これまでの常識を大きく打ち破るフォルムを引っさげ、衝撃と共にデビューを飾ったニューVENGE。今回のスペシャルページVol.2では、「5分を縮める」各プロダクトの詳細をレポートしていこうと思う。

S-WORKS VENGE:-120秒 エアロロードバイクの常識を打ち破る最先端マシン

スペシャライズドの空力チーフであるクリス・ユー氏。Venge誕生の率役者の一人スペシャライズドの空力チーフであるクリス・ユー氏。Venge誕生の率役者の一人 ブレーキの適切な場所を探すため3カ所に取り付けられたセンサーを説明するクリス・ダルージオ氏ブレーキの適切な場所を探すため3カ所に取り付けられたセンサーを説明するクリス・ダルージオ氏 リアブレーキの形状を見る。構造的にはVブレーキタイプだリアブレーキの形状を見る。構造的にはVブレーキタイプだ スペシャライズドの風洞実験施設"WIN-TUNNEL(ウィン・トンネル)"で秘密裏に開催されたメディアローンチ。「WIN-TUNNELがあったから、マクラーレンの協力があったからこそ、我々はVengeを作り上げることができたんだ」と言うのは、R&Dエアロダイナミクス部門で陣頭指揮を執ったクリス・ユー氏。他のスペシャライズド社員と同じく「バイクファナティック」を地で行く彼は、「エアロのリーディングブランドとして、僕らには全く新しい、新時代のエアロロードが必要だった」と加える。

NEW VENGEの開発は専用エアロブレーキ「ゼロドラッグブレーキ」システムを造り上げることから始まった。まずは既存のTarmacやVengeを切り接ぎしてブレーキの形状や機構を決定し、次に風洞実験を重ねることでフレームの基本形状を模索。3Dプリンター製のモックアップ製作やコンピュータ解析を駆使し、最終的にその迫力あるフォルムが生み出された。

ちなみにリアブレーキがシートチューブに組込まれた理由の一つに、空力性能はもちろんながら、スプリント中のホイールとブレーキシューの干渉を防ぐ意味合いもある。「計測器でテストした結果、この場所のねじれが一番少なかった。空力に関してもアドバンテージがある上、Vengeに乗るスプリンターにとって、ゴール前でブレーキのクイックリリースを解放する必要が無くなったんだ」とは開発部門のチーフであるクリス・ダルージオ氏。クラス最高の制動力を得るべく、キャリパー自体はカーボンではなく、アルミ合金製だ。

圧倒的ボリュームで複雑なフォルムを描くダウンチューブも見どころの一つだろう。ヘッドチューブ寄りはフロントフォーク〜ブレーキと一体的なフォルムであることから後端が薄い翼断面に、対して下半分は2つのボトル搭載を考慮した空力とBB剛性を両立するべく、翼断面の後端を切り落とした所謂「カムテール形状」を採用している。専用の薄型ベアリングを導入しタイトに絞り込まれたヘッドチューブ、飛行機の水平尾翼のようにシートチューブから2股に分岐するシートステーなど、その作り込みは実車を見るほどに感嘆してしまう。

カーボンと3Dプリンター製モックアップを張り合わせた形状試作モデルカーボンと3Dプリンター製モックアップを張り合わせた形状試作モデル
VENGE専用の「Aerofly ViAS(Venge Integrated Aerodynamic System)コクピット」が開発されたのも、空力性能をより一層押し上げるため。もちろんこちらもフレーム同様、幾度にも渡るWIN-TUNNELでの実証実験の末に導きだされたフォルムだ。

なおハンドルとステムを一体型にしなかったのは、後々のパーツ変更を伴う調整を行いやすくするため。スペシャライズドのHPには専用のサイジングページ「Venge ViAS Sizing」がオープンしており、現在のバイクポジションの情報を打ち込むと適切なフレーム・ステム長・ハンドルのライズ量・スペーサー量の目安が割り出されるため、ハンドルやステム(※)を交換する際の指標となる(あくまで目安であり、ボディージオメトリー・フィット実施リテーラーでのフィッティングを事前に受けることが推奨されている)。

