2020/06/15(月) - 12:03
「やっぱこれだ!サイコーだ!」。グラベル区間に入った瞬間に、そう思った。機敏なフレームと650bのボリューム、そして、待望の新型Lefty Oliverサスペンション。Topstone Carbon Leftyは、間違いなくキャノンデール史上最高のファンバイクであり、独創性を追求してきたキャノンデールの、ブランドの体現そのものだった。
「やった!キャノンデールがやってくれた!」。キャノンデール・ジャパンの”カズ”こと山本和弘さんから、Lefty化したTopstone Carbonが出ると聞いたその瞬間、私は小さくガッツポーズをしていた(と思う)。
多分それは、Slateの衝撃があまりにも大きかったからだ。
アルミTopstoneの素性の良さはアメリカの発表会/グラベルレース参加で良く理解していたし、その翌年にリリースされたTopstone CarbonはKingpinサスペンションを得てグラベルラインナップ最高峰の座を確立。しかしそれでも、Leftyの無いキャノンデールのオフロードバイクは、個人的には、正直に言えば、どこか物足りなかった。それだけに、Slateに慣れ親しんできた私にとってTopstone Carbon Leftyは「待ち望んでいた」存在だったのだ。
届いたSサイズのTopstone Carbon Lefty 1を手早く組み上げ(クイックリリース式になったブレーキキャリパー台座は本当に楽だった)、逸る心を抑えながらお気に入りのグラベルフィールドを目指して走り出した。
思えば、今では一般化した650B装備のグラベルロードの走りとなったのもSlateだった。その当時には影も形もなかった650x47cのグラベルタイヤに3barを充填し、繋ぎの舗装路をひた走る。もちろんロードバイクほどの軽い走りではないものの、リジッドTopstone Carbonに劣ることもなく、当然アルミフレームのSlateより俊敏だ。
Slateと比較した時に、まず気づいたのがハンドリングの良さだった。確かにSlateはグラベルロードの礎を築いたものの、コーナリングの左右差が大きい(スリックタイヤ故に左ターンのクイックさ/右ターンの大回り感が、特に舗装路で目立つ)ことなど荒削りな部分があった。しかしシングルクラウン化したLefty Oliverは、ベースとなったLefty Ochoと同じく、とにかくスムーズで、自然で、そして曲がりすい。低速域の扱いやすさ向上は顕著なのに、クイック感が増しているのは、おそらく開発陣がこだわったアウトフロントジオメトリーのおかげなのだろう。
Lefty Oliverの動きそのものは先代と比べて硬いことに(1G状態で揺すってもほとんど動かない)驚いたが、これが実際のところ、すごく良かった。なぜかというと、舗装路でも未舗装路でも整った路面ではリジッド感が強く、それでいて凹凸にヒットした時はきちんとショックを飲み込んでくれるから。試しに思いっきりフルバンプする状況を作っても、Slateよりも底付き感が少なく、それでいてXCフォークに乗っているような持て余し感もない。ロックアウト操作の頻度がSlateより少ないのは大きな発見だった。
だからこそ「ずっと路面に沿って走る」安心感は、Slateとも、リジッドのTopstone Carbonとも比べ物にならないくらい大きく、ハイエンドグラベルロードの本来のフィールド、つまり高速でオフロードを駆け抜けるフィーリングは輪をかけて気持ちがいい。リジッドだったら躊躇ってしまう大きなギャップを苦もなく越え、リアのKingpinサスペンションにリズムを合わせると、最大30mmというフレックスとスーパーショートチェーンステーがグッと加速を後押ししてくれる。
純正のタイヤセットは「分かってる」人向けのセッティングだ。どちらもWTBの650Bx47Cだが、前がノブ付きのVentureで、リアはセンタースリックのByway。センタースリックなので一旦リアを振り出すとどうにも止まらないけれど、平坦路での軽さは言わずもがな。キャノンデールの他のグラベルモデルが前後ブロックタイヤであることを見ると、つまりTopstone Carbon Leftyは、スキルフルなユーザーにストライクとなるよう作られたことが分かる。
