10月4日、八ヶ岳山麓を舞台にグランフォンド八ヶ岳が開催された。日本でも他に例がない本格的な山岳路を走る大会となった。1400名あまりの参加者と最高の天候に恵まれ、素晴らしい大会になった。CW編集部からも3人のスタッフが参加。初秋の南八ヶ岳を楽しんだ。

コスモス揺れる田園地帯を走り抜けるコスモス揺れる田園地帯を走り抜ける



イタリア発祥、長距離を楽しむグランフォンド

「グランフォンド」といえばイタリア発祥の長距離サイクリングイベント。近年日本でもその名称を徐々にポピュラーにしてきた。
比較的山岳の厳しいコースで行われるのが通例で、走り屋のための大会というイメージが強い。イタリアの大会ではグランフォンド・ピナレロやGFカンパニョーロなどが有名。いずれもトップグループはレースに近い走りだとか。グランフォンドを中心に走るプロまでいるとか。

そしてこのGF八ヶ岳にはピナレロ社が特別協賛することになり、イタリアからファウスト・ピナレロ社長、グランフォンド・ピナレロの指揮をとる実弟アンドレア・ピナレロ氏、そして2人の友人であるグランフォンドチームのアマデオ・ロッシ氏の3人が来日し、走ることになった。


八ヶ岳山麓をくまなく巡るコースが魅力

グランフォンド八ヶ岳コースマップグランフォンド八ヶ岳コースマップ

大会のスタート/ゴール地点となるのは、観光地としてあまりに有名な清里の北部にあるサンメドウズ清里ハイランドパーク。コースはこの付近の北杜(ほくと)市、南牧村に属する八ヶ岳南山麓一帯の一般道を走ることになる。

日本百名山として、あるいは夏冬問わず登山家たちを魅了する名峰、八ヶ岳。みずがき山、茅ケ岳などを含む険しくも寛容な山容をもつ南アルプスの連続峰は、麓に魅力的な高原地帯をもち、かねてから山岳マラソンやアドベンチャーレースの舞台にもなってきた。

この一帯の山岳路は確かに厳しいが、その魅力ゆえにサイクリングで訪れた経験のあるライダーも多いことだろう。サイクリストの挑戦欲求をかきたてるエリアであることは間違いない。

グランフォンド八ヶ岳 プロフィールマップグランフォンド八ヶ岳 プロフィールマップ コースを走ることで訪れるスポットは、野辺山駅前のJR最高標高地点、清里駅前よりJR小海線沿いのワインディングロード、八ヶ岳高原ライン、キープ協会・清泉寮、県営八ヶ岳牧場など、お馴染みの場所が多い。
しかし地図で確認するだけでも標高差は3000mに及ぶ。距離は110kmと短くとも、その走りの内容が容易ならざるものであることは容易に察しがつく。

小さなグランフォンド大会は国内各地で開催されるようになった。しかしこのような本格的な山岳コースの大会は類を見ない。ならば走って確かめてみようと、シクロワイアードからも3人のスタッフが実走取材に向かった。以下、実走レポートとして紹介していこう。

CW編集スタッフ3人がGF八ヶ岳に乗り込んだ。絹代さん今中さんと記念写真をパチリCW編集スタッフ3人がGF八ヶ岳に乗り込んだ。絹代さん今中さんと記念写真をパチリ

前日はウェルカムパーティ開催

大会会場には前日入りした。スタート地点のサンメドウズ清里ハイランドパークではウェルカムパーティが行われていた。ピナレロの顔としてお馴染みのファウスト社長、そして実弟アンドレア氏が迎えてくれる。グランフォンド・ピナレロのプロモーションと、アドバイスも兼ねて走りにやってきたのだ。

ファウスト&アンドレア兄弟もイタリアから駆けつけたファウスト&アンドレア兄弟もイタリアから駆けつけた
ピナレロ社が特別協賛ということで、ドグマ60.1を含むピナレロの試乗バイクがたっぷりと用意され、参加者たちは思い思いにテストライドを楽しんでいる。本国イタリアではすでに「日本で初のグランフォンド・ピナレロ」とちゃっかり呼ん
でいるらしい(笑)。