※基本は25mmライズのハンドルと、フレームサイズに合わせたステムが付属する。また、ハンドルとステムは補修部品として完成車販売当初よりメーカーに在庫されるという。ハンドルは、ライズ0㎜と25mmがあり、それぞれ400、420、440㎜幅(芯芯)がある。ステムは70、85、95、105、115、125mmを在庫するという。

ブレーキワイヤー交換の様子。インナートンネルが設けられており、所定の位置から無理なくワイヤーが出てきたブレーキワイヤー交換の様子。インナートンネルが設けられており、所定の位置から無理なくワイヤーが出てきた トップキャップを外してもらった。ブレーキワイヤーは蛇腹タイプのリードを使用。Di2のジャンクションはBB裏が標準位置トップキャップを外してもらった。ブレーキワイヤーは蛇腹タイプのリードを使用。Di2のジャンクションはBB裏が標準位置

パテント取得済みという専用のヘッドセット。内部にワイヤーやケーブルを通す穴が見えるパテント取得済みという専用のヘッドセット。内部にワイヤーやケーブルを通す穴が見える 対荷重試験機にかけられた製品版のVenge。こうした数多くの試験を経て製品化に結びつけている対荷重試験機にかけられた製品版のVenge。こうした数多くの試験を経て製品化に結びつけている

専用ヘッドセットのベアリングとスペーサーには穴が設けられており、ここにケーブルやワイヤーを中通しするというBMXにも似た構造が採用されている。ワイヤーフル内蔵と聞くとメンテナンス性に不安を感じるが、その点についても一切の妥協は無い。

フレーム内部にはインナートンネルが用意されており、ステムを通ってきたワイヤーを穴に通すと、自然と所定の位置から取り出す事ができるというシステムだ。「つまり、これまでの勘や運に任せたストレスフルな組み付けとは決別した。パテントも取得済みだし、既にプロチームのメカニック達からも高評価をもらっているんだ」とダルージオ氏は自信をのぞかせる。実際にステム交換の様子を見学したのだが(ステム長に合わせてワイヤーを交換、もしくは切断する手間は掛かるものの)、ストレス無くブレーキワイヤーがキャリパーに到達したことには感心させられてしまった。

そして忘れてならないのは、TARMAC開発に当たって導入された「ライダー・ファースト・エンジニアード」もしっかりと取り入れられていることだ。VENGEには49、52、54、56、58、61(日本国内導入は58まで)という6サイズが用意されるが、サイズによって性能差が発生することが無いように、個々のカーボンレイアップなどの調整が行われている。

Shivとほぼ同等という圧倒的な空力性能


従来のVengeやライバル製品に対して大きなリードを持つことが分かる従来のVengeやライバル製品に対して大きなリードを持つことが分かる (c)SPECIALIZED驚く事にTTバイクであるShivとほぼ空力性能は同等レベルだ驚く事にTTバイクであるShivとほぼ空力性能は同等レベルだ (c)SPECIALIZED

結果的にヘッドやBB規格、カーボン工法に変化は無いものの。従来モデルと比較し、56サイズでフロントフォーク全体は30%、フロントエンド部は25%の横剛性向上を達成。従来モデルよりも優れたステアリングレスポンスを達成したという。ただ単に空力だけを突き詰めたのではないということが良く理解できる部分だ。

そして後述するROVAL CLX 64ホイールとS-WORKS Turboタイヤと組み合わせる事で、TARMACにアルミリムの一般的なホイールをセットした状態と比べ、距離40kmで120秒にも渡るタイムセーブを可能に。この驚くべき値はSHIV TTとほぼ変わらず、しかも一定角度以上の横風においてはSHIV TTよりも速いという実験結果を叩き出す。

ちなみに他社のエアロロードとの比較では、ピナレロのDOGMA F8に対しては同条件で65秒速く、エアロロードのベンチマークであるサーヴェロ S5に対しても50秒速いという実験結果を誇っている。

