キナンサイクリングチームの中島康晴選手は、「マイナーな競技である自転車レースを子どもたちに知ってもらいたい」と、福井県内の小中学校訪問を続けてきた。ボランティアで7年間続けた活動は、その訪問数が100校目になる。その一日の様子を取材した。



メガネキャラの中島康晴選手の笑顔はまさに小中学校向け?メガネキャラの中島康晴選手の笑顔はまさに小中学校向け? photo:Hitoshi.OMAE
きっかけは2012年に出身地である福井県の道徳教材「こころのノート」(小学校1・2年生用)に掲載されたことだったと言うナカジこと中島康晴選手。12月13日、訪問が100校目を迎えるとのことで、ぜひその姿を見たいと筆者(大前仁)は福井県教育庁に取材を打診、快諾していただいて福井県大野市の乾側小学校を訪れた。ちなみに福井県内に小中学校は250校ほどあるが、この学校の全校生徒数は18人!

大野市は今年の福井しあわせ元気国体で自転車ロードレースが行われた場所でもあり、児童の何人かは実際にレースを観たことがある様子だった。「自転車がすごく速かった!」との記憶も新しいうちに中島選手がヨネックスのロードバイクとともに現れ、興味津々で特別授業(?)が始まった。ちなみに中島選手自身も鹿屋体大卒で教員免許を取得している。

ロードバイクを小指で持ち上げ、車輪を瞬時に外すデモンストレーションに子どもたちはビックリロードバイクを小指で持ち上げ、車輪を瞬時に外すデモンストレーションに子どもたちはビックリ photo:Hitoshi.OMAE
日本のアニメや漫画が海外でもよく知られていることから始めるあたり、つかみはバッチリ。そこから自身の海外レース活動へと話をつなげ、子どもたちに付けられたという愛称「のびえもん」と名乗ってストーリーは続く。背の低かった小学校時代、サッカーや卓球への挑戦、自転車との出会い、ヘルメットの重要性など盛りだくさんな内容ながら、「夢を見つけること」「努力すること」の素晴らしさを説いて、あっという間に40分が過ぎた。

18人の児童からの質問がまた楽しかった。「その水筒みたいなの(ボトル)はどうするんですか?」という問いに答えると「それ、手放し運転じゃん!」とツッコミが。「なぜいろいろチームを変わるんですか?」「なんでそんなにサドルが高いんですか?」などなど、矢継ぎ早の質問にはさすがの中島選手もタジタジだった。

ヘルメットの大切さを、自分の落車経験をもとにリアルに説明する中島康晴選手ヘルメットの大切さを、自分の落車経験をもとにリアルに説明する中島康晴選手 photo:Hitoshi.OMAE特別授業が終わっても興味は尽きず、自転車を触りまくっていた子どもたち特別授業が終わっても興味は尽きず、自転車を触りまくっていた子どもたち photo:Hitoshi.OMAE


乾側小学校の大塚俊浩校長は、実は別の小学校の教頭時代に中島選手の訪問を受けており、会うのは2度目だそうだ。
大塚校長は「大人はすぐに『そんなの無理』と子どもたちの頭を抑えず、応援しなくちゃいけない。中島選手の話を聞いて、大人も夢を持つことの大事さを思い出しました」と褒める。乾側小は中島選手の練習コース沿いだそうで、「またいつでも寄って下さい」と大喜びだった。

中島選手はこのユニークな活動について、その思いを次のようにコメントしてくれた。

「学校ごとに毎回、新鮮な出会いがあってとても楽しいです。この取り組みは開始から7年が経ちましたが、子どもたちが世界を目指すきっかけになれば最高ですね。少しだけでも、夢への後押しにつながれば嬉しいです。将来的には福井県内の様々なアスリートやスペシャリストを巻き込んでの活動ができれば嬉しいですし、日本サッカー協会がやっている「夢の教室」の自転車バージョンができたらいいなと思っています。

海外で活動する機会の多いロード選手は、面白い話やさまざまな挫折を経験しているし、その教室に実技はブラッキー中島さんのウィーラースクールを組み合わせたいという野望もあるんです。

子どもたちのキラキラしたまなざしをみると、自分も頑張らなきゃという思いが強くなります。また笑顔で子どもたちに会えるように、選手として成績が残せるように頑張っていこうと思います」。

乾側小学校の全18人の児童がピースサインで記念撮影乾側小学校の全18人の児童がピースサインで記念撮影 photo:Hitoshi.OMAE

photo&report:Hitoshi.OMAE