それにしても八ヶ岳一帯の空気の美味しさよ。秋の気配を感じつつ、景色の透き通った感じは高原ならでは。すぐ近くの野辺山にてペンションを経営する中込辰吾・由香里夫妻(Sy-Nak)によれば「この辺に一度住むと、もう他に住むことができなくなくなるほど素晴らしい環境」とのことだ。

この日の朝にはピナレロオーナー限定のミニツーリングがささやかに行われたそうだが、雨がちの寒さで参加者全員一致で早めに切り上げたとのことだ。野辺山駅前のJR最高標高地点までは行ったそうだ。

夕方からは今中大介さん、ファウスト&アンドレアさん、ファンライド編集長村山友宏さん、Sy-Nakの中込由香里さんらによるGF八ヶ岳攻略法のトークショーが開催された。

ウェルカムパーティで今中大介さん、ファンライド村山編集長らによるGF八ヶ岳攻略講座が開かれたウェルカムパーティで今中大介さん、ファンライド村山編集長らによるGF八ヶ岳攻略講座が開かれた
お楽しみ抽選会では、憧れのGFピナレロへのご招待権もプレゼントされた。ちなみに獲得者は女性サイクリスト。ファウスト&アンドレアさんにビズー(キス)もプレゼントされ、大いに会場が沸いた。

イタリアでのグランフォンド・ピナレロ2010参加権をゲットした女性。ラッキー!イタリアでのグランフォンド・ピナレロ2010参加権をゲットした女性。ラッキー!

ピナレロファンの集い 将来的には"ピナクラブ"のメインイベントに

ピナレロのオーナーに向けて参加が呼びかけられたことで、ピナレロに乗った参加者が多数集まった。会場ではオーナー限定でリストバンドがプレゼントされ、今秋オープン予定のピナレロファン向けのコミュニティサイト「ピナクラブ」の概要も発表された。このサイトではオーナーの愛車自慢や写真投稿、イタリア直送のグランフォンド情報やピナレロ関連情報などが楽しめるユーザーの交流サイトになるとのことだ。

「将来的には"ピナクラブ"のユーザーやピナレロオーナーが集う、ピナレロオーナーズミーティングのメインイベントになれば素晴らしい」とピナレロジャパンの関係者。ピナレロファンが一同に集う大会になるかもしれない。

ピナレロオーナーが大集結ピナレロオーナーが大集結
ピナレロユーザーにプレゼントされたピナクラブ限定リストバンドとタトゥーピナレロユーザーにプレゼントされたピナクラブ限定リストバンドとタトゥー
会場では本格パスタ&スープ、エスプレッソが振舞われたりと、イタリアンテイストが味わえた。宿泊は別荘地帯のコテージへ。翌日のスタートは朝7時と、冷え込みが心配される時間帯だ。まだ暑い関東から来ただけに、装備にちょっと油断が。


霧の中スタート いきなり下り...

ファウスト・ピナレロ社長、GFピナレロの指揮をとる実弟アンドレア・ピナレロ氏ファウスト・ピナレロ社長、GFピナレロの指揮をとる実弟アンドレア・ピナレロ氏 シクロワイアード編集部員2名が最前列にこっそり殴りこみ(笑)シクロワイアード編集部員2名が最前列にこっそり殴りこみ(笑)


朝7時、霧がかかるも、最高の天気が予報で伝えられる一日のはじまりだ。参加者はエントリー総数1440人。もっとも多い年齢層は40歳-49歳の38.68%。ついで30歳-39歳の37.99。グルメフォンド八ヶ岳にエントリーした272人は後からのスタートになる。

10人程度のグループ毎にスタートしていくのは、一般公道を走るための配慮だ。大きな集団ができてクルマの通行に支障が出ないように、走る側も注意しながら走る。同行取材ということで、ファウスト&アンドレア、そして今中さんと一緒にスタートしたCWスタッフ2名。

スタートしてまずはしばらく下る。全体のプロフィールマップを見れば分かるとおり、全体を通しては大きく下って、また上り返すという走り方だ。昨日コースを試走したマヴィックのスタッフによれば、標高差は3000mと、かなりのもの。

ファウスト・ピナレロ氏一行の先頭集団に喰らい着くシクロワイアード編集部員Hファウスト・ピナレロ氏一行の先頭集団に喰らい着くシクロワイアード編集部員H
いきなり細い山道へと入る。紅葉の始まった林道が取り入れられていた。これを抜け、野辺山周辺のJR最高標高地点を通過。アンドレア氏は余裕。電動デュラエース装備のドグマに乗るファウスト氏は息を荒げてちょっと苦しげ。
「忙しくて乗りこむ時間が取れない。でもまあこれがレギュラー(普通)だよ」と、今中さんに押してもらいながら走る。とはいえ遅いわけでなく、アンドレアがレーサー並みに速いだけだ。

