2013/10/22(火) - 11:08
10月6日、今年で5回目を数える人気の山岳ロングライド「グランフォンド八ヶ岳」が開催された。高原ならではの澄み渡った空気、青い空にふんわりと雲が浮かぶ秋らしい空のもとで開催された今大会の様子を編集部の実走レポートでお届けしよう。
スタート・ゴール地点に設定されたのは八ヶ岳南東部、山梨県北杜市の「清泉寮」。標高1,380mに位置するため、編集部が到着した朝6時ごろの気温は10月初旬にも関わらず15℃以下と肌寒いぐらいだが、高地ならではの澄んだ空気や朝日に照らされる山肌、空や雲との近さにイベントへの期待感が高まる。
グランフォンド八ヶ岳(以下、GF八ヶ岳)のコースは、走行距離117kmを走る「グランフォンド」と、74kmの「メディオフォンド」、そしてグルメと体験を満喫できる「グルメフォンド」の3コース。以前は獲得標高が3000m以上に設定された年もあったが、Funrideの細沼編集長によると「今までコースが厳しいと言われてきましたが、今年は難易度は低めに見直ししています。走りごたえはたっぷりながら、楽しめるコースです」とのこと。今回シクロワイアードからは編集部員2名がグランフォンドコースへと参加した。
117kmコース(イベント後に計測の結果108kmと訂正された)は、清泉寮をスタートし、1000m級の山々を縫うように小淵沢や甲斐大泉、長坂、須玉、野辺山を経由して戻ってくるもの。全般に勾配は緩やかだが、70km地点を過ぎてから1000m以上の標高差を稼ぎ出す、走りごたえがあるコースプロフィールだ。
眩しいくらいの朝日がスタート地点に降り注ぐ中、8時にグランフォンドコースの参加者が50名程度の小さなウェーブとなって次々にスタートしていく。最初の1kmはウォーミングアップに丁度良い軽い登りであったが、登り切ってからは10km以上に渡る下りを駆け抜ける。
CW編集部は最初のウェーブに同行してスタートすることに。この中には、地元山梨に住むことから大会アドバイザーを務める今中大介さんの姿も。そして、レースでお馴染みのマヴィックカーが集団を先導するとあって気分はジロ・デ・イタリアといった所だ。
パノラマの広がる「東沢大橋」を軽快に通り過ぎ、八ヶ岳高原ラインのワインディングを抜けると、あっという間に第1エイドステーションの小淵沢スパディオに到着する。ここまで大部分がダウンヒルであったため、あまりお腹が減っていないというのが正直なところだが、来る登りに備えて大福やオニギリ、カントリーマームを頬張る。
今年のGF八ヶ岳は平均17kmごとにエイドステーションが設置される計算になるが、第1エイドと第2エイドの間は27kmと少し長めに取られている。しっかりとお腹を満たした後は、緩やかながら約9kmの登坂距離を数える泉ラインをヒルクライム。甲斐大泉駅まで登り切ると、再び15km程度のダウンヒルに。途中、参加者を応援してくれる地元の子どもたちや、JR中央本線に出くわすなど、田舎らしい雰囲気に心がなごんだ。
第2エイドではグレープフルーツとオレンジなどの軽い補給食が提供された。スポーツドリンクなどで甘ったるくなった口には柑橘類の酸味が適度な刺激になってくれた。第3エイドまでは幾つかの集落の中を通りながら、生活道路を走る。特に目立ったビューポイントポイントこそないものの、色鮮やかなコスモスや黄金色に色づいた田んぼが我々を含む参加者の目を愉しませてくれる。
グランフォンドとメディオフォンドの折り返し地点である58km地点に第3エイドは設けられる。北杜市立高根体育館の広々とした駐車場が会場として提供され、チームや仲間と輪になって休む参加者が、和気あいあいとした雰囲気に包まれていた。このエイドでは温かな蕎麦に加え、八ヶ岳で収穫されたシャキシャキの高原レタスを楽しむことができた。高原グルメを満喫した後も、再びダウンヒル。下りきった70km地点の標高は460mで、今大会の最低標高地点となっている。