ROVAL CLX 64+S-WORKS Turbo:-35秒 VENGEに最適化された究極の足回り

専用に最適化されたフォルムを持つROVAL CLX 64ホイールとS-WORKS Turboタイヤ専用に最適化されたフォルムを持つROVAL CLX 64ホイールとS-WORKS Turboタイヤ (c)SPECIALIZED
ZIPP 404(前)+SUPER9ディスク(後)の組み合わせに対し、真正面を除く全ての風向き条件で優位ZIPP 404(前)+SUPER9ディスク(後)の組み合わせに対し、真正面を除く全ての風向き条件で優位 (c)SPECIALIZEDVENGEと同時にデビューを飾ったのがロヴァール CLX 64。VENGEと組み合わせることを前提に開発されたカーボンクリンチャーホイールで、一見こそCLX 60と似通っているものの、リム外幅を最大で約30mmまで拡大・形状を変更。更にハブの形状を大きく見直したことで、スペシャライズドが指標に据えたZIPP 404(前)+SUPER9ディスク(後)の組み合わせに対し、真正面を除く全ての風向き条件で(それも横風になるほどに)優位を生み出すという空力性能を得るに至ったという。

ちなみにCLX 60が内ニップルだったのに対し、CLX 64のニップルは外出し式に。「ニップルを隠したところで全体的な空力性能に大きな差が出ないことが分かったので、整備性を優先した。プロレーサーはもちろん、一般ユーザーにとっても使い勝手が向上して良かった」とダルージオ氏は語る。

このCLX 64に組み合わせるのは、既に24cと26cが発売されトップレースでも使用中の新型S-WORKS Turboタイヤ(詳細はこちらのレビュー記事から)。しかし空力に大きく影響するフロントタイヤには専用開発の22cモデルが奢られ、ホイールと組み合わせることでエアフローの最適化を図っている。リアはトラクションや衝撃吸収を優先して24cとなる。

これらホイールとタイヤの組み合わせによって得られたアドバンテージは、距離40kmで120秒短縮という結果を大きく支えている。加えてフロントタイヤを22cと細身にしたこと、またS-WORKS Turboが従来モデルよりも繊維密度や工法を見直されているため、ライバル製品に対し、走行抵抗だけで35秒のアドバンテージを稼いだことも特筆すべきだろう。

S-Works Evade GC スキンスーツ:-96秒 快適性を追求した空力向上のリーサルウェポン

特許出願済みのフィット向上機能を投入した「S-WORKS EVADE GCスキンスーツ」特許出願済みのフィット向上機能を投入した「S-WORKS EVADE GCスキンスーツ」 そしてスペシャライズドとして初めてのスキンスーツ「S-Works Evade GC スキンスーツ」も同時にデビューを飾っている。単に身体に密着させて空気抵抗削減を図るだけではなく、他社のどのスキンスーツと比較してもアドバンテージを持つよう、様々な工夫が凝らされた渾身の一着である。

S-Works Evade GC スキンスーツを試すジャーナリスト。肩部分の空力とフィット感を高める工夫が凝らされているS-Works Evade GC スキンスーツを試すジャーナリスト。肩部分の空力とフィット感を高める工夫が凝らされている (c)SPECIALIZED「GC」という名称からも理解できるが、このスキンスーツの特徴は身体前部分を実際には縫い付けてあるが上下にセパレートし、着脱や動きやすさ、通気性を向上させ長時間のマスドレースでも快適に使えるようにしていること。低めに設定された襟、フルジップのファスナー、必要最小限ながら3つのバックポケットなど、短時間であればトレーニングにも使えるほどの使い勝手が特徴だ。

空力に大きく影響する肩部分はゴルフボールと同じディンプル加工が施された生地「Dimplex」を使い、更に特許出願中のシームレス構造を採用したこと で、空力はもちろんのことフィット感、快適性が全て高い次元でまとめ上げられている。更に誰にもフィットするよう揃えられた11種類のサイズラインナップ (国内展開は5サイズ)、編み込み生地を脚部とバックパネルに使うことで、疲労を低減させる着圧効果を生んでいることも忘れてはならないポイントだ。手に取ると分かるが非常に薄く軽量ながら、生地の伸びがとてもなめらかであることに驚かされた。

