1月5日にアメリカのNYタイムズ紙が伝えた1つの記事が、波紋を広げている。ツール・ド・フランス7連覇のタイトルを剥奪されたランス・アームストロング(アメリカ)が、過去のドーピング使用の告白を検討しているというもの。アームストロングの弁護士は記事の内容を否定しており、USADA(米アンチドーピング機構)はノーコメントを貫いている。

ランス・アームストロング(アメリカ)ランス・アームストロング(アメリカ) photo:Kei TsujiNYタイムズのジュリエット・マキュール記者の記事によると、事情を把握している数人の関係者の話として、アームストロングはUSADAと協議を行ない、過去のパフォーマンス向上薬物と血液ドーピング使用の告白を検討しているという。

アームストロングの弁護士ティム・ハーマン氏はUSADAとの協議の存在を否定しており、USADAは今回の一件に関してコメントを出していない。

昨年10月、USADAはアームストロングの1998年8月1日以降の成績(ツール7連覇を含む)を抹消するとともに、永久追放処分を与えた。それに伴いナイキ社やトレック社、ジロ社などの個人スポンサーは契約を解除。アームストロングはすでに「ランスアームストロング財団(元リブストロング財団)」の代表を辞任するとともに、同財団との関係を断っている。

仮にアームストロングが過去のドーピングを自白した場合、処分期間が短縮される可能性がある。つまり、現在アームストロングが情熱を注ぐトライアスロンへの将来的な復帰が可能となる。例として、USADAに過去のドーピングを証言し、捜査に協力したタイラー・ハミルトン(アメリカ)の出場停止処分は8年間に短縮されている。

しかしアームストロングはこれまで一貫してドーピングを否定し続けて来た。その上で、ドーピング疑惑に関して元チームメイトのフロイド・ランディス(アメリカ)から告発されるなど、アームストロングは法律上様々な問題を抱えている。NYタイムズ紙の記事の真偽は分からないが、アームストロングが自白すれば、より事態は複雑化する。

text:Kei Tsuji