京都府北部の美山町にて開催される美山サイクルグリーンツアー。同地に居を構え、スポーツバイクの普及に尽力する”ブラッキー”中島さんと中尾さんから、イベントのレポートが届きました。



約1000人が参加した美山サイクルグリーンツアー約1000人が参加した美山サイクルグリーンツアー (c) cyclingmiyama.com
美山サイクルグリーンツアーは、京都の北部に位置する農村地帯である南丹市美山町で、日本の原風景が残る土地を舞台に自転車で走ることを目的としているサイクリングイベントだ。6回目となる今大会は、深夜のWEB参加受付開始後5時間ほどで枠が埋まるほどの高い人気となり、全国から約1000人以上の参加者が集まる一大イベントとなった。

コースは南丹美山支所を中心に地域内11か所のチェックポイントと5か所のエイドステーションを回る、日本でも珍しいオリエンテーリング形式の自由なライドで、チェックポイントを全て回ると約125kmとなる。エイドステーションでは参加者に無料で地域のものにこだわった特産の食べ物が多数提供される。

高い人気のもうひとつの秘密は、美山の道。この町の道は、全域に渡って交通量も少なく、高低差もあまりない上、路面がきれいでサイクリングするには絶好のロケーション。深い緑に囲まれた環境は都市部では味わえないだろう。当日は朝方豪雨となったが、受付開始ごろには雨は上がり、やや薄曇りの天気で夏としては比較的走りやすい気候となった。

美山の地域をほぼ全域を走る美山の地域をほぼ全域を走る (c) cyclingmiyama.com多くの参加者が美山を満喫多くの参加者が美山を満喫 (c) cyclingmiyama.com

美山を一望できる絶景ポイント美山を一望できる絶景ポイント (c) cyclingmiyama.com写真を撮る際は手を振ってくれました写真を撮る際は手を振ってくれました (c) cyclingmiyama.com


撮影にピッタリな絶景ポイントは萱野のチェックポイントの先にある林道の頂上。美山の大野地区が一望でき、上り坂で苦労した参加者も、その絶景には満足感で満たされていた。エイドステーションは各エイド毎に工夫が凝らされており、それぞれ他のエイドに負けないとばかりにメニューが異なっていた。

毎回人気が高い知井エイドステーションの天然鮎の天ぷらには、配布前から長蛇の列ができるなど、参加者も自転車で走ることを完全に忘れているのではないかと思ってしまうようなシーンも多々あった。時間ごとの限定品があったり、時間帯によって出されるメニューも違うため、完食はチェックポイント完走よりも難しい。

全てのエイドステーションに流れるネット放送では、総合MCのシンジくんや、ゲストによる現地レポートなどの情報が随時流れ、参加者も次に目指すエイドを地図をにらみ、放送に耳をそばだてながら、情報収集に余念がないという、他のロングライドイベントには見られない楽しみ方があるようだ。

地元のスタッフがチェックポイントを管理地元のスタッフがチェックポイントを管理 (c) cyclingmiyama.com川に入って水遊びできる川に入って水遊びできる (c) cyclingmiyama.com

甘いスイカを切ってくださりました甘いスイカを切ってくださりました (c) cyclingmiyama.com鹿肉のそぼろ丼鹿肉のそぼろ丼 (c) cyclingmiyama.com

鮎のてんぷら作りを手伝うお子さん鮎のてんぷら作りを手伝うお子さん (c) cyclingmiyama.com鮎のてんぷらに長蛇の列鮎のてんぷらに長蛇の列 (c) cyclingmiyama.com


参加者は老若男女様々。小学生低学年の子供連れの親子が一緒にチェックポイントにやってくるシーンは、子供をねぎらう親の家族愛がみられた。また50代以上の男女の団体も多く、エイドステーションであれこれコースの談笑している様子も多く見られ、自転車には年齢の壁はないと改めて感じた。

イベント終了時が近くなると参加者が続々とスタート地点に戻ってくる。あちこちで「美山最高!」という感想も聞こえてくる。これほどまでに満足度の高いイベントは他にないだろう。回を重ねるごとにリピーター率が高まっており、毎回締め切りが早くなるのも頷ける。

美山の名所、かやぶきの里美山の名所、かやぶきの里 (c) cyclingmiyama.com
実は美山ではサイクルグリーンツアーが開催される前はこういった全国から1000人も集まるイベントはほとんど無かった。このような町を挙げての一大イベントは、単なる町内部のイベントではなく、都会からの誘客による「経済効果」も目指さなければならない。それも、このイベントががきっかけで、年間を通じて多くのリピーターを生むことを目指すべきではないだろうか。

多くの参加者が地域にお金を落としたいと感じていても、実際にその仕組みがなければ、経済効果は見込めない。そこはまだまだ改善の余地があるのではないかと感じる。そういった意味でも6年続けたイベントは今のところは成功しているが、地域の再生となるとまだまだ道半ばといえる。

美山も他の地域のように高齢化による人口減少が目立つ。主要な産業である農業・林業といった一次産業従事者は高齢化し、後継ぎのいない中、次に繋ぐめどが経っているとはお世辞にも言いにくい。自治体として田舎暮らしという謳い文句で移住者を斡旋しているが、移住を希望したとしても農地や住居を確保するといったハードルは非常に高い。地元民も都会に職を求める若い住民も多いだろう。

参加証を手にするみなさん参加証を手にするみなさん (c) cyclingmiyama.comゲストの奥野史子さんも走ったゲストの奥野史子さんも走った (c) cyclingmiyama.com

また来年もここに集合また来年もここに集合 (c) cyclingmiyama.com
高齢化が進む住民は、どうすれば次の世代につなぐ意識を高めていくか。また、このまちの良さをどう認識していくのか。こうした大きなイベントを通じて、町内外問わず、どうやってこの環境を残していくのかを真剣に考え、実践する時期は今まさに来ているように思う。5年先、10年先では遅いのではないか。そしてこれは美山に限らず、日本中の田舎町の共通の問題でもあるのだ。

今後はサイクルグリーンツアーで美山を知った人たちを自ら呼び込み、町の魅力を再構築し、環境を維持できる仕組みができれば、自転車でできる新しい農村維持の手法として確立することができるのではないか。そしてこの町の住民や移住者達が協力しあって「美山」のブランドを育ていくことが可能になれば、この大会の本当の「意義」となるだろう。

text:Nakajima "BLACKY" takaaki、Akihiro Nakao

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