各エイドの3km手前にはエイドステーションまでの距離が記された立て看板が設置されており、初めてロングライドイベントに参加するビギナーをはじめ、多くの参加者にとって一助となっていたはずだ。第4エイド手前では平均斜度7%が3km続く長い登りが待ち構えており、押しが入る人も。それでも、後ろを振り返れば眼下に広がった絶景に満足感は満たされていく。
登りを終えてすぐ、「アルプスの少女ハイジ」のテーマパーク「ハイジの村」の目の前にある駐車場が第4エイドだ。目の前に広がる3000m級の山々が連なる南アルプスを眺めと、ハイジの村から聞こえてくる北欧風な音楽がとても心地よい。そして名産の「あけの金時」を使用したさつま芋パイと、歯ごたえがしっかりしたリンゴが振る舞われ、思わず長居してしまいそうになる。
お昼を過ぎる頃には道中の温度計が24℃を指しており、半袖で心地よい気温に。第4エイドの出発後は大会最後の大きなダウンヒルとなり約6kmを下ると、残りはひたすら登り。ここまでの下り基調の比較的楽なコースプロフィールだったが、今流行の「倍返しだ!」と言わんばかりにゴールまでの約25kmで約900mもの獲得標高を稼ぐ。
近辺で噴出する増富ラジウム温泉にちなんだ「増富ラジウムライン」まで下りきると、須玉川を横目に、木漏れ日が眩しい林道をヒルクライム。第5エイドの約2kmからは登りの厳しさが増し、蛇行したり自転車を押す参加者もちらほら。
林道を抜けた先、第5エイドが設けられたのは収穫を終えた田んぼが一面に広がる中に位置する「おいしい学校」。地元の素材を活かしたレストランや農産物直売所、宿泊施設が一体になった複合施設で、普段は施設内で販売されるパンや、実が詰まって甘いとうもろこしが提供された。
この日最も厳しいポイントは第5エイドから第6エイドの間、86km地点に登場する海岸寺の登り。距離2.6kmと短いものの、途中では斜度が10%を超える区間や、工事のため舗装がガタガタの区間があったりと実走するとコースプロフィール以上に厳しく、90km以上走ってきた体には堪える。
疲れやキツさに顔を歪める参加者が多いが、ご主人が奥さんの背中を押したり、プロさながらにアタック合戦をしてみたりと、登りをエンジョイする強者の姿も。グランフォンドの楽しみ方は実に様々だ。頂上では地元のサイクリストによる”大会非公式の第5.5エイド”として、有名な八ヶ岳の湧き水を補給することが出来た。こういった地元の協力は非常に喜しい。
海岸寺を登り切れば、残りは一定勾配で続く登りを淡々とこなすだけ。94km地点では水分補給と寒天ゼリーが提供される軽めの第6エイドが用意され、わずか4km後の丘の公園には第7エイドが設定される。日が傾き、影が長くなるなかいただいたミルク風味が濃厚なアイスクリームと味噌きゅうりが、登りで疲労した体に染み渡る。
夕日の中、高原地帯を走りながらも本日初めての牛に遭遇したり、ちょっぴりメルヘンなJR清里駅前を経て、スタート地点に戻ってきてゴール。ゴールタイムは8時間20分弱で、確かに足は心地よい程度には疲労しているものの、なんだかアッという間にゴールしたという印象であった。段々と気温が下がり肌寒くなっていくなか、最後に提供された熱々の豚汁は実にありがたい。
1500人以上を集めたグランフォンドを筆頭に、2,100人以上の様々なレベルのライダーが参加したGF八ヶ岳。最終的な獲得標高は1900m(ガーミンによる計測)。途中で蛇行したり、自転車を押す参加者も多く見られたとおり決して難易度は低くはないが、厳しすぎる区間は無いので獲得標高差の割には走りやすかったという印象だ。
その数以上に内容も充実しているエイドや、地元の人たちの協力や声援、高原ならではの絶景や雰囲気のお陰で、充実感たっぷりに走れた。日本各地からエントリーを集める人気大会の理由を感じることができた。多くの参加者に「ぜひ来年も参加したい」と思わせてくれたに違いない。
text:Yuya.Yamamoto
photo:Makoto.AYANO, Yuya.Yamamoto