ちなみに空気圧は、オフロードライドを好む体重65kgの自分にとっては3.0+αくらいがちょうど良かった。650bx47cのグラベルタイヤとしてはやや高めだが、衝撃はサスペンションに仕事をさせることでフラット路面での走りが軽くなる。こういったキャパシティしかり、煮詰められたLeftyしかり、全体的な完成度はSlateから(フレーム素材の違いを考えても)大きく飛躍している。
グラベルロードにフルサスなんて要らない、それならMTBでいいじゃん、という意見もあるだろう。確かにサスペンション投入やスラックジオメトリーなど、ここ近年グラベルロードはMTBの領域に近づいてきたものの、それでも今回のライドを通じ、Topstone Carbon Leftyはれっきとしたグラベルバイクだと思った。
それはドロップハンドルを基準にしたジオメトリーと俊敏な走りはもちろんだが、Lefty Oliverの味付けは(奥行きのある乗り味となったとは言え)あくまでグラベルロードの走りに最適化したものだから。XCコースレベルの凹凸になると体重移動を考えないと上手く進まないし、標準よりもやや硬めのセットにしてあげると、MTBよりも軽く俊敏なフレームがより活きてくる。
今までどのキャノンデールグラベルロードにも無かった、フルサスならではの浮遊感や、倒しこんだ時に路面を掴んでくれる感覚はとにかく最高の一言。もちろん舗装路ではロードよりも遅く、シングルトラックではMTBよりキャパシティは少ない。けれど、あるいは、だからこそ、Slateより、そしてリジッドのTopstone Carbonよりも、扱いやすさと走破性を向上させたTopstone Carbon Leftyは最高に面白い。
なぜこんなに、キャノンデールのオフロードバイクに惹かれるんだろう。それは多分、今を生きるLeftyやAiオフセットにしろ、その昔に一斉を風靡したHeadshockにしろ、他ブランドには絶対に存在しないエキセントリックなアイディアを、"使える"ものに昇華させて製品に落とし込んでいるからだ。
LeftyとKingpinによる前後フルサス、そして650Bホイールのルックスを風変わりと侮るなかれ。Topstone Carbon Leftyは、数あるマスプロメーカーの中で最もグラベルカテゴリーに入れ込むキャノンデールが贈る、本気のハイエンドバイクだ。
グラベルフィールドでTopstone Carbon Leftyを乗り倒す
「やった!キャノンデールがやってくれた!」。キャノンデール・ジャパンの”カズ”こと山本和弘さんから、Lefty化したTopstone Carbonが出ると聞いたその瞬間、私は小さくガッツポーズをしていた(と思う)。
多分それは、Slateの衝撃があまりにも大きかったからだ。
アルミTopstoneの素性の良さはアメリカの発表会/グラベルレース参加で良く理解していたし、その翌年にリリースされたTopstone CarbonはKingpinサスペンションを得てグラベルラインナップ最高峰の座を確立。しかしそれでも、Leftyの無いキャノンデールのオフロードバイクは、個人的には、正直に言えば、どこか物足りなかった。それだけに、Slateに慣れ親しんできた私にとってTopstone Carbon Leftyは「待ち望んでいた」存在だったのだ。
届いたSサイズのTopstone Carbon Lefty 1を手早く組み上げ(クイックリリース式になったブレーキキャリパー台座は本当に楽だった)、逸る心を抑えながらお気に入りのグラベルフィールドを目指して走り出した。
思えば、今では一般化した650B装備のグラベルロードの走りとなったのもSlateだった。その当時には影も形もなかった650x47cのグラベルタイヤに3barを充填し、繋ぎの舗装路をひた走る。もちろんロードバイクほどの軽い走りではないものの、リジッドTopstone Carbonに劣ることもなく、当然アルミフレームのSlateより俊敏だ。
Slateと比較した時に、まず気づいたのがハンドリングの良さだった。確かにSlateはグラベルロードの礎を築いたものの、コーナリングの左右差が大きい(スリックタイヤ故に左ターンのクイックさ/右ターンの大回り感が、特に舗装路で目立つ)ことなど荒削りな部分があった。しかしシングルクラウン化したLefty Oliverは、ベースとなったLefty Ochoと同じく、とにかくスムーズで、自然で、そして曲がりすい。低速域の扱いやすさ向上は顕著なのに、クイック感が増しているのは、おそらく開発陣がこだわったアウトフロントジオメトリーのおかげなのだろう。
