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フルモデルチェンジを遂げたBMCのオールラウンドマシン、BMC Teammachine SLR 01をインプレッション。BMCバイクを駆りコンチネンタルレースを戦うHincapie LEOMO Bellmare Racing Teamの選手2人が、数多の栄光を刻んだ名モデルの最新機を試した。

Hincapie LEOMO Bellmare Racing TeamがBMC Teammachine SLR 01を試す

BMC Teammachine SLR 01 ONEBMC Teammachine SLR 01 ONE photo:Makoto.AYANO
3年ぶりに生まれ変わった新生Teammachine SLR 01のテストを行なったのは、今年から「Hincapie LEOMO Bellmare Racing Team」として国内外のレースを走る小山智也選手と、なるしまフレンドのメカニックとしても活躍する小畑郁選手の二人。今年からBMCバイクを駆るHincapie LEOMO Bellmareの二人は、新型SLR 01をいかに評するのか注目してほしい。

テストバイクはVol.1でも紹介したSRAM RED eTap DiscとDTスイスの軽量カーボンホイール「MON CHASSERAL」で武装した最高級完成車「BMC Teammachine SLR 01 ONE」。今回の発表に先駆け、BMC日本総代理店のフタバ商店を介しスイス本社からバイクを借り受けた。

テストライダープロフィール

Hincapie LEOMO Bellmare Racing Teamの小畑郁、小山智也両選手がテストを行なったHincapie LEOMO Bellmare Racing Teamの小畑郁、小山智也両選手がテストを行なった photo:Makoto.AYANO
LEOMO TYPE-Sのモーションスコアを使用して比較に臨んだLEOMO TYPE-Sのモーションスコアを使用して比較に臨んだ photo:Makoto.AYANOジャイロスコープと加速度センサーを搭載するLEOMOモーションセンサージャイロスコープと加速度センサーを搭載するLEOMOモーションセンサー photo:Makoto.AYANO

小山智也(こやまともや)
1998年生まれ、大阪出身の若きスプリンター。イナーメ信濃山形からインタープロに移籍し、Hincapie LEOMO Bellmare Racing Teamのコンチネンタル(UCI)メンバーとして所属する。ゴール勝負を得意とし、2018シーズンのJプロツアー開幕戦ではU23カテゴリー最上位となりピュアホワイトジャージを着用。シーズン中盤まで維持した。普段は2020年モデルのTeammachine SLR 01 Discを駆る。

小畑郁(おばたかおる)
圧倒的な知識量と優れた技術力から国内No.1メカニックとの呼び声高い、なるしまフレンドの技術チーフ。勤務の傍ら精力的に競技活動を行っており、ツール・ド・おきなわ市民210kmでは2010年に2位、2013年と2014年に8位に入った他、国内最高峰のJプロツアーではプロを相手に多数の入賞経験を持つ。2020年はHincapie LEOMO Bellmare Racing Teamの一員として国内レースを走る。普段の愛車はエアロロードのTimemachine Road 01。

Hincapie LEOMO Bellmare Racing Teamとは?

日本国内の若手選手を国際チームにステップアップさせることを目的に、宮澤崇史率いるLEOMO Bellmareと、アメリカのUCIコンチネンタルチームが合流して生まれた日米2チーム体制のロードチーム。UCIコンチネンタルチームの「Hincapie LEOMO p/b BMC」と、将来有望な若手と経験豊富なベテランが混在するJプロツアーチーム「Hincapie LEOMO Bellmare Racing Team」が存在し、TYPE-Sをはじめとしたスポーツの動作解析システムを開発、サービスとして提供するLEOMO, Inc.によりサポートされる。選手の動きを解析しパフォーマンスを向上させることで、世界を目指す選手を育成することが目標。

Hincapie LEOMO Bellmare Racing Team チームHP


「ダンシングで際立つ軽さ」

CW:さて、試乗お疲れ様でした。小山選手、率直な感想は?

