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ミソノイサイクル有楽街店

創業116年 歴史に裏打ちされた技術と信頼、親しみやすい雰囲気が特徴
2013年で創業116周年。おそらく日本国内、そして世界レベルで見ても最古参にあたるサイクルプロショップが、浜松を拠点に現在3店舗を展開するミソノイサイクルだ。今回取材で訪れた有楽街店は浜松駅から徒歩およそ10分、市街中心地の商店街の一角にある。この地に店舗を構えてから長きに渡り、まさに浜松の、そして日本の自転車普及発展と共に歩んできた。

本店にあたる有楽街店は、一見すると一昔前ならどこでもあった「街の自転車屋さん」といった外観だ。店内も決して広かったり、美しいディスプレイが施されているわけでも無い。しかし2階建ての販売スペースには高級ロードバイクからクロスバイク、MTBの他、アレックス・モールトンなどおよそ200台の展示車とパーツなどがところ狭しと並べられている。

「実は、この有楽街店にコンセプトはありません。何でもウェルカム、病院で言えば緊急外来のようなお店なんです。」と笑うのは、御園井商会の五代目を務める御園井智三郎社長。昔ながらの自転車店の雰囲気を色濃く残す有楽街店自体、およそ70年以上に渡り改築を続けてきたそうで、絶版となったバイクやパーツ、クラブチームのメンバーの古い写真など、店内にはミソノイの歴史を感じさせる品々が飾られている。「歴史と現在がごった煮状態ですよ(笑)」と智三郎さんは続ける。
歴史と現在が混在するミソノイサイクル。掘り出し品が見つかるかも
ジャンルを問わず様々な製品が並ぶ有楽街店内
コーダーブルーム製品はブースを設けて展示している
浜松を愛し、「From浜松」にこだわるミソノイサイクルは、有楽街店の他、元城店としじみづか店という2店舗を徒歩圏内で展開している。「本店がどうしてもごちゃついてしまうので」という理由から、そのいずれの店舗ともにディスプレイにこだわり、"魅せる"プロショップとして展開。元城店はヨーロピアンブランド、そしてしじみづか店は大手ブランドに絞ることでスペシャリティを演出している。

まだメーカーとショップの仲介を行う「国内販売代理店」制度が存在しなかった時代から、ミソノイサイクルでは海外ブランドと直に契約を行い、国内に海外製自転車を紹介してきた。例えばアレックス・モールトンを日本で初めて販売したのはここ、ミソノイサイクルだ。

116年という歴史を持つミソノイサイクル。そのモットーは、「自転車の本質」にこだわることだ。「自転車とは、人間の脚の力さえあれば、そのペースに併せて進むことのできる乗りもの。飛行機やクルマとは違う、"時間の贅沢"を味わうことに楽しみや幸せを見いだすことこそが本質だと思います。」と智三郎さん。それを伝え広めることで、ヨーロッパのように自転車を文化として根付かせていきたいと言う。

実際にも浜松市と共に、自転車が走りやすい環境の整備に取り組んだり、イベントの企画・運営などを行ってきた。自身が興した浜松トライアスロンクラブは今や国内有数の大型クラブに成長し、浜名湖トライアスロンなどを主催するほどに育った。浜松周辺の自転車人口も増え続けているそうだ。
創業当時の貴重な白黒写真。長い歴史を物語る
ジオスのDELTAフレームを発見
レーシングジャージのみならず、タウンユースに最適なウェア類も扱っている
片倉シルクと、デローザのプロトスが並ぶ。ミソノイサイクルの歴史を垣間みた気がした
長い歴史の中で積み重ねてきた、メカニックに関する技術と経験も、ミソノイサイクルの大きな強みだろう。「ママチャリからDi2やEPSまで全てを理解できていないと、自転車のプロとは言えない」とは智三郎さん。粗悪品の選別はもちろんあれど、値段の高い安いは関係ない。「困っている人がいる限り、プロとして助けなければならない。”できるできない”ではありません。やるんです。浜松人の気質”やらまいか”の精神です。」

