ツール・ド・フランスの現地観戦を楽しむ旅の第3弾は、世界で最も美しい通り「シャンゼリゼ」にフィニッシュする最終ステージでの観戦方法を紹介。当日はセキュリティも厳しく、VIPや有料エリアなどに区切られた観戦エリアへはアプローチするのもひと苦労です。しかしその美しいステージは現地で観れば大きな感動がありました。

コンコルド広場のコーナー内側に観戦エリアが設置されているコンコルド広場のコーナー内側に観戦エリアが設置されている photo:Makoto.AYANO
ツールの特別チャーター機で移動するファビオ・アル選手(UAEチームエミレーツ)ツールの特別チャーター機で移動するファビオ・アル選手(UAEチームエミレーツ) photo:ASOツール・ド・フランス一行のパリ・シャンゼリゼ入りは例年通り空路と陸路による大移動ですが、チーム関係者やメディアのほとんどは陸地移動です。土曜日のうちにパリに向かってクルマを走らせるか、またはヴァルトランスからアルベールヴィルやリヨンまで移動し、当日朝にTGVに乗り込む人も。綾野フォトグラファーは後者、リヨンまでクルマを走らせ、TGVでパリ入りとのことでした。

第17ステージ、ポンデュガールからのスタートを見送り、早めにパリに移動していた私は、日曜日のお昼ごろ綾野さんが今年もパリまで無事到達されたことを確認し、シャンゼリゼ通りへ向かいました。まずは凱旋門を見て、コンコルド広場まで下って来ようという計画です。パリでも移動に自転車を使いたい!と、ヴェリブ(シェアサイクル)やトロチネット(キックボード)を移動手段に考えたのですが、まずは地下鉄で様子を見ました。

凱旋門の前に陣取ってツールの到着を待つ。何時間も待つ価値あり凱旋門の前に陣取ってツールの到着を待つ。何時間も待つ価値あり photo:Seiko Meguro
市内至るところに乗り捨ててあるトロチネット市内至るところに乗り捨ててあるトロチネット photo:Seiko Meguroツール・ド・フランスのコースが黄色で示されるツール・ド・フランスのコースが黄色で示される


GooglemapにもTour de France 21の文字が出てくるようにGooglemapにもTour de France 21の文字が出てくるように 土曜日夕方からGoogle Mapにもツール・ド・フランスのコースと「Tour de France」と第「21」ステージの数字が出始めていました。公道を使用し交通規制がかけられることへの対処とはいえ、スケールの大きさに前夜からワクワクが止まりませんでした。わざわざコース図を出して地図と見比べて、ということもしなくてよいですから。

日曜日13時、オペラ座近くの宿を出発。まずはシャンゼリゼの象徴、凱旋門へと向かいます。シャンゼリゼ、凱旋門、チュイルリー公園周辺道路を中心に、パリ市交通公団RATPより駅閉鎖情報が発表されていました。コースの真下となるフランクリンルーズベルト駅、ジョルジュサンク駅は午前9時から閉鎖。そのほか地下鉄の線によってチュイルリー駅やコンコルド駅、クレモンソー駅も出口により封鎖されているという情報。レーススタートが18時で、シャンゼリゼにプロトンが入るのは20時半以降なのに、朝から完全規制がかかるのです。

バスはもろに影響を受けるのでこの日のバスは乗らない方がいいですね。RERの規制はよくわからなかったのですが、私はRERのA線にトライ。サインが何もないからきっと大丈夫でしょう! と。その通り封鎖されておらず、駅を降りると目の前に凱旋門が。目の前にすると何度見ても圧倒されます。

凱旋門を放射状に取り囲むアヴェニューに入るにはセキュリティチェックが必要です。警察官が何人も立ち荷物をチェック。近くのアパルトマンの住人も毎年のことで慣れた様子。さすがに106回も続いているツール・ド・フランスだから、それを承知で生活しているという感じです。

観戦エリアに入るには厳しいセキュリティチェックがある観戦エリアに入るには厳しいセキュリティチェックがある photo:Seiko Meguroオフィシャルグッズショップも3週間を走ってここまでやってきたオフィシャルグッズショップも3週間を走ってここまでやってきた photo:Seiko Meguro