小山:そうですね。慎重に乗っていた序盤こそあまり差がないかも...と思っていたのですが、ダンシングや、ダッシュを掛けた時に大きな違いを感じました。普段乗っているTeammachine SLR Disc(先代モデル)と比べて走りが軽い。特に車体を振った際の軽さが際立ちますね。

小山選手が駆る先代SLR Discと比較テストを行なった小山選手が駆る先代SLR Discと比較テストを行なった photo:Makoto.AYANO
小畑:僕も小山君と同意見ですね。普段エアロモデルのTimemachine Road 01に乗っているのでそう感じるのは当然ですが、小山君のSLR Discと乗り比べても違いは明らかです。平坦巡航、登り、下り、ハンドリングなど、あらゆる動きに対してバイクの反応性が上がっていると感じました。ピュアで扱いやすいロード"レーサー"です。

小山:SLRって登りメインと思われがちですが、実は平坦でも良く走ってくれるんです。さらに新型は下ハンドルを握ってスプリントしても、スイスイっと進んでくれるのが気持ちいい。踏み味としては硬いんでしょうが、それを悪目立ちさせないしなりがあるんですよね。高出力で踏み込んだ時にしっかりと受け止めつつ、リズムを取ってくれる。そして衝撃が腕や肩に直接伝わってこないからしっかり踏み込めます。この部分はとても気に入りました。

小畑:たぶん全体のバランスが良いんでしょうね。ただ硬いだけでも柔らかいだけでもない。局所的に硬い/柔らかいと癖に繋がって乗りづらいのですが、新型SLRはそれがない。ここが良い!とピンポイントで特筆する部分こそないのですが、レースバイクとして非常に扱いやすいバランスの優等生です。

「写真で見るよりも実際の形状変化は大きいですね」「写真で見るよりも実際の形状変化は大きいですね」 photo:Makoto.AYANO
僅か305gに抑えられたICS carbon cockpit 僅か305gに抑えられたICS carbon cockpit photo:Makoto.AYANO「選手としてノーマルハンドルが使えるのは嬉しいけれど、専用ハンドルの快適性も魅力です」「選手としてノーマルハンドルが使えるのは嬉しいけれど、専用ハンドルの快適性も魅力です」 photo:Makoto.AYANO

CW:確か小畑さんは以前SLRでレースに出ていたように記憶しているのですが...。

小畑:初代SLRに乗っていましたよ。カデル・エヴァンスがツール・ド・フランスで勝った時のモデルですね。僕はあのモデルでツール・ド・おきなわに出場して、チームメイトだった岩島選手のアシストとして狙い通り2位に入った(岩島選手は優勝)ので印象も良いんです(笑)。フォークもリアバックも華奢な初代からその後、剛性強化と軽量化に舵を切りましたが、オールラウンドなグランツールモデルという性格はこの最新作に至るまでずっと変わっていないと思います。

小山:エアロ性能強化が新型の大きな話題ですが、確かに下りでの速さは感じました。軽量ホイールを履いていたにも関わらず、なのでフレーム側の速さは相当上がっているのかな、と。スプリンター目線で見るならば、少し重量のあるホイールの方がバイク全体としてバランスが高まるので好みかと思います。

「先代よりも走りの軽さ、特にダンシングした時の軽さが増している」「先代よりも走りの軽さ、特にダンシングした時の軽さが増している」 photo:Makoto.AYANO
「レースバイクとして非常に扱いやすい優等生」「レースバイクとして非常に扱いやすい優等生」 photo:Makoto.AYANO小畑:実は、自分がTMRを選んだ理由は、SLRの47サイズのヘッド角度が寝ていてハンドリングが若干鈍いからなんです。シートアングルが全部一緒で、ヘッドアングルで調整しているんですよね。でも旧型から1度上がって(47サイズで70.5→71.5)いますし、51サイズでこれだけ俊敏なので47のSLRを乗ってみたくなりました。個人的にはSLRの歴史10年の中でいちばん大きな変更だと思います。

いつも思うのですが、硬さ一辺倒のバイクって乗りづらくてしょうがない。一発の速さはあっても距離を走った時に消耗しちゃうバイクだと、よほど強靭な体力がないと選手だって乗りこなせませんよね。そういう意味でSLRはすごくバランスが良い。基本的にはNTTプロサイクリングの選手が使うことを想定していると思いますが、ホビーレーサーでも"乗りやすさ"は感じられるはず。それでいて旧型よりも軽くなっているので、長距離を走った時の疲労度は軽減されると思うんです。

CW:小山選手は専用品だけではなくノーマルハンドルも使えるのが気に入ったそうですね。

小山:ですね。選手の中にはこだわりの強い人って少なくないんです。個人的にもスプリントしやすい丸ハンドルが好きですし、一般サイクリストでも好みのものを使えるというのは大きなメリットだと思いますよ。とは言っても専用ハンドルも乗り心地が良かったので、これはこれで良いなぁ、と。

それから、すごく地味な部分なんですが、専用ハンドルに取り付けるコンピューターマウントが良かった。

CW:なるほど?

