およそ1日半に渡るテストライドを終え、筆者はDEFY開発のキーマンであるニクソン・ファン氏へのインタビューを行なった。

ジャイアントのロード部門開発畑でおよそ15年、TCRやPROPEL、そして先代DEFYの開発を強力に推し進めてきた"Mr.ジャイアント"に、試乗した感想を踏まえて質問をぶつけてみた。DEFYのコンセプトや、開発上で大切にしたこと、そしてホビーレーサー大注目のパワーメーター、POWER PROの存在価値など、彼が発した興味深い答えを、ぜひ読み進めてほしい。

ニクソン・ファン氏インタビュー

「ヨーロッパの山岳を越えるための走り心地を追求した」

新型DEFYを掲げるニクソン・ファン氏。ジャイアントロードバイク部門のキーパーソンだ新型DEFYを掲げるニクソン・ファン氏。ジャイアントロードバイク部門のキーパーソンだ photo:So.Isobe
― 今回テストしてみて、DEFYはパッケージとして非常に高いレベルで完成されていると感じました。「グランフォンド用」とのメッセージ通りの走りを体感しましたし、先代よりもパワー伝達が早くなったと感じます。

筆者のインタビューに応じるニクソン氏。1時間近くに渡って丁寧に質問に答えてくれた筆者のインタビューに応じるニクソン氏。1時間近くに渡って丁寧に質問に答えてくれた photo:Han.Dongok「DEFYはヨーロッパの過酷なグランフォンドのために開発したハイパフォーマンスバイクです」「DEFYはヨーロッパの過酷なグランフォンドのために開発したハイパフォーマンスバイクです」 photo:Han.Dongokそう言ってもらえて良かったです。DEFYそのものの開発期間は約2年と他とあまり変わりませんが、特にハンドルバーはアイディアを形にするまで非常に長い時間を要しました。BB剛性は先代と比べて変えていませんが、ホビーライダーにとってはベストな走りをキープしていると考えています。

― 先代やTCR、PROPELと違って剛性値や重量などの数値データを公表していませんが、それは何故でしょうか?

DEFYはホビーレーサーのためのバイクですから、値はあまり重要ではないと考えているからです。例えばPROPELやTCRなどレースバイクにおいては重要ですが、DEFYに関して最も重要なのはライドクオリティ(走り心地)です。単純な快適指数では測れない部分ですし、快適によく走るバイクこそDEFYが目指すもの。ヨーロッパ、アメリカ、そしてアジアと本当のグローバル視点を持つジャイアントにとっては、非常に数多くの大会が開催され人気が高いヨーロッパのグランフォンドに対するニーズに新型DEFYを用意しました。

ヨーロッパのグランフォンドは、今回テストライドを行ったような、本当に長く山々をいくつも超えていくタフなコース設定がほとんどです。上りはもちろん、下りも含めてね。そうしたライドを楽しむユーザーにベストなバイクを作り上げたのです。だからその上で、今回のコンセプトは必要不可欠なものでした。

そして多くのブランド、特に製品開発を外部委託しているブランドにとって、走り心地とは非常にターゲット設定が難しいものです。数値化できないものですし、例えば製造拠点をアジアに持つ、あるいは外部委託する場合はニーズを正しく伝え、それが形になるのが物凄く難しい。その点我々のオフィスと開発チームは一つ屋根の下にあることが大きなメリットだと考えています。

― 日本でもUCIグランフォンドが開催されていますし、フィットするユーザー層は幅広いですね。

そう願っています。もちろん山岳での軽さや速さを求めるならTCRですが、疲れを最小限にとどめて走れるDEFYはより多くの人にフィットするバイクですから。

メディア陣と一緒にガヴィア峠を登ったニクソン氏。もちろん自身も熱心なホビーサイクリストだメディア陣と一緒にガヴィア峠を登ったニクソン氏。もちろん自身も熱心なホビーサイクリストだ photo:Sterling Lorence/GIANT

「製造メーカーとして培った知識と技術をハンドルバーにフル投入」

― 自転車にはハンドル、サドル、そしてペダルと3つのコンタクトポイントがありますが、快適性を高める上ではどれが一番重要だと捉えていますか?

「ハンドルバーの開発は、ジャイアントが製造メーカーとして身につけた素材特性の知識が必要不可欠だった」「ハンドルバーの開発は、ジャイアントが製造メーカーとして身につけた素材特性の知識が必要不可欠だった」 photo:So.Isobe第一にはサドル、つまりバイク開発の上ではシートポストですね。なぜならライダーの体重の大部分はサドルによって支えられていますし、構造的にフレームは衝撃を全て消し去ることはできないからです。

そしてハンドルの快適性がその次。腕への振動が抑えられれば首や肩への負担も減りますが、でも同時にハンドルが柔らかすぎるとロードインフォメーションが伝わらなくなってしまうし、ステアリング操作をした時にブレもでてしまう。そういったバランス取りは非常に難しかったポイントと言えます。

― 非常に斬新で、かつ乗り味の変化も大きかったD-Fuseハンドルバーですが、そのアイディアの源は?

