学生主催によるバイクトライアルの全国大会「第一回全日本学生自転車トライアル選手権大会」が大阪府豊中市の服部緑地で行われた。自転車競技の中でマイナーなトライアル競技を広く知ってもらうために都心部で行われた意義のある大会だった。

確実な走りで優勝した柴田泰嵩(中京大学大学院)確実な走りで優勝した柴田泰嵩(中京大学大学院)

大阪市内から地下鉄に乗って簡単にアクセスできる服部緑地で3月3日、主に大学・大学院生を対象にした自転車のトライアル大会「第一回全日本学生自転車トライアル選手権大会」が行われた。

バイクトライアル競技は自転車で足やペダル等を地面や障害物に接触せずに制限時間内に通過するのが基本的なルール。減点を超えないようにするのだか、立ちふさがる障害物は壁や細いパイプといった、人の足でも通過するのが難しい難所ばかり。そういった場所を正確にバランスを崩さずに走るテクニックが要求される。

個性的なトライアルバイク達個性的なトライアルバイク達 第一回全日本学生自転車トライアル選手権大会はオープンも合わせ多数の選手が参加第一回全日本学生自転車トライアル選手権大会はオープンも合わせ多数の選手が参加


特にトライアルは自転車で前輪を立ち上げてジャンプしながら移動する「ダニエル」と呼ばる動きが特徴で、人車一帯となった動きは凄いの一言。選手達は数多くの持ち前のテクニックを駆使して競い合う。ペナルティが少ない選手が勝者となるのだ。

会場内に設けられた人工のセクション会場内に設けられた人工のセクション バイクは低重心で他の自転車とは違う特殊な作りとなっており、タイヤ径が20インチと26インチの2種類が使用される。

日本のトライアルは過去に岐阜県関市板取(旧武儀郡板取村)で17年に渡って世界選手権が開催されていたほどの人気があったものの、2008年を最後に途絶えてしまった。昨年から新たなトライアルの団体「JBTA・日本自転車トライアル協会」が立ち上がり、UCIレース規定に則ってJCF管轄の全日本トライアルが開催され、新たなスタートを切った。

日本人選手でも寺井一希選手が昨年度のUCI世界選手権6位となるなど、レベルの高い選手が活躍している。また寺井選手はTVの正月番組にも出演し、お茶の間でトライアルの凄さを見た人も多いのではないだろうか?


観客へ学生達が魅せる走り

2位の西窪友海(和歌山大学)2位の西窪友海(和歌山大学) 今回の大会に出場する選手たち、柴田泰嵩(中京大学大学院)は昨年の全日本エリート20クラス2位・世界選手権11位、西窪友海(和歌山大学)は全日本エリート26クラス3位、大竹信太郎(千葉工業大学)全日本エリート20クラス4位と、レベルの高い選手が集まった。

3位の大竹信太郎(千葉工業大学)3位の大竹信太郎(千葉工業大学) またオープンクラスとして年少や学生以外の選手も参加。コースはパイプや荷物トレイといったものを組み合わせた人工セクションが作られて、三つのコースを午前と午後でレイアウトを変えつつ2回づつ走る。

駅前の公園ということで遊びにくる人や犬の散歩の人等がウンドサポートのレッドブルと関西大学放送研究会の実況を聞いて立ち寄り、人工セクションを華麗にクリアする選手達に釘付けとなって観戦する人達から、歓声が飛び会場は大変盛り上がった。

トライアル競技は山にあるモーターサイクルのバイクトライアル会場で開催される事が多いため、こうした一般の人達に観戦してもらうという意味でも成功したと言えるだろう。

多くの選手はなかなかセクション制覇とはいかなかったものの、争いは柴田・西窪・大竹といった実力者達が争い、優勝は柴田、女子は水野真美(関西大学)。表彰まではエキビジションとして幅跳びが企画され、1・2位争いとなった柴田・西窪が最後まで残り、2m70cmの幅をサドンデスとなるまで争い西窪が柴田に勝って屈辱を晴らした。

ウィメン優勝の水野真美(関西大学)ウィメン優勝の水野真美(関西大学) 2m70cmもの幅を飛ぶ!2m70cmもの幅を飛ぶ!


本大会を優勝した柴田は「JCF関連のトライアル競技を関西大学のメンバーが主体となって開催してくれたという事で、代表してお礼を申し上げたいです。記念すべき第一回大会で優勝できたということは大変光栄です。コースのレベルは全日本や国際大会に比べて少し落ちるのが現状です。これからそれらと同等のセクションを作るためにも選手が練習して今後大きな大会に繋げることができると嬉しいです。来月の全日本選手権も優勝したいと思います」と語った。


日本学生自転車トライアル連盟代表の藤原涼平さん

子供達も華麗にジャンプ子供達も華麗にジャンプ 「今回、新たにトライアルの学生大会を立ち上げた理由は、大きく2つあります。第1に、(総体としての)学生はすごいということを証明・保証すること。そして第2にそれを広く伝えること」です。

トライアル競技は曲芸とみられる向きが多いですが、実際のそれは真剣なスポーツです。いかに学生の能力を発揮させるか、そしてそれをいかに伝えることができるか、そのことを念頭に準備を進めてきました。そのためにコースレイアウトを何度も推敲し、審判団も優秀な審判を配備し、会場も都会の中にある大阪府営服部緑地を選定しました。

当日は初めてご覧になった方も多く居て、トライアルの魅力を充分に伝えられたのではないか、と思っています。今回の大会は、トライアル界にとっては1つの小さなきっかけに過ぎません。しかしこの灯火を絶やさず、選手にとって「トライアルをやっててよかった!」という感動をすこしでも多く届けられるよう、精進していきます。これからも自転車トライアル、また学生選手をあたたかく見守ってやってください」

全日本学生自転車トライアル選手権大会 表彰式全日本学生自転車トライアル選手権大会 表彰式 優勝した柴田泰嵩(中京大学大学院)優勝した柴田泰嵩(中京大学大学院)



第2回全日本トライアル選手権大会

第2回となる全日本トライアル選手権大会は4月13、14日に愛知県新城市にある桜淵記念公園で行われる。トライアルの帝王こと寺井一希選手が連覇となるか、また打ち勝つ者が現れるか会場にて観戦しよう。またシリーズ公式戦Jシリーズも各地で予定されている。

4月13日
エリート20/エリート26予選 
プッシン/ベンジャミン/ミニメ/カデット/ジュニア/ウイメン/ガール 決勝
4月14日 
エリート20/エリート26決勝 





text:photo:Akihiro.Nakao