Lefty Oliverの動きそのものは先代と比べて硬いことに(1G状態で揺すってもほとんど動かない)驚いたが、これが実際のところ、すごく良かった。なぜかというと、舗装路でも未舗装路でも整った路面ではリジッド感が強く、それでいて凹凸にヒットした時はきちんとショックを飲み込んでくれるから。試しに思いっきりフルバンプする状況を作っても、Slateよりも底付き感が少なく、それでいてXCフォークに乗っているような持て余し感もない。ロックアウト操作の頻度がSlateより少ないのは大きな発見だった。
だからこそ「ずっと路面に沿って走る」安心感は、Slateとも、リジッドのTopstone Carbonとも比べ物にならないくらい大きく、ハイエンドグラベルロードの本来のフィールド、つまり高速でオフロードを駆け抜けるフィーリングは輪をかけて気持ちがいい。リジッドだったら躊躇ってしまう大きなギャップを苦もなく越え、リアのKingpinサスペンションにリズムを合わせると、最大30mmというフレックスとスーパーショートチェーンステーがグッと加速を後押ししてくれる。
純正のタイヤセットは「分かってる」人向けのセッティングだ。どちらもWTBの650Bx47Cだが、前がノブ付きのVentureで、リアはセンタースリックのByway。センタースリックなので一旦リアを振り出すとどうにも止まらないけれど、平坦路での軽さは言わずもがな。キャノンデールの他のグラベルモデルが前後ブロックタイヤであることを見ると、つまりTopstone Carbon Leftyは、スキルフルなユーザーにストライクとなるよう作られたことが分かる。
ちなみに空気圧は、オフロードライドを好む体重65kgの自分にとっては3.0+αくらいがちょうど良かった。650bx47cのグラベルタイヤとしてはやや高めだが、衝撃はサスペンションに仕事をさせることでフラット路面での走りが軽くなる。こういったキャパシティしかり、煮詰められたLeftyしかり、全体的な完成度はSlateから(フレーム素材の違いを考えても)大きく飛躍している。
グラベルロードにフルサスなんて要らない、それならMTBでいいじゃん、という意見もあるだろう。確かにサスペンション投入やスラックジオメトリーなど、ここ近年グラベルロードはMTBの領域に近づいてきたものの、それでも今回のライドを通じ、Topstone Carbon Leftyはれっきとしたグラベルバイクだと思った。
それはドロップハンドルを基準にしたジオメトリーと俊敏な走りはもちろんだが、Lefty Oliverの味付けは(奥行きのある乗り味となったとは言え)あくまでグラベルロードの走りに最適化したものだから。XCコースレベルの凹凸になると体重移動を考えないと上手く進まないし、標準よりもやや硬めのセットにしてあげると、MTBよりも軽く俊敏なフレームがより活きてくる。
今までどのキャノンデールグラベルロードにも無かった、フルサスならではの浮遊感や、倒しこんだ時に路面を掴んでくれる感覚はとにかく最高の一言。もちろん舗装路ではロードよりも遅く、シングルトラックではMTBよりキャパシティは少ない。けれど、あるいは、だからこそ、Slateより、そしてリジッドのTopstone Carbonよりも、扱いやすさと走破性を向上させたTopstone Carbon Leftyは最高に面白い。
なぜこんなに、キャノンデールのオフロードバイクに惹かれるんだろう。それは多分、今を生きるLeftyやAiオフセットにしろ、その昔に一斉を風靡したHeadshockにしろ、他ブランドには絶対に存在しないエキセントリックなアイディアを、"使える"ものに昇華させて製品に落とし込んでいるからだ。
LeftyとKingpinによる前後フルサス、そして650Bホイールのルックスを風変わりと侮るなかれ。Topstone Carbon Leftyは、数あるマスプロメーカーの中で最もグラベルカテゴリーに入れ込むキャノンデールが贈る、本気のハイエンドバイクだ。
提供:キャノンデール・ジャパン text:So.Isobe、photo:Gakuto.Fujiwara