設立125周年を祝ってマヴィックが発表したキシリウム125。ロードホイール史上最も多くのライダーに愛されてきたであろう名作、キシリウムシリーズの最新モデルである。フランスでの発表会に参加した安井が、その詳細と実力をお伝えする。

マヴィック創業125周年を記念した「キシリウム125」マヴィック創業125周年を記念した「キシリウム125」 photo:Mavic

これがアルミリムホイールの最先端

2014年で125周年を迎えたマヴィックは、4月末、フランスに世界中の自転車ジャーナリストを招待してセレモニーを開催し、リム製造工場や研究棟を公開した。豪華なセレモニーや工場見学も興味深いものだったが、今回のフランス取材のメインディッシュは、キシリウム125。キシリウムシリーズの最新モデルが発表されたのだ。

キシリウム125とは、マヴィックが125周年を記念して発売した世界6000本の限定ホイール。今までもマヴィックは社歴の節目に記念モデルを発売してきたが、今回のキシリウム125、ただ色を塗っただけのコスメチェンジではない。マヴィックイエローにペイントされたスポークとハブが目を引くが、注目すべきはリム。リムが完全新設計になっているのだ。

リムは切削され、滑らかに仕上げられるリムは切削され、滑らかに仕上げられる 厳しい検査を経てホイールとして完成する厳しい検査を経てホイールとして完成する

基本的な構造は、現行モデルのキシリウムSLRと同じ。フロントとリヤのフリー側はジクラルスポークで組まれ、リヤの反フリー側はトラコンプテクノロジーを採用、リムは特殊表面処理が施されたエグザリット…というお馴染みの構成だ。しかし、新しいキシリウム125はリムが「ISM4D」になったのだ。

ISMとはインター・スポーク・ミリングの略で、スポークホール間のリム表面を削り、リム剛性を維持したまま軽量化する技術。<リムのスポーク間のみを削るISM>→<スポーク間とリムサイドを削るISM3D>と発展してきたが、ここにきてさらに一段階ステップアップし、ISM4Dとなってキシリウム125に採用された。

ISM4Dは、スポークの根本部分のリムの肉厚を残しながら、リム表面を全て削っている。ISMやISM3Dの「スポークの根本を避けつつ部分的に削る」から、「本当に必要なところだけを残しリムの表面を全て削る」になったのだ。ホイール重量(前後セット)は、従来のキシリウムSLRに比べて40gほど軽く、1370gとなっている。

いかにも部分的に切削した風のISM~ISM3Dに対し、全体的に皮むきされているISM4Dはリム全体が丸みを帯びた形状になっている。これは空力性能向上にも寄与しているという。いかにも部分的に切削した風のISM~ISM3Dに対し、全体的に皮むきされているISM4Dはリム全体が丸みを帯びた形状になっている。これは空力性能向上にも寄与しているという。
前後でたった40g?と思う人もいるだろう。しかし、キシリウム125の魅力は軽量化ではない。リムの基本プロファイルが大きく変更されているのだ。従来のキシリウム&Rシス系のリムハイトはフロント22mm/リヤ25mmだったが、キシリウム125ではフロント25mm/リヤ26mmと、前後ともやや高くなったのだ。これにより、空力性能が向上しているという。

リムハイトを高くして空力を改善しつつ、ISM4D化によって旧モデルより軽くしてみせたのだ。マヴィックは、「世界最高のホイール屋」としての意地をみせ、キシリウム125をアルミリムホイールの最先端に位置するモデルに仕上げてきたのである。

動力性能だけでなく「走り品質」の面でも進化

フランス二日目の朝。リヨンの街を見下ろす丘に建つホテルの庭には、キシリウム125を履いた試乗車がズラリと並べられていた。これからジャーナリストは、フランスの丘陵地帯を使った75kmのテストライドに向かう。

テストライドへと出発するジャーナリスト達テストライドへと出発するジャーナリスト達
筆者にあてがわれたバイクはルック・675のXSサイズ。自分のバイクではないのでホイール単体の性能を正確に感取するのは難しいが、可能な限り印象をお伝えしようと思う。自転車仲間の675をチョイ乗りした記憶をたぐりよせつつ走り出すと、軽量カーボンホイールのような走りに驚かされる。675は確かにいいフレームだが、それにしても走りが軽快だ。感覚としては、RシスSLRと同等かそれ以上。アルミリムモデルとして、現状最高レベルの動的性能である。

快適性能が非常に高いことも強く印象に残ったが、改良されたタイヤが原因なのか、フレームなのか、ホイールに起因するものなのか、正直いって判断できない。おそらくその全てだろう。制動性能についてだが、そこはさすがエグザリット、文句なしだ。エグザリット2になってから、このスペシャルリムの弱点だった「ブレーキ音の大きさ」も改善された。フィーッというエグザリット2特有の制動音を奏でながら、集団はフランスの地を行く。

フランスの地でキシリウム125をじっくりテストするフランスの地でキシリウム125をじっくりテストする
テストライド出発前にテクノロジーやテストコースの説明を受けるジャーナリストたちテストライド出発前にテクノロジーやテストコースの説明を受けるジャーナリストたち フランスらしいぶどう畑の中を縫って走るテストライドの集団フランスらしいぶどう畑の中を縫って走るテストライドの集団


アップダウンをハイスピードで走っていると、単純な“走りの軽さ”だけではなく、“走りのクオリティ”もよくなっていると感じる。これが最も強く印象に残った性能である。走りが軽いと言っても、キンキンカンカンというトゲのある軽さではないのだ。「嫌な硬さ」ではなく「心地よい軽さ」と言えばいいだろうか、登りでも平地でも上質な軽快感がある。ペダルをガツンと踏んでも、トルクの角を上手くいなしながら、よどみなく豊富なトラクションへと変換してくれる感じだ。リム形状の変更により、全体的な剛性バランスも改善されたのかもしれない。空力面だけでなくライドクオリティの面でも進化している。

欠点の一つでも見つけてやろうと思っていたが、粗探しは実らず。以前、どこかの記事で「今、アルミリムのホイールを買うならISM3D、FOREテクノロジー、トラコンプ、エグザリット2などマヴィック独自の技術が全て詰まったRシスSLRしかない」と書いたが、その結論は今ここでアップデートさせていただきたい。これからは、キシリウム125だ。

マヴィック キシリウム125


重量1370g
価格220,000円(税別)
提供:アメアスポーツジャパン 編集/取材:安井行生/シクロワイアード編集部