1世紀以上の歴史を持つ、イタリアの老舗ブランドであり、最古の自転車ブランドの一つに数えられるビアンキが、2018モデルにて新たに発表したエアロロード「ARIA」。現代的で最先端のデザインを持つ新作の秘めたる実力に迫っていこう。



ビアンキ ARIAビアンキ ARIA (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
130年を超える長い歴史を有するビアンキ。イタリアの空の色とも言われる独特のブルー、「チェレステ」をアイコンとし、シリアスレーサーからシティーコミューターまで、幅広い分野の自転車を手がける総合バイクブランドとして、その歴史を紡ぎ続けてきた。

長い歴史の中で、ビアンキがサイクルロードレース界に残してきた実績は枚挙に暇がない。古くはファウスト・コッピ、フェリーチェ・ジモンディといったレジェンドライダーたちと共に数々の輝かしい栄光を掴みとってきた。最速のクライマーであり、悲劇のヒーローとして語り続けられるだろうマルコ・パンターニが愛したのも、ビアンキのレーシングバイクだった。

ボリュームたっぷりの翼断面形状のダウンチューブボリュームたっぷりの翼断面形状のダウンチューブ 細身のストレートフォークを採用する細身のストレートフォークを採用する フォークブレードの中頃がフレアした形状となっているフォークブレードの中頃がフレアした形状となっている


レーシングスピリットを持ち続けてきたビアンキのロードラインアップに新たに加わったこのARIAは、ミドルグレードのエアロロード。トップモデルであり、ロットNLユンボが使用するフラッグシップOLTRE XR4やTTバイクのAQUILAといったエアロダイナミクスを主眼に置いたバイク群の開発で得た様々な知見をフィードバックし、生まれた一台である。

その名が示すのは、イタリア語で「空気」、そしてオペラやオラトリオのクライマックスとなる「独唱曲」。つまり、空気を友とし、ただ一人でフィニッシュを目指し駆け抜ける勇気あるアタックを成功させるために心強い味方となることが宿命づけられたエアロロードである。

ダウンチューブに流れるようなデザインのフォーククラウンダウンチューブに流れるようなデザインのフォーククラウン ヘッドチューブにはビアンキの鷲のロゴが輝くヘッドチューブにはビアンキの鷲のロゴが輝く

ドロップしたシートステーにマウントされるブレーキはノーマル仕様ドロップしたシートステーにマウントされるブレーキはノーマル仕様 ホイールに沿うようなデザインへとカットされたダウンチューブホイールに沿うようなデザインへとカットされたダウンチューブ


極限まで空気抵抗を削減するため、フレームの随所にエアロ効果をもたらすデザインがちりばめられている。もっとも大きなポイントはビアンキとしては久ぶりとなるホリゾンタルトップチューブを採用していることだろう。スローピングに対して、重量面では不利になるが前方投影面積では圧倒的に優位に立つホリゾンタルデザインは、近年のエアロロードでは必須の要素。

シートチューブとの交点を下げることでコンパクトにまとめたシートステーや、ダウンチューブへと流れるように繋がるインテグレートデザインのフォーククラウン、外側へとフレアすることでスポークとのクリアランスを広げ、乱流の発生を抑えるフォークブレイド、そしてリアホイールに沿ってカットされたシートチューブなど、エアロロードとして必要な要素は全て備えている。

コンパクトな形状のリアエンドコンパクトな形状のリアエンド BBはプレスフィット規格を採用し、ボリュームのある形状BBはプレスフィット規格を採用し、ボリュームのある形状


そして、フレーム単体でのデザインによる空気抵抗の削減という点だけでなく、ライダーが乗車し実際に走行した際に発生する、トータルなエアロダイナミクスをいかに向上させるのか、という視点に基づいた開発がされているのも、ARIAの美点である。つまり、より空気抵抗を削減できるポジションを設定しやすいジオメトリーを与えられているということだ。

同時に、ロードレースのみならずトライアスロンへと対応するような設計ともされている。ARIAのジオメトリーは、クリップオンバーに加えて、サドル位置を少し前に変更するだけでトライアスロンやTTへと対応するような、汎用性の高い設計となっているのだ。

