かの名峰ガヴィア峠の麓に用意された宿泊先で、ライド準備を進めるのは8名のジャーナリストたち。プレゼンテーションを終え、いよいよ新型DEFYを試す時がやってきた。1日半、イタリアアルプスを駆け巡って感じたDEFYの実力と魅力をお伝えしようと思う。

DEFYを駆り、イタリアアルプスの超級山岳へ

スキーリゾートの作業小屋に準備されていた新型DEFY。各々の体格に合わせてセットアップするスキーリゾートの作業小屋に準備されていた新型DEFY。各々の体格に合わせてセットアップする photo:Sterling Lorence/GIANT機材のセットアップを終え、サンタカテリーナの宿泊先から足慣らしライドへと出発機材のセットアップを終え、サンタカテリーナの宿泊先から足慣らしライドへと出発 photo:Sterling Lorence/GIANT

筆者に用意されたDEFY ADVANCED PRO 0。オールブラックにホログラムロゴが渋い筆者に用意されたDEFY ADVANCED PRO 0。オールブラックにホログラムロゴが渋い photo:So.Isobe
メディア発表会初日のプレゼンテーションが終わり、いよいよ新型DEFYを試す時がやってきた。アルプス山脈の麓という立地をフル活用し、初日午後のショートライドではガヴィア峠を、翌日はモルティローロ峠とガヴィア峠(1日目とは逆サイド)を登って下るというプランだという。「グランフォンド用」を名乗るDEFYを、ジロ・デ・イタリアの名勝負を幾度も見守ってきた名峰で試すとは贅沢の限り(モルティローロ山頂までヘリで登ったことには驚いたが)だ。

身長177cmの筆者に充てがわれたバイクは、完成車では最高峰モデルとなるDEFY ADVANCED PRO 0。Mサイズのトップチューブ長545mmは通常、私にはほんの少し大きいのだが、ヘッドチューブが長いアップライトなポジションなので問題無かった。だから普段、前傾姿勢の強いレーシングバイクに乗っている方がDEFYを選ぶとしたら、サイズ選びにも時間を掛けた方が良いだろう。

試乗車はコラムスペーサーが最大限積まれたデフォルト状態。コラムカットを行う必要があるためハンドル位置を下げられなかったことが心残りだが、ありがたいことに機転を利かせた現場メカニックがブレーキを右前に組み替えてくれた。ダウンヒルを攻める準備はOKだ。

初日はボルミオ側からガヴィア峠にアプローチ。DEFYの挙動を確かめながらソーシャルライドを楽しむ初日はボルミオ側からガヴィア峠にアプローチ。DEFYの挙動を確かめながらソーシャルライドを楽しむ photo:Sterling Lorence/GIANT
このDEFYのために開発されたという28mmのGavia AC1タイヤ(チューブレスセッティング)に6気圧を充填し、同席した8名のジャーナリストや、ジャイアントのスタッフ、そして開発の中軸を担ったニクソン・ファン氏らと共にグループライドがスタート。宿泊ホテルのすぐ裏手から伸びるガヴィア峠のヒルクライムにアプローチした。

優しくも、強くしなやかなライドフィール

2日目のスタートはサプライズでヘリコプターが登場(!)。1級山岳モルティローロ頂上までひとっ飛び2日目のスタートはサプライズでヘリコプターが登場(!)。1級山岳モルティローロ頂上までひとっ飛び photo:Sterling Lorence/GIANTヘリコプターでやってきたモルティローロ。狭い道幅のダウンヒルから2日目のライドがスタートヘリコプターでやってきたモルティローロ。狭い道幅のダウンヒルから2日目のライドがスタート photo:Sterling Lorence/GIANT

ライドのスタート前に記念撮影。今回は8名のジャーナリストが招集されたライドのスタート前に記念撮影。今回は8名のジャーナリストが招集された photo:Sterling Lorence/GIANT
個人的にエンデュランスロードというカテゴリーには、フレーム自体をしなやかにするもの(スペシャライズドのRoubaixやサーヴェロのCシリーズなど)と、フレームに剛性を持たせワイドタイヤで快適性を出すもの(フェルトのVRなど)の2種類が存在すると感じている。それで言えば、このADVANCED PROグレードのDEFYは間違いなく前者だ。

