやすさが飛躍的に向上」「グリップ力はそのままに、倒し込みの扱いやすさが飛躍的に向上」
阿部:そうだよね。修善寺のように綺麗な路面ならRACE EVO4の形状も特にマッチしやすいんですが、ロードバイクに乗る人全員が我々みたいに下りを攻めるわけじゃないから扱いやすさは大事。それもグリップ力が落ちていないので、なおさらいいと思う。

小野寺:一般道は何か落ちてたり、そもそもあのカーブがどれだけ曲がり込んでいるか分からない場面が多いですし。この扱いやすさ、乗りやすさは誰にとってもメリットになるかな、と。

「AGILESTなら30cでも走りが重くない」

CW:阿部選手は普段チューブレスの30cを使っているとのことですが、ご自身で感じている一番のメリットとは?

阿部:チューブレス最大の魅力は路面に対する追従性。クリンチャーだとちょっと怖いかな、という場所でも、しなやかさによって安心して下ることができます。

普段は30Cでトレーニングをしていますが、それは重たい方がトレーニングになるという意味じゃなくて、ライド中の安心感が欲しいからなんです。30CでもAGILESTは走りが軽く、リム打ちパンクの心配もない。エアボリュームがあるから乗り心地も良いですし、通じて身体へのダメージも少ない。性能が低い30cタイヤは嫌ですが、AGILESTなら全く気になりません。

「驚く軽さのLIGHT、信頼性と扱いやすさが増したDURO」

話は派生モデルのLIGHTとDUROへ。改めて乗り比べた2人は何を思う?話は派生モデルのLIGHTとDUROへ。改めて乗り比べた2人は何を思う?
CW:DUROとLIGHTに関してはどうでしょう。明確な差は感じますか?

小野寺:全然標準タイプと違いますよ!それぞれのキャラが明確に分かれていて、それはRACE EVO4よりも如実に出ていますね。

例えばLIGHTに関しては、もうあからさまに、とてつもなく走りが軽い。これは最初乗った時に驚きました。登りの軽さはもちろん、ダンシングの振りの軽さにもその軽さが明確に出る。「薄皮感」が強いのにしなやかで、ダンシングで登りをヒラヒラ走りたいって方にはこれ一択でしょうね。そんなタイヤです。

"鶴カントリー"を登る2人。「LIGHTの軽さは本当にすごい」"鶴カントリー"を登る2人。「LIGHTの軽さは本当にすごい」
阿部:LIGHTでは長距離を走っておらず耐パンク性能はコメントできませんが、それをクリアしているならレースで使いたい。なんなら僕はチューブラーよりこっちの方が好きかもしれません(笑)。TTもクリテリウムでもいいでしょうね。外周部が軽いからバイクの挙動が軽くて、一つ一つの動作に必要な力が少なくなる気分すらある。

小野寺:そうですよね。「あ、これならレースいけるわ!」と思いました。ホイールを含めてチューブラーと重量比較しても肉薄するでしょうし。本当に、登りで使いたいタイヤ。下りもハードなコースならトレッドの広さをとってスタンダードモデルにすると思いますが...。頂上ゴールであればLightですね。

パナレーサー高橋さん:補足ですが、例えばLIGHTにR'AIR(アールエアー)入れた状態と、チューブラーの重量比較はほぼ同じくらい。ホイールシステムの違いがあるので総合的にみれば少しチューブラーが軽いかな?といったところです。

DURO信者だと言う小野寺。新型のインプレッションは如何にDURO信者だと言う小野寺。新型のインプレッションは如何に
CW:DUROはどうでしょう?普段からDURO信者だという小野寺選手に聞きたいのですが...?