シートステーは短く、空気抵抗を抑えるデザインシートステーは短く、空気抵抗を抑えるデザイン リアホイールをカバーするようなカットオフシートチューブリアホイールをカバーするようなカットオフシートチューブ エアロシートピラーを採用する クランプは臼式だエアロシートピラーを採用する クランプは臼式だ


近年のビアンキのロードレーサーの特徴の一つでもある、振動除去システム”カウンターヴェイル”の採用は見送られているものの、エアロかつアグレッシブな走りをするバイクを、よりリーズナブルなプライスで手に入れることができることも魅力的なポイントだ。

今回のインプレッションバイクは、シマノ105を搭載したコンプリートバイク。ヴィジョンのミッドハイトアルミホイールにヴィットリアのZAFFIRO PROを組み合わせた一台だ。また、各ケーブルにはチェレステカラーにアルマイトされたリンク式のアウターワイヤーが使用されており、全体的なコーディネートに一役買っているところも、ビアンキの美意識が垣間見えるポイントだ。さて、それではインプレッションへと移ろう。



― インプレッション

「対話を楽しみながら長く乗り続けられる一台」御園井智三郎(ミソノイサイクル)

伝統のあるイタリアンブランドらしい、ビアンキらしい乗り味の一台ですね。高速域で真価を発揮するバイクで、エアロな見た目通りの性能を持っています。全体的な剛性感でいうと高めのバイクで、シッティングで回していくことによって高い推進力を生み出してくれるのが特徴的ですね。

「対話を楽しみながら長く乗り続けられる一台」御園井智三郎(ミソノイサイクル)「対話を楽しみながら長く乗り続けられる一台」御園井智三郎(ミソノイサイクル) 今回のインプレッションバイクは小さ目のサイズだったのですが、トップチューブも短めの設定で身長の低い私のようなライダーにとっても非常に乗りやすく、好印象でした。一方で、シートはある程度寝ているので後ろに重心をかけやすい設計です。それもあってか、ある程度の勾配まではシッティングで対応できるような進み方をしてくれます。

エアロロードらしく、ハイスピードになればなるほど安定感が増していくバイクで、下りのコーナーなどは思い通りに操ることが出来ますね。一方、中低速域では全体的にクイックになっていく印象です。速度を落とさざるを得ないヘアピンなど、アールが厳しいコーナーではそのクイックさが武器になるでしょう。

一方、ヒルクライムでは少しピーキーな挙動を示すので、体重を前方にかけるようなダンシングはあまり向いていません。エアロロードらしく、シッティングで縦方向を意識したペダリングが向いていると思います。ただ剛性が低いわけではないので、登りでもスピードを出せる人や、アタックをかける際はしっかりと反応してくれるのではないでしょうか。

振動吸収性については、レースバイクとしてみれば平均点といったところでしょうか。カウンターヴェイルも採用しておらず、縦方向へと扁平しているエアロチューブを採用していることを考えれば、仕方ないと思います。頑丈な造りになっていそうですので、初心者の方にも扱いやすいバイクなのではないでしょうか。

とにかく、高速域が非常に得意なバイクですので、サーキットで行われるロードレースやエンデューロはこのバイクの真髄を発揮できる舞台となるでしょう。集団内で走っていれば、とても楽に走ることが出来るはずです。ペースの上げ下げにも対応しやすいので、クリテリウムなどでも活躍できるでしょう。

ビアンキらしいデザインで、ルックスも高レベルでまとまっていますし、少しくらいラフな扱いをしても大丈夫な頑丈さを持っていますので、初心者にもおすすめ出来るバイクです。どの速度域で、どういったギアを選択し、踏み方を変えれば進むのか、そういった自転車との対話を楽しみながら一緒に成長していけるような、長く付き合える一台だと感じました。

「エアロロードの癖を排除し、ハイレベルにまとまったレーシングバイク」村山智樹(ZING² FUKUOKA-IWAI)

エアロロードらしいルックスでありながら、エアロロードにありがちなクセの強さは一切感じないバイクですね。価格帯、そしてこの形状を考えるならば、とてもハイレベルにまとまった一台です。その分重量は嵩みますから、どうしても軽やかに坂を登る、というイメージは薄いですが、本来の目的である高速巡航では無類の気持ちよさを発揮してくれます。

