5年ぶりのフルモデルチェンジを遂げた、エクステンザR1シリーズ。開発担当の高橋寛彰さんとテストライダーを務めた飯島誠さん、清水都貴さんの3人が、新型モデルの開発にあたってのさまざまなエピソードを語ってくれた。

新型R1シリーズ誕生の裏側を、開発陣に聞く

新型R1シリーズの開発に携わった高橋寛彰さん、飯島誠さん、清水都貴さんの3人に話を聞いた新型R1シリーズの開発に携わった高橋寛彰さん、飯島誠さん、清水都貴さんの3人に話を聞いた
高橋寛彰さん:ブリヂストンサイクル開発部に所属し、エクステンザシリーズを生んだ中心人物。今回のインタビューでは知られざるタイヤ開発ストーリーを掘り下げて聞いた高橋寛彰さん:ブリヂストンサイクル開発部に所属し、エクステンザシリーズを生んだ中心人物。今回のインタビューでは知られざるタイヤ開発ストーリーを掘り下げて聞いた ―― さて、かなりのロングセラーとなった前作から待望のモデルチェンジとなりました。改めて各モデルについての説明をお願いできますか?

高橋:まずR1Xですが、どんなシチュエーションでも性能をフルに発揮できるオールラウンダーに仕上げています。多少の雨でもしっかりグリップしますし、軽く、転がりも良いのでヒルクライムからロードレースまでオールマイティに対応できるようになっています。

R1Gは選手の「しっかりグリップするタイヤを作って欲しい」というリクエストから作られた、とにかく滑らないタイヤです。そこに完全に特化して、他の性能には多少目をつぶってでもグリップ性能を大切にしました。

そして、R1Sは徹底的に軽さを追い求めた製品。「145g」と謳うことはかなりインパクトがありますが、もちろんただ軽量性を突き詰めたではなく、レーシングタイヤとして必要な性能はきっちり標準レベル以上に高めています。

―― 新しいR1シリーズの開発にあたっては実際にレース現場で実戦テストを行ったそうですね。一番に求めたことは何だったのでしょうか?

「選手が求めるのはどんな路面でも滑らないグリップ性能です」「選手が求めるのはどんな路面でも滑らないグリップ性能です」 2012年には中東のレースに参加。見ての通り路面には砂が浮き、舗装も非常に荒れている2012年には中東のレースに参加。見ての通り路面には砂が浮き、舗装も非常に荒れている (c)Minoru.Omae清水:一番最初に試した物は非常に軽く転がりの良いものでしたが、アジアやヨーロッパの路面は日本と比較してかなり荒れているため、「このタイヤなら絶対転ばない!」と信じられるグリップ力こそが大切です。

コーナーの一つ一つので他の選手よりも少し前に出れること。危うい速度でも絶対に滑らないという自信。非常に厳しいプロレースの世界では、こういった普段気にならないような差が着順にダイレクトに現れます。だからとにかくグリップ力に特化したプロトタイプを製作してもらいました。

このプロトモデルは乗ってすぐに体感できるほど信頼感が強く、中東のレースでは大きな恩恵を得られました。砂が散らばった荒れたコーナーでの安心感は別格でしたし、北フランスの雨のレースでも安心して走ることができました。

高橋:しかしそのプロトモデルは選手からの評判は良かったものの、ハイグリップゆえに転がりが悪く、市販には向きませんでした。今回発売したR1Gは、プロトタイプのゴムを使いながら、軽量化することで軽快感をプラスしたことで誕生しています。

―― 他にはどのようなテストを行ったのですか?

