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キャノンデールのSLATEと全国各地を巡った人気連載が、Topstoneシリーズと共に再始動。最新のTopstone Carbon Leftyを駆り、日本国内のグラベルカルチャー発祥の地となった大弛峠に想いを馳せるべく、梅雨の晴れ間を突いて長野県は八ヶ岳、野辺山を目指した。

梅雨の晴れ間を突いて、Topstone Carbon Leftyと野辺山へ

長雨が続く今年の梅雨。その間を突いて野辺山に繰り出した長雨が続く今年の梅雨。その間を突いて野辺山に繰り出した photo:So.Isobe
ときに空中にラインを描くカズさんの走りを真似ながら、あちこちに大きな岩肌が露出し、山の水が流れる未舗装林道の下りを突き進む。思い出すのは今から8年前、2012年に初開催された第1回のRapha Gentleman's Race(現Rapha Prestige)にTopstoneのようなグラベルバイクは影も形もなく、おっかなびっくり26cタイヤのロードバイクで走ったこと。僅かな間によくここまで進化したな、と心の底から感心する。

Leftyフォーク搭載モデルのデビューと共に始動する、Topstone連載企画第一弾の場所として選んだのは八ヶ岳。そのきっかけとなったのは、キャノンデール・ジャパンのカズこと山本和弘さんと「Rapha Gentlemen's Raceのコースを、最新のフルサスグラベルバイクで走ってみたい」と話したことだった。

萌木の村ROCKで地ビールを愉しみつつ、第一回Gentleman's Raceを振り返る萌木の村ROCKで地ビールを愉しみつつ、第一回Gentleman's Raceを振り返る photo:So.IsobeROCKオーナーの舩木良さん。ラリードライバーとしてもならしたROCKオーナーの舩木良さん。ラリードライバーとしてもならした"グラベル"好き photo:So.Isobe

折しもキャノンデールはLeftyを搭載したTopstone Carbonを発表したばかり。6月末という難しい時期ではあったものの、雨雲が抜けたタイミングを突いて、カズさんと、この話に飛びついたキャノンデール横浜の高木店長、そして自分の3人を乗せたクルマは中央道を飛ばした。
 
お馴染み「ROCK」で明日のコースを案内してくれる矢野大介(Rapha Japan代表)さんと合流し、この場所で造られる地ビールTouchdown(タッチダウン)を楽しみながら明日のコース情報を共有する。「グラベルって言葉はようやく自転車界隈で流行りだしたよね」と人懐っこく笑うROCKオーナーの舩木さんは、もともとラリーストとしてならした人。当然といえば当然だが、周囲に張り巡らされた"グラベル"の情報量は並大抵ではなかった。

Topstone Carbon Leftyの朝の儀式を進めるカズさん。Topstoneを語る上で不可欠な存在だTopstone Carbon Leftyの朝の儀式を進めるカズさん。Topstoneを語る上で不可欠な存在だ photo:So.Isobe滝沢牧場前からスタートする、矢野さん、カズさん、そして高木店長滝沢牧場前からスタートする、矢野さん、カズさん、そして高木店長 photo:So.Isobe

スタートからわずか5分。辺りは霧に包まれたスタートからわずか5分。辺りは霧に包まれた photo:So.Isobe
サイクリストの朝はいつだって早い。翌朝5:30。第1回Gentleman’s Raceよろしく、野辺山シクロクロスでお馴染みの滝沢牧場前を、Topstone Carbon Leftyに乗った面々がスタートする。朝だけ走って仕事に戻る矢野さんはご自慢のシクロクロスバイクで走る予定だったが、目を輝かせながら「僕が乗った方が(絵的に)いいんじゃない?」と、自分のTopstone Carbon Leftyに乗り換えたことはここだけの秘密。まずは昨年初開催された「野辺山グラベルチャレンジ」のコースに沿って、まずは一番手近にある未舗装林道を目指した。

標高1400m。普段よりもずっと荒い呼吸が空気の薄さを教えてくれる。矢野さんが「地球に住んでる感じがする」と表現する風土やロケーションだけでなく、野辺山は高地トレーニングに適した場所としても多くのアスリートを惹き寄せてきた。2012年、西薗良太さん(元ブリヂストン・アンカー)が初の全日本TTタイトルを獲る前に合宿を積んだのもこの野辺山だったという。