もともとシートポストで成功を収めていたD-Fuse形状をハンドルに流用できないか、というアイディアが形になったのですが、その上では我々ジャイアントが製造メーカーとして身につけた素材特性の知識が必要不可欠でした。

カーボンであれアルミであれ、どういった素材をどのような形状にすればどうなるのかというノウハウが既に備わっていることが強みですし、これは他ブランドよりも上を行っていると自負しています。DEFYは普及価格帯にも展開するモデルですから、カーボンハンドルだけでなくアルミハンドルでもカーボンと同じような快適性を得られるよう努力したのです。

― ブレーキホースをハンドルバーの内側に通さなかった理由を教えて下さい。

PROPELのようにフル内装処理をすると、ハンドルのステムクランプ部分に大きな穴を開ける必要が出てくるのですが、それだと構造的に弱くなってしまいます。PROPELはレーサー用ですからカーボン量の調整で硬く仕上げているのですが、今回のContact SLR D-Fuseハンドルバーは、しなりによって生まれる快適性にフォーカスしているため、強度や柔軟性を計算する上で穴を開けたくなかったのです。ただしステムのケーブルカバーのおかげで露出は最小限ですし、クリーンなルックスを保つことができています。

新登場したContact SLR D-Fuseハンドルバー。長期間の開発の末にデビューする自信作だ新登場したContact SLR D-Fuseハンドルバー。長期間の開発の末にデビューする自信作だ photo:So.Isobe
― 開発上でサンウェブの選手たちも関わっているのでしょうか?

いいえ。DEFYはプロ選手の機材ではなく、全ての一般ライダーのためのバイクですから、バイクライドを趣味として楽しむ一般ライダーがどう感じるか、ということが最も大切です。ですから私や、ジャイアント本社スタッフの間で意見交換をして育て上げてきたバイクですね。UCI認証も取っていますが、それはプロレースのためでなく、UCIグランフォンドに参加するライダーのためです。

「全てのパフォーマンスバイクにパワーメーターが付く時代がやってくる」

― POWER PROに関してですが、ジャイアントからパワーメーターが発表されたことに驚きました。機能面でも費用面でも台風の目となりそうですね。

パワーメーターは我々が力を入れて開発してきたものです。長い年月を掛けてリサーチしてきた分野ですし、各社メーカーがリリースして価格も下がってきたことで一般ユーザーの間にも急速に浸透してきました。もし我々が5年前にPOWER PROを発表していたら誰も振り向かなかったでしょう。けれど、今こそジャイアントがパワーメーターをリリースし、スタンダード化すべきタイミングです。2018モデルでパワーメーター組み込み完成車を発売しているのはスペシャライズド(S-WORKS VENGE)とジャイアント(PROPEL ADVANCED SL 0 DISC)、リブ(LANGMA ADVANCED SL 0)だけですが、ジャイアントの2019モデルはパワーメーター搭載モデルが多くなります。

DEFYと同時発表されたPOWER PRO。パワーメーター界の勢力図を変えるであろう注目の製品だDEFYと同時発表されたPOWER PRO。パワーメーター界の勢力図を変えるであろう注目の製品だ photo:Sterling Lorence/GIANT専用アプリとの連携で手軽にデータ管理と分析が可能。「パワーメーター専用アプリとの連携で手軽にデータ管理と分析が可能。「パワーメーター photo:So.Isobe


この先、全てのパフォーマンスロードバイクにはパワーメーターが搭載される未来がやってくるはずですし、POWER PROはその一石。本来パワーメーターはレーサーのパフォーマンスを上げるトレーニング用機器ですが、ホビーライダーにとっても非常に有益なものです。数値から自分を知ることでより楽しめる幅が広がるでしょうし、例えば登りでオーバーペースになることも防いでくれるという側面もありますから。

それにパワーメーターはズイフトでオンライントレーニングを楽しむ際にも大切なものです。POWER PROがあれば非常に高価なスマートトレーナーは必要ありませんし、特に我々台湾のような雨の多い地域ではベストだと言えます。

「ロードバイクに乗ることを趣味にしている全員に、DEFYを試してもらいたい」「ロードバイクに乗ることを趣味にしている全員に、DEFYを試してもらいたい」 photo:Sterling Lorence/GIANT
― ありがとうございました。インタビューの締めとして、改めてどういった方にDEFYを乗ってもらいたいと考えているか、教えてください。

ロードバイクに乗ることを趣味にしている全員ですね。特に100kmを超えるロングライドを楽しむ方にはベストチョイスでしょうし、PROPELほどではなくともパワー伝達性能にも優れているのでたまにレースに挑戦する方にだって自信を持ってお勧めできます。ライドを楽しみ、景色を楽しむ趣味のロードバイクとして良い選択肢になると考えています。
提供:ジャイアント・ジャパン、text:So.Isobe
photo:Sterling Lorence/GIANT,So.Isobe