ピュアレーシングスペックを誇る上級モデル AR2

Vol.2で紹介したAR4とAR5の上に位置し、TeXtremeカーボンを使用したフラッグシップ「FRD」の弟分がAR2。完成車パッケージで最高級グレードにあたる、ハイスペックモデルである。

アルテグラDi2を搭載した フェルト AR2アルテグラDi2を搭載した フェルト AR2
フレームに用られるテクノロジーや成形工法などは全てトップモデルの「FRD」と共通であり、空気の乱れを低減する「Gap Shield Rear Triangle」デザインや、フォーククラウンとヘッドチューブをインテグレーテッド化した「Twin Tail Fork」など、そのルックスは完全に共通する。

フレームには高品質で軽量なミドルグレード素材「UHC ADVANCED」カーボンを使用し、強度を保ちながらも軽さと剛性のバランスを追求。フロントフォークに採用されている素材はワンランク高品質な「Ultimate+Nano」カーボンであるため、上質な走りに期待できる。

特殊なクランプを用いるシートポスト。反転させ、TTポジションにもできる特殊なクランプを用いるシートポスト。反転させ、TTポジションにもできる
前方からヘッドチューブ周辺を見る。TTバイクと言われても違和感の無いフォルムだ前方からヘッドチューブ周辺を見る。TTバイクと言われても違和感の無いフォルムだ
ボリュームのあるダウンチューブ。UHC ADVANCEDカーボンを使用するボリュームのあるダウンチューブ。UHC ADVANCEDカーボンを使用する


完成車パッケージとしてラインナップされるAR2。コンポーネントはシマノ アルテグラDi2がアッセンブルされ、フレーム側もエアロフレームと相性の良いDi2専用となる。ホイールは3Tのアルミ+カーボン製セミエアロホイール「Accelero 40 Team Stealth カーボン」という即実戦投入可能なスペックだ。ハンドル周りも3Tで統一されており、ブラック+ホワイトでコーディネイトされたルックスも好印象。価格は668,000円であり、完成車パッケージ最上級モデルとして十分な仕上がりを見せる。


インプレッション

「硬さと軽さを備えるフェルトらしいバイク」
宗吉貞幸(SPORTS CYCLE SHOP Swacchi)

フレームに硬さと軽さがあり、フェルトらしい優れた反応性を持つバイクに仕上がっていました。登りも問題無くこなすことができるピュアレーシングバイクです。

「硬さと軽さを備えるフェルトらしいバイク」宗吉貞幸(SPORTS CYCLE SHOP Swacchi)「硬さと軽さを備えるフェルトらしいバイク」宗吉貞幸(SPORTS CYCLE SHOP Swacchi) 高い剛性から生まれる優れた反応性は、速度域を問わず優れた加速を演出してくれています。特に高速域ではエアロダイナミクスの恩恵か、非常にスピードの伸びが良いことが特徴ですね。エアロフレームながら登坂も不得意ではなく、トルクを掛けたダンシングでは軽い踏み出しを味わえました。ケイデンスを高めてもバランスの崩れは希薄ですから、ロードレーサーとして良い仕上がりに感じます。

高剛性なフレームは一般に疲労しやすいという印象がありますが、AR2は不思議と硬さに嫌みがありません。コンフォートバイクと比較すれば突き上げを感じますが、ルックスからイメージされる縦方向の振動はありませんでした。硬さに嫌味がないFシリーズとも通ずる、走りやすいエアロロードと言えます。

逃げやスプリント、エンデューロなどハイスピードを維持するようなレース展開こそ、このAR2が得意とするところ。足をためておけば最終盤のアタックにも対応することができますね。鈴鹿や筑波といったサーキットや群馬CSC、修善寺CSCなどのような路面が綺麗で、かつ一定以上のスピードが出るようなレース向きでしょう。

どんなシチュエーションでも安定感が目立っており、直進安定性もAR2の特徴の一つ。ヒラヒラと切り返しができるFシリーズとは感触が異なりますが、高速コーナーをビタッとクリアできるような安定感は良いですね。表面積が大きいだけに車重こそFシリーズに敵いませんが、満足いく範囲ではあると思います。