電動デュラエース仕様のドグマを駆るファウスト・ピナレロ氏。ちょっと苦しそう電動デュラエース仕様のドグマを駆るファウスト・ピナレロ氏。ちょっと苦しそう アンドレア氏と今中大介さん アンドレアはこの後独走態勢にアンドレア氏と今中大介さん アンドレアはこの後独走態勢に


しばし会話を楽しんでいたアンドレアは、開けた道に来るとかっとんで行ってしまった。4時間半が目標と言っていただけあって、そろそろしびれを切らせたか。


充実のエイドステーション 温かなもてなしが嬉しい

ファウスト氏とアマデオ氏もエイドステーションには立ち寄るが、アンドレア氏との遅れを最小限にするために休憩はほとんどとらずに補給食を受け取ってすぐに走り出していく。

清泉寮付近を通過。清里駅付近はキャピキャピ(古いか)な雰囲気の漂う街並みで、牛さんの人形などがお出迎え。このあたり一帯はグルメフォンド部門の協力店が多く、焼きたてのパンの匂いなども漂ってくる。
匂いだけ味わい、先を急ぐファウスト氏らについていく。

清里のキャピキャピな駅前通りを走る今中大介さん清里のキャピキャピな駅前通りを走る今中大介さん
八ヶ岳高原ラインに入り、道は広々になった。朝の斜光を受けた木漏れ日が美しい。牧場や唐松林が八ヶ岳らしい。

馬が横断するから気をつけて...馬が横断するから気をつけて...
コースはあちこちで曲がる。交差点には「右折」「左右に注意して直進」などの進行方向を示す看板が立てられ、間違いやすい交差点には立哨員が居る。地元のボランティアさんが担当してくれているので、応援つきだ。

道案内標識はこんな具合にコーナーに設置される道案内標識はこんな具合にコーナーに設置される 広い、アップダウンの道が続きます広い、アップダウンの道が続きます


そしてコース中盤になるにつれエイドステーションが充実してきた。あったかい「そば」が出たのにはびっくり。グルメフォンドがうらやましいと思っていただけに、トクした気分だ。

エイドステーションで出たそばエイドステーションで出たそば 美味しいと大評判美味しいと大評判


そして、ドレッシングをかけて豪快に食べる「朝採りレタス」も美味かった。カロリーはなさそうだが、高原ならではの補給が嬉しい。他にも塩おにぎりや茹とうもろこしなど、いずれも地元のおばちゃんのあったかい応援つきで、美味かった。

朝採りレタスを振舞ってくれたエイドステーション朝採りレタスを振舞ってくれたエイドステーション エイドステーションで出たトウモロコシにかぶりつきエイドステーションで出たトウモロコシにかぶりつき


信州のりんごもいい感じに色づいています信州のりんごもいい感じに色づいています

秋の日にコスモスが美しい秋の日にコスモスが美しい

レインボーラインを下り、中間地点を越える。関門になっているこのエイドは3つあるリタイア自己申告スポットのひとつにもなっている。ここを制限時間内に通過しなければ足きりもある。コースの中間地点がもっとも標高の低い「ボトム」になっている。スタートとゴールが同じということは、下ったぶん上らなきゃいけないということだ。

絶景ポイントの八ヶ岳高原大橋絶景ポイントの八ヶ岳高原大橋


グルメフォンド参加者と合流

段々畑の色づく稲穂が美しい段々畑の色づく稲穂が美しい アップダウンに耐えるサイクリストたち。「タフだ...」アップダウンに耐えるサイクリストたち。「タフだ...」


ファンライド編集部員の細沼さんと編集長の村山さんファンライド編集部員の細沼さんと編集長の村山さん 参加者に配布されるマップで現在地を確認参加者に配布されるマップで現在地を確認


段々畑を見ながら上る海岸寺までの山岳路は、最大の難所。長い長い上り坂だ。蛇行、歩く人もいる。清里を越えて再び泉ラインへ。キーとなる交差点のいくつかを何度か通過することになっているコース取りのため、見覚えのあるスポットが何度か登場し、なんとなく土地勘が生まれてくる。

