最後の足掻きを見せた冬が一雪降らせたのを最後に、一気に暖かな陽気が押し寄せる3月末。一気に花開いた桜たちを思いきり満喫するツーリングコースを紹介しましょう!



いつのまにやら桜が満開に!いつのまにやら桜が満開に!
或る日、家へ帰って手を洗おうとした私にその異変は降りかかった。蛇口をひねるも、何も起きない。おかしい、本当なら気持ちいい水流が花粉まみれの手を清めてくれるはずなのだが……。数週間ぶりに帰宅した自宅からこんな仕打ちを受けるとは、世知辛すぎる。

編集部は水漏れするわ、自分の家は断水するわ、やたらと水回り関係のツキから見放されている感のあるここ最近。「水難の相でもでてるんじゃないかね。」ひとりごちてから、はたと思い出す。「そういえば、水道料金振り込み忘れてたような……」数週間分の家主の不在を受け止め、決壊寸前になっていた郵便受けをひっくり返し、見つけだしたは決定的な1枚。水道局からの最後通牒、給水停止のお知らせだ。東京水道局の皆さん、断水とか疑ってスミマセンでした。

しかし、困ったことになった。料金の払込期限もとうに過ぎてしまい、なんなら給水停止から結構な日数がたっているようで、一度水道局へと出向く必要があるようだ。とにかく水が止まっているのは洒落にならない(トイレにも行けない)ので、早急に状況を改善する必要があるけれど、水道局は平日にしかやっていない。そこはある程度自由の効く職場ということで、明日は所用によってお休みいただくことに。

今回のスタート地点今回のスタート地点 調布水道局サービスセンターへ到着調布水道局サービスセンターへ到着


こんな私生活の恥を晒し、これから取材先で「あ!水道止められた人だ!」「しっ!見ちゃダメ!あなたも水道止められちゃうわよ!」と後ろ指をさされるリスクを冒しているのは、ひとえに今回のスタート地点が調布市国領の水道局サービスセンターだから。ちょうど良かったんじゃよ……。

さて、そんなわけでやってきました水道局。水道料金を支払い、軽くなったお財布とともに走り出す。とはいえ、朝9時なので少しお腹に何か入れたいところ。最初の目的地である野川へ向かう道すがら、何ともいい雰囲気のパン屋さんを発見し、ふらふらそのまま吸い込まれる。

狛江通り沿いにある「やさしいパンのお店PINO」狛江通り沿いにある「やさしいパンのお店PINO」 おしゃれなペーストもずらりおしゃれなペーストもずらり


焼きたてパンがが並んでいます、美味しそう焼きたてパンがが並んでいます、美味しそう
狛江通り沿いにある「やさしいパンのお店PINO」は、小さな佇まいの中に自慢のパンが並んでいる。小さな窯で少ない量を何度も焼き上げるので、常に焼きたてパンが並んでいる回転率の高さが魅力。なかでも一番人気というクリームパンをいただくことに。

さて、ふわふわのクリームパンをつぶさないように気を付けつつ一路野川へ。多摩川の支流の一つである野川は、国分寺の日立製作所の敷地内に源を持つ流れで、都市部を流れる小規模な川としては意外なほどにしっかりと自然を残している。運が良ければ、カワセミなども姿を見せるのだけれど、今回のお目当てはエメラルドの小鳥ではなく、ピンクに色づく桜並木。

多くの人が散歩を楽しんでいた まるで休日のよう多くの人が散歩を楽しんでいた まるで休日のよう
桜咲き誇る野川 気軽に川沿いまで降りられる桜咲き誇る野川 気軽に川沿いまで降りられる 桜と菜の花、そして野川のせせらぎと一緒にクリームパンをいただきます桜と菜の花、そして野川のせせらぎと一緒にクリームパンをいただきます


三鷹通りから野川の下流へ850mほどの区間は、年に一度3時間だけライトアップされ、特別な夜桜を楽しむことが出来るエリアとして、ここ数年で有名な観桜スポットに。今年は人気テレビ番組でも紹介され、更なる人出がありそう。