イベントの様子は写真たっぷりのフォトアルバム(CW Facebook)も併せてお楽しみ下さい。
スタート・ゴール地点に設定されたのは八ヶ岳南東部、山梨県北杜市の「清泉寮」。標高1,380mに位置するため、編集部が到着した朝6時ごろの気温は10月初旬にも関わらず15℃以下と肌寒いぐらいだが、高地ならではの澄んだ空気や朝日に照らされる山肌、空や雲との近さにイベントへの期待感が高まる。
グランフォンド八ヶ岳(以下、GF八ヶ岳)のコースは、走行距離117kmを走る「グランフォンド」と、74kmの「メディオフォンド」、そしてグルメと体験を満喫できる「グルメフォンド」の3コース。以前は獲得標高が3000m以上に設定された年もあったが、Funrideの細沼編集長によると「今までコースが厳しいと言われてきましたが、今年は難易度は低めに見直ししています。走りごたえはたっぷりながら、楽しめるコースです」とのこと。今回シクロワイアードからは編集部員2名がグランフォンドコースへと参加した。
117kmコース(イベント後に計測の結果108kmと訂正された)は、清泉寮をスタートし、1000m級の山々を縫うように小淵沢や甲斐大泉、長坂、須玉、野辺山を経由して戻ってくるもの。全般に勾配は緩やかだが、70km地点を過ぎてから1000m以上の標高差を稼ぎ出す、走りごたえがあるコースプロフィールだ。
眩しいくらいの朝日がスタート地点に降り注ぐ中、8時にグランフォンドコースの参加者が50名程度の小さなウェーブとなって次々にスタートしていく。最初の1kmはウォーミングアップに丁度良い軽い登りであったが、登り切ってからは10km以上に渡る下りを駆け抜ける。
CW編集部は最初のウェーブに同行してスタートすることに。この中には、地元山梨に住むことから大会アドバイザーを務める今中大介さんの姿も。そして、レースでお馴染みのマヴィックカーが集団を先導するとあって気分はジロ・デ・イタリアといった所だ。
パノラマの広がる「東沢大橋」を軽快に通り過ぎ、八ヶ岳高原ラインのワインディングを抜けると、あっという間に第1エイドステーションの小淵沢スパディオに到着する。ここまで大部分がダウンヒルであったため、あまりお腹が減っていないというのが正直なところだが、来る登りに備えて大福やオニギリ、カントリーマームを頬張る。
今年のGF八ヶ岳は平均17kmごとにエイドステーションが設置される計算になるが、第1エイドと第2エイドの間は27kmと少し長めに取られている。しっかりとお腹を満たした後は、緩やかながら約9kmの登坂距離を数える泉ラインをヒルクライム。甲斐大泉駅まで登り切ると、再び15km程度のダウンヒルに。途中、参加者を応援してくれる地元の子どもたちや、JR中央本線に出くわすなど、田舎らしい雰囲気に心がなごんだ。
第2エイドではグレープフルーツとオレンジなどの軽い補給食が提供された。スポーツドリンクなどで甘ったるくなった口には柑橘類の酸味が適度な刺激になってくれた。第3エイドまでは幾つかの集落の中を通りながら、生活道路を走る。特に目立ったビューポイントポイントこそないものの、色鮮やかなコスモスや黄金色に色づいた田んぼが我々を含む参加者の目を愉しませてくれる。
グランフォンドとメディオフォンドの折り返し地点である58km地点に第3エイドは設けられる。北杜市立高根体育館の広々とした駐車場が会場として提供され、チームや仲間と輪になって休む参加者が、和気あいあいとした雰囲気に包まれていた。このエイドでは温かな蕎麦に加え、八ヶ岳で収穫されたシャキシャキの高原レタスを楽しむことができた。高原グルメを満喫した後も、再びダウンヒル。下りきった70km地点の標高は460mで、今大会の最低標高地点となっている。
各エイドの3km手前にはエイドステーションまでの距離が記された立て看板が設置されており、初めてロングライドイベントに参加するビギナーをはじめ、多くの参加者にとって一助となっていたはずだ。第4エイド手前では平均斜度7%が3km続く長い登りが待ち構えており、押しが入る人も。それでも、後ろを振り返れば眼下に広がった絶景に満足感は満たされていく。