八ヶ岳高原ラインではグルメフォンドの皆さんとも一緒になった。ミニベロの人や女性サイクリストがのんびりペースで走っている。「何か美味しいもの食べましたか~?」と聞けば、「食べ過ぎてしんどい~」というお返事が返ってくる(笑)。

きのこ料理で有名な仙人小屋を通過。いつもは並ぶ人が多すぎる名店も、この日は比較的空いていたようで、のんびり食事を楽しめたそうだ。(そうじゃない時間帯もあったとは思いますが)

南アルプスの眺めは最高南アルプスの眺めは最高

ソフトクリームの誘惑に勝てず

ラスト20kmを残し、最後の交差点を前にして現れるのがこのコース随一のグルメスポットの県営八ヶ岳牧場だ。牧場から見渡せる山並みの展望も美しく、ソフトクリームなどの誘惑が一杯。おもわず休憩も長くなり、ソフトをほおばることに。広がる牧場の牧草地帯、草を食む羊や馬の群れの高原の景色を眺めていると、もはやタイムなどどうでも良い感じだ。

景色最高の県営八ヶ岳牧場でのんびり休憩景色最高の県営八ヶ岳牧場でのんびり休憩

県営八ヶ岳牧場 遠くに草を食む牛、馬、羊県営八ヶ岳牧場 遠くに草を食む牛、馬、羊

タイム狙うよりココでソフトクリーム食べなきゃウソでしょ!タイム狙うよりココでソフトクリーム食べなきゃウソでしょ!
後方から追い上げてきた今中さんとも合流。強力にオススメしておいたので、今中さんもここでソフトクリームを食べたハズだ。


厳しくも最高のオフ・ゲレンデ体験

このコースで最後の難関が、ゴールのサンメドウズまでの長い長い上り坂だ。一直線に上る坂道は、最後を締めくくるにふさわしい。標高差は200mほど? えんえんと歩く人あり。

ゴール地点を目指す最後の上り坂....長い...。ゴール地点を目指す最後の上り坂....長い...。
ゆっくりあせらずゴール。タイムは7:10:35で、993人中348位。レースでないので順位は参考程度。トップは藤森 康郎さんの4:28:31(!)。アンドレアは4位で4:39:34。ファウストは5:08:00で22位。アンドレアでさえ脚を攣らせて「これは厳しいコースだ」と漏らしたという。
しかし、「厳しいコースでこそ真価が発揮されるピナレロのバイクは、グランフォンドやレースで乗って欲しい。それでこそピナレロの良さが分かるはず」と、ファウスト。まさに身をもってそれを実践している社長に敬服。

スタート前日、コースを見て「グルメフォンドにしようか」とはCW編集スタッフの3人ともが吐いた弱音。しかし走りきってみれば、疲労以上に大いに満足だ。
追い込んで走れば確かに苦しいのだろうけど、途中のエイドでそばやソフトクリームを堪能したり、写真を撮りながらの走りだったためか、つらさは恐れていたほどは感じなかった。心地よい疲労感。大きな達成感。ブラボー!。

しかし、容易なコースでないことは確か。平坦のサーキットコースしか知らない初心者にはつらいコースなのだろうが、走り方を知っている人ならダイナミックに楽しめる大会だった。今年完走できなかった人は、また来年、練習してから来て欲しい。(と、普段練習しない私には何の説得力もないけれど)

完走のご褒美は、RUNNET登録者なら全員が手にすることが出来るゴール写真入りの記録証(写真)。実物はPDFでサイトからダウンロードするものだが、こういうサービスがあるのも嬉しい。

完走証は自分のゴール写真つき。ちなみにポーズはC/W完走証は自分のゴール写真つき。ちなみにポーズはC/W
さて、心配の多かった第1回大会が終わった。押して歩く人や、回収車に乗った人も多かったと聞くが、全体の評価はどうだろうか。ゴールではじける笑顔を見ていると、ひとまずこの大会のGF部門は大成功だったように思える。走り応えあり、ロケーション最高、サブイベントも充実。

また来年、最高の体験を味わいに来たいものだ。

尚シクロワイアードでは続いてシクロマンによる実走レポート、グルメフォンド体験記などをご紹介する予定です。お楽しみに!