でも、夜に見て綺麗なものは昼に見たって綺麗なのだ。平日にも関わらず咲き誇る桜を楽しもうと散歩する人がたくさん。すぐに川沿いに降りることができる親しみやすさも野川の良いところで、レジャーシートを広げてお弁当と桜を楽しむ”花も団子も”派もちらほら。川沿いに設置されたベンチに腰掛け、濃厚なクリームパンをパクつきながら一面に咲き誇る桜を楽しむ、贅沢なひと時。

両岸を桜に覆われた野川 緑とピンクが美しいコントラスト両岸を桜に覆われた野川 緑とピンクが美しいコントラスト
中央道をくぐるとたくさんのピクニックを楽しむ人たちが中央道をくぐるとたくさんのピクニックを楽しむ人たちが 春休みの子供たちが元気に遊んでいました春休みの子供たちが元気に遊んでいました


ゆったりとした時間が流れ、いつまでもぼーっとしていたくなる。後ろ髪を引かれつつ次なる目的地へ足を向ける。野川沿いをそのまま遡行し、中央道をくぐったところで武蔵境通りにぶつかる。このまま野川沿いを行ってもいいのだけど、今回は右へ。坂をしばらく上った交差点を左に曲がると、深大寺へ到着だ。

733年、奈良時代から続く歴史あるお寺であり、現在では日本三大だるま市の一つ「深大寺だるま市」でも知られる名刹。湧水が豊富な国分寺崖線に立地しており、境内には清水を湛えた池がいくつも。周辺には多くの蕎麦屋が「深大寺そば」として立ち並ぶ門前町は土日平日問わず大賑わいのスポットでもある。

戌年とあって犬の飾りが並んでいたお土産屋さん戌年とあって犬の飾りが並んでいたお土産屋さん 瓦職人の手によるだるま。深大寺独特の目入れとなる梵字の「阿」が左目に。瓦職人の手によるだるま。深大寺独特の目入れとなる梵字の「阿」が左目に。


本堂には平日でも多くの人が集まる本堂には平日でも多くの人が集まる
合格祈願の絵馬がたくさん そろそろ発表された時期ではないでしょうか合格祈願の絵馬がたくさん そろそろ発表された時期ではないでしょうか ちょっと西洋の悪魔のような石像、これが角大師ともよばれる元三大師、厄除けの仏様ちょっと西洋の悪魔のような石像、これが角大師ともよばれる元三大師、厄除けの仏様


門前通りは桜並木となっており、まるでピンクのトンネル。道沿いに並ぶ蕎麦屋では粉ひき水車が回り、ゆっくりとした時間が流れている。駐輪場に自転車を置き、境内へ。2017年に国宝へ指定された銅造釈迦如来倚像が無料で拝観できる期間とあり、多くの人の姿が。

立派なお寺も良いものだけれど、深大寺が人気を集めるのはレトロな雰囲気の門前町も大きな理由だろう。原作者である水木しげる先生が住んでいるという縁もあり、「鬼太郎茶屋」なんてお店も。鬼太郎の絵が描かれたカフェラテや、一反木綿型の寒天が乗ったサンデーなど、ユニークなメニューが人気なのだとか。にぎやかな喧騒に包まれた通りでお土産屋さんを見てると、ふんわり蒸されたピンク色のお饅頭が目についた。

賑わいを見せる門前町賑わいを見せる門前町
桜の提灯がかわいいですね桜の提灯がかわいいですね 鬼太郎とねずみ小僧も登場 作者の水木しげる先生が調布在住なのです鬼太郎とねずみ小僧も登場 作者の水木しげる先生が調布在住なのです


ふんわり蒸しあがったお饅頭ふんわり蒸しあがったお饅頭 だるまがたくさん並んでいましただるまがたくさん並んでいました


さくら饅頭は白あんでさっぱりした甘さでしたさくら饅頭は白あんでさっぱりした甘さでした
桜の花びらをあしらった春を感じるお饅頭に、思わず店員さんに一つ下さいな、と声をかけるのは仕方ない成り行き。ついでとばかりにあったかい甘酒も頼み、ついついほっこりしてしまう。周りでは湧水を使って茹でられた名物の蕎麦を頼むお客さんもちらほら、そろそろお昼時だ。思わず蕎麦を頼みそうになったけれど、今回は少し違った趣向を考えているのだ。ぐっとこらえてお勘定し、深大寺を後にした。

text&photo:Naoki.YASUOKA

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