デビューと共に、コアなサイクリストから注目を集めたジャイアントの片持ち式軽量フェンダー「ARC FENDER」をインプレッション。ルックスを崩さないミニマムなデザインながら、実はかなりの実力派であった。



リアはこの位置にセットする。お尻や腰に向かってくる跳ね上げをカットするためだリアはこの位置にセットする。お尻や腰に向かってくる跳ね上げをカットするためだ
唐突だが、読者の皆さんは、どんな装備で雨の日のロードバイクライドに挑んでいるだろうか?

そもそも雨が降ったら、もしくは降りそうだったら乗らない、という方が圧倒的に多いと思うのだが、プロ選手やそれに近いホビーライダー、更に通勤・通学やメッセンジャー、そしてもちろん不意の雨。というように雨の中でも乗るニーズは少なからず存在していると思う。

路面状態が良好な場所を走るのであれば、ここまでクリアランスを詰められる路面状態が良好な場所を走るのであれば、ここまでクリアランスを詰められる アルミ製ステーの両端には角度調整機能がつけられるアルミ製ステーの両端には角度調整機能がつけられる そこで一番にネックになるのが濡れと寒さ、そしてウェアやバイクの汚れ。しかし、きちんと対策を打てばその不安もかなり拭い去ることができる。例えば地面からの跳ね上げをカットするフェンダーはその筆頭と言えるだろう。

しかしタイヤを大きく覆うフルフェンダーだとバイクのルックスを崩してしまうし、かと言って近年流行のサドルレールに差し込む簡易式タイプでは、スタイリッシュではあるもののフェンダーとしての性能が正直言って高くない。そんなニーズに向けてジャイアントから発売されたのが、今回インプレッションを行ったARC FENDER(アークフェンダー)だ。

ARC FENDER最大の特徴は、クイックレリーズを用いた片持ち式の取り付け機構と、コンパクトな本体によって非常にミニマムなルックスを実現したことにある。しかも片持ち式だから、同じものを2つ用意すれば前後どちらのホイールにも取り付けできる。

実際に取り付けてもほとんどルックス上の邪魔をしないし、逆サイドから見ればフェンダーの存在自体に気がつかないほど薄くコンパクトだ。少々取り付けに慣れが必要だが、ステーの両端で角度を調整できるため、一旦コツを掴めばベストな位置にぴったりと収めることができた。

インプレッションは雨が降り止んだ直後に1時間ほど走って行ったが、その感想は「こんなにコンパクトなのに、こんなに効果があるのか!」という驚きの一言だった。

もちろんフルカバー式のフェンダーと比較すれば分が悪いものの、ピンポイントでお尻や腰に向かってくる跳ね上げをカットしてくれるうえ、タイヤとの距離を狭めることで飛沫が上がることも少なくなる。更にフェンダーの内側にはV字の凹凸がつけられているため、高速走行時でもフェンダーに沿って水が飛んでくること無く、しっかりと左右に水を落としている様子が手に取るように分かった(このあたりはムービーを見て欲しい)。


※ムービーの中で、フロントへの取り付け位置が下側になっています。取り付けの際にはフェンダーの下部がハブ軸よりも上に位置するようお願いします。

フルカバー式と比較すると分が悪いが、機能的にも必要にして十二分だと感じたフルカバー式と比較すると分が悪いが、機能的にも必要にして十二分だと感じた ライド中は何度も水たまりに突っ込んでみたりしたのだが、30分ほど走った段階では跳ね上げによる濡れはほぼ皆無と言うべきレベルだった。帰宅してもビブショーツの表面がうっすら水分を吸ったかな?という程度で、肌側は完全にドライ。さすがに深い水たまりに勢い良くダイブした時の飛沫は防いでくれなかったが、必要にして十分、いや十二分、と感じるほどの機能性だ。

固定力も不安なく、別の日に1時間ほどグラベルやシングルトラックを攻めても緩みは見受けられず、凹凸ではアルミ製のステーが振動するものの、タイヤの円周方向に振動するからタイヤと触れてしまうことも無かった。よりバンピーなシチュエーションを連続して走るシクロクロスやMTBに装着する場合(今回はロード用を試したが、幅とサイズ別に数種類が用意されている)は、タイヤとの距離を空けるように調整すれば問題無いだろう。

注意点は一つだけ。上の写真のように大きくハンドルを切った時に、バイクやバイクのサイズによってはシューズのつま先とフェンダーが当たってしまう場合がある。筆者はこれで調整がずれてしまったので、ユーザーの皆様においては気を付けて頂きたい。

さて、実のところ筆者はバイクのルックスが崩れるのが嫌で、雨が降っても何もつけず「気合いでゴールまで走り切る派」だったのだが、このミニマムなルックスと機能性には驚かされた。ジャイアント製ではあるがロゴも控えめで、どんなブランドの自転車ともマッチしてくれるだろう。これからの雨が多くなる季節、乗る頻度が多い方には最適なフェンダーではなかろうか。

備えあれば憂いなし。転ばぬ先のARC FENDERである。



ジャイアント ARC FENDER PRO
対応タイヤサイズ:700×23〜25C
重 量:82g
価 格:5,000円(税抜)
今回テストした「PRO」の他、700×28〜32Cに対応する「SPORT」、700×35〜40C、26×1.5用の「XR」、20×1 〜1+1/8用「COMPACT」が用意されている。

impression&text&photo:So.Isobe

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