鹿侵入防止のゲートを開けて進む鹿侵入防止のゲートを開けて進む photo:So.Isobe
極上シングルトラックにご満悦のカズさん極上シングルトラックにご満悦のカズさん photo:So.Isobe
改めて反芻するまでもないことだったのだが、Rapha Japanの周囲に広がる八ヶ岳山麓は、文字通り矢野さんの「庭」だった。林道を突き進むかと思いきや、途中から存在すら怪しいシングルトラックに分け入り、いよいよ踏み跡がなくなってもなお熊笹の中を突き進む。

しかし急に視界が開けた先にはちゃんと林道があって、そこからはハイスピードの極上ダウンヒル。「この辺りの踏み跡をMTBトレイルとして整備したら、絶対面白いと思うんです」と笑う矢野さんならではのコースに、自分たちの心は踊るばかりだった。

道のすぐそばまで転がっていた大岩でトライアル道のすぐそばまで転がっていた大岩でトライアル photo:So.Isobe
林道から分け入った先は、壁のような岩が連なる登山道跡。MTBトレイルとして整備する考えもあるそうだ林道から分け入った先は、壁のような岩が連なる登山道跡。MTBトレイルとして整備する考えもあるそうだ photo:So.Isobe
"グラベルチャレンジの裏の裏"を突き進むループを終え、Rapha Japanオフィスでの小休止を経て次なる目的地へ向けてハンドルを切る。日本で最も高い場所を走る鉄道として知られる小海線沿いに、これから出荷最盛期を迎える高原野菜畑を横目に川上村へ。巨大なトラクターがそこかしこを走る「レタス街道」を小気味良くクルージングできるのは、Topstone Carbonのキャパシティあってこそ。綺麗なアスファルトも、農耕地の舗装路にありがちな大きな段差やひび割れも、リジット感の強い新型Lefty Oliverならロックアウト要らずで走りきれる。

地元の人で賑わうマーケットで買ったおにぎりをポケットに押し込み(その地方の独自色が出る惣菜コーナー巡りは旅の醍醐味の一つだ)、舗装路の県道ではなくわざわざ山中に伸びる分岐を入った先は、踏みしめられた轍が続く生きた未舗装林道だった。関東近郊なら極上オフロードとして人気を集めそうなものだが、あまり知られていないのは、恐らく付近に超有名ロングダートが存在しているから。そして、そのうちの1本こそ、今回の目的地だ。

川上村特産の高原野菜はこれからが収穫最盛期川上村特産の高原野菜はこれからが収穫最盛期 photo:So.Isobe
そこかしこを巨大なトラクターが行き交うそこかしこを巨大なトラクターが行き交う photo:So.Isobe
林道の峠頂上で運んできた昼食を手早くを頬張り、はやる気持ちのまま上下左右にうねる極上ダウンヒルをかっ飛ばす。向かうは大弛峠を目指す超有名林道の「川上牧丘線」。すぐ近くに位置する市道大滝幹線17号線(中津川林道と呼んだ方が通りは良いはずだ)と共に未舗装路を愛する人たちを惹きつけてやまないゴールデンルートであり、この大弛峠(川上牧丘)こそ、第一回Gentleman’s Raceに組み込まれ、現在まで続く日本国内グラベルカルチャーの種を蒔いた場所なのだ。

サイクリストの常として苦しい思い出は美化されるもの。しかし自分がシクロワイアードチームの一員としてあのイベントを走り切ったことは、今思い出しても身の毛がよだつほど苦しく、キツく、そして感動的な記憶として心から離れない。140kmで獲得標高4000mというコース、序盤の峠の下りで大落車したこと、細いロードタイヤで何とか大弛峠を登りきり、8月にも関わらずその頂上で大雨に降られ、低体温症寸前で20kmの下りをこなしたこと。そして、11時間47分に渡る長駆の最後に、チームメイト全員揃って見た平沢峠からの景色。その記憶と照らし合わせるようにキャベツ畑が広がる舗装路をひた走る。