凱旋門の間近まで来ると、普段はクルマがビュンビュン通る場所なのにこの日だけは特別。クルマが一台も走ってない! 凱旋門に背を向けると、シャルルドゴール広場と言われるこの広場では、ファンパークにあったブースが場所を移していました。トラックの荷台でスクリーンと自転車でヒルクライム体験するブースや、Tシャツやパラソルなどオフィシャルグッズショップ、「オフィシャルスイーツ」?のヌガーやクレープ屋。これまで見たことがなかったオフィシャルショップがたくさん出ていました。キャラバンはシャンゼリゼ通りをパレードはするけれどグッズばらまきは無いため、シュコダのブースではキャップをばらまいていて、すごく盛り上がっていました。

トラックの荷台でスクリーンと自転車でヒルクライム体験するブーストラックの荷台でスクリーンと自転車でヒルクライム体験するブース photo:Seiko Meguroキャップをプレゼントして盛り上がるシュコダブースキャップをプレゼントして盛り上がるシュコダブース photo:Seiko Meguro


コロンビアかトリコロールかというほどたくさんの国旗コロンビアかトリコロールかというほどたくさんの国旗 photo:Seiko Meguroオフィシャルクレープ屋さんオフィシャルクレープ屋さん photo:Seiko Meguro


戦後史上最年少で初のマイヨジョーヌを着ることが確定したエガン・ベルナル応援のためのコロンビア国旗も目立っていました。パリにこんなにコロンビア人が!というほどたくさん。

凱旋門からシャンゼリゼ通りをコンコルド広場に向かって下り、できればチュイルリー公園に沿って走る通り、リヴォリ通りまで下って沿道で観戦したいと考えていました。しかしコンコルド広場までは到達できず、マリニー通りで通行禁止。ここからコンコルド広場にかけてのシャンゼリゼガーデン付近は観客席とメディア関係者のエリアとなるためマドレーヌ寺院側からしか入場できません。

仕方がないので回れるところまでぐるりと回るしかないと、通りを戻りました。大統領官邸エリゼ宮があるフォーブルサントノレ通り入り口も警察のコンボイとマシンガンを持ったポリスによりバリケードが。結局マルゼルブ通りからぐるりとまわり、ようやくマドレーヌ寺院に着いたのですが、20分くらい歩きました。ヴェリブはステーションがちょうどよいところにないと使用できないですが、アプリがあればどこでも乗り降りできるトロチネットがあればとても便利だと思います。

コンコルドの観戦エリア入場は長蛇の列。入場には時間がかかりますコンコルドの観戦エリア入場は長蛇の列。入場には時間がかかります photo:Seiko Meguro観戦席でもチケットのチェックがあります観戦席でもチケットのチェックがあります photo:Seiko Meguro


混乱を防ぐため要所はジャンダルマリ(憲兵隊)のクルマとマシンガンでバリケード混乱を防ぐため要所はジャンダルマリ(憲兵隊)のクルマとマシンガンでバリケード photo:Seiko Meguro厳しいチェックもクレームなど言う人はいなさそうな雰囲気厳しいチェックもクレームなど言う人はいなさそうな雰囲気 photo:Seiko Meguro


マドレーヌ寺院前には観戦チケットを持つ人々のアクセスポイントがあるのですが、オープン開始の17時前から長蛇の列です。

コンコルド広場にはいくつかのVIP用の観戦エリアがあり、それぞれに「エスパストゥールマレー」「エスパスイゾアール」「クラブ・ツール・ド・フランス」「テラス」というように名前がついています。

コンコルド広場の「エスパストゥールマレー」「エスパスイゾアール」「クラブ・ツール・ド・フランス」「テラス」コンコルド広場の「エスパストゥールマレー」「エスパスイゾアール」「クラブ・ツール・ド・フランス」「テラス」 photo:Makoto.AYANO
「テラス」はコンコルド広場とシャンゼリゼ通りのいわゆる中洲にあって、とっても優雅。何年か前はここに階段状の観戦席が設けられ、凱旋門が真正面にすごくよく見えていましたが、今はなくなっています。このテラスはある意味特等席ですね。テントの中ではワインやドリンク、軽食が用意され、屋外に(もともと屋外なのですが)イスとテーブルが置かれ、みなさんくつろいでいます。お手洗いもとってもきれい。観戦のための場所というより、社交の場という感じがしないでもありません。

コンコルド広場前のテラスからはプロトンを見下ろせるコンコルド広場前のテラスからはプロトンを見下ろせる photo:Makoto.AYANO
シャンゼリゼ通りをコンコルド広場から凱旋門の方に上がっていくと、道路沿いに観客席が屋根とともにズラ~っと並べられており、入口では綿密に入場チェックがされます。必ずIDパスが必要で、これを持っていないと入らせてもらえません。フィニッシュも表彰式も見える場所はもちろん一番の特等席。巨大スクリーンも目の前にあるので、スタートからフィニッシュまでツール最終ステージを十分に楽しめるでしょう。