小野寺:とにかくタイヤの「しっかり感」が強いですね。ほか2モデルを乗ってしまっているぶん重さは否めませんが、タイヤとしての安心感はすごく強い。ブラインドテストをしても、DUROは百発百中で言い当てられると思いますよ。

DUROは僕たちチームが一番信頼を置いているトレーニングタイヤなんです。RACE EVO4時代は乗り味的にCが人気でしたが、やはり耐久性ならD。ただし重いと言ってもEvo4時代と剛性感や重さはほぼ共通で、断面形状がラウンドになったので扱いやすさ自体は増しています。

「チームからのDUROに対する信頼は本当に厚い。これでパンクするなら諦めがつく」「チームからのDUROに対する信頼は本当に厚い。これでパンクするなら諦めがつく」
阿部:ほか2モデルが軽い分、単純な乗り比べで言うと「重いね」となりがちなんですが、やっぱりDUROの魅力って長距離を走った時、荒れた場所を走った時の信頼性にあるんですよ。パンク修理なんて本当は誰もやりたくないし、僕たちを含め、サイクリストは誰でも走ることに集中したいですから。

DUROでパンクしたとなると、それはよっぽど運が悪いということです。それならば逆に諦めも付きますし。思いっきりタイヤを摩耗させた状態では何度かパンク経験がありますが、想定距離内でのパンクは...記憶にないですね。

「スタンダードモデルがLIGHT寄りの走り心地に」

ブリッツェンが開発に携わったAGILEST。市場の中心的存在となるタイヤが誕生したブリッツェンが開発に携わったAGILEST。市場の中心的存在となるタイヤが誕生した
小野寺:今回改めてスタンダード、DURO、LIGHTと3種のクリンチャーモデルを乗り比べましたが、それぞれの個性がより明確になったことに加えて、RACE A EVO4時代との変化も感じました。従来RACE EVO4 AはDURO寄りの性格でしたが、AGILESTのスタンダードモデルはすごくLIGHT寄りになった。

阿部:そうだね。スタンダードモデルの走りは、RACE A EVO4よりもすごく軽くなった。この後はより一般市場にも出回るとのことなので、ぜひ一度手にとって、試してもらいたいと思います。

インプレッションライダー プロフィール

宇都宮ブリッツェンの小野寺玲(左)と阿部嵩之(右)宇都宮ブリッツェンの小野寺玲(左)と阿部嵩之(右) photo:Makoto AYANO
阿部嵩之:チームから絶大な信頼を得るベテラン選手。大柄な体躯から繰り出すパワーとスピードを武器にルーラーとして活躍し、2014年からは宇都宮ブリッツェンに所属。ディスクブレーキやチューブレスタイヤなど積極的に新しい機材を取り入れており、最近はロードバイクにグラベルキングのチューブレスモデルを履かせて未舗装林道走破も楽しんでいる。

小野寺玲:爆発力を武器に、クリテリウムなどの集団スプリントで強さを発揮するスプリンター。那須ブラーゼンを経てブリッツェン入りし、ナショナルチームのメンバーとして海外レースも経験。2017年のアジア選手権U23個人タイムトライアルで悲願の初タイトル獲得して以降は安定した強さを発揮する。トレーニングタイヤはRACE EVO時代からDURO一択。

宇都宮ブリッツェン



ツアー・オブ・ジャパンを走った宇都宮ブリッツェンとAGILESTチューブラー

5月19日(木)から5月22日(日)までの4日間に渡り開催されたツアー・オブ・ジャパン。もちろん宇都宮ブリッツェンもAGILESTチューブラーを履き、増田成幸をエースに戦い抜いた。

阿部嵩之を先頭に宇都宮ブリッツェンがメイン集団をコントロール阿部嵩之を先頭に宇都宮ブリッツェンがメイン集団をコントロール photo:Satoru Kato
惜しくも増田は総合表彰台にあと一つ届かなかったものの、その一方で富士山ステージで7位に入った宮崎泰史がヤングライダー賞を獲得するなど、新しい希望も見えた。

新人賞を獲得した宮崎泰史(宇都宮ブリッツェン)新人賞を獲得した宮崎泰史(宇都宮ブリッツェン) photo:Satoru Kato
清水監督によれば、大雨の悪コンディションで争われた3日目の相模原ステージはおろか、大会全期間を通しても宇都宮ブリッツェンにパンクは一度も起こらなかったという。AGILESTの耐パンク性能が証明される結果となった。



次章では、宇都宮ブリッツェンの2人、そしてパナレーサーの開発陣を交えたインタビュー/トークを紹介。アジリストの開発秘話、ブリッツェンが求めたこと、アジリストの存在価値について触れていきます。
提供:パナーレーサー/制作:シクロワイアード編集部