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エントリーグレードを超えたエントリーグレード 躍進を続けるAllez

スペシャライズド Allez Eliteスペシャライズド Allez Elite
コンペティション系のバイクは完全にカーボンフレームへと移行した中で、未だエントリー層や往年の自転車ファンに熱い支持を集めるアルミロード。レーシングバイクとしての全盛期からは10余年の年月が経ってはいるものの、その再進化は留まるところを知らず、毎年各社がアップデートを重ね、カーボンバイクと変わらずしのぎを削る重要なプロダクトとなっている。

スペシャライズドが誇るアルミロード「Allez」シリーズもその内の一つ。2013年には独自の溶接技術「ダルージオ・スマートウェルド(DSW)」を投入し、アルミフレームの性能を引き上げた高性能モデルをラインアップに追加。加えて昨年モデルからは、上位カーボンロードのテクノロジーを受け継いたアルミエアロロード「Allez Sprint」も登場させるなど、今なおアルミロードの分野でも開発の手を休めることはない。

コンパクトなデザインに姿を変えたリア三角コンパクトなデザインに姿を変えたリア三角 シートポストは汎用品と交換可能な円形タイプシートポストは汎用品と交換可能な円形タイプ 新型Allezのために新規開発された専用のフロントフォーク新型Allezのために新規開発された専用のフロントフォーク

よりレーシングモデル寄りとなるAllez Sprintと、エントリーモデルとしてのノーマルなAllezといった棲み分けで展開してきた同社のアルミロード。そんな末弟モデルに当たるAllezがこの度フルモデルチェンジ。全く新しい新規形状のフレームへと生まれ変わることで、手間もコストも要するDSWを使わずして従来モデルより軽く、より適正な剛性を獲得したバイクとなった。

最も特徴的なのは、大きく姿を変えたリア三角のデザインだ。Allez Sprintにも採用されていた、シートステー接合位置を下げたコンパクトでエアロなトライアングル形状が、ついにこのAllezにも搭載されることになったのだ。同社のVenge ViASで確立したこのデザインを取り入れることで、エントリーグレードらしからぬ、ややレーシーなルックスへと変貌を遂げている。

前作と同様に大口径の丸型ダウンチューブを採用前作と同様に大口径の丸型ダウンチューブを採用 コンポーネントはシマノ105、パーツ類はスペシャライズドオリジナル製品がアッセンブルコンポーネントはシマノ105、パーツ類はスペシャライズドオリジナル製品がアッセンブル
BBはメンテナンス性の高いスレッドタイプBBはメンテナンス性の高いスレッドタイプ フレームの各所にフェンダー等が取り付け可能なダボ穴が設けられるフレームの各所にフェンダー等が取り付け可能なダボ穴が設けられる

トップチューブも扁平形状で緩くカーブするデザインから、角形断面でストレートなラインを描くように変更され、ねじれ剛性アップに貢献。新たにテーパード形状となったヘッドチューブと、フルカーボンコラムとなった専用のフォークもフロント周りの剛性を強化し、より正確でスムースなハンドリングを実現するよう工夫されている。これらの変更点により、フレームとフォークを合わせた重量は450gものシェイプアップに成功している。

素材にはかつてはS-Worksグレードにも使われていた、軽量で高品質な同社オリジナルのE5プレミアムアルミニウムを引き続き使用。加えて、スペシャライズドと協力体制にあるRetul社のフィッティングデータベースを元に、より多くのライダーニーズに応える新ジオメトリーを取り入れることで、操作性もよく高い運動性能を発揮する仕上がりとなっている。

チューブ接合部は滑らかな処理が施されるチューブ接合部は滑らかな処理が施される ヘッドチューブはエントリーモデルらしくやや長めの設計ヘッドチューブはエントリーモデルらしくやや長めの設計
プラクシスワークスのクランクが合わせられるプラクシスワークスのクランクが合わせられる

フレームはスムースウェルド工法により溶接跡も美しく処理されるとともに、昨今の流れに則り28cのワイドタイヤまで対応するクリアランスを確保。エントリーモデルとして、アーバン使用で役に立つラックやフェンダーの取り付けが可能なアイレット(ダボ穴)も各所に設けられている。新たにワイヤー類が内装となったのもポイントだ。

スペシャライズドオリジナルパーツをアッセンブルしつつ、ブレーキとクランクにはサードパーティ製のものを採用することで価格を抑えている。販売は完成車のみとなり、カラーは全4色展開だ。続けて、普段からAllezを愛用する二人のライダーによる新型Allezのインプレッションをお届けしよう。

インプレッションライダープロフィール

左:安藤光平さん(Bicicletta SHIDO) 右:竹谷賢二さん(エンデュアライフ)左:安藤光平さん(Bicicletta SHIDO) 右:竹谷賢二さん(エンデュアライフ)
安藤光平(Bicicletta SHIDO)
東京都狛江市にある「Bicicletta SHIDO」の店長。いくつもの有名クラブチームを渡り歩き、現在はFIETS GROEN日本ロボティクス所属でJプロツアーにも参戦。2012年の2days race in 木祖村ではスプリント賞を勝ち取りグリーンジャージを獲得。シクロクロスでもトップカテゴリーのC1を走る。

