初心者からコアなレーサーまで 価値あるハイスペックアルミロードバイク、ALLEZ

ロードバイクの進化の歴史は、フレーム素材の変遷でもある。クロモリやアルミから、軽さと強度、更にしなやかさという多くのメリットを兼ね備えるカーボンへ。この移り変わりは必然と言うべきことだが、まだまだ金属フレームの走りを愛して止まない人々がいる。そしてカーボンと比べて安価であるため、予算に限度のある初心者や、学生レーサーにとって大きな選択肢であることは未だ不変である。

高性能アルミロードバイクとしての地位を確立しているALLEZ(写真はALLEZ DSW SL COMP)高性能アルミロードバイクとしての地位を確立しているALLEZ(写真はALLEZ DSW SL COMP)
そんなアルミロード市場が大きく動いたのが2013年。スペシャライズドが革新的な新溶接技術「ダルージオ・スマートウェルド」をひっさげた新型のALLEZを発表したのだ。本来入門機としての位置付けを持つALLEZだが、基本性能の高さゆえにチューンナップを施した最高峰モデル「S-WORKS」も登場するなど、コアなマニアを熱狂させたのであった。

そして2016年モデルでも、ALLEZは高性能入門機としてのポジションを崩すことなく市販が続けられている。テーパーヘッドにTARMACと同じフルカーボンフォークを投入した上級モデル「SL」、スマートウェルドを用いながらもコストを落とした「ELITE」、そしてボトムラインの「E5」という3種類がそれだ。マニアから高い人気を誇ったS-WORKSは販売終了となったが、代わりにVENGEにも通ずるエアロフォルムをまとった「ALLEZ SPRINT(インプレッションは日本入荷後に別記事で紹介予定)」が登場するなど、まだまだスペシャライズドのアルミ開発は1ミリも勢いを失ってはいない。

画期的な「ダルージオ・スマートウェルド」 2人のキーパーソンが引き上げたアルミの基本性能

ALLEZの核となるヘッドチューブ周辺。画期的な「ダルージオ・スマートウェルド」 が用いられたALLEZの核となるヘッドチューブ周辺。画期的な「ダルージオ・スマートウェルド」 が用いられた
ここでALLEZに投入された画期的な溶接技術について、改めて掘り下げておこう。ALLEZ登場の裏側には2人のエンジニアが深く携わっている。素材メーカーのイーストンで25年間アルミの加工に携わり、その分野を強力に牽引してきたチャック・テシェイラ氏と、長年スペシャライズドのR&D部門でチーフを務めるクリス・ダルージオ氏。2011年にテシェイラ氏がスペシャライズドへと加入したことで、高性能アルミフレームが誕生することはごく自然な流れであったのだ。

従来のアルミフレームの良し悪しは、フレームの基本設計に加えて工場や溶接を担当する職人の溶接技術にも左右されていた。これを改革するために、剛性の要となるヘッドチューブ周辺の構造を大きく変更。あらかじめヘッドチューブ、トップチューブ前端、ダウンチューブ前端をハイドロフォーミングによって一体形成しておき、それぞれを繋ぎ合わせているのだ。これで接合部をもっとも応力のかかる部分から遠ざけ、チューブの形状と構造を劇的に変化させている。

ALLEZのヘッドチューブ接合に用いられた画期的な「ダルージオ・スマートウェルド」ALLEZのヘッドチューブ接合に用いられた画期的な「ダルージオ・スマートウェルド」 飛躍的な軽さと強度を得たダルージオ・スマートウェルド飛躍的な軽さと強度を得たダルージオ・スマートウェルド

あらかじめヘッドチューブ、トップチューブ前端、ダウンチューブ前端をハイドロフォーミングによって一体形成あらかじめヘッドチューブ、トップチューブ前端、ダウンチューブ前端をハイドロフォーミングによって一体形成 ダウンチューブとトップチューブもハイドロフォーミングで成形されているダウンチューブとトップチューブもハイドロフォーミングで成形されている