小山:最新のサイコンって大型化してますし、軽くは作られていますが、ライトやバッテリーを追加すると段差でマウントごとおじぎしてしまうことがあるんです。...なんですが、新型SLRのマウントはかなり強いですし、取り付け部分も飛び出し量を無段階に調整できる。例えばガーミンのEDGE 1030Jなど大きなコンピューターがつけられないマウントって少なくありませんが、これならサイズ的にも強度的にも大丈夫でした。地味ながら大切なアップデートですよね。

"BMCのSLRらしさ"を維持しつつ、全体的にアップデートされている photo:Makoto.AYANO
空気抵抗を抑えるAEROCORE(エアロコア)ボトルケージシステム空気抵抗を抑えるAEROCORE(エアロコア)ボトルケージシステム photo:Makoto.AYANOAEROCOREボトルケージはノーマルケージに置き換えることも可能だAEROCOREボトルケージはノーマルケージに置き換えることも可能だ photo:Makoto.AYANO

特にフロント〜前三角周辺は先代よりも力強いデザインに生まれ変わった特にフロント〜前三角周辺は先代よりも力強いデザインに生まれ変わった photo:Makoto.AYANO
小畑:いろんな要素が全部アップデートされているのに値段はほとんど変わらないんですよね。写真で見るとルックスは変わらないのかな?と思いますが、"BMCのSLRらしさ"を残しながらヘッド〜ダウンチューブを中心に結構違う。どこか性能的に突出している自転車って確かに面白いんですが、SLRはオールラウンダーとして正統派ですよ。

小山:TOJの富士山など例外もありますが、ほとんど全てのロードレースは平坦も登りも下りもあります。だから選手として良い意味で特徴がないバイクの方が嬉しいという人は少なからずいるんですよね。ヨーロッパでは富士山よりも険しい峠でレースをするので、NTTプロサイクリングはド平坦レース以外はみんなSLRに乗るんじゃないでしょうか?

小畑:実際NTTプロサイクリングでも、緩斜面をパワーで踏める(ヴィクトール)カンペナールツやスプリンターを除いて大多数がSLRですし。(ドメニコ)ポッツォヴィーボのような小柄なクライマーにとっては嬉しいモデルチェンジだと思います。

「特に小柄なクライマーにとっては嬉しいモデルチェンジ」「特に小柄なクライマーにとっては嬉しいモデルチェンジ」 photo:Makoto.AYANO
大きなコンピューターに対応しつつ、強度を確保した専用マウント大きなコンピューターに対応しつつ、強度を確保した専用マウント photo:Makoto.AYANOケーブルやホースをフル内装するが、ハンドリングへの影響は全く感じなかったケーブルやホースをフル内装するが、ハンドリングへの影響は全く感じなかった photo:Makoto.AYANO

スルーアクスルが露出しないステルス・ドロップアウトデザインスルーアクスルが露出しないステルス・ドロップアウトデザイン photo:Makoto.AYANOステルス・ドロップアウト用に専用設計された前後スルーアクスルステルス・ドロップアウト用に専用設計された前後スルーアクスル photo:Makoto.AYANO

小山:SLRとTMRを選ぶとしたらSLR。苦手な登りで助けてくれますし。しっかりゴール勝負を狙える性能があるからこそ、そういったメリットは大きくなりますね。

小畑:ショップスタッフ目線で見ても、BMCってケーブルルーティングひとつとってもすごく考えられた作りをしているんです。成形精度も高いし、実際全てのケーブル類が内装される新型SLRも「これは困りそうだな」という部分がない。内装ケーブルがハンドリングに影響することもありませんし、非常に良いバイクだと思います。

小山:今シーズンはこのまま先代SLRを乗り続けることになると思いますが、できることなら乗り換えたい(笑)。そう思わせる良いバイクでした。
提供:BMC(フタバ商店)、text:So.Isobe