竹谷賢二(エンデュアライフ)
スペシャライズド契約アドバイザー。MTBのクロスカントリーライダーとして過去4度の全日本選手権優勝経験を持ち、2004年にはアテネオリンピックにも出場。2012年よりトライアスロンへ本格的に参戦。プロ選手を引退後は、スポーツバイクの普及と発展のために各種イベントやスクールを積極的に展開中。

安藤光平(Bicicletta SHIDO)

「エントリーグレードとは思えない軽くキビキビとした走行感が魅力」

昔からアルミバイクの乗り味が好きだったのですが、最近カーボンフレームにばかり乗っていたこともあり、最新のアルミバイクがどんなものか気になって、1年ほど前から16年モデルのAllez DSW SL Compに乗っています。Allezシリーズはアルミバイクながら本当に良くできていて、性能とコストのバランスは最高ですね。

足周りとフロント周りの軽さが相まって想像以上に軽快に走るバイクに進化した、と安藤光平さん(Bicicletta SHIDO)足周りとフロント周りの軽さが相まって想像以上に軽快に走るバイクに進化した、と安藤光平さん(Bicicletta SHIDO)
自分は同社のS-Works Tarmacも所有しているのですが、レース用にカスタムしたAllezなら正直性能で不満に思う部分はありません。昨年の全日本選手権ロードや普段の実業団(JBCF)レースも基本的にこのAllezで出場しています。フロント三角が硬く、アルミバイクらしい加速性がありつつも、リア三角では乗り心地の良さを出していて、今風な乗り味だと感じますね。自分のAllezでレース時には重量7kgジャストほどには軽量化もできるので、アッセンブルするパーツによってはレーシングフレームとして化ける高いポテンシャルを持っているんです。

レース仕様にカスタムしたAllez DSW SL Compを普段から駆る安藤さんレース仕様にカスタムしたAllez DSW SL Compを普段から駆る安藤さん 今回テストした新型のAllezも完成車そのままとは思えない、またエントリーグレードとは思えないほどにキビキビとそして軽やかに走る乗り味になっています。従来のモデルだと完成車の仕様そのままではやや重さのあるもっさりとした乗り味だったのですが、それが払拭されていますね。自分の乗っているAllezとは違ってDSW工法ではないので格下グレードのフレームになるのかと思いきや、走りの性能は同等かそれ以上になっているのではないでしょうか。

フロント三角は従来モデルの良さを引き継いでしっかりとした硬さがあり、パワー入力に対して素直な反応を見せてくれます。一方でコンパクトに姿を変えたリア三角は細いパイプ径でしなやかな乗り心地を生み出すとともに、路面追従性を向上させたように感じました。後輪がバタバタと跳ねる挙動が軽減されているので、エントリーライダーでも安心できる乗り心地と言えますね。

また、新たにフルカーボンコラムのフォークへ変更されたことでフロント周りに剛性感が生まれ、ハンドリングが安定していますし、コーナリングも狙ったラインを取りやすくなったと感じます。コラムがカーボンとなったおかげで重心が下がったのか、バイクの振りが軽くなったのもポイントですね。アルミハンドルやシマノ105のレバーがアッセンブルされますが、フロント周りに重さは全く感じませんでした。

加えてパーツアッセンブルで注目して欲しいのがホイールです。完成車で30万円台となるセカンドグレードのTarmacに付いてくるホイールが、このAllezには最初からアッセンブルされており、その点も走りの軽さに繋がっている部分だと思います。従来モデルでは完成車の仕様が乗りやすさや乗り心地の良さを重視していたのですが、今回はトータルのパッケージでフレームの性能を引き立たせるような軽い走りが魅力ですね。

「最初から11-32Tとワイドレシオなスプロケが装着され、エントリーユーザーに優しいアッセンブル」「最初から11-32Tとワイドレシオなスプロケが装着され、エントリーユーザーに優しいアッセンブル」 「フォークコラムがカーボンになったおかげなのかバイクの振りが軽い!」と安藤さん「フォークコラムがカーボンになったおかげなのかバイクの振りが軽い!」と安藤さん

ヘッドが長めなのでレーシーなポジションは取りづらいかもしれませんが、エントリーユーザーには楽に乗れるジオメトリーだと思います。非常によく走るフレームに進化していて、初めての人でもロードバイクってこんなに気持ちよくキビキビ走るんだという部分を体感できると思います。このアッセンブルで十分に楽しめる仕上がりですので、まずはパーツ等をいじらずにこのままのAllezの良さを感じてもらいたいですね。

竹谷賢二(エンデュアライフ、スペシャライズド契約アドバイザー)