昔は智三郎さん自身トップアマチュア選手として走り、如何に速く走るか、機材を切ったり削ったりして知識を身に付けてきた。その工夫はクロスバイクであっても肩幅に合わせてハンドルをカットしたり、ブレーキの握りしろを微妙に変えたりと、お客さん一人一人に対するこまめな整備・セッティングに活かされているそう。

取材当日には、12インチのホイールに巨大な内装ハブを組み合わせた特注ホイールの注文が入っていたが、メカニックブースに立つ山本メカニックは嫌な顔一つ見せずにスポークをカットして組み上げていた。非常に手間ひまを要する生産性の低い作業。他のショップなら断られる場合もあるだろうが、「面倒な仕事はむしろ、腕の見せ所ですから楽しいですよ。」と笑う。極端な話、どうしても付かないパーツは溶接したり、削ってでも付ける。そうした作業は、技術と信頼、経験に裏打ちされているからこそ可能となる。
スパイダーに合わせ、自作でアルミ板を切り抜いて作ったエアロチェーンリング
ほとんどのスモールパーツが揃っており、緊急需要にも応えられる
店内奥のメカニックスペース。年季の入った工具や工作機械が並ぶ
ミソノイサイクルでは、どこで買ったどんな自転車の持ち込み修理でも全部引き受ける。ショップで嫌がられがちな、海外通販で購入した自転車の組み上げも受け付けも拒まない。ただし、自転車は生き物と捉えるミソノサイクルの理念は、基本的には自転車は通販で購入すべきではなく、人から人への手渡しでを大切にしている。

「断るのは簡単だが、それでお客様に嫌な思いをさせたく無い。自転車屋とはその程度のレベルなのか、と思われたく無いんです。(智三郎さん)」曰く、目指すのは高級アパレルブランドや、高級自動車ディーラー並みの品質管理とサービスだ。その理由は、魅力的で価値ある自転車の販売を、安売り量販店のようなレベルに落としてはならない、という気概にあるのだ。

智三郎さんはまた、全てをマニュアル化し、それに沿った整備を突き詰めるやり方にも疑問を投げかける。「基本マニュアルはもちろん大切ですが、技術は目で盗み、実際に触れることで覚えてほしいんです。だから、入ったばかりのスタッフに安易に作業を任せません。昔からそうでしたから。」と言う。今の時代では古い考え方かもしれないが、それが正しいか否かは、116年に渡る長い歴史に現れている。

今や多店舗展開を行うミソノイサイクルだが、ユーザーに対しては、くだけた意味で昔ながらの"商い"というスタンスをこれからも継続していきたいという。智三郎さんは「"自転車に乗っていて良かった"と思って頂けるよう、親身な立場でお手伝いができれば良いと思いますね。」と語ってくれた。長い歴史と、そこから生まれる技術と経験。そして昔ながらの親しみやすい雰囲気に溢れる信頼のプロショップだ。
作業にあたる山本メカニック
特注ホイール用のスポークを切り出していく
形になっていく特注ホイール。面倒な作業は「腕の見せ所」という
プロンプトンの考案者アンドリュー・リッチのサインの入ったモールトンのパーツ。国内で初めてモールトンを輸入したのがミソノイサイクルだ
店舗情報
アクセス 
JR東海道線浜松駅、遠州鉄道新浜松駅より徒歩10分
スタッフからのメッセージ
右が5代目社長を務める御園井智三郎さん
浜松市内に3店舗を構える弊社ですが、ここ有楽街店は何でもウェルカムというスタンスで営業しています。ロードレーサーはもちろん小径車、実用車まで、自転車に関することでお困りの際は是非一度お声がけをして頂きたいと思います。

レベルや目的に併せた5つのクラブチームがあり、ポタリング派から上を目指すレーサーまで、どんなニーズにも応えることができるはずです。気の合う仲間と走るのは本当に楽しいですよ。

ミソノイサイクル有楽街店