今回の取材ではスペシャライズド本社のアパレル開発チームに話を聞くことができたが、その一人は「プロ選手が使っている全てのスキンスーツをテストしたが、WIN-TUNNELでは史上最高の値を出すことができた」と誇らしげに言う。一般的なジャージとビブショーツの組み合わせと比べ、VENGEに次ぐ-96秒というアドバンテージを生み出すに至ったのだ。

S-WORKS 6 シューズ:-35秒 「スペシャライズド史上最高傑作のシューズ」

6代目となるS-WORKSシューズは2タイプに進化してフルモデルチェンジ6代目となるS-WORKSシューズは2タイプに進化してフルモデルチェンジ (c)SPECIALIZED
新しいS-WORKSシューズはBOA仕様の「6」とシューレースの「SUB 6」が存在し、SUB 6はエアロ効果を増すカバーも備わる。(写真はSUB 6)新しいS-WORKSシューズはBOA仕様の「6」とシューレースの「SUB 6」が存在し、SUB 6はエアロ効果を増すカバーも備わる。(写真はSUB 6) レーサーから高い人気を誇るS-WORKSロードシューズも、VENGEの登場に併せて6世代目へとモデルチェンジしている。快適性やホールド力、パワー伝達といった各性能をブラッシュアップすることはもちろん、エアロにも着目したなめらかなフォルムが特徴である。

「S-WORKS 6はスペシャライズド史上最高傑作のロードシューズ」「S-WORKS 6はスペシャライズド史上最高傑作のロードシューズ」 軽く丈夫なマイクロファイバー(下)と、宇宙船のパラシュートにも使われる伸びない特殊素材(上)を使用した軽く丈夫なマイクロファイバー(下)と、宇宙船のパラシュートにも使われる伸びない特殊素材(上)を使用した 生粋のレーシングシューズであるS-WORKS 6にとって、パワー伝達の高効率化は至上命題だ。そのためにソールは左右非対称構造を引き継ぎながら、変形を排除する一体構造と、フィットを最大化するStroble構造を採用。踵部分には新たにボディジオメトリー設計を採用した大型のヒールカップやフィット感を高めるインナーパッドを導入している。

更にアッパーが伸縮することで発生するロスを抑えるべく、軽く丈夫で、通気性に優れる穴あきマイクロファイバーをベースとし、一部に「Dyneema Cubic Tech」という宇宙船のパラシュートにも使われる全く伸びることの無い素材を張り合わせる。これらの工夫により、コロラド州にあるボルダースポーツ医学センターによるテストの結果、従来モデルよりも最大スプリント出力までの時間短縮を実現した。

従来通り2つのBOAダイヤルとベルクロを組み合わせた「S-WORKS 6」を基本形とし、更なる軽量化とエアロ性能向上を図るべく、紐締めの「S-WORKS SUB 6」も同時にラインナップ。S-WORKS SUB 6は徹底的に軽量化を突き詰めており、GIROのEmpire SLX(182g)よりも軽い180gという重量をマーク。更にはシューレースの凹凸を覆う「WARP SLEEVE」を取り付けた状態で、S-WORKS 5よりも35秒の時間短縮に成功したのだ。

また、既存製品のS-WORKS EVADEヘルメットはS-WORKS PRIVAIL比較で46秒を縮める。これらを合計すると、120秒(フレームセットやホイール、タイヤの空力)+35秒(タイヤの走行抵抗)+96秒(スキンスーツ)+35秒(シューズ)+46秒(ヘルメット)=332秒、つまりTARMAC SL4に一般的なアルミリムのホイールをセットした状態と比べ、距離40kmで5分半にものぼる時間短縮を可能としている。

5分間という、にわかには信じられない時間短縮を生み出す製品群。しかしこれはまぎれも無くスペシャライズドがWIN-TUNNELで実証した数値である。レースでは逃げ切りを、ホビーライダーであればより速く遠くへ。そんな誰もが夢見る理想を具現化するために生み出されたトータルパッケージなのだ。



スペシャライズド・ジャパンではホットラインを用意して、ライダーの質問や相談を受け付けている。
「VENGEお客様相談室」 電話046-297-4373(代) 月~金 10:00~12:00、13:00~17:00 (土日祝除く)

提供:スペシャライズド・ジャパン 製作:シクロワイアード編集部