登りを終えてすぐ、「アルプスの少女ハイジ」のテーマパーク「ハイジの村」の目の前にある駐車場が第4エイドだ。目の前に広がる3000m級の山々が連なる南アルプスを眺めと、ハイジの村から聞こえてくる北欧風な音楽がとても心地よい。そして名産の「あけの金時」を使用したさつま芋パイと、歯ごたえがしっかりしたリンゴが振る舞われ、思わず長居してしまいそうになる。
お昼を過ぎる頃には道中の温度計が24℃を指しており、半袖で心地よい気温に。第4エイドの出発後は大会最後の大きなダウンヒルとなり約6kmを下ると、残りはひたすら登り。ここまでの下り基調の比較的楽なコースプロフィールだったが、今流行の「倍返しだ!」と言わんばかりにゴールまでの約25kmで約900mもの獲得標高を稼ぐ。
近辺で噴出する増富ラジウム温泉にちなんだ「増富ラジウムライン」まで下りきると、須玉川を横目に、木漏れ日が眩しい林道をヒルクライム。第5エイドの約2kmからは登りの厳しさが増し、蛇行したり自転車を押す参加者もちらほら。
林道を抜けた先、第5エイドが設けられたのは収穫を終えた田んぼが一面に広がる中に位置する「おいしい学校」。地元の素材を活かしたレストランや農産物直売所、宿泊施設が一体になった複合施設で、普段は施設内で販売されるパンや、実が詰まって甘いとうもろこしが提供された。
この日最も厳しいポイントは第5エイドから第6エイドの間、86km地点に登場する海岸寺の登り。距離2.6kmと短いものの、途中では斜度が10%を超える区間や、工事のため舗装がガタガタの区間があったりと実走するとコースプロフィール以上に厳しく、90km以上走ってきた体には堪える。
疲れやキツさに顔を歪める参加者が多いが、ご主人が奥さんの背中を押したり、プロさながらにアタック合戦をしてみたりと、登りをエンジョイする強者の姿も。グランフォンドの楽しみ方は実に様々だ。頂上では地元のサイクリストによる”大会非公式の第5.5エイド”として、有名な八ヶ岳の湧き水を補給することが出来た。こういった地元の協力は非常に喜しい。
海岸寺を登り切れば、残りは一定勾配で続く登りを淡々とこなすだけ。94km地点では水分補給と寒天ゼリーが提供される軽めの第6エイドが用意され、わずか4km後の丘の公園には第7エイドが設定される。日が傾き、影が長くなるなかいただいたミルク風味が濃厚なアイスクリームと味噌きゅうりが、登りで疲労した体に染み渡る。
夕日の中、高原地帯を走りながらも本日初めての牛に遭遇したり、ちょっぴりメルヘンなJR清里駅前を経て、スタート地点に戻ってきてゴール。ゴールタイムは8時間20分弱で、確かに足は心地よい程度には疲労しているものの、なんだかアッという間にゴールしたという印象であった。段々と気温が下がり肌寒くなっていくなか、最後に提供された熱々の豚汁は実にありがたい。
1500人以上を集めたグランフォンドを筆頭に、2,100人以上の様々なレベルのライダーが参加したGF八ヶ岳。最終的な獲得標高は1900m(ガーミンによる計測)。途中で蛇行したり、自転車を押す参加者も多く見られたとおり決して難易度は低くはないが、厳しすぎる区間は無いので獲得標高差の割には走りやすかったという印象だ。
その数以上に内容も充実しているエイドや、地元の人たちの協力や声援、高原ならではの絶景や雰囲気のお陰で、充実感たっぷりに走れた。日本各地からエントリーを集める人気大会の理由を感じることができた。多くの参加者に「ぜひ来年も参加したい」と思わせてくれたに違いない。
text:Yuya.Yamamoto
photo:Makoto.AYANO, Yuya.Yamamoto
イベントの様子は写真たっぷりのフォトアルバム(CW Facebook)も併せてお楽しみ下さい。
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