ダウンチューブがかなり扁平した翼断面形状でありながら、横剛性は非常に高いレベルでまとまっているので、パワーをかけて踏んでいっても捻じれる印象はありません。踏み出しは苦手ですが、速度に乗せれば乗せていくほど、気持ちよく伸びていきますね。

「エアロロードの癖を排除し、ハイレベルにまとまったレーシングバイク」村山智樹(ZING² FUKUOKA-IWAI)「エアロロードの癖を排除し、ハイレベルにまとまったレーシングバイク」村山智樹(ZING² FUKUOKA-IWAI)
印象としては30km/hあたりが閾値でしょうか。そこを越えてくると、このバイクの本来の魅力がどんどんと際立ってきます。とてもスムーズな走行感で、伸びやかな走りを堪能できました。ホイールもある程度重量があったので、軽いホイールへと変更すれば、ヒルクライム性能も補うことができるのではないでしょうか。

チューブ形状の影響か、振動吸収性については優れたバイクとは言いづらいですが、逆に言えば路面の情報をしっかりと把握することが出来るバイクだともいえます。もちろん、路面が綺麗なサーキットなどでは気にならないでしょうし、そういったロケーションで行われるレースやエンデューロはこのバイクの得意とするところでもあります。

ハンドリングはかなり安定志向で、とても乗りやすいバイクですね。剛性感もそうですが、エアロロード特有の乗りにくさやピーキーなイメージはこのバイクにはあてはまりません。しかし、ルックスはエアロロード然としていて、カッコいいのはとても嬉しいポイントですよね。特にコンパクトデザインのリアトライアングルは、TTバイクのよう。

フロントもリアもかなり硬めの味付けで、レースバイクとして活躍してくれそうですね。1台目というよりも、ステップアップの2台目、アルミロードに乗っていた人が次にレーシーでかつエアロなカーボンロードが欲しい、となった時にピッタリの選択になると思います。また、クリップオンバーのついた完成車なども用意されているということですから、オリンピックディスタンスのトライアスロンに挑戦してみたいという方にもオススメできますね。

ビアンキ ARIAビアンキ ARIA (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
ビアンキ ARIA
サイズ:44、47、50、53、55、57
カラー:CK16(チェレステ)、BLACK、RED
ホイール:ヴィジョン Trimax 35(アルテグラ完成車)、ヴィジョン Team 30 Comp(105完成車&105トライアスロンMIX完成車)
価格/パッケージ:
348,000円(税抜)/アルテグラ完成車
278,000円(税抜)/105完成車&105トライアスロンMIX完成車



インプレッションライダーのプロフィール

御園井智三郎(ミソノイサイクル)御園井智三郎(ミソノイサイクル) 御園井智三郎(ミソノイサイクル)

今年で創業120周年を迎えた、国内はもとより世界的にも最古参クラスの歴史を誇り、静岡県浜松市内に3店舗を構えるミソノイサイクルの5代目代表を務める。海外メーカー及び国内代理店と強い繋がりを持ち、ロードレーサーから実用車まで、あらゆるジャンルの機材で、新旧を問わない豊富な知識を持つ。また、かつてはトップアマとして国内レースで活躍した経験も。現在は地元浜松市と共に、走行環境の整備やイベントの企画・運営を行い、スポーツサイクルの更なる普及に注力している。

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ミソノイサイクル HP

村山智樹(ZING² FUKUOKA-IWAI)村山智樹(ZING² FUKUOKA-IWAI) 村山智樹(ZING² FUKUOKA-IWAI)

福岡市は天神地区に店舗を構えるZING² FUKUOKA-IWAIにて、セールス&メカニックやトライアスロンアドバイザーを担当する。モータースポーツを趣味にするほどの機械いじり好きが高じて自転車業界へ。自身は各地で行われるトライアスロンのレース会場へも、メカニックとして出向くほどTTバイクの扱いを得意とする。お客さんに向けたトライアスロン教室も行い、普段からトライアスロンのレース参加に向けたトレーニングとして自転車を嗜む。トライアスリートらしく愛車はサーヴェロのP3。

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ZING² FUKUOKA-IWAI HP

ウェア協力:カステリ
ヘルメット協力:カブト

text:Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.AYANO
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