完成車パッケージは決して安価ではないものの、コストパフォーマンスは低くありません。ホイールの性能も良いですし、すぐにレース投入できますね。レベルを問わずレースで入賞したい方や速く走りたい方、フェルトのレーシングバイクの良さを味わいたい方にオススメです。


「レースで結果を求める、平坦番長向けのエアロロード」
澤村健太郎(Nicole EuroCycle 駒沢)

全体的に剛性高く仕上がっており、AR4やAR5と比較して優れる加速性能が特徴です。高速域からのスプリントの反応性や制動力がぐっと向上しており、先にテストを行ったAR4やAR5とは別物と言ってしまって良いでしょう。ピュアなレーシングバイクです。

「レースで結果を求める、平坦番長向けのエアロロード」澤村健太郎(Nicole EuroCycle 駒沢)「レースで結果を求める、平坦番長向けのエアロロード」澤村健太郎(Nicole EuroCycle 駒沢)
空力に関しては後発なモデルなだけにアドバンテージがあると思います。速度40km/h以上になると明らかにスピードの乗りが良く、それは速度が高まるほどに効果を感じます。Fシリーズと比較した場合、加速性能こそは劣る印象ですが、空力的な利点からスピードの伸びには確かな違いがありました。

一見したところ横風をいかにも受けそうなフォルムですが、イメージよりもその影響は大きくありません。急な変化が無ければ問題なく風を受け流してくれますし、風の強い日で無ければ気にならないでしょう。挙動も安定していますね。

AR4とAR5と比較して高剛性であるためか、ペダリングに関して縦方向のウィップを全く感じません。ですからトルクをかけて踏み込んだ際に好印象で、スピードの乗りも良い。反対に突き上げは下位グレードモデルよりも強く感じたので、路面が荒れている際などでは空気圧を調整する等した方が良いでしょう。

リアブレーキワイヤーはトップチューブから内蔵されるリアブレーキワイヤーはトップチューブから内蔵される ボトムブラケットはBB30。シートチューブとリアタイヤのクリアランスにも注目だボトムブラケットはBB30。シートチューブとリアタイヤのクリアランスにも注目だ

リアブレーキはシマノのダイレクトマウントに対応するリアブレーキはシマノのダイレクトマウントに対応する シートステーの造形。内側は極限までホイールと近づけられているシートステーの造形。内側は極限までホイールと近づけられている

国内のレースではどのようなカテゴリーでも対応できると思います。エアロロードですから登りこそ得意ではありませんが、やはりハイスピードをキープするような場面では大きな武器になるはず。高速からのスプリントを得意とする方や逃げたい方ならばきっと満足できるはずですね。

このバイクをカスタマイズするならば、やはりカーボンディープリムホイールを組み合わせたい。高速に特化するためにリムハイトが50mm以上の、例えばデュラエースC50やボーラ、ZIPP404などはマッチしてくれるはず。より反応性を伸ばしたい場合は硬めのホイールが向いています。

価格はエアロロードとしては高価な部類に入っていると思いますが、フレーム性能が良いため、高速巡航などエアロロード特有の性能を楽しみたい方ならば損することは無いはず。平坦なレースで結果を求めるレーサーには最適ではないでしょうか。

フェルト AR2

サイズ:480、510、540
フレーム:FELT Aero Road UHC アドバンスド カーボン, 電動専用
フォーク:FELT Road UHC Ultimate カーボンモノコック
コンポーネント:シマノ アルテグラ Di2
クランクセット:シマノ アルテグラ 52T/36T
ホイール:3T Accelero 40 Team Stealth カーボン
ハンドル:3T Tornova Team Stealth カーボン
ステム:3T ARX II Team Stealth 7075アルミ
タイヤ:Vittoria Diamante Pro Light, 700c×23c
重量:7.4kg
カラー:マットカーボン
価格:668,000円(税抜)

提供:ライトウェイプロダクツジャパン 編集:シクロワイアード