高木店長のチョイスはおにぎりとヤツレンの飲むヨーグルト高木店長のチョイスはおにぎりとヤツレンの飲むヨーグルト photo:So.Isobe刷新されたLefty Oliver。先代と同じ30mmストロークながら走りの深さは大きく変わった刷新されたLefty Oliver。先代と同じ30mmストロークながら走りの深さは大きく変わった photo:So.Isobe

淡い期待を寄せていたものの、前情報通り大弛峠(長野県側)は通行止めだった淡い期待を寄せていたものの、前情報通り大弛峠(長野県側)は通行止めだった photo:So.Isobe
ふと、機材進化は正義だな、と思った。あの時26cのロードタイヤで、今にも止まりそうな速度で走っていた未舗装路を、今では過度なパンクの心配をせず楽しく駆け抜けられるようになったのだから。そこに先鞭をつけたSLATEはやはりエポックメイキングだったし、Topstone Carbon Leftyは安定感と操る愉しさを、さらに高い次元で兼ね備える一台だと心底感じる。そして、ようやくたどり着いた林道入り口に見えたのは、無慈悲な「全面通行止め」の看板だった。

ー実を言えば、通行止めは事前情報として掴んでいた。関東甲信のオフロード愛好家にため息をつかせた大弛峠の通行止めは、昨年秋の大型台風がもたらしたものだ。同じく旧中津川林道も崩落し、この周囲の情報を調べるにつけ「全面通行止め」「この先崩壊のため通行不可」という表記が目につく。しかしそれでも入り口だけは拝んでおこうとやってきた自分たち3人。序盤区間は通行できそうとの情報もあったが、やめておくのが大人の遊びというもの。開通を心待ちにしているよ、と告げて、元来た道を戻ったのだった。

いつの日か、全線開通することを願っていつの日か、全線開通することを願って photo:So.Isobe
長大林道として知られる群馬の栗原川林道も永久廃道化がが決まるなど、大型災害が連続するこの近年において、もしかすると林道遊びは今後より一層ハードルが高いものになってしまうのかもしれない。

しかし、それでもなお、長大未舗装林道を走るグランツーリングが惹きつける魅力は決して色褪せることはないと思う。木々や流れる水の音を聴きながらペダルを踏み込み、滑るリアタイヤを感じて唇を嚙みしめて下りを飛ばす。そして峠でほおばる昼食の美味さと、仲間との他愛もないおしゃべり。そんな林道ツーリングの愉しみを最大化させてくれるバイクこそ、最新のグラベルロードだと思う。

清流を見つけたら、やることは一つだけ清流を見つけたら、やることは一つだけ photo:So.Isobe
長い梅雨晴れの、極上の1日が終わった。またこの地を訪れることを胸に期して長い梅雨晴れの、極上の1日が終わった。またこの地を訪れることを胸に期して photo:So.Isobe
キャパシティの広いTopstone Carbon Leftyだから楽しめる未だ見ぬ道を求め、暇があれば林道情報を調べている自分がいる。第一回Gentleman’s Raceで衝撃を受け、SLATEで燃え盛った熱は、この先数十年消えることがなさそうだ。

使用バイク:Topstone Carbon Lefty 1

キャノンデール Topstone Carbon Lefty 1キャノンデール Topstone Carbon Lefty 1 photo:So.Isobe
今回の旅の相棒は、話題沸騰中のTopstone Carbon Lefty 1。Topstone Carbonならではの KingPinサスペンションを搭載する俊敏なカーボンフレームに、シングルクラウン化により大幅な軽量化を果たした30mmストロークのLefty oliverを組み合わせたフルサスペンショングラベルロード。中でも「1」は、カーボンボディのLeftyにスラムのForce/X01 Eagle eTap AXS、キャノンデールオリジナルのHollowGram 23カーボンホイール、そしてSaveカーボンハンドルなど持てるハイグレードパーツをフル投入したハイエンドモデルだ。税抜き価格は75万円。

Topstone Carbon Lefty 1詳細

提供:キャノンデール・ジャパン text&photo:So.Isobe