まず、初めて乗ったバイクとは思えないほどクセがなく、ペダリングしても、ダンシングをしてみても、その動きは非常に滑らか。渡欧前に借りていた先代DEFYと比べてBB周りのブレが抑えられたため、ペダリングに対する反応性がすこぶる良くなった。ニクソン氏に聞いたところBB剛性は変えていないとの答えだったので、チェーンステー周辺が強度を増したのだろうか? 柔すぎず、硬すぎない趣味のロードバイクとして絶妙な踏み心地は、私が昨年「剛性至上主義」と書いたPROPEL ADVANCED SLとは全く異なるものだ。

イタリアらしい色彩豊かな街を抜けていく。アップライトなポジションは景色を見やすく、呼吸も楽なことに気づくイタリアらしい色彩豊かな街を抜けていく。アップライトなポジションは景色を見やすく、呼吸も楽なことに気づく photo:Sterling Lorence/GIANTガヴィア峠アプローチ前最後の街、ポンテ・ディレーニョ。雪解け水が川を流れ、小さな店が立ち並ぶ綺麗な街だったガヴィア峠アプローチ前最後の街、ポンテ・ディレーニョ。雪解け水が川を流れ、小さな店が立ち並ぶ綺麗な街だった photo:Sterling Lorence/GIANT

所々16〜17%に達するガヴィアの登り。新型アルテグラのフロント52/36T、リア34/11Tギアが嬉しい所々16〜17%に達するガヴィアの登り。新型アルテグラのフロント52/36T、リア34/11Tギアが嬉しい photo:Sterling Lorence/GIANT
登坂勝負を挑んだり、あるいはダウンヒルを攻めるのであれば軽量高剛性を誇るTCRだろうが、20km弱(平均7〜8%/最大勾配17%)を刻むガヴィア峠を楽しく登ることができたのは、優しい脚当たりのフレームと、R8000系アルテグラに新採用されたフロント52/36T、リア34/11Tのギア構成、そして首や腰に無理させず、呼吸も楽で景色も見やすいアップライトなジオメトリーのマッチングがあってこそ。サドルトークを楽しみ、写真やコーヒーのために立ち止まったりと、がむしゃらに速さを求めるのとは違う、ロードバイクが備えるもう一つの本質を最大限味わうための走りがDEFYにはある。

チューブレス化されたSLR-1ホイールも相まって登りでも軽快だ。1-1/4インチコラムを投入したOverDrive2のおかげでダンシングも機敏で、リアエンドに近づくほど増すしなりを感じつつ走らせるのがとても気持ち良い。ディスクロードに感じがちなフレーム/フォーク末端部の嫌な硬さがないことも、快適に走らせることができた要因の一つだと感じる。

そしてもちろん、ハンドルに取り付けたコンピュータ「NEOS TRACK」が表示してくれるPOWER PROのパワーデータもオーバーペースを防ぐ上で大切な指標となってくれた。仲間とのライドではついオーバーペースになりがちだが、画面に表示されるワットを参考にすれば、無駄脚を使うことなく遠くまで楽に走りきることができるのだ。「パワーメーターはレーサーのためのもの」というイメージが強いが、体力、脚力に限りがあるホビーライダーにとっても良き相棒となってくれることを改めて体感した。

岩肌に据え付けられたつづら折れをクリア。あまりの美しさにため息がこぼれる岩肌に据え付けられたつづら折れをクリア。あまりの美しさにため息がこぼれる photo:Sterling Lorence/GIANT
頂上付近は標高2600m以上。空気が薄いためスピードが乗る。頂上付近は標高2600m以上。空気が薄いためスピードが乗る。 photo:Sterling Lorence/GIANT多くのサイクリストやバイカー、ハイカーで賑わうガヴィア頂上。ジロ・デ・イタリアの数々の激闘を見届けてきた聖地だ多くのサイクリストやバイカー、ハイカーで賑わうガヴィア頂上。ジロ・デ・イタリアの数々の激闘を見届けてきた聖地だ photo:Sterling Lorence/GIANT