「アルミフレームのネガティブな要素がなくなり全体的に1段階アップした性能に」

自分は約1年程前から普段使いのバイクとしてAllezシリーズの末弟モデルであるAllez Sportを愛用しています。仕事で乗らせていただいたことがキッカケだったのですが、わずか10万円ほどのバイクとは思えない性能の高さに驚いて興味を持ったんですね。競技で使用するMTBやトライアスロンバイク、ロードバイクはすべてカーボンフレームで揃えており、高くて良いバイクに慣れすぎて麻痺している自分の感覚を取り戻したいという意味でもこのAllezは最適だったわけです。

自分に歩み寄ってくれるかのような安心できる性能で乗りこなす楽しさのあるバイク、と竹谷賢二さん(エンデュアライフ)自分に歩み寄ってくれるかのような安心できる性能で乗りこなす楽しさのあるバイク、と竹谷賢二さん(エンデュアライフ)
自分のAllezはシマノアルテグラへ換装したりロヴァールのホイールをインストールしたりしてカスタムしているのですが、そうしたらすごく良く走るようになって、アルミフレームのポテンシャルの高さを実感させられました。今回モデルチェンジを経て、そのAllezの良さをもう1段階研ぎ澄ませた正統進化といった走り心地を感じられましたね。

アルミバイクというと、反応は良いけど乗り心地が硬かったり剛性が高かったり、走りに重さを感じたりといった、どうしてもネガティブな部分がついて回るものでしたが、そのあたりが改善されています。新しいフレーム形状に加え、パイプのバテッドも再構築されたことでしょう。アルミらしさを残しつつ、より軽い走りとシャープなハンドリング、乗り心地の良さを獲得していますね。

「グレードの高いパーツがアッセンブルされているのかと錯覚するほどよく走るバイク」「グレードの高いパーツがアッセンブルされているのかと錯覚するほどよく走るバイク」 「踏んだ時にたわみのないアルミらしさがありつつも乗り心地は抜群」と竹谷さん「踏んだ時にたわみのないアルミらしさがありつつも乗り心地は抜群」と竹谷さん

新たにテーパードとなったヘッドによりフロント周りに剛性が出ましたし、コンパクトなリア三角も踏んだ時の反応性を向上させたように感じます。同社のTarmacですとパワー入力に対してややフレームがたわんだ後に気持ちのよいウィップで加速していく乗り心地ですが、それとは異なりこのAllezにはたわまないスムーズさがあります。

フレームがカッチリとした味付けでまとまっているため、完成車の仕様だと逆にタイヤやサドルといった柔らかい部分が気になってしまうほどです。それほどフレームには雑味感がなく、全体的にシャープな仕上がりになっていると言えるでしょう。

エントリーグレードというとアッセンブルされるパーツも重めのものがついていることが多く、それもあってバイク性能の足を引っ張ってしまい、フレームの持つポテンシャルを十分に判断できないことが多かったと思います。ですが今回の新型Allezは、アッセンブルされるパーツすらも高いグレードのものではと思わされるほど良く走るフレームへ進化しているんです。

スペシャライズド Allez Eliteスペシャライズド Allez Elite
ロードバイクの購入を考えた時に、例えばS-Works Tarmacであればもちろんキレキレの加速やコーナリングが実現できます。ただ、それを体感するほど乗りこなすにはそれ相応のレベルに自分がいなくてはいけません。このAllezであれば高いレベルのライダーでなくてもフレーム性能を引き出しやすく、乗りこなす感覚のストライクゾーンが広いために、乗っていてより楽しいと感じられるバイクだと思います。エントリーユーザーはもちろん、自分のようにレースの息抜きとしてのセカンドバイクとしてもオススメですね。

スペシャライズド Allez Elite

フレームSpecialized E5 Premium Aluminum, SmoothWelds, 1-1/8"- 1-3/8" tapered head tube, internal cable routing, threaded BB, 130mm spacing
フォークSpecialized FACT full Carbon, 1-1/8" to 1-3/8" Taper
コンポーネントShimano 105
ブレーキTektro Axis caliper
クランクセットPraxis Alba 2D, 50/34T
ホイールDT R460, sealed cartridge hubs, 14g spokes
タイヤEspoir Sport, 60 TPI, wire bead, double BlackBelt protection, 700x25mm
サドルBody Geometry Toupé Sport, steel rails, 143mm
価格150,000円(希望小売価格)


参考リンク:スペシャライズド公式ブログ「ALLEZ2018モデルが初心者におすすめのアルミロードバイクである理由」

なお今回紹介したAllez2018モデルの全国の販売店における店頭在庫状況については、以下のスペシャライズド公式オンラインストアの車種ごとのページより随時確認できるようになっている。
スペシャライズド Allez Elite
スペシャライズド Allez Sport
提供:スペシャライズド・ジャパン 制作:シクロワイアード編集部 photo:Makoto.AYANO