凱旋門へと夕陽が沈む逆光線のなかシャンゼリゼ通りを走るプロトン凱旋門へと夕陽が沈む逆光線のなかシャンゼリゼ通りを走るプロトン photo:Makoto.AYANO
ルーブル美術館の中庭を走り抜けるプロトンは最高に美しかったルーブル美術館の中庭を走り抜けるプロトンは最高に美しかった photo:ASO

コンコルド広場前には通常チームパドックが設置されます。チームバスやチームカーが並べられ、家族やスタッフが選手の帰りを待つのですが、バスの前にフードやドリンクを並べてパーティしながらというのはやはりフランス。この雰囲気は最高です。

シャンゼリゼ通りホームストレート沿いのメインスタンド観戦席シャンゼリゼ通りホームストレート沿いのメインスタンド観戦席 photo:Seiko Meguro
コンコルド広場の観戦エリア中洲のテラス席コンコルド広場の観戦エリア中洲のテラス席 photo:Seiko Meguro

さて、今年のツール・ド・フランスはマイヨジョーヌが採用されてから100年目となる節目の大会でした。フランス人選手ジュリアン・アラフィリップのマイヨジョーヌの着用、ティボ・ピノーの活躍、絶対エースであるクリス・フルームの不在、若き王者エガン・ベルナルの誕生など、期待と興奮と落胆とが入り混じって、目が離せませんでした。

マイヨジョーヌと各賞ジャージのバルーンを横目に走るマイヨジョーヌと各賞ジャージのバルーンを横目に走る photo:Makoto.AYANO
34年ぶりに地元優勝か?と期待したフランス人の熱狂ぶりも凄かった。昨年は強すぎるクリス・フルームへのブーイングがあらゆるところで聞こえていたのですが、今年はあまり聞こえなくなりました。代わりに聞こえたのはフランス人の期待の声。フランスのテレビでは「アベック・ティボー(ティボと一緒に)」という密着番組が組まれていたし(残念ながら途中でリタイアしてしまったけれど)、地元フランスが盛り上がるとこうも違うのかと感じました。あのままアラフィリップかピノーに勝たせてあげたかった。もしそうだったならば、シャンゼリゼ通りはいったいどんな盛り上がりになっていたのだろう?と想像してしまいます。

コンコルド広場のオベリスク前の観戦席は最高のスポットだコンコルド広場のオベリスク前の観戦席は最高のスポットだ photo:Makoto.AYANO
約2000年前に建造された世界遺産ポンデュガールを史上初めて通過させ、こちらも世界遺産「パリのセーヌ河岸」を通ってルーブル美術館の中庭を、まるでファンタジーであるかのように走らせてしまう。エトワール凱旋門を見ながらの美しいフィニッシュ。どこを切り取ってもアートになってしまうツール・ド・フランスは、フランスの歴史と伝統、自信と誇り、美的センスと懐の深さが調和した、世界最大の魅せるスポーツであると改めて感じました。テレビでの観戦は後からでもできます。ぜひ現地で風を感じ、空気を感じるライブ観戦をされてみてはいかがでしょうか?

最終ステージ終了後はオフィシャルグッズの値下げ販売も最終ステージ終了後はオフィシャルグッズの値下げ販売も photo:Seiko Meguro


目黒誠子(めぐろせいこ)目黒誠子(めぐろせいこ) 筆者プロフィール:目黒 誠子(めぐろせいこ)

宮城県丸森町生まれ。2006年ジャパンカップサイクルロードレースに業務で携わってからロードレースの世界に魅了される。2014年より3年間、ツアー・オブ・ジャパンでは海外チームの招待・連絡を担当していた。ロードバイクでのサイクリングを楽しむ。航空会社の広報系の仕事にも携わり、折り紙飛行機の指導員という変わりダネ資格を持つ。現在は宮城県丸森町に拠点を置きつつ、海外の自転車事情やライフスタイルを取材しながら、ライター、プロデューサー、コーディネーターとして活動。自転車とまちづくり・クリーン工房アドバイザー、「自転車と旅の日〜MARUVÉLO(マルベロ)」代表。(https://www.facebook.com/maruvelo/



photo&text:Seiko.Meguro

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