乗り心地の良さに関しては言うまでもないだろう。しなやかなリアバックと、前を走るライダーの腰の下で目に見えて動く柔軟なD-Fuseシートポストの組み合わせによるサスペンション効果は絶大で、アスファルトの微振動然り、基本的にどんな場面でもストレスフリーだった。アップライトなジオメトリーゆえサドルに体重を預ける乗り方となるため、D-Fuseの効果はとても理に適っている。

注目のContact SLR D-Fuseハンドルバーだが、デフォルト状態では上ハンドルの細さに驚いたくらいで、乗り味自体にあまり目立つ部分は感じなかった。しかし休憩中にニクソン氏の手伝いを借りて快適性重視のセッティングに変えたところ、その動きが一変。特に大きな突き上げを受けた際の振動をカットしてくれるので、特にダウンヒル中、不意に舗装の割れや剥がれが現れても心に安心感を持ってやり過ごすことができた。

ダウンヒルを楽しむ筆者。数々のノイズキャンセリング機能が生み出す安定感は素晴らしいの一言ダウンヒルを楽しむ筆者。数々のノイズキャンセリング機能が生み出す安定感は素晴らしいの一言 photo:Sterling Lorence/GIANT
手を添えればD-Fuseハンドルバーの細さに驚くことだろう。快適性重視のセッティングにすると積極的に突き上げをカットしてくれることに気づいた手を添えればD-Fuseハンドルバーの細さに驚くことだろう。快適性重視のセッティングにすると積極的に突き上げをカットしてくれることに気づいた photo:Sterling Lorence/GIANTボルミオ側の頂上付近はほぼ一直線のストレート。60km/h以上でのダウンヒルが続くボルミオ側の頂上付近はほぼ一直線のストレート。60km/h以上でのダウンヒルが続く photo:Sterling Lorence/GIANT

ベンド形状になったフォークも適度な柔軟性があり、肩首の振動が抑えられることで目線が安定するから恐怖感を感じないのだ。試乗会では未舗装路は組み込まれなかったが、32mmのワイドタイヤを装着してグラベルライドに連れ出すのだって悪くない。

それでは問題点に関してはどうだろうか。細かいことを言えば無いことはない。それは試乗車に取り付けられていた60TPIのGAVIA AC 1タイヤはグリップを重視したトレッド形状なので、ヒルクライム中、あるいは信号待ちのゼロ発進で若干重かったことだ。タイヤに安心感を求めるならこのままでも十分だが、例えば上級モデルのAC 0や、レース用のGAVIA RACEシリーズに替えれば、DEFYの持つ登りの軽さを引き伸ばせるはずだ。

我慢しない、エンデュランスパフォーマンスバイク

ガヴィア頂上から一気にダウンヒル。ディスクブレーキの効果が最大限光るガヴィア頂上から一気にダウンヒル。ディスクブレーキの効果が最大限光る photo:Sterling Lorence/GIANT
実際にタフなイタリアアルプスを走ってみると、DEFYは単にソフトなだけの安楽バイクではなく、長距離山岳の登りと下りを踏まえて鍛え上げられたパフォーマンスバイクだと言う開発陣の言葉を身をもって理解できたし、もっと走りたいという欲求が湧き上がってきた。例えば読者の中には、標高2000mオーバーの峠は除雪作業によって驚くほど舗装が荒れていることをご存知の方も多いだろう。そこでダメージの蓄積を最小限に留め、しなやかな脚当たりで次の一歩をサポートしてくれるバイクこそ、このDEFYだ。

肩腰が辛い、ギアが足りない、下りが怖い。あるいはもう脚がいっぱいで踏めない...けれど、もう一つ峠を越えなければいけない。もしあなたが、今手持ちのバイクにこの中の一つでも感じたことがあるならば、次の乗り換え候補にDEFYを入れて欲しいと思う。我慢しなくて良い、ホビーライダーの良き共となってくれるバイクが誕生した。
提供:ジャイアント・ジャパン、text:So.Isobe
photo:Sterling Lorence/GIANT,So.Isobe