さらに、チューブ同士の接合部表面に谷間ができるようにチューブ端を加工しておき、溶接の際はその谷間を埋めるだけ。こうすることで、溶接部が薄く軽く仕上がるのだ。この溶接法が開発者であるダルージオ氏の名を冠した「スマートウェルド」であり、スペシャライズドが特許を取得している。チューブ同士を突き合わせて溶接する方法とはコストや開発期間も段違いだが、その恩恵は計り知れない。

これによって、テシェイラ氏の言葉を借りれば、「スマートウェルディングによってアルミ溶接は劇的な変化を遂げた」。オーバーコストを嫌い、ヘッドチューブ接続部分のみこの工法が用いられている(他の部分だと溶接面積が小さいため、メリットも少ない)ことは、いかに手間の掛かる技術であるかの逆説的な証明でもある。

トップチューブやシートステーを扁平させ、振動吸収性に配慮しているトップチューブやシートステーを扁平させ、振動吸収性に配慮している 美しい曲線を描くトップチューブ。ハイドロフォーミングの賜物だ美しい曲線を描くトップチューブ。ハイドロフォーミングの賜物だ


フルアルミと聞くと振動吸収性に不安を感じるかもしれないが、ALLEZは湾曲したトップチューブ、限りなく薄く扁平にしたシートステーで乗り心地の問題を解決。パワーの逃げを防ぐ、複雑な曲線を描くチェーンステーもハイドロフォーミング工法の賜物。こうして完成したALLEZの重量はフレームで1150gと非常に軽量に仕上がった。



発売から丸3年。高性能アルミロードという地位を確立し、エントリーユーザーを中心に、コアなマニア、ホビーレーサーを唸らせ続ける存在となったALLEZ。それでは実際にユーザーはそれぞれALLEZをどのように楽しんでいるのだろうか?次ページではALLEZをマイバイクにする4人のオーナーに登場頂き、それぞれのカスタマイズや走り方を聞いてみた。ショップスタッフやスペシャライズド・ジャパンスタッフがあえてALLEZを選ぶ、その理由とは何だろうか。

インプレッションライダープロフィール

若生正剛(なるしまフレンド)若生正剛(なるしまフレンド) 若生正剛(なるしまフレンド)

高校卒業後からなるしまフレンドに籍を置き、今年で8年目を迎えた立川店勤務のメカニック。仕事の傍らロードレースに打ち込み、国内トップカテゴリーのJPTにも在籍した経験を持つ。ツール・ド・おきなわ国際レースやツール・ド・熊野、ツール・ド・北海道といった国内UCIレースを走った。脚質はパンチャータイプ。スタッフとしてお客さんのイメージ通りの自転車を形にすることがモットー。2015年モデルのS-WORKS ALLEZに乗る。

なるしまフレンド立川店
CWレコメンドショップ

山本太自(BicycleShop FROG)山本太自(BicycleShop FROG) 山本太自(BicycleShop FROG)

スペシャライズド製品に特化したプロショップとして、東京都調布市仙川へ2015年4月1日にオープンした「BicycleShop FORG」の店長を務める。自転車歴は20年以上を数え、一時はロードレースにも競技として打ち込んだ経験を持ち、現在はロードを中心にMTBでの里山遊びやダウンヒルなど、お客さんとともに幅広い自転車遊びを楽しんでいる。店名のFROGは「Fun Ride Over Generations(世代を超えて自転車で楽しむ)」というモットーの頭文字を取ったもの。愛車はALLEZ DSW SL COMP。

BicycleShop FROG



ALLEZの最新モデルを試そう!全国を巡る試乗プログラムがスタート

スペシャライズド・ジャパンでは、ALLEZの性能を実際に体感できる試乗プログラムを全国の販売店で実施する。試乗車はシマノ105を装備した高級モデル「ALLEZ DSW SL Comp」。革新的な構造でアルミロードバイクの最先端をひた走るALLEZを、自分の脚で試すチャンスだ。スケジュールはALLEZ 試乗車プログラム紹介ページ内のカレンダーから確認のこと。試乗可能な時間や使用状況などの詳細は、各店舗へ問い合わせてほしい。
提供:スペシャライズド・ジャパン、制作:シクロワイアード編集部