飯島:エクステンザは過酷なヨーロッパレースを走る選手達からはもちろん、私のようなホビーレーサーや、ブリヂストン社内のロングライドを楽しむ人からもフィードバックを得ています。例えばブリヂストン本社が所有しているウェット路面のμを一定に出来る専用コースを使い、私がプロテクターを装着して、落車するまで倒すテストも行いました(笑)。

高橋:もちろんエクステンザの開発チームだけでなく、ブリヂストンの社内全体でゴムに関する研究開発について協力しています。上下方向の荷重やトルク、ブレーキングの力、摩耗などゴムにかかる力が2輪や4輪とは異なるものの、他部門からのフィードバックも反映しています。

「プロはグリップを、ホビーライダーは転がり性能を求める」


ブリヂストンアンカーが2位を獲得した2014年の全日本ロードレースブリヂストンアンカーが2位を獲得した2014年の全日本ロードレース photo:Junya Yamauchi
2012年のツアー・オブ・カタールを走る清水さん。選手としての経験がR1シリーズには活かされている2012年のツアー・オブ・カタールを走る清水さん。選手としての経験がR1シリーズには活かされている (c)Minoru.Omae――グリップを高めて欲しいという選手からの要求にはどう答えたのですか?

高橋:細かい部分は企業秘密で言えませんが、素材配合を工夫してゴムの物性値を変えることで実現しています。グリップに限った話ではありませんが、試作して、テストして、さらに変更するという流れを地道に繰り返すことで開発を進めています。

一般的にタイヤのゴムはグリップを上げるほどに転がり性能が落ちますが、今回の「R1X」と「R1S」には、ちょうど良いバランスをとったゴムを使っていて、R1Gではそれをベースに更に配合を変え、よりグリップ力を伸ばしたものを使いました。

―― R1XとR1Gは新型のタイヤ形状「シングルクラウンアール」について教えて下さい

高橋:旧モデルのRR1X、RR1HGに使用したゴムは、新型R1XとR1Gと比べてグリップ力がやや落ちるものでした。ですからセンター部とサイド部で曲率が異なる「ダブルクラウンアール」を採用することで、バイクが寝たときの接地面積を大きくし、グリップを稼いでいたんです。

でも、そうすることで倒しこんだ時のフィーリングが一定ではなくなってしまう。今回R1XとR1Gに投入したゴムは旧モデルと比較してハイグリップになったため、シンプルな丸断面の「シングルクラウンアール」でも十分にグリップし、そして倒し込んだ時にもナチュラルなフィーリングを出せるように改良しています。

極限の軽さを追求したR1S。触ると驚くほどに薄く仕上がっている極限の軽さを追求したR1S。触ると驚くほどに薄く仕上がっている 「どんな方にも満足して頂けるタイヤになりました」「どんな方にも満足して頂けるタイヤになりました」

―― R1Sが「ダブルクラウンアール」のままなのは?

高橋:ダブルクラウンアールは丸断面の肩を落とした形状ですから、若干の軽量化に繋がりますし、設置面積が少ないため走りも軽快に仕上がります。つまりR1Sにダブルクラウンアールを残したのは、重量も走りも徹底的に軽く仕上げるためなのです。

グリップ、転がり、重量、耐久性といった全ての性能を100点満点に高めるのは不可能ですから、各モデルが目指す用途にあった性能を引き出すため、そしてそれ以外の性能も底上げするよう工夫を凝らしました。

例えば一般目線で言えば漕ぎの軽さが大切ですが、レースの現場ではグリップが求められる。この相反する要素をいかに両立させるかがタイヤ開発のキモです。R1シリーズは多くの声を集めて生まれたタイヤです。だから結果的に、どんな方でも満足してもらえる性能になったと自負しています。

飯島誠さん、清水都貴さんプロフィール

飯島誠さん

国内トラックレース、全日本選手権個人TTでは3度など多数の優勝経験を持つ、日本の自転車界を牽引してきた第一人者。シドニー、アテネ、北京と3回連続でオリンピックに出場した。現在はブリヂストンサイクルに所属する傍らJCFにもコーチとして籍を置き、中長距離系のトラック種目を中心に日本選手の強化に取り組んでいる。

清水都貴さん

ブエルタ・シクリスタ・ア・レオン、パリ〜コレーズ、ツール・ド・熊野、ツール・ド・マルティニーク、ツール・ド・北海道で個人総合優勝を果たし、全日本選手権ロードでも多数入賞など多くの実績を持ち、2014年に引退。引退後は、ブリヂストンサイクルに入社し、選手目線での製品開発にも携わる。


清水都貴、飯島誠、新保光起(チャンピオンシステム)による徹底インプレッション記事は追って更新します。お楽しみに。
提供:ブリヂストンサイクル 制作:シクロワイアード